膨大なチャクラが目の前の二人から噴き出し、それの形が変わっていく。九尾へと尾獣化したナルトのチャクラに、サスケは須佐能乎の紫のチャクラを纏わせる。
威装・須佐能乎。九尾の力と須佐能乎の力。そして、ナルトの暖かいチャクラとサスケの冷たいチャクラ。
光と闇が両方そなわり最強に見える。
「今更、何をしようと変わらんぞ。」
だからだろうか?
オビトは臨戦態勢を整えた。求道玉を変化させた剣と盾を携えたオビトは空を見上げる。おっと、自来也様たちにはもう少し待機しておいて貰った方がいいな。
「……上を見てみろ。この天井の穴から何が見える?」
オビトの目はナルトとサスケに向いている。彼らを陽動として、できた隙を俺たちが攻める方向でいこう。
「月だ。月夜の夢の世界へ向かう時は近づいている。大きく開いた地獄の穴を月の夢が埋めてくれる。やっと、その時が来たのだ!」
オビトは天に向けていた目を下し、手に持つ巨大な黒い剣をこちらに向ける。
「この剣は六道仙人の神剣、“ぬのぼこの剣”だ。もう貴様らはオレには勝てん。……その想いの強さが剣に宿る。心の剣だ。仙人はこの剣でこの世界を創造した。」
ぬのぼこの剣は、ハゴロモの爺さん曰く突き刺した物の分子構造を入れ替えたりDNAを組みかえたりラジバンダリして全く別の物にするという訳わかんないことができる剣らしい。
万物創造の術よりも使うチャクラが少ないから便利だと言っていたのでやってみたが、そこまでの差は見られなかった。大体10%程度の差というところ。それに、求道玉を扱うことができる六道仙人モードになるために消費するチャクラ量から考えると、そのまま万物創造の術を使った方が良いんじゃないかという結論に到り、お試しの一回しか使ったことのない技である。
過去に思いを馳せていると、オビトが大きく口を開けるのが見えた。
「そして、オレがこの剣でこの世界を消す!」
宣言と共に、オビトは急速に宙に浮きあがり、背中に浮かべている求道玉の形を先ほどと同じように、しかし、先ほどよりも力強い姿に変えていく。求道玉の変化が止まり、その姿を目に収める。二対四枚の羽を有した天使のようなシルエットが目の前にあった。その中心で怪しい光を放つ赤の右の眼と紫の左の眼。
世界を消す前の掃除だと言わんばかりに、オビトが広げた羽にチャクラが集約されていく。相手を屠るのに充分なチャクラを数秒で溜めた四つの尾獣玉が須佐能乎を纏った九尾に狙いを定める。
一人一つ。飛ばすための人は集まっている。
「サル!行くぞ!」
「ハッ!」
俺の隣に現れた二人が駆け出していく。
「行くよ、ヨロイ。」
「ええ、ミナト先生。」
次いで、現れたミナト先生の後ろについて俺も走り出す。袖からマーキング付きのクナイを出しながらオビトへと駆けていくと、尾獣玉が発射された。ミナト先生と別れ、俺は黒い塊の一つへと飛び出していき、手に持つクナイを構える。
『飛雷神・導雷の術!』
俺と同時に四代目火影、三代目火影、そして、二代目火影が同じ術を使い、尾獣玉を時空間移動させる。しかし、オビトの動きまでは止めることができなかった。というより、尾獣玉がオビトにとっての陽動だったのだろう。俺と二から四代目火影までをナルトたちから引き離すことが目的だったのかもしれない。
オビトはぬのぼこの剣を構え、紫の鎧を着込んだ九尾に向かっていく。弾丸のように向かって来るオビトを迎え撃つように九尾は空へと跳び上がった。紫の剣を腰に溜め、月を背にオビトへと迫る。その様子を見たオビトは、九尾の攻撃を真っ向から受け止めようと求道玉を変化させた盾を構えて空に向かって昇っていく。
『ハアッ!』
九尾の尾から九人の忍が飛び出した。それぞれの手に螺旋丸を携えたナルトの同期の忍たちはオビトが持つ盾に向かって、その術を振り下ろす。
「はっ!」
ナルトとサスケが自分の腕を前に突き出す。皆の螺旋丸で壊れた盾の隙間を縫って、九尾が持つ刀がオビトに届こうとしていた。その刀を見据え、オビトは自分が持っているぬのぼこの剣を突き出す。
近づく意志と意志。
決着は一瞬だった。十尾の人柱力となって初めてオビトの顔が歪む。
刀を振り切れず意志を貫けなかったのは、うちはオビトだった。
「!?」
切り裂かれたオビトの体からナルトに向かって尾獣たちのチャクラが漏れ出ていく。
「今だ!」
九尾の尾の形が変わった。それぞれの尾獣の顔を象った九尾の尾はオビトから漏れ出た尾獣のチャクラと合わさる。しかし、二つのチャクラは九尾のチャクラを拒絶した。一尾と八尾だ。
と、一尾のチャクラを砂が絡め捕る。
「元々はオレと繋がってた一尾だ。オレがやる。」
「我愛羅!」
八尾のチャクラにタコの足が絡みつく。
「やっと弱点を暴露♪八っつぁんのチャクラはオレに任せろ♪」
「ビーのおっちゃん!」
戦いは数だよな、やっぱり。
俺は印を組む。
――シカクさん。忍連合軍の全ての忍をここに。
――ああ、向かっている!
――リン。穢土転生組を全員ここに。
――うん!今、行ってるよ!
――自来也様。
「お前の後ろにおる。先に行くぞ!」
俺のペイン六道たちは全員、ナルトたちの方に向けて駆けて行った。
一足先にナルトの元に着いたナルトの同期たちがチャクラをナルトの尾に付ける。
「ナルト!手を貸せっつったのはお前だ!最後まで手は出させてもらうぜ!」
「皆ァ……!」
「それだけじゃねェ。」
忍連合軍全ての忍たちがナルトの元に駆け付けて、ナルトのチャクラを掴んでいく。
「よっしゃあー!皆ァ!一斉にせーのォでいくってばよ!」
「……!!」
さて、どうするか……。
オビトを弱らせることは、チャクラ量と精神力の観点から上手くいくことはほぼ確定している。しかし、そうなると、尾獣たちを再び捕まえるのはナルトの抵抗が予想されるから難しいな。こっそりと尾獣たちのチャクラを少しずつ吸収して時間をかけて神樹を育てる方がいいだろう。オビトが持つ眼を潰し、マダラを封印すれば、幸いにも輪廻眼を持つ者はここでいなくなる。遣り様はいくらでもある。
『せーのォ!!!』
プランCは崩れることはない。問題はない。
オビトの体から尾獣たちが完全に抜け、地面へと落ちていくオビトを見ながら俺は笑みを深めた。
狂った歯車を元に戻すには、一度、
そうは思わないか?……オビト?