一流の銅ヤロー   作:クロム・ウェルハーツ

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@101 やっとだよ

「リン。穢土転生組の仕切りはお前に任せる。軍の作戦行動についてはダンゾウ様と相談しろ。できるな?」

「うん。死んでからの修行で穢土転生の人たちへの言葉の伝達は完璧にできるようになってる。ヨロイ、こっちは任せたよ。」

「ああ。」

 

一度、俺たちについてきたリンは瞬身の術でこの場から姿を消した。

目線を前に向ける。

十尾が作り出した荒野で、俺たち七人はマダラの前に並んだ。六道仙人と同じ服を着た俺たちを見るマダラの目が鋭くなる。

風が吹きすさぶ中、マダラは手に持つ団扇をゆっくりと俺に向けた。

 

「なるほど、一筋縄ではいかなそうだ。」

 

俺も曾爺さんから取り返した芭蕉扇を巻物から取り出して、マダラに向かって構える。確か、あの団扇は神樹に成りそこなったと言われた霊樹から作られた法具だったハズ。そして、その能力はチャクラを吸収し、風の性質のチャクラに変換する。放出系の忍術は使えないな。と、なれば、体術かあの団扇に触れないような範囲が狭い忍術しか使わない方がいい。後は、隙を作って芭蕉扇の大技を叩き込むかだな。

 

「私たちが陽動に出るってばね。シスイ。」

「はい、クシナさん。」

 

俺がそう結論を出すと、クシナさんが俺に囁いた。クシナさんとシスイの二人ならば、マダラと言えど初見では反応できないだろう。

 

「行くってばね!うちはマダラ!」

 

九尾が木ノ葉に来た時に奪った九尾のチャクラはクシナさんに乗っけている。息子であるナルトと同じようにチャクラを身に纏ったクシナさんは、その煌めく姿を闇夜に消す。

 

「尾獣閃光弾!」

「なッ!」

 

幾筋もの光がマダラの周りを舞う。写輪眼で見切っていようが反応できない速度。マダラの体が宙に上がる。

 

「カッ!」

 

それで止まるクシナさんじゃない。顛陣界歪(てんじんかいわい)で自分を中心にチャクラを放出させ、マダラを更に高く吹き飛ばそうとするが尾獣閃光弾で吹き飛ばした時に出来た刹那の時間をマダラは見逃さなかった。

クシナさんの放出したチャクラはマダラが咄嗟に背中に構えた団扇に吸収されていく。

 

「甘い!うちは返し!」

「遅い。」

「何ッ!?」

 

シスイの写輪眼はマダラの動きを見切っていた。マダラの団扇の面をシスイが無理やりひっくり返すと、風の性質のチャクラが術者であるマダラを襲う。

 

「グッ!」

 

高く吹き飛ぶマダラ。それを見た師弟が構える。

 

「弥彦!」

「はい!自来也先生!」

 

二人の掌の上でチャクラが乱回転をし始める。

 

「自来也様、弥彦。行くよ!」

 

橙ツチの両手首から炎が噴き出す。

 

「万象天引!」

 

橙ツチが放った炎は弥彦さんと自来也様の手元に引かれる。

これは余談ではあるが、俺のペイン六道には俺のチャクラを分け与え、それぞれの道に対応した六道仙術を使わせている。つまり、ペイン六道の彼らは俺自身と彼ら自身を合わせたチャクラを持っている。つまり、似通ったチャクラを持っている訳だ。

性質の近いチャクラが接近すると共鳴し合う。そして、互いのチャクラが融合した時、最強の螺旋丸ができる。

炎を集め、高速で回転、収縮を繰り返していく炎を取り込んだ螺旋丸。白く輝く玉を二人は支え、それを近づけると二つの玉が合わさり、二人の体をチャクラの渦が取り囲むように発生した。

完成した術を掌に二人はマダラに向かって地を蹴る。

 

「須佐能乎!」

「豪炎太極大玉螺旋丸!」

 

須佐能乎で身を守るマダラだが、豪炎太極大玉螺旋丸は須佐能乎を地面へと勢いよく叩きつけ、一瞬の後、轟音と共に地面に巨大なクレーターを作る。そして、追い打ちと言わんばかりに須佐能乎に空いた穴から紙で出来た蝶が何匹も飛び込んだ。

 

「神の紙者の術。」

 

小南さんが呟くと、須佐能乎が爆発した。起爆札を折り紙の蝶の羽に加工した小南さんの術でクレーターが更に広がる。

 

「芭蕉扇 風の巻!」

 

芭蕉扇を振ると、猛烈な風が巻き起こる。風は地面で燻っていた火を巻き込み、巨大な火炎の竜巻となってマダラに襲い掛かる。その中で白い球を見つけた。瞬身の術で近づく前に目を凝らしてみると、その球の中に居る人影の表情が確認できた。

 

「はぁ……ダメか。」

 

思わず溜息を付く。使い慣れていないハズの輪廻眼の瞳術をここまで使いこなすとは…。大した奴だ。

クレーターが出来たのは小南さんの攻撃かと思ったが、その実、小南さんの攻撃を神羅天征で吹き飛ばしたマダラの攻撃だったか。そして、その後の俺の芭蕉扇での攻撃を餓鬼道の封術吸引で無効化したという所か。芭蕉扇での攻撃はそれまでの攻撃で弱ったマダラをいち早く見つけるための手段で、餓鬼道で無効化されることを期待して放った術ではあるが…。それまでの連続攻撃がこうも効いていないとなると、流石にショックを隠し切れない。

 

「五影共の時より連携が上手くいっているな。」

 

炎の中から出てきたマダラの顔が愉悦に歪む。

 

「第二幕といくか。ヨロイ?」

「こっちはさっさと幕引きをしたいんですけどね。」

「お前も楽しめ。火遁 龍炎大放歌の術!」

 

マダラの口から炎の龍が何匹も現れ、俺たちの視界を埋め尽くす。

 

「ここは私が。」

 

小南さんの体から紙が大量に現れ、マダラの龍炎大放歌の炎に向かっていく。

切り札の二枚目を切り、ここでマダラを殺して置くべきだろう。と、なると陽動が必要だ。地面からの攻撃で目の前からマダラの注意を離す必要がある。

 

「それは私が行くってばね!」

 

俺のやりたいことを察してくれたクシナさんはその両手を地面に埋める。

クシナさんから目線を前に戻すと、小南さんが操る大量の紙がマダラの炎を吸い込んでいた。

 

「ほう…。」

 

マダラの様子を見るに、クシナさんが自分の体の呪符を使って餓鬼道の能力を使ったことを気づいているに違いない。

 

「甘いな。」

 

双邪至。チャクラを形態変化させた腕を地面から相手に向かって突き出すため、普通は避けられないハズだが、マダラはそれを難なく避ける。だが、マダラの視線は下に向かった。

マダラの周りを紙が取り囲む。

 

「シャドーコア。」

 

紙から出来た影が物理的な力を持って針の形状となり、囲むマダラを四方八方から襲う。

完全に虚を突いた攻撃。マダラが気づくと同時に影はマダラの体を貫いていた。

 

「ククク。……マダラ、お前の知らない力だ。双子の弟の神が作り出した世界の武器、ミスティッカー。その中でも他とは隔絶した力を持つ“麒麟シリーズ”の角端(かくたん)の味はどうですか?まぁ、もう聞こえていないでしょうけど。」

 

小南さんに目を合わせる。

 

「小南さん、封印を。」

「ええ。」

 

動かないマダラの体に紙が次々と張り付いていき、その姿を一部の隙もなく固く覆い尽くす。封印は完了した。

後は静観するべきだろう。踵を返し、考えを巡らせる。

俺が持つ原作知識の最後のページではオビトが十尾の人柱力になっていた。これからは、オビトが人柱力になるまでは動かない方がいい。俺自身が十尾の人柱力になることはハゴロモの爺さんからストップが掛けられている。爺さん曰く、精神が余程強くないと十尾に体を逆に乗っ取られるらしい。もし、俺が十尾に乗っ取られ、更に輪廻眼を開眼しているオビトがいなかったらと仮定したら俺の計画は頓挫する可能性が高くなる。そのための予備は残しているが、予備は俺の思い通りするためには最後まで取って置きたいシスイの瞳力が必要不可欠だし、使わない方が賢明だ。

 

「ヨロイ!」

 

シスイが俺の体を抱え、飛びさする。と、今まで俺が居た所の地面から青い刀が生えた。思わぬ事態に背筋が寒くなる。

油断した。あの時、シスイの眼と視界をリンクさせて周りを観察するべきだった。

 

「速いな。」

 

地面から抜け出したマダラ。その彼に向かって俺とシスイ以外の五人が黒刀を持って上から強襲をかける。それを素早く後ろに退くことで躱すマダラ。

 

「一回目の連続攻撃の時に分身と入れ替わったという所かのォ…。」

「ああ、貴様の言う通りだ。そうだな……一人ずつ名を名乗れ。貴様らを砂利ではないと認め、その名を覚えておいてやろう。」

「あのうちはマダラに認められるとはワシもまだまだ捨てたもんじゃないのォ。……アァ、有為転変は世の習い!生と死を超越せしめん蝦蟇仙人!」

「先生、後が使えています。」

「……ヨロイのペイン六道、自来也。」

「右に同じく。小南。」

「同じく、弥彦。」

「右に同じ。橙ツチ。」

「うちはシスイ。」

「四代目火影の妻、クシナ。」

「そこは譲りませんね、クシナさん。」

「当たり前だってばね!私とミナトは強い絆で結ばれてるのよ。」

 

マダラの目が冷たい。空気を換えるためにも俺も軽い真面目な自己紹介をした方がいいかな。

 

「赤銅ヨロイ……救世主。」

「やはり、お前とは相いれん。救世(ぐぜ)を成すのはこのオレ以外にない。」

「相いれないから、今、こうして戦っているんでしょう?」

「フッ。確かにお前の言う通りだ。そして、そのための障害(楽しみ)を用意しているとは…。興が乗る催しに感謝しよう。」

 

瞬時にマダラの表情がこれまで見たことのないようなものに変わる。擬音で例えると“フルフルニィ”だ。間違いない。

マダラの表情に若干、引き気味になっていると、懐にしまっていた携帯電話が震えた。取り出して通話ボタンを押し、耳に当てる。

 

「もしもし。アンコか?」

「そう!今からそっちに向かうから!」

「サスケは?」

「忍連合に協力するらしい。」

「それは良かった。」

 

アンコと話していると、十尾の咆哮が全ての音を上塗りした。

 

「な、何?今の音は?」

「俺の先祖のペットが反抗期に入ったらしくてな。そのペットの唸り声だ。」

 

グオオオってウルサイな、ホント。

 

「うん?」

 

空気が変わった。

空を見上げる。

 

「マズイな。アンコ、一旦、切るぞ。」

 

携帯電話を切り、懐に入れる。

雷鳴と共に今まで晴れていた空が急速に曇っていく。天変地異に耐えられるのは……俺とクシナさんぐらいか。チャクラの鎧を纏いながら、アイコンタクトで五人に合図を出すと、頷いた五人は飛雷神の術で姿を消す。天変地異の中ではマダラも動くことはできないだろう。そう判断しての戦力の一時撤退だ。

 

「クシナさん!ナルトを守りに行きますよ!」

「分かったってばね!」

 

九尾チャクラモードの速さを活かしたクシナさんがナルトの方向へと向かっていく。

 

「ヨロイ、お前は行かなくていいのか?」

「マダラさんが見逃してくれるっていうなら行きたいんですけどね。」

「ああ、見逃してやろう。」

「は?」

「柱間が来るまでは他の事に気を割きたくはないからな。」

「ああ、そういうことですか。それじゃ、お言葉に甘えて。」

 

一瞬、呆けてしまったがマダラのチャクラを感知すると嘘を言うパターンが検出できなかった。嘘は言っていないと判断し、飛雷神の術でクシナさんの元に飛ぶ。

 

「母ちゃん?ヨロイの兄ちゃんも?」

「ナルト!」

「クシナさん、落ち着いて。」

 

チャクラの鎧を纏いながら、クシナさんの体を無理矢理十尾へと向けるのと同時だった。空間が爆発したのは。

風が土や岩を持ち上げながら迫り、幾筋もの雷が目の前を白くする。この世の災厄を詰め込んだ十尾の攻撃が全てを飲み込んでいく。

 

「デタラメにも程がある。」

 

思わず悪態が口の中から飛び出す。尾獣玉の破壊規模なんて目じゃない。分かっていたことだが、いざ目の当たりにするとその力に辟易する。

辺りを一度、見渡して被害を確認する。ナルトが渡したチャクラのお陰で連合軍の被害は皆無に等しい。目線を上げていくと十尾と目が合った。

 

「オオオオ!」

 

俺の眼に気が付いたか。かつて、十尾を封じた六道仙人と同じ眼、そして、俺の後ろにいる十尾を分散させた尾獣たちのチャクラを持つ者。

 

「ナルト!」

 

ナルトが俺たちの前に出た。彼を止めるためにクシナさんは呼びかける。

 

「母ちゃん、大丈夫だってばよ。」

 

ナルトの言葉とは裏腹に九喇嘛モードが解ける。

 

「ナルト。」

「ヨロイの兄ちゃん…。」

「俺たちに任せろ。」

「でも!」

「仲間を信じてくれないか?」

「仲間…。」

 

十尾の体が変化していく中、俺の後ろに再び俺のペイン六道たちが姿を現す。

 

「ここはワシらにも任せるんだのォ。」

「エロ仙人…。」

「このままじゃ、見せ場が足りん。」

 

そう言って、笑う自来也様。

 

「サクラ、ナルトの回復を。」

「ハイッ!」

 

再びナルトの前に出ながら後ろに声を掛けると張りのある声が響いた。それと、ナルトを守るために駆け付けたいくつもの足音も。

十尾の変化が終わった。形を花のように変えた口元に高密度のチャクラが圧縮されていく。

目を閉じ、穢土転生の長門に感覚を繋げる。何もしなくていいと伝えるためだ。

 

-ヨロイさん。あの十尾の攻撃を止める策がある。

 

頭の中にシカマルの声が響いた。すぐに返事を返す。

 

-ああ、やれ。

-いいんスか?

-お前の活躍は聞いている。作戦を立てるのが上手いということもな。問題はない。俺にして欲しいことを言ってくれ。

-じゃあ、ヨロイさんにはあの攻撃をオレたちが止めれなかった時の保険として動いて欲しいです。

-分かった。あと、ビーさんはナルトと同じようにこの間にチャクラの回復をして貰うように伝えてくれ。

-ハイッ!

 

チャクラ通信を終えると同時に、目の前にいくつもの土の壁が出来上がる。そして、そのすぐ後に、土の壁が壊されていく音も聞こえてきた。止められはしないものの、少しスピードは緩んだ。

マーキング付きクナイを構えると、軽い音を立てながら隣に一人の男が現れた。

 

「ヨロイ、ここはオレが。」

「お願いします…ミナト先生。」

 

目の前に迫っていた十尾の尾獣玉が掻き消えた。

 

「お待たせ、ナルト。それから…クシナ。」

 


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