一流の銅ヤロー   作:クロム・ウェルハーツ

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@34 もう一度… feat.第二の試験!!

目の前に広がる薄暗く、そして深い森。第44演習場、通称『死の森』。

 

「………。」

「…何か薄気味悪いところね…。」

「………。」

 

まだ、12、3の少年少女には刺激が強すぎるのだろう。それに、俺たちとは時代が違うから尚更怖く感じるのだろう。

ここまで先導してきたアンコが振り返り、一言漏らす。

 

「フフ…。ここが死の森と呼ばれる所以、すぐ実感することになるわ。」

「『死の森と呼ばれる所以、すぐ実感することになるわ』。…なーんておどしてもぜんっぜんへーき!怖くないってばよ!」

「そう…。君は元気がいいのね。」

 

あ、あの笑顔………アカンやつや。ナルト、逃げて超逃げて!

 

「アンタみたいな子が真っ先に死ぬよのねェ、フフフ…。私の好きな赤い血ぶちまいてね♡」

「!!」

 

猫撫で声でアンコがナルトに耳打ちをする。が、ナルトの顔は強張っている。

まぁ、あんな事されたら表情がむちゃくちゃ固くなるのも無理はない。軽くとはいえ、投げられたクナイが頬に傷をつけ、そこから流れた血を舐められるなんてドMじゃない限り悦べない。

と、アンコの袖口からクナイがもう一本出される。

 

「クナイ…お返ししますわ…。」

「わざわざありがとう。」

 

言葉の上では礼儀正しい二人。しかし、絵面は邪悪な二人だ。

舌がミョーに長い黒髪の女…?男…?いや、わからん。間を取ってオカマってことにしよう。その人が自分の長い舌を使って、アンコがナルトに向かって投げたクナイをアンコに返そうとしている。そして、アンコはというとせっかく親切にしてくれたその人の舌に、先程出したクナイを突き付ける。

 

「でもね…殺気を込めて私の後ろに立たないで。早死にしたくなければね。」

「いえね…。赤い血を見るとウズいちゃう性質たちでして。…それに私の大切な髪を切られたんで興奮しちゃって…。」

「悪かったわね。」

 

アンコはグルリと周りを見渡す。

 

「どうやら今回は血の気の多い奴が集まったみたいね。フフ…楽しみだわ。」

 

笑顔を浮かべて呟くが、その内容は物騒だ。流血上等!って感じの発言、特別上忍として、いや、木ノ葉の忍としてどうかと思います!

 

「それじゃ、第二の試験を始める前にアンタらにこれを配っておくね!」

 

…アンコは腹芸とか苦手ですぐに表情に出る。だから、大蛇丸様に気づいていたらこんなにいい表情はできない。つまり、大蛇丸様には全く気付いていない。

なぜ、気づかないのだろうか?いくら、変装してチャクラを押さえていたとしても、だ…舌があんなに長い奴がそうそう居てたまるか!

俺の心の葛藤に気づかないアンコは懐から紙の束を取り出す。

 

「…何だってばよ?」

「同意書よ。これにサインをしてもらうわ。…こっから先は死人も出るからそれについて同意をとっとかないとね!私の責任になっちゃうからさ~♡」

 

むっちゃいい笑顔でそう宣うアンコ試験官。周りを見てみましょうよ。イビキの時と比べて受験者の表情が格段に無くなっちまってるからさ。そんなことはお構いなしに説明を続ける。

それにしても、忍の力は命懸けの状況で最も発揮できるとはいっても、マジで命を賭けた状況にしなくてもいいと思う。人権とかそこらへんの兼合いで…ってこの世界、人権とか無いんだったか。あー鬱。

 

「まず、第二の試験の説明をするからその説明後にこれにサインして。班ごとに後ろの小屋に行って提出してね。じゃ、第二の試験を始めるわ。」

 

そんな俺の気持ちに気づかない彼女は話を進める。

 

「早い話ここでは…極限のサバイバルに挑んで貰うわ。まず、この演習場の地形から順を追って説明するわ。」

 

巻物を広げる。この演習場の地図だ。

 

「この第44演習場は…カギのかかった44個のゲート入口に円状に囲まれてて、川と森…中央には塔がある。その塔からゲートまでは約10km。この限られた地域内であるサバイバルプログラムをこなしてもらう。その内容は…各々の武具や忍術を駆使した…なんでもアリアリの………“巻物争奪戦”よ!」

「巻物?」

「そう。“天の書”と“地の書”…この2つの巻物を巡って闘う。ここには、78人。つまり、26チームが存在する。その半分13チームには“天の書”をそれぞれ一つずつ。もう半分マイナス1チームの12チームには“地の書”をそれぞれ一巻きずつ渡す。」

「…12チーム?」

 

後ろの方で疑問の声が上がる。俺も疑問に思っていた所だ。ってか、冷や汗が止まらない。アンコがさっきからこっちを見ているし、もう俺のセンサーはビンビンに反応している。

そして、その虫の知らせは当たっていた。

 

「ヨロイたちのチームは巻物無しだから。」

「ちょお待てえええ!なんで?めちゃくちゃ不利じゃん、俺ら!」

「さっきふざけた罰。いいでしょ?」

「良くない!」

「じゃあ、他の罰を考えるわ。ん~と…次のオフの日に団子屋に一緒に行こうか。…アンタ持ちで。」

「巻物無しでいいッス!そのぐらいのハンデがないと、俺たち強過ぎて余裕過ぎて困ります!ぜひ巻物無しでお願いします!」

 

物凄い勢いで頭を下げる俺の隣の二人の視線が痛い。てめぇらも大食いの彼女が出来たら分かるさ。アンコ行きつけの高級団子屋では団子一串30両。円だと300円。それをこいつは余裕で50は食べちゃうからな。本気を出したらどれだけ食べるか予想できない。ただでさえ、アジトの維持費やらなんやらで金が飛んでいくっていうのに。

 

「ま、そんな訳で、もう一つの“地の書”は後で中央の塔の周辺に隠しておく。じゃ、この試験の合格条件を説明しようかな。この試験の合格条件。それは…天地両方の書を持って中央の塔まで3人で来ること。」

 

“天”“地”と書かれた二つの巻物を受験生に見えるように掲げる。

 

「つまり、巻物を獲得できなかった13チーム…半分が確実に落ちるってことね。」

 

サクラの言葉にアンコは深く頷き、言葉を進める。

 

「ただし、時間内にね。この第二試験、期限は120時間。ちょうど5日間でやるわ!」

「5日間!?」

「ごはんはどーすんのォ!?」

 

いのとチョウジにアンコはピシャリと言い放つ。

 

「自給自足よ。森は野生の宝庫。ただし、人喰い猛獣や毒虫、毒草には気をつけて。それに、13チームに39人が合格なんてまずありえないから。なんせ行動距離は日を追うごとに長くなり…回復に充てる時間は逆に短くなっていく。おまけに辺りは敵だらけ。うかつに寝ることもままならない。つまり、巻物争奪で負傷する者だけじゃなく…コースプログラムの厳しさに耐えきれず、死ぬ者も必ず出る。」

 

アンコは人差し指を立てる。

 

「続いて、失格条件について話すわよ。まず1つ目…時間以内に“天”“地”の巻物を塔まで3人で持って来れなかったチーム。」

 

続いて中指を立てる。

 

「2つ目…班員を失ったチーム。又は、再起不能者を出したチーム。ルールとして途中のギブアップは一切無し。5日間は森の中!そして、もう一つ。巻物の中身は塔の中に辿り着くまで決して見ないこと!」

「途中で見たらどーなんの?」

「それは見た奴のお楽しみ♡」

「?」

「中忍ともなれば、超極秘文書を扱うことも出てくるわ。信頼性を見る為よ。」

 

ナルトの質問を上手くはぐらかし、アンコは説明を続ける。

 

「説明は以上!同意書3枚と巻物を交換するから…その後、ゲート入口を決めて一斉にスタートよ!最後にアドバイスを一言…。」

 

一旦、言葉を止める。

 

「死ぬな!」

 

アンコの言葉で受験者一同の顔付きが変わる。“中忍試験”の意味を理解したようだ。

 

「…そろそろ巻物と交換の時間だ。」

 

係の中忍の合図で小屋に向かう。暗幕を潜って同意書を係に渡す。

 

「?…ああ、すみません。アンコさんから厳しく言われているので。」

 

少し右手を出して待ってみるが係の人は苦笑いを寄越すだけだった。

ちぇー、けちーと言ってみたくなったが、ごねたらこの人を困らせるだけの結果にしかならないのでおとなしく引く。

俺たちのチーム以外の下忍たちの同意書と巻物の交換が進んで行く。それと同時にゲートが割り振られていく。しばらくして、受験者全員に巻物が配られるのを見計らい、アンコが指示を出す。

 

「皆、担当の者についてそれぞれゲートへ移動!これより30分後に一斉にスタートする!」

 

+++

 

38番ゲートで待っていると遠くの方からアンコの声が聞こえた。

 

「これより中忍選抜第二の試験!開始!」

 

さぁ、時間だ。カブトとミスミを連れ、森へと跳び込む。

暗躍…。

ここからはお遊びは控えなくちゃならない。木ノ葉崩しの前にやるべきことがある。その為にも…。

…今は巻物を2つ奪取しなければ。アンコめ、覚えていろ。今度、椅子に縛り付けて激辛カレーを食わせてやるからな!

アンコの半泣きの様子を想像して少し興奮したのはここだけの秘密である。


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