一流の銅ヤロー   作:クロム・ウェルハーツ

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@105 十尾の人柱力・オビト

「アレが十尾の人柱力だと?」

「ますます気味悪りぃーってばよ。」

「ナルト……なぜ分かる?」

「オレは尾獣たちと仲良くなった!そん時、アイツ等からチャクラ貰ってっからハッキリ分かる!尾獣たちのチャクラが次々オビトの中へ入ってったのを感じられたし……それに、オレってば六道の生き返りの術を一回見てる!そもそも術の印が違う!」

 

サスケとナルトの会話を聞き流しつつ十尾の人柱力となったオビトを感知してみる。何も感じない。今度は輪廻眼の力をフルに活かしてオビトを見ると計り知れないほどの自然エネルギーがオビトの体を取り巻いていることに気が付いた。しかし、妙だ。あれだけの力を持ちながらオビトの意志が全く感じられない。いや、あれほどの力を持ったからこそ、オビトの意志が無くなり暴走するというパターンも考えられる。かつての人柱力は尾獣のチャクラの暴走で意志を失い死亡した事例が多い。そちらの方が可能性は高いか…。

と、初代火影の明神門が空から落ちてきてオビトを地面に押し付けて動きを封じる。

その時、オビトの周りに転がった外殻が目に入った。外殻が皮膚のように下から押しのけて発生したとすると今回のことも説明がつく。ならば、ここでオビトの意志がなくなったと結論を出すのは早計か。

 

「おおっ!すっげー!」

 

ナルトが感想を漏らすが、その表情は容易に崩れ去る。オビトを押さえつけた封印は数秒の間しか持たず、全体に亀裂が入り、全てが下からの圧力で崩れた。

仙術である封印術をあそこまで簡単に砕くとは。

突如、オビトが伸ばしたチャクラを形態変化させた腕が俺たちを無視して四方向に向かう。

 

「どこを狙っている?」

 

その方向には何も、いや、あるのは四赤陽陣の壁だ。まさかとは思うが…。

オビトの腕が結界の壁を掴み、捻った瞬間、四赤陽陣が壊される。

 

「嘘だろ。」

 

あり得ない。特殊な効果を持たない結界術の最高峰、頑強さで言えば他の結界術が比べ物にならないレベル、を呪術的なアプローチもなく壊すなんて。バカげている。そんなこと輪廻眼を持っていてもできないレベルのことを易々と行うとは。

近くに着地したオビトを見遣る。

 

「やめろ!オビト!もうやめるんだ!」

「オ…ビ…ト?」

 

ミナト先生の言葉に対し、オビトは人間らしい反応を示さない。

既に、オビトの意志はないか。プランAは頓挫した。プランCに切り替えるべきか。いや、どちらにしろ十尾の人柱力が俺と俺のペイン六道だけで倒すには厳しいと分かった以上、プランCしか選ぶ選択肢はない。

オビトを油断なく見る俺たちの目の前に三つの影が降り立った。初代、二代目、そして、三代目の火影たちだ。

 

「ハッキリ言う。こやつは……オレより強い。」

「失礼ですが…そのようですな。」

「消え損ねた分身を寄こしても相手にならんぞ、兄者!」

「分かっておる。だが…。」

 

初代火影が言い淀んだ瞬間、オビトの姿が掻き消えた。

自分の眼を疑う。動体視力は忍の中でもいい方だと自負していた俺の目を持ってしても全く見えなかった。気が付いたら、初代火影と二代目火影の半身が消し飛んでいた。

 

「サル!四代目!飛べ!」

 

体の半分を失いながらも二代目火影は指示を出す。

二代目火影の指示に従い、ミナト先生の飛雷神の術で時空間移動をして、その場から離れる。顔を上に上げると、巨大な爆発が何度も起きている光景が目に入った。

互乗起爆札。札が札を口寄せし続け爆破を繰り返す連続一点集中爆破と文献で書いていたが、考案した本人が使うと中々凄まじいものがあるな。卑劣ポイントとかあったら、きっとカンストしているに違いない。

 

「もう何が何だか!?」

「やけにならない!常に状況を見て!」

 

ミナト先生はナルトを窘める。彼らから目を離し、爆発が起こった場所に目を凝らす。あれだけの爆発。ダメージを与えられていればいいが……。

煙の中に浮かんでいる人影。その人影の周りの煙が分解されるように掻き消えた。

マズイな。求道玉まで持っている。ペイン六道を呼ぶか。

タンッと軽い音と共に俺のペイン六道たちが前に現れた。

 

「求道玉か。厄介なモンを持っとるのォ。」

「自来也先生。今のオビトが持っている物を知っているんですか?」

「ああ。風火土雷水陰陽、全ての性質変化を同時に行う血継網羅の術だ。形を変化させることができる塵遁と思えばいい。」

 

自来也様がミナト先生に説明している間に、三代目がオビトを引き付けようと攻撃を仕掛ける。大きな手裏剣がいくつもオビトに向かうが、オビトは求道玉を形態変化させて、盾にして三代目の攻撃を防ぎながら、彼に近づく。

そして、オビトは三代目の頭を捉えた。と、三代目の上半身が跡形もなく消し飛ぶ。

 

「父ちゃん!三代目の爺ちゃんも父ちゃんの術で飛ばせなかったのかよ!?」

「オレ自身かオレのチャクラが間接的にでも触れていなければ飛ばせない。」

「喚くな、ナルト。火影たちは穢土転生だ。死なないのを分かっていて敵の出方や能力を分析するため、あえて突っ込んでいった。あの戦いを見て心配より分析をしろ。」

 

ナルトたちの声にオビトがゆっくりと振り返る。地面を蹴り、こちらに向かって跳び上がったオビトを迎撃するために全員が臨戦態勢を整えたが、それは杞憂だった。

オビトの体が突如、膨れ上がりバランスを崩したオビトは地面へと落下する。

十尾をコントロールし切れていない。チャンスだ。

 

「ミナト!行くってばね!」

「ああ!」

 

九尾チャクラモードになったクシナさんと九喇嘛モードになったミナト先生は瞬身の術で膨れ上がったオビトに肉薄する。

 

『螺旋丸!』

 

二人の声が重なったのと同時に二つの螺旋丸がオビトに叩きつけられる。が、オビトの体は動かない。

 

「重いッ……。」

 

ミナト先生の足が地面を滑る。螺旋丸はオビトの表皮を削っていくが、その削るスピードは遅々としたもの。ダメージはほとんどないだろう。こうなれば、俺が行くしか。

足を曲げ、力を溜めた俺の隣を赤が入った黄色の閃光が駆けていった。閃光はミナト先生の左手に、クシナさんの右手にそれぞれ自分の手を重ねる。

 

「父ちゃん、母ちゃん。行くってばよ!」

「ああ!」

「うん!」

 

螺旋丸の色が青色から赤色へと変わっていき、漏れ出たチャクラが親子を包み込む。

 

『ハァアアア!……ハッ!』

 

今度こそ、オビトの体が吹き飛んだ。圧縮されたチャクラが一気に展開し、爆弾のような効果を発しながら周りに暴風を撒き散らす。

 

「名付けるなら……真 太極螺旋丸ってところか。」

 

風に目を細めながら呟く。子は鎹とはよく言ったものだ。他人、チャクラの性質が似ていない二人。その二人のどちらにも似たチャクラの性質を持つ子は二人を繋ぐ橋となった。三人分のチャクラが乗せられた螺旋丸はオビトを弱らせることに成功した。これなら、解尾法印で十尾をオビトから引き剥がすことができそうだ。影分身を作り出して、オビトへと向かわせる。

俺の影分身がオビトに向かって駆け出すと、オビトが右手を挙げた。細胞分裂が進み過ぎた右手の中に求道玉が埋め込まれているのが見えた。

慌てて足を止めてマーキング付きクナイを構える。飛雷神の術 導雷で求道玉を飛ばそうとしたが、求道玉が俺に飛んでくることはなかった。

体を左手で支えていたオビトだったが、左手から力が抜けたのかバランスを崩し、あらぬ方向へと求道玉を射出する。

 

「チッ!」

 

外れたとはいえ、その爆破規模は強大。足の裏にチャクラを集めて地面に吸着する。と、閃光と爆音を撒き散らしながら求道玉が爆発した。

隙ができた。

オビトに向かって駆け出す俺の姿を認めたオビトは獣のような咆哮を上げた。オビトの体の至る所が別々の意志を持っているかのように動いているが、ただ自分の体を支配下に置けていないだけで攻撃性はないと見た。行ける。

オビトまで後15m。オビトの体の蠢きが収まった。そして、膨らんだ体が人型に収束していく。

 

「やっとだよ……ヨロイ。」

 


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