一流の銅ヤロー   作:クロム・ウェルハーツ

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@24 悲しき報せ…!!

リンの殉職。霧の暗部などの実力者の排除、俺たちとは別行動していたガイの班の忍刀七人衆との戦闘、さらに援軍として駆け付けたマイト・ダイの殉職。そして、三尾の殺害。

 

「報告は以上になります。」

 

薄暗い部屋で顔の右側をまるまる包帯で覆った男にリンの奪還任務の一部始終を報告した。

勘のいい方は解るだろう。この男というのはもちろんダンゾウ様だ。

夜に蝋燭一本で部屋を照らすのが最近の女子のトレンドらしいが、ダンゾウ様の部屋も蝋燭一本しか光源がない。ナルトスではこの人、お色気の術とか言って口紅を塗った姿を披露していたけど、それもあながち間違いじゃないのかもしれない。

 

「霧からしたら三尾を消され、更に霧の暗部を多く失わせる結果になった。その上、忍刀七人衆の崩壊まで…。木ノ葉にとっては上手く行きすぎているように感じるな。」

「そうですね。ガイのお父さんに忍刀七人衆が退けられたというのは驚きました。あの人、万年下忍って言われてバカにされていたことが記憶に残っているんですが。一人で忍刀七人衆を四人も殺すことができるなんて、すばらしい成果ですし。けど、まぁ、ここまでの戦果を叩き出せたのは俺たちが強かったってことでいいんじゃないんですか?」

「確かにお前らは強い。…それが原因の一つとは言えるが。」

 

ダンゾウ様が言葉に詰まる。気になり続きを促す。

 

「他にも原因があると?」

「四代目水影の遣り口はワシと似通っていた部分があってな。」

「ああ、どちらもゲスってことは共通してますね。」

「お前、今日から三か月減給。」

「ちょっ!嘘ですって!嘘!USO、ウソ!ダンゾウ様の方が四代目水影よりも数段凄いですから!」

「ほぅ。ワシの方がゲスさでは数段上とお前は言いたいのだな?」

「ちゃいます、ちゃいます!それは言葉の綾ですってば!ダンゾウ様の方が為政者として素晴らしい人物って言いたかったんですよ!」

「冗談はこれくらいにしておこう。」

 

…冗談かよ。慌てて減給を回避しようとした俺の努力を返せ、コノヤロー!

 

「今回のことは四代目水影にしては作戦が余りにも稚拙に感じる。何か別の意図があったのではないかと考えてしまう程にな。」

「別の意図?」

「何かは判断できん。だが、警戒を怠る訳にはいかぬな。」

 

ダンゾウ様は一度頷き、俺に視線を向ける。

 

「お前はもう行っていいぞ。この件は他の奴に調べさせる。」

 

部屋から出ていくダンゾウ様を見る。

やっぱり、あんた、火影に向いてないよ。上に立つ者は下の者に本心からではなくとも、気を使った素振りをした方が信頼関係を結ぶのに一役買うっていうのに。俺に着いて来い、あと質問は受け付けない、黙って従えっていう昭和のガンコ親父はもう古い。

それなのにあんたは…。

部下の苦しみも知らず、部下の悲しみも知らず、挙句の果てには部下の死さえも興味がないと来た。そうじゃねぇだろ、火影って言うのは!

蝋燭の火を見つめ独りごちる。

 

「だからっつっても何をする訳でもねぇんだが…。」

 

ああ。結局、一番ズルいのは俺か。

仲間を救うことも出来ず、仲間が闇に落ちていくのを見捨て、仲間である上司の遣り方が気に食わないと言って。

俺の気持ちに同調しているようにゆらめく蝋燭の火を手に取る。それをじっと見つめ、そして吹き消す。暗闇に落ちたダンゾウ様の執務室から退室し、これからの為の布石を受け取りに行く。

地上に出てしばらく歩き、ある建物の地下へと降りていく。

俺の中のチャクラがピクリと震えるが無理もないだろう。自分が拷問を受けた場所に好き好んで入ろうという物好きはいない。心の中で橙ツチに謝る。

木ノ葉暗部・拷問尋問部隊詰所。

俺が初めて人を殺した場所だ。尤も、目的の部屋は違うが。

 

「ちゃーっす。」

 

扉を開きながら声を掛ける。

 

「君か。大蛇丸様の使いかい?」

「まぁ、そんなとこです。藍とかいう霧の忍の尋問は終わりましたか?」

「ああ。ペラペラしゃべったから随分と楽な仕事だったよ。ただチャクラを感知しながら話を聞くだけだったからな。」

 

気さくに話してくれたこの男性は尋問部に所属している特別上忍だ。大蛇丸様の実験体が不足した時はここの尋問部が取り調べをし終わった人間を時々連れて行く裏取引がされているから、お使いとしてここに来る内に仲良くなった人だ。

 

「それはよかったじゃないですか。あ、これ、差し入れです。」

 

ここに来る途中で買った煎餅、しかし、それは外側の袋だけでその中には金がたんまり入ったもの、を渡すと彼は笑顔を浮かべた。

 

「こらこら、賄賂はいかんなぁ。」

「いやいや、ほんの気持ちですって。で、藍は?」

「そうだな、案内しよう。」

 

鍵をチャラリと鳴らしてついて来いといった様子の彼に頷き、ほんの少し歩く。

 

「ここだ。」

 

ある独房の前で立ち止まり鍵を開ける。

 

「君ハ…助けに来てくれたのかネ?」

 

独房の中から声を掛けられる。

 

「まぁ、そんな感じです。あなたをここで死なすのは勿体無いですから。」

 

爽やかな微笑みで返す。仲間の仇である藍、リンを人柱力にした張本人に向かって手を伸ばす。

 

「あなたが必要なんです。協力してくれますね?」

 


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