一流の銅ヤロー   作:クロム・ウェルハーツ

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@114 忍び舞う者たち 其の伍

掌を合わせる。

 

「口寄せの術。」

 

煙と共に大量の獣たちが現れた。牛やペリカン、犬など輪廻眼の瞳術に縛られた獣たちを忍連合軍に向かって解き放つ。後ろは口寄せ生物たちに任せ、俺は地面を蹴り自分の体を浮かび上がらせる。それと同時に、死んだ時に解けてしまった六道仙人モードを発現させ、求道玉を手に携える。

黒ゼツのことだ。すぐに体勢を整えて、尾獣たちに反撃をするだろう。その時に、尾獣たちのコントロール権を取り戻すに違いない。正面からの戦闘で尾獣を処分するよりも、幻術などで自分の支配下に置く方が数段楽だ。そして、そのための手段を黒ゼツは持っている。

 

「影分身の術!」

 

隣に現れた影分身二体を尾獣たちのサポートに向かわせる。これなら、黒ゼツが切り札を切ったとしても尾獣たちと連携して仕留めることができるハズだ。

 

「やっぱり出してきたな。」

 

青色の巨大な天狗と、それと同じぐらいに巨大な仏像が一瞬にして尾獣たちに前に立ち塞がった。

状況が俺に傾いたせいで黒ゼツも形振り構っていられなくなったようだ。尾獣たちと同時に、俺へと四方から忍たちが襲い掛かってきた。忍たちに向けて求道玉を針状にしながら、三代目風影の砂鉄界法に似た形で周りへと展開する。大きく拡がった求道玉は多くの忍の息の根を止める。

これで、隙ができた。

枝のように拡がった求道玉の隙間から尾獣たちがマダラと初代火影と戦っている光景に目を向ける。

構築。掌の上に万物創造の術で創り出したミスティッカーを一度なぞり、修羅道の力で呼び出したボウガンの矢にミスティッカーを刺さらせる。名称不明のこのミスティッカー。しかし、その能力は絶大。

ボウガンの引き金を引き、矢を放つ。放たれた矢は尾獣たちと戦う初代火影に向かって飛んでいき、その肩に突き刺さった。修羅道の力で呼び出したボウガンは通常のそれと比べて、射出速度が段違いだ。それこそ、目の前の光景が証明するように、忍の神と謳われた千手柱間でさえも戦闘中であれば避けることができない程度には、他と比べて性能がいい。

 

「修羅道 口寄せ 極楽の匣。」

 

求道玉が元の形を取り戻す中、俺の後ろに現れた醜悪な顔が刻まれた立方体。そして、初代火影に張り付いたミスティッカーが彼の体を消していく。初代火影に刺した矢についていたミスティッカーの能力は貼り付けた者を別の場所にワープさせるというもの。ブレイザードライブでは、ここからストーリーが始まったが、まぁ、この話はいいだろう。

重要なことは初代火影が戦場から、予め設定していた極楽の匣の中へと移動したという事実。俺はその場から素早く距離を取る。

極楽の匣がゆっくりと開いていく。この匣は神代の時代、六道仙人である大筒木ハゴロモが修羅道の力で別の時空へと送ったもの。別の時空を開く鍵は輪廻眼だけであり、取り出すことができる者は限られる。

そして、その六道仙人がそこまでして人の手に渡らないようにした極楽の匣は危険な兵器だ。匣が取り込んだ人間の組成を変化させ、黒いバケモノへと変貌させる。そして、そのバケモノであるサトリは超強い。仙人モードのナルトをも殺すことのできる強さ。つまり、ここにいるほとんどの忍はこのサトリに対抗することはできないだろう。そして、対抗できそうな初代火影を餌にした。サトリの核に加え、人柱力並みの彼のチャクラは大量のチャクラを必要とする極楽の匣の必要量に達していた。

 

「やっちゃえ、バーサーカー。」

 

黒いバケモノが極楽の匣から出てくると、雄叫びをあげて目に付いた忍を手当たり次第に襲う。

狂戦士(バーサーカー)と同じようにサトリには理性というものはない。有るのは破壊願望だけ。自らを増殖するという目的もあるにはあるが、それは破壊をより効率的に行うための本能によるものだ。そして、それは俺にとって都合がいい。

周り全てが敵である状況。主人というものを認識できないサトリが俺に襲い掛かってくる確率が大幅に下がる。

と、目の端に二人の忍が入った。

 

「先にアナタたちを始末させて貰います。……三代目様、ダンゾウ様。」

 

瞬身の術でサトリの方に向かおうとしていた三代目火影とダンゾウ様の前に躍り出る。

もの言わぬ人形に言っても虚しいだけだと分かってはいるが、声を掛けずにはいられなかった。

三代目が印を組むと、俺たちを囲むように土壁が一瞬でできた。そして、狭い空間の中をクナイに風のチャクラを纏わせながらダンゾウ様が俺へと向かって来る。態々、チャクラの性質変化を使った攻撃をするということは……。

上に向かって跳び上がる。

 

「つまり、そういうことだろ?」

 

地面から顔を出した大蛇丸様が居た。既に外導ノ印の効果範囲対象の外にいる。このまま求道玉を炸裂させてやれば、大蛇丸様を倒すことができる。

しかし、そうは問屋が卸さなかった。

 

「グッ!」

 

背中に衝撃が走り、俺の体はその場から大きく吹き飛ばされた。吐血しながらも、頭を回すことは止めない。

三代目火影の土遁 土流壁の上に人間を仕込んでいたのだろう。そして、餓鬼道を使い続けていた俺に当てることができた攻撃から体術だと推測できる。しかし、これほどの体術使いは知らない。ガイはここから消えたし、リーではこれほどのダメージを俺に与えることはできない。

地面に降り立った瞬間、腹に衝撃が走った。再び大きく吹き飛ばされるが、下手人の顔を確認することができた。うちはヤシロ。俺が万華鏡写輪眼を無理矢理、覚醒させた内の一人だ。

 

「にゃろう……。」

 

通りでここまでの力を持っている訳だ。ヤシロさんの万華鏡写輪眼の瞳術は、梟師(タケル)。攻撃と防御という概念に作用し、その瞳に捉えた対象を強化する瞳術だ。梟師を自分自身に掛けて自己強化を行ったという所か。これじゃ、求道玉の全てを塵にする攻撃も効かない。しかし、その効果は一分間のみ。一分の間、ヤシロさんから逃げ続ければ俺の攻撃が入るようになる。

 

「まぁ、そこを見逃すような甘い奴じゃねェよな。」

 

突如、俺の後ろに溶岩の巨人が現れた。その横には、サスケとイタチの母であるうちはミコトの姿があった。その上、ミコトさんの体を黄色のチャクラが包み込む。須佐能乎とかもう笑えない。追い打ちを掛けるように俺の横に現れたイタチとその父、フガクも須佐能乎を展開した。親子三人の須佐能乎に加えて、球磨囎(クマソ)も俺に襲い掛かってくる。

 

「神羅天征!」

 

神羅天征のインターバルをヤシロさんが体術で攻めるんだろ?

求道玉を前方に展開する。しかし、来ると思っていた衝撃が来ない。何故だ?

 

「アグッ!?」

 

横からの衝撃でまた吹き飛ばされる。今の衝撃は一点に集中する攻撃じゃない。体全体を包み込むような、例えるなら、トラックに跳ね飛ばされたような……そんな衝撃。

横を見遣る。

 

「日向……ヒアシィ!」

 

それと日向ヒザシ。同じ顔の人間が並んで手を突き出している。八卦空壁掌を俺に向けて撃ったのだろう。柔拳による空気砲。確かに、その攻撃なら風遁とは違い、餓鬼道の力でも無効化できない。

 

「ッ!」

 

体が地面に叩きつけられ、無様に転がる。このまま寝転んでいたいが、このままでは間違いなく死ぬ。痛む体を無理矢理起こし、その場から飛び退くと地面が大きく陥没した。ヤシロさんめ。強すぎる。

 

「クッ!」

 

隣で振られた金剛如意を躱し、俺に向かって放たれたクナイをチャクラの鎧で防ぐ。

求道玉を一つ足元に置き、天道の力で飛び立ちながらその場から離れる。十分な距離を稼いだ所で爆発が起きたが、彼らのチャクラは消えていない。だが、これで止めを刺す。俺は足で地面を削りながら印を組み上げた。

 

「仙法 嵐遁光牙!」

 

俺の口から出たレーザーが爆発で持ち上げられた土煙の中に居たチャクラを消していく。が、突然、隆起した土の手によって術を発動した隙を捕らえられた。

この速度、ただの土遁の術じゃない。それに、地面に巻き付いた木が俺のチャクラを吸収していることで餓鬼道の力も用を成さない。原因を探るために感知を拡げる。このチャクラ……カブトか。

カブトの仙法 無機転生で地面を操り、テンゾウの木遁 木龍の術で俺の力を阻害する。

神羅天征で俺の拘束を吹き飛ばす。が、それを待っていたと言わんばかりに俺の体にチャクラ糸が巻き付いた。大方、サソリだろう。

引き上げられる糸に引かれ、体が空に浮かぶ。このまま引かれたらサソリの元とはいかないまでも、その近くまで行くことができるハズだ。そこでサソリにカウンターを喰らわせる。

だが、空に浮かぶ影に気が付いた。

 

「クソッ!」

 

チャクラ糸を吸収することで断ち切り、慌てて求道玉を球状にする。外で巨大な爆音が轟いた。一瞬見えたあの独特のフォルム。デイダラの十八番(オハコ)だ。外の安全を確認するために、チャクラの感知を行う。十八番の爆発に巻き込まれた忍たちのチャクラは消失したか、その他は微弱な反応。お、マダラのチャクラの反応もない。その代わり尾獣たちのチャクラもサトリのチャクラも消えてしまったが、それだけの犠牲でマダラを倒せたのは大きい成果だ。……行ける。

形態変化できる制限時間が終わり、球状になった求道玉が解かれる。C4カルラは俺の体質上、無効化できるものの、その他が厄介だ。上にいるデイダラを見て、俺は考えを巡らせる。と、デイダラの体が薄くなっていくのに気が付いた。

 

「C0かよ。」

 

求道玉の形態変化の持続時間は約40秒。そして、リキャストできるのは約10秒後。間に会わない。それに、チャクラを元にした爆発は餓鬼道で無効化できるものの、爆発により生じた爆風までは無効化できない。そして、神羅天征でC0の威力を吹き飛ばすには大量のチャクラ、それこそ、長門のペインが木ノ葉の里を吹き飛ばすほどのチャクラが必要だ。だが、今の俺にはそれほどのチャクラは残っていない。

だから、避けられない。死んで次に挽回しよう。そう考えた俺がデイダラの自爆に付き合うと黒ゼツは思ったのだろうが……。

 

「甘い。」

 

目の前が煙に包まれた。口寄せの術特有の煙だ。先ほど呼び出した俺の口寄せ動物に逆口寄せを使わせることでデイダラの爆破の範囲から逃れたという訳だ。

裏拳で背後から攻撃を仕掛けてきた木ノ葉の鎌野サイスを沈める。彼の手から鎖鎌を奪いながら、後ろに倒れ込むサイスの首を掻き切り、俺へと向かって来ていたイズモに鎖鎌の分銅を投げつける。

前後から刀を振りかぶった雲のジェイとケーの手を掴み、体を回転させて左右から向かって来ていた三代目雷影と四代目雷影の攻撃の盾にする。彼らの追撃から逃れるために宙に浮くと、回転する人間たちが俺へと向かって来ていた。犬塚一族の攻撃だ。

 

「神羅天征!」

 

犬塚一族の攻撃を吹き飛ばすと共に、動きが止まった三代目雷影と四代目雷影に向かって、棒状にした求道玉で彼らの体を切り裂く。雷遁影分身の可能性も考え、求道玉を直接、手に持つことはしなかったが、それは杞憂だった。空に融けていく二人の体を見送り、ついでに、ジェイとケーにも止めを刺しながら周りを見渡す。

十重二重に囲む忍たちが見えた。彼らが一斉に動き出す。俺の周りに数多くの武器が現れる。万物創造の術だ。

奴らは全員体術のみで向かって来る事は分かっている。チャクラ量が少ない俺に対して数で攻めるのは有効な手段だ。強者の節約にもなるし。だが、そう易々と殺されるのは認められない。

 

「ハッ!」

 

地面に突き刺さった剣を掴み、忍たちへと駆ける。チャクラ感知を狭め、一つ一つの動きを細かく見極め、隙を見逃さず何人かの忍を斬り倒し、その場から移動。そして、再び囲まれた所で同じように忍たちを斬る。

斬る離れる斬る離れる斬る離れる斬る離れる斬る離れる斬る離れる。一旦、受け止め、また斬る。

 

+++

 

着実に黒ゼツの持ち駒を減らしていくなか、避けきれず受け止められない攻撃が俺の体に入り、命を奪う。地獄道の力で復活して戦場に舞い戻り、また殺す。

長十郎のヒラメカレイに斬られ、黒ツチの拳岩の術で殴り飛ばされ、ダルイの鉈で腕を斬り飛ばされ、カブトの外導ノ印で血継限界を封じられたと思ったら、水影様の溶遁で溶かされ、土影様の塵遁で塵にされ、綱手様の拳で体が泣き別れになり、シカマルの影に捕まり、チョウジの体に圧し潰され、いのの毒を持つ忍具を体に突き立てられ、ヒナタの柔拳で点穴を突かれ、キバの回転に体を削られ、シノの蟲にチャクラを喰われ、リーの朝孔雀に打ちのめされ、テンテンの大量の忍具で数多くの裂傷を負い、ネジの攻撃で内臓をやられ、サイが創り出した墨の動物たちに体を引きちぎられ……その他にも数多くの忍が俺の命の火を消そうと攻撃を仕掛けてくる。

その度に生き返り、反撃して相手を倒しの繰り返し。途中で喰らったイタチの月読で精神が壊れるかと思ったが、それでも戦闘を続けることができた自分の精神の図太さに感謝する。その後で喰らったフガクさんの月読で体が動かなくなり、生き返った後も体が動かなくて四回ほど殺されたから、求道玉を炸裂させて俺諸共死んで貰った。

その他にも、殺し殺され殺し……。

 

何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も。

 

術を、技を、今までの経験を乗せ、殺し。

 

何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も。

 

チャクラを、体力を、精神力を総動員して、殺し。

 

何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も。

 

魂を、命を、燃やし尽くして、殺され。

 

何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も。

 

今と同じように相手と刀を刺し合った。

目の前の人物が消えていく。

 

「さよなら、大蛇丸様。」

 

周りに突き立てられた刀やクナイなどの森の中、今居る最後の一人の姿が完全に消えた。

 


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