一流の銅ヤロー   作:クロム・ウェルハーツ

115 / 122
注意!オリ忍術あります。


@112 忍び舞う者たち 其の参

頭に迫る刃。そして、輪廻眼は外導ノ印 封で封じられている。

だが……。

 

「ラァ!」

 

血継限界でないチャクラの鎧は封じることはできていない。

チャクラを形態変化させた腕を地面から相手に向かって突き出す双邪至が大蛇丸様の体を腰から泣き別れにさせた。大蛇丸様が吹き飛んでいくが彼のことだ。死んでくれちゃいないだろう。背中のチャクラの鎧を使って作り出した二本のチャクラの手で床から自分の体を持ち上げる。

大蛇丸様から距離を取るため、チャクラで出来た腕を動かして地面を弾くと、遠くの方で赤いチャクラが吹き上がるのが目に入った。間違いなく喰らったらヤバイ代物だ。

素早く印を組み、外導ノ印 解で輪廻眼を開放させる。続いて、六道仙人モードとなって陣羽織を纏いつつ、前方に求道玉を展開して前からの攻撃に備えた。

 

「ッ!」

 

一拍置いて、衝撃波が盾とした求道玉を襲う。重い。まるで、近距離から大砲に撃たれたかのような衝撃。これほどまでの忍術を一体誰が?

感知に一人の人物が引っかかった。

 

「ガイッ!?」

 

そうか!風の性質の術を発動し続けている訳ではなく、ただの体術での攻撃。それなら、求道玉でも掻き消されない一回の攻撃で俺の動きを止めつつ、相手は移動できる。

ガイの次の攻撃が来る前に求道玉の形を変え、自分の周りを球状に覆わせる。暗く閉じた空間の外から轟音が轟いているが、今の所、壊されている様子はない。この間に善後策を練るべきだな。

先ほど見えた赤いチャクラだと思っていたのは、ガイの八門遁甲の陣を開放した血の蒸気に間違いない。ガイの姿は見えていないが、感知に引っかかったガイのチャクラと求道玉に当たる強い衝撃から死門まで開いていると考えていいだろう。

さて、八門遁甲の陣を開放した体術主体の忍とどう戦うか……。

 

「ん?」

 

光が差した。閉じたハズの求道玉に差し込む光と共に、それを打ち破った木遁が俺の体を拘束する。木遁 木龍の術だ。目線を下げていくと、印を組んでいた初代火影の姿があった。そして、その横には初代火影と並び称されるうちはマダラの姿も。

マダラの体は俺がこの世から消したのにも関わらず、黒ゼツは一体、どうやって……そうか、カブトから奪った巻物にマダラの遺体が封じられていて輪廻天生で復活した後に無限月読に掛けたのなら、今の状況に説明がつく。

そして、黒ゼツが初代火影と共にマダラを繰り出した理由。それが、マダラが今し方、口から吐き出した炎が理由だろう。初代火影の仙術の木龍の術で求道玉を吸い取りつつ、俺を拘束し、そして、チャクラを吸う性質で以って俺の餓鬼道を無効化した隙にマダラの火遁を当てる腹積もりか。

迫る炎を見据え、天道の力を開放する。

 

「神羅天征。」

 

俺を捕まえていた木と目の前の炎を神羅天征で吹き飛ばす。反撃をしようと前傾体勢を取った瞬間、目の端に赤い龍が空間を捻じ曲げ、俺に迫っているのに気が付いた。

 

「まさかッ!?」

 

俺がガイから初代火影とマダラに視線を移した一秒にも満たない隙を狙って……。

血の蒸気の熱で炭化していくガイの足が右胸に当たる。

 

「クッ!」

 

夜ガイで吹き飛ばされた俺の体は地面へと叩きつけられる。これほどの高威力の攻撃でも意識を失わない俺の体に呆れつつも、ガイの攻撃が当たった箇所を見遣る。

俺の右半身が抉り取られていた。右胸の周りが円状に無くなっており、患部は熱で焼け爛れている。脳が感じる痛みのキャパシティを超えているらしく何も感じられない。声を出そうにも、喉までガイの攻撃は達しており、口からは血が漏れるだけだった。致命傷を受けた俺の体は動かそうにも動かず、そのまま瞼が落ちて視界が黒くなる。

 

「ガイのヤロー。……一回、死んだぞ。」

 

痛みが無くなったのを感じ、瞼を上げながら左腕に修羅道の力を纏わせて、それを前に向かって突き出す。

地獄道の閻魔の口が開いたと同時に修羅道の力を開放する。

 

御倉板挙(ミクラタナ)ッ!」

 

極太のレーザー光線が初代火影とマダラを襲うが彼ら二人はそれぞれの防御忍術で俺の攻撃を防いだ。

そのまま追撃したかったが、これ以上は無理だ。

上から降ってきた傀儡の攻撃を大きく距離を取って躱すが、着地した所にいた忍たちが待っていたと言わんばかりに体術で攻めてくる。

それをカウンターで潰していくと、黒ゼツの声が遠くから聞こえた。

 

「地獄道を予めセットして置いたのか。自分が致命傷を負えば、その瞬間、自動的に地獄道の力が発現し、傷を治すといったように。なるほど、これは厄介だ。だが、それはいつまで持つ?」

「……。」

 

黒ゼツの言葉に俺は何も答えない。奴に情報を与えるのが癪だし、今は右から左から、後ろから前から俺の命を奪おうと振られるクナイや刀を避けるのに忙しく、黒ゼツと話す時間もない。カウンタ―で螺旋丸を当て何人かの忍を吹き飛ばすが、空いた場所にはすぐさま別の忍が入り込み、逃げ出すタイミングをなかなか掴めない。タイミングさえ合えば、俺に有利な状況を作れるというのに。

 

「地獄道の力は魂の力場の変換によって行われる。“生”というプラスのエネルギーを転換すると同時に“死”というマイナスのエネルギーを転換するという原理で蘇生が行われる。そうだろう、ヨロイ?」

 

何やら、黒ゼツが解説しているが、奴が操る忍たちは俺への攻撃の手は全く緩めない。

 

「そして、お前はストックしておいた生きた魂を使い、死んだ自分を復活させたのだろう?つまり、ストックしていた魂が尽きれば、お前は死ぬことになる。それまで、ゆっくりとお前の死に様を、お前の痛み嘆き苦しみを記録しよう。」

 

んッのクソヤローが!黒ゼツの嫌味な言葉が耳に入ってくるが、奴に向けて舌を出すこともできない状況。

頭を下げて岩を纏った拳、岩隠れの忍が使う拳岩の術を避ける。隙ができた岩隠れの忍の腹を蹴り飛ばして空間を開ける。

 

「水遁 爆水衝波!」

 

岩隠れの忍を蹴り飛ばして出来た空間。一瞬だけだったが、攻撃されない時間を作り出して印を組み、術を発動させる。口から大量の水を水遁で発生させ、周りを水浸しにして俺に有利な場にした。

 

「水遁 大瀑流。」

 

続けざまに印を組み、周りの忍たちを術で出した水の渦の中に引きずり込む。これで、少しはやり易くなったハズ……。

水遁系忍術を使いやすくした空間で次はどうやって攻めるべきか考えていると、足元が大きく揺れた。慌てて、空へと飛びあがる。

地面が俺の周りを囲むようにせり上がった。土遁 地動核だ。それに加えて、木遁で発生した木が土壁から生えて俺を捕まえようとその枝を伸ばす。だが、そのスピードは遅い。

先ほどの牽制の御倉板挙を初代火影は防いだように感じたが、少しダメージを与えられたのだろうか?それならば、この木遁の速さの低下も頷けるが……。

土遁と木遁で囲まれた空間から抜け出し、宙へと浮かぶ。下に目を凝らすと、テンゾウの姿が見えた。アイツも戦場に来ていたのか。

そして、先ほどの木遁はテンゾウの術だろう。木龍の術と比べて先ほどの樹界降誕は攻撃性が弱かった。初代火影とテンゾウの忍としての実力の差が顕著に出ている。テンゾウも厄介な存在ではあるが、彼よりも数段厄介さが上の初代火影とマダラを優先して倒すべきだろう。地動核で出来た壁を登ってきている雑兵は無視しても構わないだろう。変化している大蛇丸様が居たらマズイことになるが、感知しても大蛇丸様のチャクラは感じられないから大丈夫だろう。

 

「!?」

 

下に集中して上の感知が疎かになっていた。上から落ちてきた大量の砂が俺に纏わりつく。

既に我愛羅を上空に潜ませていたか。

 

「神羅天征!」

 

体の周りの砂を全て吹き飛ばし、我愛羅がいるであろう上空を見上げる。

 

「嘘だろ。」

 

そこには、俺に向かって落下している一尾の姿があった。更に最悪なことに、その口には黒い塊、尾獣玉まで準備している。

黒ゼツめ。一尾のチャクラと無限月読に掛けた我愛羅のチャクラを混ぜ合わせて、この精神世界で尾獣化できるようにしたのか。

一尾とはいえ尾獣玉の破壊規模は戦略級の兵器と同等。まともに喰らえば、命を一つ失うことにもなりかねない。

 

巴雅多(ともえがた)!」

 

神羅天征のインターバルの時間の中で俺が取れる最高峰の防衛術が求道玉を変化させた盾だ。五つの求道玉が写輪眼のような巴を描き、一つに集約する。前からの力を呪術的なアプローチで後ろへと受け流す仙術、巴雅多(ともえがた)だ。

上手く作用したそれは、俺の後ろに迫っていた忍たちを巻き込みながら尾獣玉の爆発を受け流す。このままでは、落ちてきている一尾の体術でダメージを負うだろうと考え、俺はその場から後ろに向かって宙を滑る。

と、またしても背中に砂が触れる感触がした。

 

「三代目風影ッ!」

 

これは砂鉄か。陣羽織で纏うチャクラの力が砂鉄に締め付けられる力から身を守っているが、抜け出せそうにはない。あと、2秒。

 

「ウッ!」

 

三代目風影が下に向かって手を振り下ろした。その動きに追随するように砂鉄が俺の体を地面へと猛烈な勢いで運ぶ。このままの速さで地面に叩きつけられると、頭がスイカ割りのスイカのようになってしまうな。まぁ、そんな心配はしなくてもいいが。それに、上手く行けば仕込める。

肩から形態変化させたチャクラの鎧を地面に向かって真っ直ぐ伸ばし衝撃を吸収する。顔の横のチャクラの鎧が膨らみながら落ちていく速度を落とし、完全に停止した所で力が戻った。

 

「神羅天征。」

 

纏わりつく砂鉄を吹き飛ばす。眼を細め、力を使う。

右手にチャクラを集める。陰のチャクラで骨子を設定、陽のチャクラでそれに形を与え構築する。

 

「クールボール。」

 

万物創造の術で磁力のエフェクトを持つオーパーツ、“クールボール”を創り出して後ろから迫っていた砂金に向けて射出する。クールボールには設定を弄って三から五代目風影のチャクラに反応するようにしている。そう、彼らが操る砂や砂鉄、砂金を全てクールボールに引き付けようという訳だ。

砂金を巻き込みながら四代目風影へとクールボールは向かうが、それは突如現れた竜巻によって防がれた。

テマリ率いる砂隠れの忍たちだ。その後ろに控えている忍を見て、素早く印を組む。

 

「畜生道 口寄せの術!」

 

煙と共に俺の傍からは黒い杭が刺さった動物たち、巨大なペリカン、牛、犬などが現れ、四代目風影の後ろにいたチヨとサソリの傍には大量の傀儡たちが現れた。

白秘技 十機近松の集と赤秘技 百機の操演の競演。サソリが傀儡の蠍を操っているというシュールな光景も合わさって笑え……ない。あれを正直に相手にしたくない。

飛雷神の術で逃げようと万物創造の術でマーキング付きのクナイを両手に作り出す。一本はここに刺し、このクナイに不用心に近づいた者を卑劣切りで殺すために、そして、もう一本はここから飛雷神の術を連続で使って離脱するために。

 

「カハッ!」

 

左手に持つクナイを地面に突き刺そうとした瞬間、胸に痛みが走った。ゆっくりと後ろを振り返る。

 

「……二代目火影ッ!」

 




巴雅多(ともえがた)
巴形銅器が元ネタ。盾の装飾品という説があるので採用。前からの攻撃を後ろに受け流す防御と攻撃が同時にできるとしている求道玉の応用術。オビトも盾を持っていたし、輪廻眼ならできるんじゃないかと考えた感じ。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。