一流の銅ヤロー   作:クロム・ウェルハーツ

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注意!
オリ忍術有ります。


@103 共闘

音もなく影が俺の後ろに現れた。その動きはまさに陽炎。動きを誰にも悟らせない。

俺も感知忍術を使っていなかったら、間違いなく見逃していた。

 

「ヨロイ。俺ももう行く。」

「了解、シスイ。」

 

一言、残しシスイは瞬身の術で姿を消す。頭の中で思い浮かべてくれれば伝わるというのに、一々言葉に出すとは律儀な奴だ。

シスイの消えていった方向を見遣ると、十尾の体から人間大の分裂体が次々と出てくる。なかなか気持ち悪い光景だ。

黒レンズを懐から取り出して、目の上に付けて結界の中を見ていく。

一際大きな土煙の柱。あれはサクラだろうな。大蛇丸様の目があったから輪廻眼を使うことができなかったとはいえ、俺、いや、俺以上に医療忍術とチャクラコントロールに長けていたシズネでも習得ができなかった百豪の印を会得したか。大した奴だ。

そして、サクラの後ろから迫ってきていた十尾の分裂体を加具土命で作り出した矢と螺旋手裏剣で作り出した手裏剣で吹き飛ばすサスケとナルト。本当に強くなった。

 

「第八班も行くぞ、コラ!七班なんかに負けねェ!」

 

第七班に負けてられないと奮起したのか、中忍試験で見た顔が次々と十尾の分裂体に向かっていく。

犬塚流の人獣混合変化で三つの頭を持つ巨大な白い山犬へと変化したキバがその体を回転させ、分裂体を切り刻んでいく。シノが分裂体に手を当てて、一拍置いた瞬間、分裂体の中から成長した蟲がその体を食い破って出てくる。嫌な死に方だ。そして、ヒナタは八卦六十四掌を完成させて、分裂体に叩き込む。

 

「私たち第十班は猪鹿蝶のコンビネーションでいくよー!」

「フォーメーションEだ!」

 

いのの掛け声と共にチョウジが倍化の術で自身の体積を増やし、それをシカマルが影掴みの術で捕まえる。捕まえたチョウジを振り回して周りの分裂体を一掃する。

 

「肉弾用々!」

 

しかし、その攻撃を掻い潜って、いのに迫る分裂体がいた。

 

「見せ場は譲ってあげる……先生!」

「ありがとうな、いの。……オレの部下には手を出させねェよ。」

 

一閃。アスマがシカマルのポーチから取り出したナックルに近いチャクラ刀に風の性質のチャクラを纏わせ、それを振ると三人に襲い掛かっていた分裂体の体が泣き別れになる。

 

「アスマ、まだ見せ場が足りてねーんじゃねェか?」

「これから、たくさんあるさ。そうだろ、シカマル?」

「ああ、オレたち三人とアスマ。第十班の動きはシミュレート済みだ。」

 

シカマルの言葉を聞いたアスマはニヒルに笑った。

 

「やるぞ、イタチ。」

「分かっている、シスイ。」

 

シスイは印を組み上げ、チャクラを口元に集中させる。

 

「火遁 豪龍火の術!」

 

龍を象った炎が大型の分裂体を焼く。

 

「オレが行く!」

 

瞬身の術を使うシスイの後ろで、イタチが何十本もクナイを分裂体に向けて投げつける。しかし、分裂体にはあまりダメージは与えられていない。体の表面に少し穴を開ける程度だ。だが、隙はできた。その隙を付いて、飛んできたクナイを写輪眼で見切ったシスイが捕まえ、分裂体の体に差し込んでいく。おそらく、点穴を狙った攻撃だろう。シスイの写輪眼の洞察力は点穴を見切ることができるレベルまで上がっている。と、いうか子どもの頃から見切れていたらしく、これが天才かと教えられた時は戦慄したものだ。

 

「イタチ!」

「ああ。」

 

動きが完全に止まった分裂体にクナイを持った二人が前後から肉薄する。そして、瞬身の術で二人が離れた後、分裂体の体はバラバラになっていた。

 

「これが、うちはの力だ。」

 

シスイの体から緑色のチャクラが吹き出る。それと同時にイタチの体からも赤に近いオレンジ色のチャクラが出てくる。そのチャクラに阻まれた分裂体はすぐに攻撃を何度も二人に向かって与えようとするが、その手を変形させた斧は彼らには届かない。

 

「鈍ってはいないようだな、シスイ。」

「お前に負けてられないからな。」

 

シスイの須佐能乎とイタチの須佐能乎は手に持つ刀を振り切り、周りの分裂体を切り刻んでいく。

その二人の横には、うちは一族が並んでいた。

 

『天照!』

 

万華鏡写輪眼を開眼させたうちは一族の人たちが次々と黒炎を放っていく。一族丸ごと穢土転生させた直後に二人組を作らせて、抵抗できないように命令した後、幻術で目の前の組んだ人物が大切な人だと誤認させてから殺し合わせた甲斐があった。万華鏡写輪眼の力は絶大だ。

 

淤能碁呂(オノゴロ)!』

 

土に仮初の命を与え、人型として使役する瞳術、淤能碁呂。術者の込めるチャクラによって、その大きさは変わり、卓越した使い手だと優に20mを超える大きさとなる。そして、淤能碁呂と共に天照を使うことで新たな術と成らせることが可能となる。単体ではミコトさんしかできない術も何人かで協力して使えば、この通り。

 

球磨囎(クマソ)!』

 

全身に黒い炎を纏い、表面が焼け爛れた土の巨人が分裂体に襲い掛かる。ヤシロさんに梟師(タケル)を使わせないのはリンのナイス判断だ。

と、動きがあった三人組を見つめる。

 

「行くぞ、長門、小南。」

「自来也先生は?」

「野暮用だ。今は……」

 

掌を合わせ、黒い球をその中に作り出した弥彦さんは、その球を分裂体の大群に向かって投げつける。

 

「オレたちで道を切り開く。」

 

地面を滑りながら分裂体の大群と大地を取り込み、大きくなっていく地爆天星は空に浮き上がる。

 

「私が。」

 

空に飛び立った小南さん。その背中には紙で出来た羽が付いていた。

小さな星となった地爆天星を抱くように絡みつく羽。そして、その羽の多くは起爆札となっていた。互乗起爆札を小南さんに仕込んでいた甲斐があった。

 

「長門!」

「分かった。御倉板挙(ミクラタナ)!」

 

右腕を変形させた長門の光線が地爆天星を貫いた。それと同時に起こる大爆発。人智を超えた攻撃だ。

 

「綺麗な花火だ、うん!」

「見惚れていないで、現実を見ろ。……オレたちを駒にして扱うとは。いつか殺してやる。」

「旦那。オレたちは穢土転生体だからヨロイのヤローを殺せないって、うん。」

「奴の指示に従うのは気に食わない。それに、オレの傀儡を勝手にメンテしやがって。」

「確かに、勝手に作品に触れられたくはないな、うん。」

 

術者は俺じゃなくてリンなのに理不尽だ。

そう思いながら彼らを見ていると、デイダラが鶴形の起爆粘土を飛ばして分裂体を爆破させる。そして、後ろでC2ドラゴンを出したデイダラは隣に立つサソリに声を掛ける。

 

「合作と行こうぜ、旦那!」

 

巻物から三代目風影の人傀儡を出したサソリは彼を操って口から砂鉄を出させる。サソリの傀儡についての研究が直接対決以外にこんな所で役立つとは嬉しい誤算だった。

 

「フン。」

 

サソリはいくつか筒を投げた。

C2ドラゴンに筒を飲み込んだ砂鉄が纏わりついていく。黒光りしたドラゴンは分裂体に襲い掛かり、何体もの分裂体を引きちぎっていく。

 

「喝!」

 

デイダラの掛け声と共にドラゴンが赤く光り出す。

 

「即興にしては上出来だぜ。」

「くだらねェ。」

 

普段よりも巨大な爆発が分裂体を包み込んでいく。

その爆発が終わった後には何も残っていなかった。

 

「テマリ、カンクロウ。」

「準備はできてるじゃん。」

「いつでもいいよ、我愛羅!」

 

我愛羅が背中の瓢箪から出した砂にテマリとカンクロウが乗り、空へと昇っていく。それと同じタイミングで我愛羅が操る砂が何体もの分裂体を飲み込みながら、その形を球状にしていく。

 

「いくじゃん、テマリ。」

「遅いぞ、カンクロウ!」

 

カンクロウの傀儡“蠍”がその両手から火炎を出し、テマリがその火を風遁で大きくして我愛羅が作り出した砂の隙間から炎を送り込む。

 

「我愛羅!」

「今じゃん!」

「灼熱砂縛柩!」

 

我愛羅が右手を握ると、炎と共に砂が圧縮され、大きな爆発を起こした。オーバーキルもいいところだ。

そして、その三人の様子を頷きながら、以前、俺が卑劣切りで殺した四代目風影とその妻、加琉羅、そして、四代目風影の義弟の夜叉丸が満足そうに見ている。見た感じ、我愛羅たちの成長に感動してすぐに昇天するということはなさそうだ。磁遁で操る砂鉄や砂金などで、分裂体を見ずに叩き潰しているし、チャクラ糸で浮かしたクナイや手裏剣などを操っているし。ほとんど隙がない。四代目風影には、正面からぶつからないで本当に良かった。

 

「やりおるのォ……。ほら、ぼさっとせんでお前たちも戦いに行かんかい!」

「ハッ!皆!風影様に続け!」

「遅いわよ!灼遁 過蒸殺!」

「パクラ様!私も行きます!」

 

灼遁で分裂体をカラカラにしていくパクラを追いかけてマキが走っていく。

そして、白秘儀のチヨの掛け声で砂隠れの忍たちが一斉に分裂体へと襲い掛かっていく様子が見えた。

 

「遅れることはできないわ。皆!行きますよ!」

 

水影様が霧の忍たちに音頭を取る。

 

「それで……アナタたちは力を貸してくれるのかしら?再不斬、白?」

「穢土転生に縛られてるオレたちは従うしかない。さっさと戦争を終わらせるぞ、メイ。」

「先輩に向かって、そんな口の利き方はないんじゃなくって?」

「フン。」

「すみません、五代目水影様。」

「おい、白。謝る必要はねェ。」

 

再不斬の言い様にイラッとしたらしい青さんが怒鳴る。

 

「なんだ、貴様のその口の利き方は!」

「フン。やんのか?」

「お、落ち着いてください。再不斬先輩は、今は味方なんですから。あ、そう言えば、第三部隊からボクたちが預かっていた刀を取り出しますね。」

 

巻物から刀を取り出していく長十郎。

その刀を手に取る元霧の忍刀七人衆たち。

 

「ん?“牙”はあの子にあげたハズだけど。もしかして、死んだの?」

「いえ、ヨロイさんから作戦を伝えられた時、オモイさんがボクに“雷刀 牙”を預けてくれました。」

「なるほどね。なら、もう少し使わせて貰おうかしら。」

 

そう言って、牙を手に取る林檎 雨由利。

 

「これはこれは。名高い霧の忍刀七人衆方々ではないですか。とはいえ、意識は奪われてしまっているようですが。」

 

鬼鮫さんがニヤリと笑みを浮かべながら周りを見渡す。意識がない通草野 餌人、栗霰 串丸、無梨 甚八、黒鋤 雷牙、西瓜山 河豚鬼、鬼灯 満月、枇杷 十蔵、それと、ダイさんが仕留めたヒラメカレイの使い手のヒラメ顔の某。拾ったのでこの人に関しては名前が分からないものの、それなりに強そうだったので契約してみただけである。

鮫に体のほとんどを食われていた鬼鮫さんは穢土転生が大変だった。残された僅かな肉片を培養して契約をしたので、戦争に間に合うかどうかギリギリだったし、俺は俺で忙しく、リンに任せっぱなしだったが、上手くいったようで良かった。

 

「おい、さっさとバトルしに行くぞ、ヒヨッ子ども!」

 

二代目水影が興奮した面持ちで周りを促す。しかし、その水影の会話に入る者がいた。

 

「相変わらず声だけは大きいな、幻月。」

「その言い様だとオレが声だけの男に聞こえるじゃねェか。」

「そう言ったつもりだが?」

「アァン?殺してやろうか?」

「理解力の乏しい男だ。穢土転生に縛られている以上、オレもお前も術者の意に背いた行動はできん。」

「おし、五代目!(ムウ)を殺してやれ!」

「二代目様。申し訳ありませんが、二代目土影様は味方ですので。」

 

水影様は二代目水影の要求をやんわりと断る。

 

「無様、茶々を入れんでくだされ。」

「フン……。行くか、オオノキ。」

「そうですな。……皆の者!準備はよいか?」

 

土影様が呼びかけると岩隠れの忍が一斉に声をあげた。

 

「ジジイ、先に行ってるぜ!」

「黒ツチ、待つだに!」

「全く……。落ち着きのない奴め。」

「黄ツチ!黒ツチと赤ツチの援護を!」

「ハッ!」

「イッタン!敵の足場を崩すんじゃ!」

「ハッ!」

 

土影様の命令で次々と戦場が変わっていく。

 

「行きますぞ、無様!」

「オレに指示を出すとは大きく出たな、オオノキ。」

「いつまでもガキのままではいられなかったので。」

「悪くないな。……オオノキ、合わせろ。」

「ハッ!」

『塵遁 原界剥離の術!』

 

岩隠れの陣営の活躍を見た二代目水影が声を上げる。

 

「オレたちも行くぞォ!」

『ハッ!水遁 爆水衝波!』

「続きなさい!」

 

水影様が駆け出しながら印を組み上げる。

 

「水遁 水龍弾の術!」

 

水影様が作り出した水の龍を皮切りに霧の忍が操る水弾、水の鮫、水の柱が分裂体に一斉に襲い掛かる。その中を素早い動きで分裂体に接近する影たちがあった。

 

「ラアァ!」

 

首切り包丁を振り回す再不斬。そして、彼に追随する白が氷の千本を足元の水から作り出し、再不斬の隙を補う様に分裂体に攻撃していく。

次いで、七人衆も術が飛び交う中に飛び込んでいった。穢土転生体の特徴をよく分かっている。と、その中に一際素早い影が過った。

二代目水影の蒸危暴威だ。水と油を人型にして動いた時の熱を利用して水蒸気爆発を起こす術。そう考えていると、ちょうど蒸危暴威が爆発したのが目に入った。

分裂体が消し飛んでいく、その隣に視線を移す。雲のエーとビーが前線に立つことになるとは俺以外に誰が予想しただろうか?

 

「付いてこい!」

「オーケー!ブラザー!」

十字雷黎熱刀(クロスラリアット)!』

 

流れるような、そして、息がピッタリ合った攻撃で分裂体を空に打ち上げる雷影様とビーさん。そして、二人は分裂体の体をUの字に曲げて関節を固める。

 

「合わせろ、ビー!」

雷我弐不雷斗爆弾(ライガーツープラトンボム)!』

 

そのままの体勢で地面に押し付けられた分裂体。その上、雷が迸るなんて痛いじゃ済まないだろう攻撃だ。

 

「親父ィ!」

 

雷影様が後方に向かって叫ぶ。

 

「分かっておる!地獄突き一本貫手!」

 

自分に当たる攻撃を全く意に介さず、分裂体をその手に光る雷で出来た鉾でスパスパと切っていく三代目雷影。ナルトはよくあんなバケモノを倒せたな。

 

「ビー!ワシらも行くぞ!……ってどこに行った!?」

「あそこです!」

「あンのバカたれが!一人で先走りおって!」

「ビーは変わらないな。」

「フカイ!笑っている場合ではない!」

 

一人でいなくなったビーさんに怒る雷影様と先代ビーのフカイさん。中々、いいコンビだ。

 

「ボス、ビーにはオモイとカルイを付けています。何かあれば連絡するように言いつけていますので、そう心配なさらないでも大丈夫でしょう。」

「よくやった!サムイ!」

「ボス、オレらも行きますか?」

「そうだな、ダルイ。十尾の分裂体に目にもの見せてやれ!」

「ウッス。嵐遁 励挫鎖苛素(レイザーサーカス)!」

 

嵐遁で分裂体が吹き飛んでいく。

 

「やってやる!」

「オレも行きます!アツイさん!」

 

アツイを追いかけるようにケーたち雲隠れの中忍も分裂体に飛び掛かっていく。そんな後輩の姿を見て、蘇った先輩、ジェイがサングラスの奥で目を細める。

そのジェイのサングラスに炎が写った。

 

『火遁 豪炎の術!』

 

猿飛一族の忍が分裂体へ仕掛けた攻撃を皮切りに木ノ葉の忍の猛攻が始まった。

 

『心乱身の術!』

 

同士討ちを始める分裂体。

 

『影縫い!』

 

影に刺されていく分裂体。

 

『肉弾戦車!』

 

潰されていく分裂体。

 

『秘術 蟲玉!』

 

蟲に集られ生気を奪われる分裂体。

 

『牙転牙!』

 

強力な回転に巻き込まれて体を削られる分裂体。

 

『柔拳法 一撃身!』

 

木ノ葉にて最強の日向一族に挑み返り討ちにされていく分裂体。

 

「朧月夜。」「木ノ葉流 三日月の舞。」

 

美しい剣技で斬られる分裂体。

 

『木ノ葉烈風!』

 

剛の者が使う体術で吹き飛ばされる分裂体。

 

「よし、第二陣!出番だ!」

 

木ノ葉の忍を纏めるシカクさんの指示で分裂体はその数を着実に減らしていく。

 

「骨はなさそうだな。」

「だけど、これだけの数。クソゲーと言っても、なかなかの時間が掛かりそうぜよ。」

「なら、さっさとやるぞ、カス共。」

「多由也、言葉遣いが荒い。」

「黙って働けよ、デブ。」

「多由也。」

「分かったよ、君麻呂。」

「では、よろしくお願いします。」

 

ドスが五人衆に声を掛ける。

五人衆全員が呪印を開放し、体を変化させ、状態2となる。

 

「カスの癖に仕切んな。」

「多由也。」

「分かってるって。魔笛 夢幻音鎖!」

 

ドスの実力を知らないから多由也は偉そうにしているが……。もう少し言い聞かせようかな。いや、君麻呂が上手くコントロールできるから大丈夫か。

 

「そんじゃ、行こうか……アニキ。」

「ああ。」

 

左近、右近はお互いに言葉を交わしながら分裂体へと向かっていく。

 

「多連脚!」

 

左近と右近が蹴り飛ばした分裂体に向かって鬼童丸が弓を構える。

 

「蜘蛛戦弓 凄裂!」

 

いくつもの矢を鬼童丸が射り、その矢が分裂体に深く突き刺さる。

 

「次郎坊?」

「ああ。君麻呂、頼むぞ。土遁 土陸返し!」

 

足場が揺れ、体勢が崩れたり、分裂体の何体かが突然、地面に出来た溝に嵌ったりして動けないでいる間に君麻呂が瞬身の術で近づく。

 

「唐松の舞。」

 

君麻呂は自分の全身から出した骨で近くにいた分裂体を切り裂く。

 

「椿の舞。」

 

続いて、肩から取り出した骨の剣で動きが鈍った分裂体を切り刻む。

 

「十指穿弾。」

 

周りの倒した分裂体には目を向けず、今度は遠距離にいる分裂体に向けて攻撃を加える。

 

「鉄線花の舞 蔓。」

 

君麻呂の攻撃は止まらない。背中から脊柱を引きずり出して、それを鞭のようにしならせながら分裂体を切り裂いていく。

 

「……。」

 

周りの分裂体を殺しつくした君麻呂の前に一際大きな分裂体が巨体を揺らしながら近づいてきた。

 

「鉄線花の舞 花。」

 

冷静に、そして、淡々と自分に与えられたタスクを消化するように君麻呂は分裂体の腹に穴を開けた。

 

「仕上げだ。早蕨の舞。」

 

地面に君麻呂が手を付けると、先端が鋭く尖った骨が至る所から急激な勢いで生え、分裂体を刺し貫いていく。骨の幹に肉の実。実に風流だ。

 

「では、ボクたちも行きましょうか。ザク、キン。」

「おう。」

「そうね。ザク、チャージの時間は私とドスで稼ぐわ。」

 

ザクが腕にチャクラを溜め始めたのを見たキンは一見、待ち針にしか見えない千本を一本、投げる。

 

「手裏剣影分身。」

 

キンが印を組むと針が急激に増え、雨のように分裂体を襲う。

 

「次はボクの番ですね。響鳴穿 凶!」

 

ドスがチャクラを籠めて指を鳴らすと、音波が広がった。その音波はキンが使った針で増幅される術。

 

「グギャギャギャアアア!」

 

この世の物とは思えない断末魔の叫びをあげながら分裂体は倒れていく。その分裂体に“右腕”を向けたザクが呟く。

 

「消えな。斬空極大波!」

 

吹き飛んでいく分裂体。

それらを見送っていると、六人の忍が並んでいるのが目に入った。

 

「それじゃ、私たちも行こうか?準備は大丈夫?」

 

二尾の人柱力だったユギトが他の元人柱力たちに尋ねる。

 

「もちろんッス!いつでも行けるッスよ!」

 

それに元気に答える元七尾の人柱力のフウ。

 

「ああ。」

 

フウとは対照的に言葉数は少ない元六尾の人柱力のウタカタ。

 

「だで。」

 

同じくあまりしゃべらない元五尾の人柱力のハン。

 

「霧の忍たちの様子も気になるが……今はこちらが先か。」

 

140そこそこの身長ながら、その実力は高い元三尾の人柱力のやぐら。

 

「ワシから行く!続け!熔遁 灼河流岩の術!」

 

一番始めに分裂体に攻撃を仕掛けたのは四尾の人柱力だった老紫だった。

元、人柱力たち。尾獣は抜かれていても、体内の尾獣のチャクラが与えた影響で変質したチャクラで尾獣化はできなくとも、ある程度の力が発揮できるとは。これも嬉しい誤算だ。

と、一瞬、尾獣と見間違えるような大きな影が急に消えた。秋道一族の長、秋道チョウザさんが倍化の術を解いたのだろう。

その隣で控える三人に視線を向ける。

いのいちさんの頭に手を当てるシカクさんと、新しくきたチョウザさんを見守るように立つのは加藤ダン。話だけしか聞いたことはないが、大蛇丸様たちの先輩で、且つ、綱手様の婚約者だった人だ。

 

「シカク。」

「ダンさん。アナタは第三陣ですが?」

「いや、そうじゃない。大きくなったね。」

「もうオレもガキがいるんで。アイツにいいカッコを見せてやらねェと。」

「それもそうか。」

「それより…」

 

シカクさんがダンさんに顔を向けた。

 

「…綱手様の方に向かわなくてもいいんですか?」

 

ダンさんは優しい微笑みを浮かべる。

 

「ああ、綱手なら大丈夫。綱手は強いから。それに、揃っているからね。」

 

ダンさんが目を向けた方向に俺も目を向けると、そこには昔、まだ俺が彼らと会う前の木ノ葉の三忍の姿があった。

 




淤能碁呂(オノゴロ)
視界に入る土を変形させて術者の思い通りに動かす万華鏡写輪眼の瞳術。元ネタは古事記にあるオノゴロ島、つまり、日本列島のことである。海をねるねるね~るしたらできたらしい。

球磨囎(クマソ)
淤能碁呂と天照を同時に使用することでできあがる万華鏡写輪眼の瞳術。一番近いイメージとしてはFate/Grand Orderのキャスターのクー・フーリンが使う宝具ウィッカーマン。元ネタは古事記にある大和王権に抵抗したクマソ。その一族が住んでいた所が熊本、つまり、火の国であるので採用した。

梟師(タケル)
術者の身体能力を上げる万華鏡写輪眼の瞳術。右目は攻撃力という概念に作用し、左目は防御力という概念に作用する。BLEACHの動血装(ブルート・アルテリエ)と静血装(ブルート・ヴェーネ)に近いが、こちらは重ね掛けができると設定している。元ネタは古事記に出てくる役職名タケルから。大雑把に言うと副リーダーっぽい纏め役みたいな感じ。

響鳴穿 凶
ドスの手甲の形は変わっており、手袋にいくつもの金属片を付けたような感じになっている。これを鳴らしながらチャクラを籠めることで音をドスは操る。チーンと一回一回しなくていいので、より素早く攻撃できる仕様となっている。

斬空極大波
斬空波より威力が高い斬空極波より威力が高いのが斬空極大波。特殊な攻撃などはない衝撃波である。

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