「おお!でっけー。」
見上げていると首が疲れそうな程高い門の前にいる。
なかなか壮観な眺めだ。
更に…。
「センスがいい。大蛇丸様と違って。」
「黙りなさい。」
左の門に『あ』、右の門に『ん』と書かれていて実にアートである。
目の瞳孔が蛇みたいになっていて、やたらめったら怖い大蛇丸様とは全然違うよ、ホント。
「って置いてかないでぇえええー!!大蛇丸様、ごめん、ホントごめんなさいって!顔が怖いとか思ってごめんなさい!」
「いいこと?思ったとしても口には出さないでちょうだい。じゃないと…殺すわよ。」
「さーません。」
大蛇丸様は俵でも担ぐように俺を脇に抱える。
なんか殺すって脅し文句聞き飽きたなぁと思う今日この頃。
忍者の世界ってやっぱ手厳しいなぁ。
そんなことを思いながら大蛇丸様に抱かれて木ノ葉の里を歩くと出るわ出るわ。
大蛇丸様の信奉者、言い換えると詐欺被害者。
この人、外面が良くて強くて、更にリーダーシップも取れる人だから人気があるんだろう。
あっという間に大蛇丸様の周りに人だかりが出来た。
「大蛇丸さん、お帰り!」「任務帰りかい?」「大蛇丸さん!今度、修業に付き合ってください。できたら、その、夜も…。」
うん、最後に言った女の子。それ、物理的に食べられるパターンだよ。比喩が全く入らない感じで。
「ん?大蛇丸さん、その子は?」
大蛇丸ラブコールがやっと一段落して俺の存在に気付いたらしい。
ここはビシッと自己紹介を決めなくちゃな。
「はじめまして。ヨロイといいます。怖い人たちに襲われた所を大蛇丸様に助けてもらったんです。」
これは里に入る前に大蛇丸様と打ち合わせした内容だ。
もし、名前を尋ねられたりした場合は、姓を言わないこと。
それと、大蛇丸様に危ない所を助けてもらったという設定を言うこと。
この二つは絶対に守るように言われた。
見ず知らずの相手に姓を名乗らないことが忍の掟らしい。それに、俺の一族は木ノ葉の忍、っつーか、ほとんどの忍から不名誉印を押されてるから、俺の一族に恨みがある人も相当数いるらしく、そこらへんの兼ね合いが姓を出せない理由だ。
で、大蛇丸様に助けてもらったという設定だけど、これは完全に大蛇丸様の趣味。
火影になるための布石なんだろう。
危ない目にあった子供を助けるなんて、大蛇丸様素晴らしい、そこに痺れる憧れるぅ!って言われたいんじゃないかと邪推してると、大蛇丸様の足が止まった。
「ここよ。」
『火』と大きく屋根に書かれた家に飛び乗った大蛇丸様は窓からその家に上がる。
「お邪魔します、先生。」
「おお、大蛇丸か。」
そこには、白髪交じりの齢五十ぐらいのおっさんがいた。
大蛇丸様が『先生』と呼んだってことは、このおっさん。三代目火影…か。
三代目が俺に目を向ける。
「む、その子は誰じゃ?」
「ああ、この子はですね…。」
「拉致被害者です。」
「話が拗れるからあなたは黙ってなさい。」
「大蛇丸、どういうことじゃ?」
大蛇丸様はため息をついて俺を睨む。
俺、腹芸とか苦手なんで。ちゃちゃ入れれる所はガンガン…ごめんなさい!反省してますからそんな目で見ないでぇえ!
「さーません。黙っときます。」
「猿飛先生。砂隠れでの不穏な動きについて知っていますか?」
大蛇丸様が三代目に尋ねる。
砂隠れの不穏な動き?原作にあったっけ、そんなの。
「知らぬのう。何じゃ?」
「『赤砂』のサソリという忍が何やら新しい術を開発したみたいでねぇ。それが何でも人の体を傀儡に作り替える術とのことです。」
「なるほど。困ったことになったのう。」
サソリって『暁』のメンバーのサソリのことか。今は『暁』は出来てないだろうけど。
っていうより、もうサソリは人傀儡を作れるようになってたんだ。
今は原作開始23年前。で、俺とサソリは7歳差。
サソリは9歳っつーのに凄すぎじゃん。
「とは言っても、まだ腕や足の一部分らしいのですけど。」
「それでも、まずいのぅ。だが、この子を連れてきた理由にはなっとらんぞ。」
はい、番組の途中ですが、ここらでクレジット入ります!
さて、勘のいい方は気づかれてるかもですが、このサソリが新しく開発した技術。それが、第三次忍界大戦に繋がるかもって三代目と大蛇丸様は心配してるんですね。
この新技術で手足を失っても、すぐに戦いに復帰できる。プラス、仕込み付きでっていうなかなか便利な技術なんですよ。
つまり、戦力の増強になる訳です。
まぁ、すぐさま戦争になるって訳じゃないですけど、警戒しておくに越したことはないって三代目は考えてるんでしょうね。
黙っておくのは寂しい。
「いやね、もし戦争になった場合、そこから準備をするのは遅いと考えましてね。今から優秀な者に唾着けておこうと考えたんですよ。」
「…しかし。」
「木ノ葉が危機に陥ってからでは遅いんですよ。先生も三代目火影ならご決断を。」
「…ふぅ。仕方ないのう。その子だけは許すが、それ以外の子供を連れてくることは許さん。これは三代目火影としての命じゃ。」
大蛇丸様は唇を噛む。
「…先生は甘い。それでは、里を守ることなど出来はしないわ!」
「じゃのう。だから、これより
なるほど、それでカカシやイタチはいきなり戦場に出れた訳だ。
「なら、この子も今年から入れてもいいのかしら、先生?」
「そうじゃな。」
…え?本人の預かり知らない所でトントン拍子で話が進んで行ってるんですけど!?
学校とか嫌なんスけど、割とマジで。この年で、ガキと一緒にガキガキできんわー。二歳だけどガキガキできんわー。
けど、強くならなきゃ死ぬしなー。がんばらなきゃなー。
…あー、鬱。
とか、言っていてもなんだかんだで楽しみだ。だって、ninjaだぜ!ninja!かっくいーじゃん。
「でじゃ、その子の名前は?」
「赤銅ヨロイ。」
んん?
大蛇丸様を見上げる。姓は出さないって、さっき決めたはずですよねぇ?
…黒い笑顔だ、怖い。
そっと三代目の方を見てみる。
鋭い目つきで俺を睨んでる、怖い。
「赤銅?」
「ええ。雲の金銀兄弟の一族の赤銅です。」
三代目の目が更にキツクなる。無理もない。三代目の師の二代目火影を瀕死まで追い込んだ金銀兄弟と同じ一族だもんなぁ。
しかも、曾孫。
あんな心優しい一族から、どうしてあんな兄弟が出たのかはわからないけど、さ。
そんな言い訳が通じる訳でもないし、どう説得するかなぁ。
「おっさんよ…。知っているか?」
キリッと真面目な顔をして言う。
「…人間(ひと)が他人を嫌い、その存在を認めないとき………その存在を見る人間(ひと)の目は…恐ろしいほど…冷たい目になるのじゃよ。」
三代目が目を見開く。ついでに大蛇丸様も驚いた様子で俺を見てくる。
「ってどっかの爺さんが言ってたり言ってなかったりー、ははは。」
名付けて!
the 未来の三代目火影の言葉をぶつけてみるの術!ver.NO.2!
…ネーミングセンスが四代目火影よりもねぇな、こりゃ。
術の名前は変だけど、どうやら三代目には効果は抜群らしい。
萎れたように項垂れた。
壮年って言われる年代なのに、萎れさせてさーません。
「いや、お前のいう通りじゃ。わしはかつてお前の一族であった者に師を殺されておってのう。そのためにお前の存在を認めない目をしたのやもしれん。だが、お前の言葉で目が覚めた。」
三代目は膝をついて俺に目を合わせて、ニコッと笑いかける。
「お前は金銀兄弟とは違う。今日からこの木ノ葉隠れの里の、わしの…大切な家族じゃ。」
むっちゃええ笑顔で笑いかける三代目。
それを見ながら軽く微笑む大蛇丸様。
「木ノ葉隠れの里にようこそ。ヨロイ。」