突如、遠くの方でチャクラを感じた。感知忍術を使っていなのにも関わらず、感じることができるとは。
隣の女が俺の肩を叩いて疑問を口にする。
「今の…ナルトのチャクラよね?」
「だな。では、ここは一つナルトの終生のライバルであるサスケくんに聞いてみましょう。サスケくん、今のチャクラから分かるようにナルトに実力が完璧に負けているようですが、今の心境をどうアアッ!」
この時のためだけに用意していたインタビュー用のマイクをサスケに叩き落とされた。地面を転がっていくマイクは俺たちが立っている所から落ちて、その姿を消してしまった。なんか前にもこんなことがあったなァとサスケの方を向く。前はオビトだったっけ?
どうやら、俺は一部を除くうちは一族との相性は良くないみたいだ。
「ヨロイ、説明なさい。ナルトくんたちの状況を。」
「まぁ、順番に説明していきましょうか。目的地に向かいながら、ね。」
印を組んで木ノ葉の里を覆う結界を解除して中へと入り込む。壁に垂直に立ちながら歩き、口を開く。
「まずは…大蛇丸様が復活した所からですね。」
俺に続いて壁に立ち、下に降りながら大蛇丸様は頷いた。
+++
九喇嘛モードになったナルトは手を繋ぐヒナタにチャクラを渡す。黄色のチャクラがヒナタを包み込んでいく。それを見たナルトは印を組み、影分身を作り出すと、その影分身は忍連合軍の忍たちと手を合わせていく。手と手が一瞬、触れるごとに視界の黄色の割合が増えていく。
その状況をマズイと考えたオビトが十尾の尾を慌てて差し向けてくるが、それはヒナタの八卦空掌で吹き飛ばされた。シカクさんの予測通り、いや、それ以上の効果があるのは間違いない。ナルトの力で繋いでいく連合軍。
「リー、もう泣くな!」
「う~!」
「リーよ。我らがネジの想いを捨てぬ限り、ネジは我々の中で繋がり生きている。」
「……お前らにいいことを教えてやる。」
十尾の上でオビトの服が旗めく。
「その繋がりが今のオレを作ったのだ!それは強い呪いであることを知っておけ!」
「…。」
「ナルト…。」
カカシだ。黙るナルトにカカシは顔を向ける。
「オレが言ったんだよな、お前に。『仲間は絶対、殺させやしない』と。……アレはな、オレ自身に言い聞かせた戒めでもあるんだ。オレは今まで多くの仲間を守れなかった。だから、今度こそ仲間を守ると口にする。だが、その度に仲間を守れなかった事実を見つめ直すことになる。その“傷”と…一生向き合っていくことになるんだ。」
「だから、忍び耐える者…忍者なんだろ、オレたちは。忘れさせてなんかくれねーよ。……そもそも、その傷が仲間がここで生きてるってことじゃねーのかよ。」
ナルトは自分の胸を叩く。
「夢の中で自分が傷つかねーよーに作った仲間なんて本物じゃねェ…。それって本物の仲間を消すってことだろ?……呪いだろーが何だろーが、オレは本当のネジをここに置いときてェ!」
「それは、茨の道だぞ。死んでいった仲間を想い心が擦り切れた奴を俺たちは見てきた。それでも…」
「それでも!オレは忘れたくねェんだ。……ヨロイの兄ちゃん。オレってばもう子どもじゃねェ。もう、死ぬってことがどんなもんか分かってる。」
「そうか。なら、何もいうことはない。」
俺は手を伸ばし、ナルトと手を合わせる。
「あの時よりもずっと…。」
以前、九尾襲来の際に奪ったチャクラより邪念が格段に少ない。濁りがない分、チャクラとしての使用はこちらの方がいいし、それに、俺のチャクラの型に合わせていることでロスも少なく運用できるだろう。
「ナルト!今の内だ!行け!」
後ろから声が響いた。
ナルトの力を受け、動き出した十尾へと挑んでいく忍連合軍を見ながらタイミングを計る。
俺たちの周囲の地面に十尾の尾がめり込み、衝撃波を発生させる。
「ネジの死は…無駄にはせん!」
ネジの伯父であるヒアシさんが叫ぶ。
「フン…一度、掛けてしまうと死なねば消えぬ呪印。日向の宗家と分家が生んできた忍の呪い。カゴの中で死を待つだけの存在。」
オビトは十尾の尾で囲まれている俺たちが鳥だと言いたいらしい。
「ゲンマ。中忍試験の時に、ネジになんか言ってただろ?それをオビトに教えてやったら?」
「ああ、アレか。……捕まった鳥だってな。賢くなりゃ自分の嘴でカゴのフタ開けようとすんだ。また自由に空を飛びたいと、あきらめずにな。」
「死んだ者はもう動かない。空などは飛べないと分かっているだろう?」
「……ネジが死んだって?」
ゲンマは咥えている千本を噛みしめる。
「ネジは死んでないってナルトが言ってただろうが。」
ゲンマの声でナルトが飛び出した。
「ネジの……ネジの意志は!」
カゴを破り空の果てまで駆けていく一羽の黄の鳥。
「まだ死んじゃいねーんだよ!」
十尾の頭からマダラとオビトが振り落とされる。
ここで、プランCに変更してもいいが、邪魔が入るだろう。プランAのまま進めるべきだな。
瞬身の術でマダラの前に身を現す。
「ヨロイか。さっきは殺し損ねたからな。今度は完全に冥土に送ってやろう。」
マダラには何も答えず、掌を合わせる。
「口寄せの術。」
俺の後ろに六人の忍が煙を纏って現れた。その六つの輪廻眼と俺の二つの輪廻眼がマダラを見据える。
「マダラ。アンタにはここに居て貰う。」
「……面白い!」
+++
「っていう感じです。」
戦争について思い出しながら、出すべき情報と出すべきでない情報をしっかり見極めて大蛇丸様御一行+アンコに向けて説明する。
輪廻眼の能力でナルトの近くにいる俺から俺のペイン六道を介し、影分身体の俺へと来た戦場の情報を口に出していく。外道の術を使うと、チャクラを使う量が増えるからあまり使いたくはなかったが、影分身である俺の役目はもうほとんどない。
「少し待っていてください。」
目の前のボロボロの建物に入り、一つの仮面を壁から外して懐に収める。
「見つけました。行きましょうか、南賀ノ神社へ。」
再び、木ノ葉の里の中を歩いていると、突然、サスケがある建物の天井にあるタンクの上へと飛び乗った。
「ここも……随分、変わったな。」
下からサスケの姿を見つめる俺たち五人。
「何だ、サスケの奴?」
「私が木ノ葉崩しをやる前と同じね。」
「何が?」
「例え、彼や里が変わってしまったとしても、ここは彼の故郷に変わりない。感傷に浸り、過去をなぞることで己の決意を再確認する時間が必要なのよ。」
「大蛇丸様の場合は色々な所に顔を出してこねくり回した挙句、失敗するというコントみたいな流れだったんですけどね。」
「……。」
「大蛇丸様が目立つ動きをしなければ、木ノ葉崩しは成功していたのに羽目を外して出しゃばるから腕を封印されるなんてマヌケな羽目に。」
「もうそれは済んだことよ。早く行くわよ。」
「そもそも木ノ葉崩しとか迷惑なことを計画するな!」
計画を練った俺にはアンコの言葉は耳に痛かった。
木ノ葉の里をまた歩き、うちは一族の居住区だった場所に赴く。長門のせいで、うちはの居住区は跡形もない。まぁ、ゴーストタウンになっていたし、死んだうちは一族が化けて出ると実しやかに言われていて業者が嫌がった上に、サスケへの同情の念で残っていただけの廃墟。サスケには悪いが、土地活用の面から見て長門の木ノ葉襲来は役に立った一つの例である。
「ここだ。」
サスケが足を止める。そこで写輪眼を発動したサスケが地面を見ると、石のフタがゆっくりと浮きあがった。
「へー、術で開けんだ。入口の石。」
水月が感心したという口ぶりで呟く。
「うちはの南賀ノ神社は跡形もないのね。」
「上辺はいい。大事なのはその下だ。……行くぞ。」
地下に降り、火遁の術を使って石碑の横に火を点け、明かりを確保する。
「なら、始めるわよ。ヨロイ、死神の面を。」
大蛇丸様に仮面を渡す。
「少し離れていなさい。」
俺たちが下がったのを確認した大蛇丸様は仮面を被る。と、場の空気が変わった。冷たく、腐ったような空間の中にいる感覚を味わい、それを引き起こした原因であるものを見る。ボサボサの髪に般若のような顔をした人型の鬼。屍鬼封尽の死神だ。
死神は緩やかな動きで小刀を取り出し、それを自分の腹に突き立てる。そして、横にそれを引くと死神の腹から五つの人魂が飛び出した。
「重吾!」
「分かりました。」
重吾に呼びかけると、素早く彼はサスケの体に手を押し当てる。重吾は自らの体を犠牲に呪印仙力をサスケに与えると、サスケの体から白ゼツが6体出てきた。
「ほっ!」
「蛇睨呪縛。」
水月が一人の白ゼツを捕まえ、アンコが後の五人を口寄せした蛇で縛り上げる。
「くそ…何で!?」
「お前たち柱間細胞は実験で知り尽くしてるのよ。もちろん、感知する方法もね。」
大蛇丸様と白ゼツの一人が話している内に四体の白ゼツを引きづり、横一列に並べる。
水月に目線を合わせると、彼は頷いた。セッティング完了。
「大蛇丸様。準備できました。」
「そう。なら、やるわよ。……穢土転生の術!」
狭い空間に白ゼツの悲鳴が響く。
「さぁ、来るわよ!全てを知る者たち……先代の火影たちが。」
水月が捕まえていた白ゼツの口から侵入して乗っ取った大蛇丸様と、サスケに呪印仙力を与えた時に体が縮んだ重吾が吸収した白ゼツ、そして、穢土転生の術の生贄にされた四体の白ゼツでここに居た全ての白ゼツは消えた。
今、ここにいるのは俺たちと火影たちだけ。と、二代目火影が大蛇丸様に目を止める。
「また、大蛇丸とかいう忍か!」
「どういうことだ?」
初代火影が疑問を口にする。それに素早く反応する三代目。
「我々を封印していた屍鬼封尽の術。恐らくは、それを解いたのでしょう。そして、その後、穢土転生を…。じゃろ?ヨロイ。」
「ええ、三代目のいう通りです。」
「そして、お前がそちら側にいるということと、前回、大蛇丸と戦った時に見た里の被害から見て、お主から渡された計画書が間違っていた。そこから考えて、お主は木ノ葉を裏切っておった。それでいいのかの?」
「どういうことだい?ヨロイ?」
三代目の言葉でミナト先生までが俺を睨みつける。口を開こうとしたアンコの口を押えて黙らせる。ここでアンコに入られたらごちゃごちゃになりかねないし。
「元々、俺が木ノ葉に居たのはスパイとしてです。大蛇丸様が里抜けをした時の予備として木ノ葉に居ただけ。ですから、裏切るも何も始めから味方ではなかったんですよ。初めて木ノ葉に来た時から。」
「待て!あの時、お主は2歳だった。どういうことじゃ?」
「2歳で、あの頭脳。だから、私は部下としてヨロイを迎え入れたんですよ、三代目。」
「なんと!?」
「まぁ、そんなことはどうでもいいです。」
「どうでもいいとは何じゃ!」
「うちはマダラが復活しました。」
火影たちの顔色が変わる。しかし、流石というか初代火影の顔色は全く変わらなかった。
「ヨロイとか言ったな?今は貴様の生い立ちや前回の襲撃については置いておこう。で、マダラが生き返ったとはどういうことか説明しろ。」
「流石は二代目様。何を優先するべきかお分かりになられている。」
「世事はいい。早く話せ。」
「マダラは自分の子孫を使い、死んだ自分を復活させるよう動いていました。」
「子孫…。まさか!?」
「四代目のお気づきの通りです。うちはオビトがマダラの代理として動いていました。」
「あの時の仮面の男は、まさか…。」
「オビトです。」
「ちょい、待ち!」
初代火影が待ったを掛ける。
「お前は誰ぞ?」
彼はミナト先生に尋ねる。その様子を見ていた二代目は溜息を大きくついた。
「…兄者。今はそのことは後でいい。それに、今までの会話から分からなかったのか?」
「いや、ずっと気になっておってな。お前たちが話している時、ずっと、この者が誰か考えておったのだ。」
「……なんかイメージと違うな、忍の神。」
水月がぼやく。初代を直接知っている二代目と三代目、そして、原作知識がある俺以外の人間の心の中を代弁した彼にはMVPを上げようと心の中で誉める。
「えっと…四代目火影、波風ミナトといいます。」
「ほお、四代目とな!」
初代火影は嬉しそうにミナト先生に近づく。
「うむ!うむ!里も長く安定しておるようだな。」
「あの~、安定しているかどうかは私もよく分かりません。なんせ、私は三代目より先に死んで封印されてましたから。」
「ぬ!?そうであったか。猿飛と一緒に封印されたのとは別件でか?」
「ハイ。別の事件で。」
「して、五代目火影は誰ぞ?」
「お孫様の綱手姫ですよ。」
大蛇丸様の言葉で、初めて初代火影の顔色が変わった。
「綱か…。今、里は大丈夫ぞ?」
「な、何か心配でも?」
「初孫だったんで、果てしなく甘やかした!終いにはオレの賭事まで覚えて、それはもう…ガハハハハ!」
「兄者!それどころではない!マダラが復活したのだぞ!」
「マダラが?一体、どうやって?」
「それを聞いている途中に兄者が邪魔したのだ!」
「ぬ!?それは済まんかった。」
左手で額を押さえる二代目。しかし、すぐに立ち直り俺に視線を向ける。
「で、今、マダラはどうしている?ここから遠くにマダラのチャクラを感じるが、今は動いておらんということしか分からん。説明しろ。」
「はい。復活というか、二代目様。アナタの作った穢土転生を使える忍が大蛇丸様以外に現れましてね。そして、マダラの死体を見つけ、穢土転生を行ったんです。」
「それが、マダラの子孫か?」
「いえ、穢土転生が使える忍は違います。マダラの子孫、うちはオビトの協力者である人物が穢土転生を行いました。そして、オビトが第四次忍界大戦を宣戦。世界を巻き込み、マダラの目的である世界を幻術に嵌めるために行動していました。」
「世界を幻術に嵌める?」
「尾獣を集め、十尾を復活させて、十尾の力で増幅させた写輪眼の力で世界全ての生き物を夢の世界に連れていくとのことです。で、そんなことは認められないでしょう?」
「当たり前だ!それは、全ての人間の自由を奪うことに他ならない。それは認められない。」
初代火影が大きく頷く。
「それでは、協力してくれるということでいいですね?二代目も、三代目も四代目も。」
「ああ、兄者のいう通り夢の世界というのは認められん。協力しよう。」
「確かに、ここはお主に協力するしかなさそうだのう。」
「ヨロイ。君のいうことは分かった。けど…」
「皆さんの同意が得られたということで次に進みたいと思います。」
「ちょっと、ストップ!」
「残念ですけど、時間がないんです!分かってくれますよね?ミナト先生?」
「いや、ちょっと待って!」
「分かってくれますよね?ミナト先生?」
「オレは!」
「ありがとうございます!では、皆さんの同意が得られたということで、ここにいるうちはサスケくんの疑問にお答えしていくコーナーに移りたいと思います!」
ヨロイ、何を企んでいるんだい?というミナト先生の言葉はガン無視でサスケに振り向く。
「さぁ、尋ねてサスケ。ハリーアップ!」
「……オレは、うちはサスケ。アンタたち火影に聞きたいことがある。」
サスケが三代目火影と話し始めたのを見て、ミナト先生が俺に向かって歩いて来る。
「ヨロイ、どういうことだい?言質を取った上で、相手の行動を制限しようという君のいつもの手口だよね?」
「……流石はミナト先生。よく分かっていらっしゃいます。サスケはマダラ対策に必要な人材。ここで彼の心のしこりを取ることがマダラを倒すために必要なことなんです。だから、言質を取る必要があった。二代目火影の行動をより制限するために。」
「ん?」
ミナト先生が分からないという顔をする。ああ、こういう表情はナルトに似ているなと目を細めると二代目の声が響いた。
「サル!だらだらと話している場合ではないと分かっているのか?」
やっぱりね。
二代目火影に眼を合わせる。
「二代目様。落ち着いてください。」
「落ち着けるか!?マダラが復活したという意味を貴様らは分かっていない!」
「いえ、マダラとは闘ったので彼の力は正確に把握しています。」
「嘘を言え!マダラと闘い、生き残れるような者は兄者以外にはおらん!」
「そうは言われましても事実です。ま、それはいいです。証明はこれからマダラと戦ってからしますので。」
眼を見開いて二代目火影を見る。
「そう言えば、二代目様。アナタは先ほど、こう仰いましたよね?『ああ、兄者のいう通り夢の世界というのは認められん。協力しよう。』と。その協力の一つがサスケの疑問を解消するということも入っているんですけど。」
「は?ふざけるな。」
「でも、協力してくれるんじゃないんですか?」
「それはオレのいう協力に入ってい『る』!」
「そういう訳で少し時間を頂くのを許してください。」
「……分かった。」
懐から取り出した携帯電話をアンコに渡す。
「ヨロイ、これは?」
「サスケが“答え”を出したら、これで俺に連絡を頼む。ここを押せば、俺に繋がるから。」
「どういうこと?」
「もう時間がない。チャクラ切れだ。」
「ああ、そういうこと。それじゃ、ヨロイ。私が戦場に行くまで死ぬなよ。」
「誰に向かって言ってんだよ。」
「アンタ、すぐ油断するからさ。」
アンコは俺の胸に拳を当て、真面目な顔を見せる。
「勝つよ。」
「当然。」
目の前が煙に包まれる。
……分かってるよ、アンコ。
「行くぞ……橙ツチ、クシナさん、シスイ、自来也様、弥彦さん、小南さん。」
煙が風に飛ばされる。俺の後ろにいる6つの影が力強く頷いた。