一流の銅ヤロー   作:クロム・ウェルハーツ

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@41 予選終了…!!

中忍試験“第三の試験”予選が終了した。“木ノ葉”五名、“砂”三名、“音”一名の本戦出場者に絞られた。

“木ノ葉”うちはサスケ。

“木ノ葉”油女シノ。

“砂”カンクロウ。

“砂”テマリ。

“木ノ葉”奈良シカマル。

“木ノ葉”うずまきナルト。

“木ノ葉”日向ネジ。

“砂”我愛羅。

“音”ドス・キヌタ。

 

「…それにしてものどか…。いや…本当に平和ボケした国になったわ。…どの国も軍拡競争で忙しいっていうのにねェ。」

 

本戦に出場する試験受験者の情報を報告するためカブトと共に大蛇丸様と落ち合う。普段、人気が無い城の二階部分に設置している柱に寄り掛かりながら大蛇丸様が欄干(らんかん)に腰を下ろしている俺に目を向ける。

 

「ヨロイ、本戦に出場する“砂”の三人は使えるのかしら?」

「ええ、最低でも中忍レベルの実力はあります。それと、我愛羅は上忍、暗部相手でも優位に立ち回る事ができるでしょう。」

 

大蛇丸様の横に膝間付くカブトが立ち上がる。

 

「“音”の軍事力、そして“砂”との協力体制。今なら取れますか…。」

「まあね。あんなジジイの首取って楽しいかはわからないけど…。」

 

目線を宙に向ける大蛇丸様。今まで大蛇丸様といた俺だからこそ解る。

…これは嘘をついている顔だ。

 

「…そうでしょうか?」

 

続くカブトの言葉により大蛇丸様の目が細くなる。

 

「ボクにはまだ…アナタが躊躇しているように思われますが…。」

「…。」

「…これから各隠れ里の力は長く激しくぶつかり合う。音隠れもその一つ…。アナタはその引き金になるつもりだ。」

「…。」

「そして、彼はその為の弾なんでしょう?うちはサスケくん…でしたっけ?」

「わかりにくい!もっと簡単に!寝不足の頭には入って来ないっつーの。」

「…。」

「…。」

「暗躍の暗黙のお約束な様式美は俺も好きだけど伝わってこないの、マジで!報連相、大事。でも、伝わんなきゃ意味ねぇから!」

 

カブトがため息を着く。

…いい身分だなぁ、テメェ。いっつもいっつも『お先にあがります』って言って先に寝やがって。俺が巻物の偽造とかしているのを見ているのに『手伝いましょうか?』の一言もないのは後輩としてどうかと思う。その一言があれば、俺も『大丈夫だ。後は俺がやっておくからお前は休め』とかかっこよく言って3分ぐらいは自分に酔ってモチベーションが上がるのに…。

 

「つまり、サスケくんを“あの術”で大蛇丸様の支配下に置くということ。そう推測しましたが、違いますか?」

「なるほどね。大体わかった。」

「フフ…。カブト、お前は察しが良すぎて気味悪いわ。」

「そうでもありませんよ。」

 

顎を少し引き、カブトは言葉を続ける。

 

「ドス、ザク、キンのことは知りませんでしたからね。サスケくんの情報収集にあたって彼ら音忍3人の能力を知っておきたくて、攻撃をわざとくらうような要領の悪いこともしましたし…。買い被りですよ。」

「重要じゃないし別にいいかなって思ってた。ごめんね、テヘペロ。」

「ヨロイさんが誤魔化してくることからみて、ボクはまだ完全には信用されていない…みたいですね。」

「ヨロイがふざけながら謝るのは相手が怒ることがないと信用している証よ。それに、彼らごときの話を私の右腕であるお前にいう必要があったかしら?それこそ信頼の証よ。」

「…。」

「だからこそ…サスケくんをお願いしようかしら…。」

 

唇が弧を描く大蛇丸様の表情は邪悪だ。

 

「彼に与えた呪印…カカシの奴に封印されちゃったみたいなの。まぁ、だからってあんまり関係ないんだけどォ…。彼の心の“闇”が消えない内に…今すぐ攫って欲しいのよ。」

「ガラにもなく焦っていらっしゃいますね。」

「少し…気になることがあってね。」

「うずまきナルト…ですか。」

「サスケくんは(イタチ)を殺す為に生きてきた復讐の塊。その目的を遂げるまで絶対死ねぬ子…。それなのに、私とやり合った時…敵う訳のないことを知りながら死を恐れずに向かってきたわ。あんな死に急ぐ子じゃないと思ったのに。」

 

懐から忍識札を取り出し一瞥した後、大蛇丸様は俺たちの方に顔を戻す。

 

「お前たちの情報によると、あの九尾の子との接触がサスケくんの目的と心を変えていっているようね。そうでしょ?ヨロイ。」

「ええ、かつての大蛇丸様と自来也様の関係のようなものです。まぁ、自来也様は大蛇丸様を変えるってことはできなかったんすけど。」

「…一緒にしないでくれるかしら?」

「さーません。とはいえ、サスケと大蛇丸様が被って見える事は事実です。厨二病全開な所とか。」

「貶されている気しかしないわね。アナタの考えを聞かせなさい。」

「さっさとサスケをナルトから引き離した方がいいですね。部下として使うにしても、“器”とするにしても、早めに大蛇丸様の好みに調教するのがいいでしょう。」

「そうね…。早く私色に染めないとねェ…。」

 

舌舐めずりをする大蛇丸様を見て、カブトの表情が引き攣る。ドン引きしたカブトは早くここから去りたいのだろう。

 

「では…。」

 

そういって、踵を返し立ち去ろうとする。

 

「カブト…お前…。」

 

さっさと行きたいカブトを引き止める大蛇丸様。

 

「私を止めたいなら………今、サスケくんを殺すしかないわよ…。」

「!!」

「お前じゃ私を殺せないでしょ。強いといっても…カカシと同じ程度じゃねェ…。」

 

カブトの目が泳ぐ。後ろ暗いことがなくても、今の大蛇丸様の迫力に当てられたらどんな奴でもカブトの表情になること請け合いだ。

引き攣ったカブトの表情を見て楽しんだのか、大蛇丸様が笑顔を浮かべる。

 

「フフ…。冗談よ。さぁ、行っていいわよ!お前を信用してるから。」

「…。」

 

カブトは無言でその場から姿を消す。

 

「はぁ。大蛇丸様、性格が悪いッスよ。あんなの冗談にしては全然笑えないですし。」

「あら、そう?私は楽しいのだけど。」

「ドドドSS(スーパーサディスト)!大蛇丸様のドドドSS!あ、このドドドSSってガガガSPみたいに語呂がいいッスね。ED(エンディング)のクレジットに使ってもいいですか?」

「好きにしなさい。それよりも、カブトが私を裏切る事があるかしら?」

 

全然、会話が変わらない。こんな風に裏で誰かのことをコソコソ言うのは好きじゃないんだが。話題を変えようとした俺の扱いが段々上手くなってきている大蛇丸様に戦慄しながらも、大蛇丸様の疑問に答える。

 

「カブトが裏切ることはないでしょうね。」

「あら、言い切るのね。」

「大蛇丸様よりも長くアイツといますからね。アイツのことは大蛇丸様よりも解っているつもりです。カブトは大蛇丸様を理解しようと心掛けている人間です。他の有象無象、大蛇丸様にただ心酔したり、力に恐れたりして従っている奴らとは違いますからね。だからこそ、裏切らない。カブトは知らないことを嫌うタイプの人間だからこそ理解し切るまでは絶対に、ね。」

「なるほど。なら、サスケくんの奪取は大丈夫かしら?」

「そう簡単にはいかないでしょうね。」

 

大蛇丸様が欄干に座る俺の隣に近づき、俺の横で木ノ葉の里を見下ろす。

 

「そう木ノ葉も甘くはない、ということね。少し、焦り過ぎたかしら?」

「逆に考えると、今回で木ノ葉がどれだけ動くか計る事ができるのでサスケの奪取に失敗したとしても次に生かせます。問題はないでしょう。」

 

大蛇丸様は頷き、呟く。

 

「一ヶ月後。世界はどうなっているのかしらね。」

 

木ノ葉の里を見下ろす目を俺に向け、大蛇丸様は今度ははっきりと話した。

 

「“砂”との打ち合わせはアナタたちに任せるわよ。」

「了解。」

 

姿を消す大蛇丸様。それを見送り、俺も瞬身の術で城から離れる。

今夜、“砂”のバキさんに渡す計画書の見直しのために木ノ葉にある自宅へと屋根を跳び渡る。一枚の木ノ葉が俺の横をすれ違うように舞う。

顔を上げ、空を見上げる。…風が…強くなってきたな。

 


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