一流の銅ヤロー   作:クロム・ウェルハーツ

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@45 サスケ VS 我愛羅!!

中忍選抜試験“本戦”は粛々と進み、いや、俺にとってのみ粛々と進んだと言えるだろう。

第一回戦では、去年のNo.1ルーキーで、しかも、日向家でもある日向ネジにノーマークだったうずまきナルトが勝つなんて誰も予想できなかっただろう。尤も、自分が勝つことを疑わなかったナルトだけがこの結果を予想できた唯一の人間となるが。とはいえ、そのナルトも少し不安になって演習場でヒナタに励まされていた箇所を原作で見た記憶がある。

つまり、ナルトがネジに勝つなんてことは大番狂わせといっても良いほどの結果だった。

第二回戦は、サスケと我愛羅の試合だったがサスケは遅刻し、後回しにされた。

第三回戦はカンクロウとシノの試合で、カンクロウが棄権し終了。

第四回戦は風を操るテマリに対して、シカマルが頭脳戦を展開。その闘いは大いに会場を沸かせ、会場のテンションは最高潮だ。しかし…。

 

「そう落ち込むな、アンコ。むちゃくちゃ楽しいぞ。」

「アンタのせいよ…。」

 

アンコが睨んでくる。

 

「イカサマでもしてんじゃないの?ここまで、私が負けるなんて!…砂のカンクロウめ。殺してやろうかしら。」

「自分たちの試合に勝手に賭けられた上に棄権したら殺されるなんてカンクロウ、可哀想過ぎじゃありません?」

「それは冗談だけど…。」

 

そういって、串団子を口に含む。咀嚼し、喉に団子を流し込む。子どもの時のように詰まらせることはなかったが、自分が納得していない問題に直面する時の首を傾げ、地面を見つめる癖は今も健在だ。

 

「まさか、砂の二人が、一人は臆病風に吹かれたけど、あそこまで追い込まれるなんて考えもしなかったわ。ヨロイは分かっていたの?」

 

訝しげに俺を見るアンコ。それに対する答えはもう決まっている。

 

「俺が何か言う前に賭けの対象をお前が決めていたから、俺はお前が選ばなかった木ノ葉の二人を選ぶしかなかったんだけど。」

「……遅いわね、うちはサスケ。あ、あたしはサスケに千両ね。」

「…。」

 

あからさまに話題を変えるアンコ。いや、変えられてないけども…。

それはそうと、アンコの言う通りサスケの到着が遅れている。

中忍選抜試験、最後の試合になるだろう。大蛇丸様の合図はサスケの試合の中盤にすると本人から聞かされた。と、なるともうすぐだ。会場の中央に木ノ葉が舞う。

 

「カッコイイ演出だな。」

「カカシの趣味かしら。なかなか楽しませてくれるじゃない。」

 

ゲンマが木ノ葉瞬身で現れた二人に名を問う。

 

「名は?」

「うちは…サスケ。」

 

サスケの声はよく響いた。

 

「へっ!随分、遅かったじゃねーの!!オレとやんのをビビってもう来ねーと思ってたのによ!」

「フ…。あんまりはしゃぐんじゃねーよ、ウスラトンカチ。」

 

ナルトとサスケ。なんだかんだ言って信頼し合っているな。二人の表情を見ると、どちらとも自信に溢れたいい顔付きをしている。

 

「そのはしゃぎ様からして…一回戦、勝ったのか?」

「もちろん。」

 

サスケとナルトのやり取りを横目に、サスケと共に現れたカカシがゲンマに尋ねる。

 

「ま、なんだ。こんだけ派手に登場しちゃってなんだけど…。もしかして、サスケの奴、失格になっちゃった?ホラ、遅刻したでしょう、サスケ。」

「アナタの遅刻癖がうつったんでしょ、たくっ!」

「…。」

「で、どうなの?」

 

ゲンマは微笑を浮かべる。

 

「…大丈夫ですよ!サスケの試合は後回しにされました。失格にはなってません。」

「アハハ…。そりゃ良かった!良かった!」

 

そう言って笑うカカシだが、これでサスケが中忍に上がることができないと解っていて笑っているとしたら大した奴だ。中忍には自己管理が求められる。試合に遅刻するなんて大ポカ…実力が中忍レベルでも部隊長としての資質は不可と見なされ、まず合格はできない。悪い先生だな。

サスケが斜め上を向く。ナルトもそれに続き、サスケと同じ方向を見る。

 

「あんな奴に負けんじゃねーぜ!」

「ああ…。」

「…サスケ!」

 

サスケの視線を自分に向けさせ、ナルトはサスケに向かって宣言する。

 

「オレも…お前と闘いたい…!」

「ああ…。」

 

なんか、いいな。ライバルって感じがしてて。そう言えば、俺が転生する前に読んでいたライバルって漫画雑誌どうなったんだろうか?ブレドラが終わって読まなくなったんだよな、あれ。

 

「始め!」

 

ゲンマの声でノスタルジアから現実に引き戻された。慌てて試合に注目する。

我愛羅が頭を押さえているのが目に入った。なんかボソボソ言っている。怖い。

と、いつも表情が変わらない我愛羅が珍しく顔を顰める。それと同時に雰囲気がいつもの冷たいものに戻る。

 

「来い。」

 

サスケに短く言い放つ我愛羅。それに対するサスケの返事もまた短いものだった。

 

「行くぞ。」

 

サスケは牽制として手裏剣を我愛羅に向かって投げつけるが、我愛羅の絶対防御である“砂の盾”が手裏剣を防ぐ。それと同時に、その砂の盾の姿が変わり始める。砂の盾が変わったものは、砂で我愛羅の姿を象った砂分身だ。

それに怯まず、サスケは正面から我愛羅に向かって行く。サスケめ…予選で教えてやったアドバイスが何の役にも立ってない。カウンターをされやすいから、正面から突っ込むなゆーのに。

砂分身の腹から大量の砂がサスケに向かって吐き出される。だから、カウンターされやすいから正面から突っ込むな、と。

上に跳び上がったサスケに我愛羅の砂分身が先程受け止めた手裏剣をサスケに投げる。大した攻撃じゃない。サスケも手裏剣を投擲し、砂分身から放たれた手裏剣を弾く。これで、サスケの進行方向に邪魔はなくなった。跳んだ勢いのまま砂分身に向かって蹴りを放つ。サスケの蹴りは、ガードする為に出した砂分身の両手を粉砕させる。そのままでは終わらない。サスケは左手の裏拳で砂分身の頭を砕こうとするが、それは失敗に終わった。頭の部分の硬度は高く壊れなかったばかりか、逆にサスケの左手を絡め取る。

 

「セイ!」

 

サスケはチャクラを込めた右手の掌底で今度こそ砂分身の頭を砕く。これで、我愛羅を守るものは無くなった。そのまま、サスケは我愛羅本体に攻撃を喰らわそうと前に出る。

我愛羅の表情は動かない。サスケが壊したのは、あくまで我愛羅の正面の砂のみ。左右の砂が我愛羅を守ろうと盾を形作る。

 

「え?」

 

隣のアンコが呟く。

 

「一ヶ月の修業の賜物だな。」

「たった一ヶ月であそこまで…。流石“うちは”ね。」

 

我愛羅の砂のガードすら追いつかない程のスピードで、後ろに回り込んだサスケの拳が我愛羅を捕え、我愛羅を吹き飛ばした。

 

「それが砂の鎧か?」

 

地面を転がる我愛羅をサスケは油断なく見下ろす。

そして、サスケは裏手にした右手を我愛羅に向けた。

 

「来い!」

 

向けた手の指を自分に向かってクイクイと曲げるサスケ。相手からしたら怒り心頭な動きだ。とはいえ、流石は我愛羅。少し眉を顰めただけで動かない。

 

「来ないのならこちらから行く!」

 

速い動きで我愛羅を翻弄するサスケ。フルボッコじゃん、あんなの。サスケが我愛羅の胸蔵を掴み、更に膝を腹に入れて我愛羅を飛ばす。

距離が開き、正面から見合う二人。白熱した試合で会場が盛り上がるかと思ったが、サスケと我愛羅の攻防に見とれ声を上げる者はいなかった。

会場の全員が注目する中、我愛羅が立ち上がると共に印を組むと、砂が我愛羅の周りに集まり球体を作っていく。このままだと、攻撃が全て防御されると考えたのだろう。全てが閉じる前に攻撃しようとサスケが走る。

ガッという音が会場を揺らした。果たして、サスケの拳が我愛羅の殻を破ることはなかった。殻に阻まれた拳から、そして、殻が変形した棘が掠めたサスケの頬からは血が流れている。

サスケが砂の球体を蹴るが、目に見えるダメージは与えられないでいる。一旦、サスケは砂のタマゴの中に引っ込んだ我愛羅から距離を取り、会場の壁にチャクラで張り付く。サスケが印を組み左手首に右手を置くと左手から光が漏れだす。チャクラを集めて雷の性質変化を行っているようだな。アンコを含め、会場にいる人の全ての目がサスケへと向く。そして、サスケが動いた。

会場の壁を削りながら砂の球に向かうのは弾丸。青い光を後ろに殻を打ち破ろうとする弾丸だ。砂の殻はそれを止めようと再び棘を前に向かって突きだすが、まだ不完全とはいえサスケが“眼”の力をフルに活かしたことで、それはサスケの体を掠りもしなかった。

サスケの千鳥が我愛羅の絶対防御を打ち破る。

 

「つかまえた。」

 

土遁は雷遁に弱い。上手く性質変化の優劣関係を利用したな、サスケ。

 

「期待通りだ。」

 

俺の声は我愛羅の叫び声で消された。まったく…男の子なんだから我慢しなさい。

サスケが雷のチャクラを左腕に集めて砂のタマゴから引き抜くと、一緒に砂でできた腕が出てきた。1ヶ月前にも見たことがある守鶴(人間形態ver.)の腕のデザインと酷似している。けど、守鶴は出てこないだろうな。原作と同じ流れの上、我愛羅にパワーアップの為のことは何もしていない。原作同様に進み、サスケやナルトといった主要人物をおびき寄せるエサになってくれるハズだ。

俺の予想通りに殻が崩れ落ち、左肩に傷を負った我愛羅の姿が現れる。

…そろそろだな。始めようじゃないか…木ノ葉崩しを。

 


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