一流の銅ヤロー   作:クロム・ウェルハーツ

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@14 今こそ…!!

中忍試験第三次個人戦。

中忍試験は佳境に入り、試験会場を『死の森』中央の建物に移す。

試験とは言っていても、これが殺し合い、つまり実戦を想定しているのはこれまでの一次、二次試験からわかる。その中でもまた異質であるこの三次試験。手の内を知り尽くした相手と闘うことはそうないだろう。

 

「第一回戦、うちはシスイ 対 赤胴ヨロイ…開始!」

 

試験官の合図とともにクナイをポーチから引き抜く。

まさか、お前とやることになるとは。…シスイ。柔らかく黒い髪が空に散る。

静かに落ちる黒髪。それと、首元に冷たい感触があった。

 

「ヨロイ。俺はお前に勝ちたい。」

 

シスイは俺の首に当てたクナイを躊躇わずに引いた。煙が上がり、今しがたシスイが倒した俺の影分身が消える。

 

「本気で来い!」

 

シスイの黒い目が俺を刺す。…お前は本気なんだな。

両手を合わせ集中する。体の中の流れを右に高速で回転させる。体の中から外に向かってチャクラが噴き出すと同時に俺の周りの空気が圧し出される。今度は空気の流れに弄られるようにシスイの髪が左右に揺れる。

 

「…行くぞ。」

 

地面を蹴り飛ばすようにしてシスイに向かって走り出す。白黒はっきりつけようぜ、シスイ!

 

 

 

チャクラを纏いシスイに向かって行ったが、俺の動きを読んでいたのかシスイはギリギリで俺の攻撃を躱し更に蹴りを入れてくる。しかし、チャクラで床に吸着することで急ブレーキをかけた俺を飛ばすには威力が足りない。シスイに蹴られた腹の痛みを堪え、更にチャクラを練り込む。

 

「水遁 破奔流!」

 

手の平から水鉄砲のように水流がシスイに向かって行く。しかし、流石はシスイ。上手く掻い潜ってくる。…大した奴だ。

術を止め、印を再び組む。しかし、術の発動までの少しの時間をシスイは見逃さなかった。

 

「火遁 豪火球の術!」

 

シスイの口から炎が噴き出す。

 

「…それ中忍レベルの術のハズなんですけど!」

 

逃げるために一旦距離を取りつつも印を組むのは忘れない。

 

「口寄せの術!ガマケンさん、油お願いします!」

 

蛙を口寄せし、シスイに向かって蝦蟇の油を吐き出させる。シスイの術で燻っていた炎が再び勢いをつけて燃え上がる。

 

「ふんっ!」

 

視界が炎で塞がれたのを見たシスイは遠距離から手裏剣を投げてくる。ガマケンさんの上に乗っている俺を狙った手裏剣だが、ガマケンさんが刺又でそれを弾く。しかし、それを掻い潜って、いや、正確にはガマケンさんのミスで俺に当たりそうになる。

 

「なんの!」

 

ガマケンさんの背中から転がり落ちることで事なきを得る。ちなみに、このころのガマケンさんの大きさは体長2~3mほどであり原作で出てきた時のような大きさではないのが助かった。原作の時の大きさだったなら、きっと骨の一本や二本は折れていたに違いない。

 

「ガマケンさん!しっかり弾いてよ!」

「…自分、不器用なもんで。」

「もう。仕方ないなぁ。」

 

パチパチと爆ぜている炎とガマケンさんを盾にしつつ印を組んでいく。術を完成させ、ガマケンさんの前に出た俺はシスイに向かって宣言する。

 

「さて、シスイ。これから1ターンでお前を沈める。しかも、絶望的な負け方でなぁ!もう女の子にモテへんぞ、貴様!」

 

少し言葉遣いが悪いがそれはご愛嬌だ。

 

「ガマケンさんは下がっていてくれ。これからはシスイと1対1で闘いたい。」

 

ボンッという音と共にガマケンさんの姿が消える。ちょうど炎も鎮まってきており、お互いの姿を視認することができるようになった。シスイは俺しか見えていないだろう。相変わらずクールぶっていて嫌味な奴だ。子どもらしくない。

そして、その後ろに寅の印をした俺の水分身がいる。…これで詰みだ。

ガマケンさんの後ろに隠れて結んだ印は水分身の術だ。破奔流でシスイの後ろにできた水たまりを利用して水分身体を作り気配を殺し潜ませて置く。自来也様直伝の透遁術が役に立った。そして本体の俺に注意を向けさせることで後ろの気配から注意を逸らす。…完璧だ。後は仕上げのみ!

 

「シスイ。これで終わりだぁあ!」

 

本体の俺の声に反応して水分身が動く。シスイは気づいていない。行ける!

 

「木ノ葉隠れ秘伝体術奥義 千年殺し!」

 

シスイのケツの穴に吸い込まれるように思われた水分身の指は丸太に深く突き刺さった。

 

「なっ!変わり身のじゅヅゲラァ!」

 

驚いた瞬間、頭の上から鋭い衝撃が顎の方に向かって抜けて行った。

地面と口づけを交す俺に、上空に跳んで勢いを付けた踵落としを決めたシスイの声が上から落ちてくる。

 

「そうくると思ったよ。」

「勝者 うちはシスイ!」

 

屈辱的なシスイの言葉を最後に俺の意識は黒に塗りつぶされていった。

 

 

 

「…ここは?」

「気づいた?」

「シスイ…。」

 

目が覚めた俺の目に映ったのは湿布を頬に張ったシスイの顔だった。

 

「ごめん、俺も負けた。」

「うんにゃ、俺に謝る必要はないよ。で、一体誰に?」

「カカシさん。」

「それは仕方ない。カカシは強いからなぁ。」

「まぁ、ね。それでも勝てると思ったのに。そういえば、これからカカシさんとガイさんの試合だけど見る?立てなかったら手を貸すよ。」

「ありがと。」

 

シスイの手をとり起き上がる。体育館の二階部分のような観覧者席のフェンスにもたれ掛って試合を見る。試合内容は体術がメインで接戦になっている。

 

「ヨロイ、おはよう。」

「嫌味にしか聞こえねぇな、エノキ。」

「そんなことないよ。ヨロイでも落ち込むことがあるんだなって思って。」

 

シスイを挟んで隣にいるエノキが声をかけてくる。

 

「そりゃ、俺だって落ち込むことはあるよ。せっかく勝てそうな作戦を練っていたのに見破られるなんて予想もしてなかった。」

「私もヨロイの闘い方は予想できたよ。」

「へ?」

「私たち、チームで一年間やってきたからなんとなくヨロイがしそうなことが予測できるようになったんだ。それで水分身を仕込むタイミングがシスイにバレたんだと思うよ。」

「シスイ、マジで?」

「ああ。千年殺しをしてくることも予想ができた。」

「…マジかよ。」

 

シスイはニヤッと笑って俺に視線を合わせる。

 

「これからは部下になってもらおうかな。」

 

そんなことをほざくシスイであったが、今回の中忍試験で同期の中から中忍になったのはカカシ一名だった。

中忍試験が終わった後に、このセリフでシスイをからかったのはいうまでもないことである。

 


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