一流の銅ヤロー   作:クロム・ウェルハーツ

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@107 眠るのは

「……うずまきナルト。」

 

九尾と須佐能乎を眼下にオビトは呟く。心を折ったと思ったナルトが立ち上がる姿を見たオビトは焦燥に駆られているようだ。

 

「構えろ。」

 

オビトはナルトに向けていた目を今し方、口を開いた俺に向ける。修羅道の力で作り出した近未来的な刀、根も葉もない言い方だとライトセイバーを手に口寄せした俺はその切っ先をオビトに向ける。準備はできた。後は隙を作るだけ。

 

「お前もナルトと同じか。全てを支配するオレにまだ盾突くというのなら手加減はできんぞ。」

「いいぜ。」

 

両手を広げて片足を曲げて荒ぶる鷹のポーズを取る。

 

「テメェが何でも思い通りに出来るってなら…」

 

そして、片手を斜め上に、余った手を斜め下に構える。間髪置かず、少し横にシュバッと移動する。

 

「…まずはそのふざけた幻想をぶち殺す!」

 

最後に少し内股になって、肘で顔を隠しながらオビトを見る。とても無表情だった。マゾなら気持ちよくなれるかもしれないが、俺はどちらかと言えばサドだし気持ちよくはない。強いて言えば、相手がカワイイ巨乳の女の子だったらワンチャンあるってぐらいだ。

つまり、オビトの無反応は頂けない。天道の力でオビトの元に向かいつつ赤いライトセイバーを振るう。

 

「ホッ!」

 

オビトの黒い錫杖と俺の赤いライトセイバーがぶつかり合う。全てを消滅させる力を持つ求道玉ではあるが、仙人の力、仙術と六道の術を打ち消すことができない仕様となっているのは既に実験済みだ。

 

「俺に構うな!撃て!」

 

オビトから目を離さず、ナルトとサスケに指示を出す。と、オビトの錫杖が振るわれ、俺は少し体勢を崩す。畳みかけるように振るわれる錫杖をなんとかライトセイバーで弾き傷を負わないようにするが……重い。一撃毎に掌が痺れる。

 

「サスケ、矢を撃つな!ヨロイの兄ちゃんが!」

「奴は飛雷神の術を使える。俺たちの攻撃が当たる前に避けるだろう。」

「ホントか?」

「ああ、奴なら避ける。重吾!呪印の力を須佐能乎の手にある矢に回せ!」

「分かった。」

 

遅い。

ナルトと重吾め。サスケは俺のやり口にすぐ合わせることができていたというのに、俺を気遣うことでチャンスを完全に逃した。

鍔迫り合いとなっていたオビトの錫杖が振るわれ、俺は腕を空に向かって持ち上げられた。

 

「写輪眼を嘗めるな。」

「ガッ!」

 

それに続いて、腹への衝撃。俺の体は今居る場所から遥か下の地面へと叩きつけられた。チャクラの鎧と陰癒傷滅の術を使うことでダメージを押さえたというのに、この痛み。体力バーは赤になっていることだろう。それにしても、神威が使えなかったから普通の写輪眼の能力も使うことができないと思っていたが、それは違って俺の動きを完全に見切っていた。そういえば、基本巴の文様はオビトの目の中に見えていたなと納得する。

体を起こし、口の中の血を吐き捨てて上を見上げた。

上では、爆発が起こっていた。ナルトの尾獣玉とサスケの須佐能乎の矢の影響だろう。しかし、オビトはそれを求道玉で防ぎ、目に見えるダメージは皆無だ。

やっと隙を見せた。

 

「潰れるってばね!」

 

クシナさんが二代目様のマーキングとリンクさせた紋の箇所、オビトの背中へ飛雷神の術で飛び、巨大な氷塊をオビトに向かって振り下ろす。家ほどの大きさの氷がオビトに迫るが、オビトは自分の首元から出したチャクラを手の形に形態変化させて、氷を防ぐ。

次だ。

共有している視界が切り替わる。今度はオビトへ飛雷神の術で接近した自来也様がミナト先生を伴って螺旋丸をオビトに当てる。仙人モードになった二人の攻撃だったが、ナルトたちの攻撃を防いだものではない求道玉がオビトを守った。

 

「ナルト、足場として使って。」

「分かったってばよ!」

 

オビトが自来也様たちに気を取られている間に小南さんと弥彦さんが動いていた。弥彦さんが天道の力で空中に上げた無数の土の塊。それに小南さんが紙を纏わりつかせて大きくさせていた。空に浮かぶオビトへと続く道だ。その足場を利用して九尾と須佐能乎がオビトに向かっていく。

九尾はその爪で、須佐能乎はその刀でそれぞれ別の方向からオビトに攻撃を仕掛ける。

が、オビトはナルトとサスケの攻撃を求道玉で受け止めた。感情を感じさせない表情で彼は少し口を開ける。

 

「そろそろ眠る時間だ。夢の中へ連れていく。時間はもうない。」

 

オビトがそう言った瞬間、求道玉が変化し、いくつもの黒い板で作られたような手の形となる。オビトはその手で九尾と須佐能乎を掴むと、地面へと加速した。空中の移動性能はハッキリ言って、俺より上。飛雷神の術で上手く後ろを取ったとしても、すぐに距離を離され攻撃を当てることすらできないだろう。と、なれば……。

オビトが九尾と須佐能乎を地面に叩きつける地点を予測しながら、チャクラの鎧を身に纏い、一旦、それを(ほぐ)して立体的に組み合わせて塔の形にしていく。即席の衝撃吸収材として利用したが、オビトによって落下のエネルギーを加えられた上に、投げられた九尾と須佐能乎は地面まで落とされた。

その勢いは凄まじく、落下の衝撃で地面は大きく凹み、砂埃が視界を覆い隠した。神楽心眼で感知を行う。

見つけた。

感知した場所に手の形に形態変化させたチャクラの鎧を伸ばして、サスケと重吾、そして、ナルトを回収する。

 

「なぜ起き上がる?」

 

土埃が晴れていくと、前方にオビトの姿があった。

形が変わった求道玉を背にオビトはナルトに尋ねる。背中の不格好な手の形をした求道玉は見方によっては翼のようにも見えた。

 

「お前は何のために戦っているというのだ?仲間のためか?それとも、明日には終わっているこの世界のためか?」

 

天使、神の使いのような姿のオビト。

 

「いいか?……仲間にはいずれ裏切られる。そして、この世界では愛は憎しみに変わる。お前も分かっているハズだ。かつて、里の者もサスケもお前を裏切ってきた。そして、自来也との愛がお前に憎しみを与えた。お前もオレと同じだ。積み重なる苦しみが、いずれ、お前を変えていく。そして、今、お前に更なる苦しみが襲うことになる。」

 

彼はこの世を思い通りにできるほどの力を持っている。

 

「それでも、お前は自分が変わらないと言い切れるのか?」

「ナルトはお前と同じじゃねーよ。」

 

オビトは俺に顔を向けた。

 

「里で皆から嫌われていたのに、ナルトは自分を皆に認めて貰おうと必死だった。まぁ、不器用なお陰でイタズラでしか自分を表現できなかったけどな。そして、オビト。お前は自分を認めて貰うために積極的に年寄りの手伝いをした。それから、ナルトは師である自来也様を失った。そして、お前は片思いの相手だったリンを失った。確かに、境遇は似ているが…」

 

どれだけ強大な力を持とうが、その力を扱うのは所詮、矮小である人の身。そして、そんな小さな人間が巨大な力を使用するためには強烈な目的意識が必要だ。

 

「…同じじゃねェ。俺の後ろにいる“忍”は!うずまきナルトだ!“夢”を諦めたうちはオビトじゃない!」

「……まっすぐ自分の言葉は曲げねェ。それがオレの忍道だ。」

 

ナルトはまっすぐにオビトを見据えた。その隣にサスケが並ぶ。

 

「次で決着をつけるぞ、ナルト。」

「オウ!」

 

黄色と紫色が重なっていく。

 

「眠るのは明日!夢は自分で見る!」

 

交わらなかった二人の力が合わさった。

 


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