一流の銅ヤロー   作:クロム・ウェルハーツ

22 / 122
@21 粉砕!!

「タイムリミットだ。」

 

木ノ葉、正門前。ガイ、ゲンマ、エビスの三人組(スリーマンセル)。そして、カカシ、シスイ、俺の三人組(スリーマンセル)。

 

「これからリンの奪還任務を行う。質問があれば今の内に聞いてくれ。」

 

上忍となったカカシの質問に答える者はいない。簡潔かつ的確なカカシの指示に皆、納得したからだ。流石は同期の中で一番の出世頭。大した奴だ。

 

「質問はないみたいだな。なら、行くぞ。」

『おう!』

 

待ってろ、リン。そして…オビト。すぐに助けに行く。

 

+++

 

霧隠れの里。他国との交流がほとんど無く、その実態は文字通り“霧”に包まれている閉鎖的な里だ。そこで行われている実験も非人道的なものが多いらしい。…とはいえ、幼気な子どもを誘拐して人体実験をする大蛇丸様にはとてもじゃないが勝てないとは思うが。

そんな霧隠れの非人道的な実験の一つが三尾を人の体に封印するというものだ。人柱力を作り出す為の実験の成功率はどこの里でも限りなく低い。

けど、このことを知っているのは過去に未来の情報、つまり、前世で原作を読んだ俺ぐらいしか知らない。カカシ他5名はなぜリンが霧隠れに狙われたかも知らない。

しかし、理由などなくても仲間の危機には駆け付けるのが木ノ葉流である。リンは木ノ葉の仲間で俺の計画にとっても重要な位置を占めている。保険は掛けているとは言え、死なせないのがベストだ。

カカシがハンドシグナルで止まるように促す。別の事を考えていてもこれまでの任務で体に染みついた反応はいつも通りの行動を示す。カカシの隣に降り立ち、辺りの様子を窺う。

 

「ヨロイ。感知を頼む。」

「ああ。カカシの予想通りあの小屋にいる。」

 

霧に包まれた森の中に円状に開けた広場があった。その中心には最近建てられたような妙に新しい小屋がある。その中からリンのチャクラが微かに感じ取れた。そこに居ると見て間違いないだろう。ああ、それと…。

 

「ここはゲンマ班に任せていいか?」

「ああ。後始末は俺たちがしておく。」

 

ゲンマが頷いた瞬間、ゲンマの体が袈裟懸けに切られる。

 

「分身か。小癪なマネを。」

 

ゲンマの分身体を切りながら地面に着地した影が言葉を放つ。白の地に細い目の穴。そして赤い独特の文様の仮面。霧隠れの追い忍部隊だろう。に、してもすでに追い忍を使っているってことは死体を木ノ葉に何が何でも渡さないってことだろうな。木ノ葉で三尾を暴走させた後の証拠、つまり尾獣が抜け出た後のリンの死体を回収、または処理するために出張ってきているってことか。厄介過ぎる程に厄介な。

 

「テメェら…殺すぞ。」

 

静かに、しかし明確な殺意を持って霧隠れの追い忍は言う。

そもそも、追い忍部隊は暗部の中でも医療、特に人体構造や隠密行動に秀でた者しかなれないという特徴がある。人体構造を修めなくちゃならない理由は死体処理の為。どの筋肉の繊維を切ってバラバラにするかって話は人体の知識がなくちゃスムーズにはいかない。ま、これは今、俺たちにとって重要じゃないから置いておく。

で、隠密行動に秀でた者しかなれない理由。それが抜け忍を始末するために相手に気付かれることなく殺害する能力が必要不可欠ってこと。ここ重要。つまり、今、俺たちの前に立っているダセー面をつけたお面ヤローは…ちょー強いってことだ。

 

「まずはテメェだ。黒レンズ。」

「…ああ、俺か?でもエビスも黒レンズだしなぁ。誰を呼んでいるかわからなくなるから被ってる特徴で呼ぶなよ、バカヤロー。」

 

追い忍さん、これからは略しておにーさんと呼ぶことにしよう。おにーさんが鋭い目で睨んでくる。せっかく爽やかな笑顔で言ってあげたというのに。

 

「ガキが…。血霧の里を嘗めるなよ!」

 

刀を構え俺に突っ込んで来るおにーさん。忍は常に冷静であるべきだと身を持っておしえてあげることにしよう。

 

「ガキと嘗めるのは…まぁ、いい。ホントはよくないけど。けど…木ノ葉を嘗めるなよ。」

「ハッ!木ノ葉の忍者ゴッコは笑うしかねぇよ。…!?」

「これ、なーんだ?」

「起爆札…。」

 

後ろ手に隠し持っていた起爆札を見せる。おにーさんの驚いた顔、仮面ごしだから俺が勝手にそう見えるだけだが、が閃光に包まれ一気に爆発する。爆発とともに5人の分身体は掻き消え、砂煙が周囲に蔓延する。

ややあって、ボフッという音と共に仮面を被った忍が砂煙の中から飛び出した。

 

「クソがっ!自爆か!?しかし…見直したぜ。仲間を守るために自爆するなんてなぁ。だが!俺は倒せてねぇ。…一人で地獄に行くのは寂しいだろう?だからよぉ。あと5人のお仲間もみーんな纏めて地獄に送ってやるから楽しみにしてなぁあはははは!」

「楽しくなってるとこ悪ぃ。ヨロイ…黒レンズ含めた3人はすでにあの小屋に向かった。あと、お前の体に毒のついた千本を刺した。」

 

砂煙が晴れ、姿を現したゲンマが呟く。

 

「ははははは…は?」

 

霧の追い忍は自分の足元を見る。サンダルから出ている足の親指。その極小のスペースにゲンマの言った通り千本が刺さっていた。彼は自分の体が倒れていくことに気づいた。

ああ、それで急に足元が見えたのか。

それが彼の最後の思考だった。

 

「…やれやれ。それにしてもヨロイくんの作戦には毎度驚かされますな。」

「全くだ。」

 

エビスの意見にゲンマが頷く。

 

「俺たちの本体の前に人数分の分身を用意して、その内のヨロイだけ影分身で闘い隙を見て本体の俺たちが攻撃する。…卑劣な作戦だな。」

「ええ。しかし、リンさんを誘拐した卑劣な方々には卑劣な作戦で貶めるのは効果的かと。それに、我々の被害はないですしね。それにしても、ゲンマくん。千本吹き、お見事でした。」

「そりゃ、どうも。エビス先生。」

「なぁ。」

「いやですね、先生などと。しかし、先生ですか。それもエリートである私には相応しいかもしれませんな。」

「おい。」

「ああ、かもな。」

「話を…。」

「そうでしょうとも!エリートであるこの私にかかれば生徒は火影候補に…。私の袖を引っ張るなんて、どうかしましたか?ガイくん?」

「…俺の活躍はないのか?」

「…。」

「…。」

「…俺の活躍は?血沸き肉躍る忍活劇はどこにいったというのだ?」

 

ガイの疑問を受け、沈黙が広がる。

 

「出番を!出番をくれぇ!」

「…これから、あると思うぞ、多分。」

「ええ、そうでしょうとも、多分。」

 

これから出番と言える程の出来事がないことを望んでいるということはガイに言えないゲンマとエビスであった。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。