一流の銅ヤロー   作:クロム・ウェルハーツ

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@97 到着

「大蛇丸に会うってどういうこと?」

 

水月は焦った顔つきでサスケに尋ねる。

 

「それに、“全てを知る人間”って何なの?」

「…お前らには関係のないことだ。」

「何だよ…訳わかんないね。ンなことより…大蛇丸を復活させるなんてダメだ。」

 

額から汗を流した水月を見つつ俺は地面に腰を下ろしながら、地面に横たえたアンコの首筋をなぞる。

 

「その巻物の力を使うのに大蛇丸にお願いするつもりなんだろうけど…時間かければ君にだってできるようになるって。そう思ったからこそ君を捜して、態々こうして…。」

「大蛇丸でなければできないこともある。」

「サスケ、君はさ…言ってみれば大蛇丸の一番お気に入りの弟子だった訳だろ?なら、君にだって…」

「水月。お前…。」

 

サスケはそう言って言葉を切る。

 

「…何?」

「大蛇丸をナメ過ぎだ。」

「バッ、バカ!全然ナメてなんかないよ!むしろ、その逆だって!君が大蛇丸を倒せたのは、たまたま奴の両腕が屍鬼封尽で使い物にならなくなってただけさ!君の方こそ奴をナメてる!仮に奴が復活したとしても、おそらく両腕は使えないだろう!でも、だからってヤバイ!また君の体、狙われるよ!奴がこの戦争を知ったら乗っからない訳がない!奴も木ノ葉を潰したいんだし!」

「…と、言われてますが、どう思われます?大蛇丸様。」

「そうね、水月の言うことは間違いだらけという所ね。」

 

水月は首が捥げるんじゃないだろうかという勢いで俺たちの方に振り向いた。

 

「お…大蛇丸?」

「様を付けろよ、デコ助野郎。」

「大蛇丸様…え、何で?」

「こう、ちょちょいのちょいっと、ね。分かるだろ?」

「全然分かりません!何の説明にもなってないじゃないですか!」

 

泣きべそを掻きながら叫ぶ水月。そして、素早くサスケの隣に移動しながら油断なく俺と大蛇丸様を見つめる。

 

「大蛇丸。アンタにやってもらいたいことがある。」

「あら、久々の再会なのに冷たいのね、サスケくん。…まぁ、いいわ。ヨロイ、私の本体の方はどうなったのかしら?」

「もう少し出し惜しみしたいなと思いましてー。」

「早く用意なさい。そうね…。」

 

大蛇丸様はサスケが右手に持つ巻物に目を向ける。

 

「サスケくんのお願いを聞いてあげる方からしましょうか。」

「大蛇丸。知っているのか?」

「ええ、もちろん。呪印は私の仙術チャクラを流し込んだもの。それは分離した私の意識でもある。ヨロイの封印のせいで彼が近くにいる時は周りの状況が全く分からなくなる時もあったのだけどね。」

 

アンコとのプライベートは大蛇丸様に見られたくないもので。

 

「アンタはこの戦争のことを知っていると考えていいんだな?」

「もちろん…。ただ、それについて一つだけ言っておくわ、水月?」

「?」

「私…この戦争には興味ないから。」

「えェ!?」

「もう他人が始めてしまった戦争だしね。それに、マダラのいう無限月読には賛同できない。未だに興味があるとすれば…サスケくん。アナタのその若い体ぐらいよ。」

 

サスケに捕食者としての目を向ける大蛇丸様。怖い。

そんな大蛇丸様を横目に俺はアンコに水薬を飲ませながらチャクラを送り込む。

 

「と、言っても今の私にはそれを奪えるほどの力はないしね。」

 

少し冗談めかしていた大蛇丸様の声が変わった。

 

「…サスケくん。これからアナタがどうするつもりなのか聞いてもいいかしら?」

「オレは…あまりに何も知らない。奴らに全てを聞く。」

「全て…?そんなこと知らなくてもいいじゃない。君はまだ子どもなんだから。」

「そうじゃない。」

 

一旦、言葉を切るサスケ。

 

「今はもう子どもじゃない。子どもではいられない。…そもそもの始まりはなんだったのか。オレはどうあるべきであり、どう行動すべきなのか。」

「復讐を迷ってるの?」

「違う。復讐自体を迷っている訳ではない。イタチと再会し、前にも増して木ノ葉への憎しみは強くなった。」

「…。」

「ただ…汚名を着せられ、死してなお木ノ葉の忍として里を想い…里を守ろうとしたイタチのその気持ちとは…。」

 

サスケは目を伏せる。

 

「イタチとは…?一族とは…?里とは…?そして…全てを知り、自分で考え、答えを出し…己の意志と眼で成すべきことを見据えたい。」

「今のアナタ…悪くないわね。“器”にするには少しもったいない気もしてきたわ。…協力してあげる。付いて来なさい。」

「場所はどこだ?」

「フフ…アナタもよく知ってる場所よ。」

 

そう言って、大蛇丸様は洞窟の天井に空いた穴を見上げる。

ここだ!『行くわよ』の台詞を俺が言う!

 

「さぁ、行きましょう。」

 

しかし、それは叶わなかった。敵わなかった理由。そう、それは俺の油断が大きい。

口を開いた瞬間、右腕が絡めとられ、次いで、首元と胸元に足が当てられる。バランスを崩した俺の体は地面に沈み込み、体とは逆に右腕はこれでもかという程に伸ばされる。

 

「痛い痛い痛い!ちょっ!止めて!消えちゃう消えちゃう!マジホントゴメン!あたたたた!いや、聞いてェ!聞けッ!ごめんなさい!」

 

肩がミシミシ言ってる!

 

「アヒャヒャヒャヒャ!」

 

ヤベェ、痛すぎて笑いが出てきた。

 

「そのぐらいにしてあげたら?アンコ。」

 

大蛇丸様が滅多に見せない優しい声で諭すが、それをガン無視して俺の腕を腕ひしぎ逆十字固めでガンギマリしてくるアンコ。痛い。そういえば、忍には縄抜けの術というものがあってだな。チャクラを使って関節を外し、縛られた縄から抜け出すという下忍でも使える術があるんだけど、問題は関節を外さないと抜けれない訳で、アンコは俺の関節を外さないように上手く力を調節して極めて来る。極めて厄介だ。涙が出てくるよ、マジ。

ミスミのように軟の改造をしておけばよかった。ほら、軟の改造でニュルンと絡みつけるし…。

 

「アガガガガガ!」

 

アンコが力を強める。もう呼吸もできなくなってきた。俺は…このまま消えるのか。

全てを諦めた俺の腕の痛みが外れた。

 

「で?なんでアンタはサスケと仲良く話してる訳?それに、大蛇丸もいるし、そこのサスケの仲間は鉄の国に拘束されてるって聞いていたんだけど?」

「それには、色々ありましてー。」

「早く話して。」

「ハッ!」

 

アンコの目が冷たいものに変わった。これまでの経験上これ以上はマズイ。これ以上に進んだことは一度としてないけれど、忍としての感覚が警鐘を三三七拍子で鳴らしている。『ニ・ゲ・ロ!ニ・ゲ・ロ!イ・ノ・チ・ダ・イ・ジ・ニ!』っていう副音声付きで。

こういう時はアンコの要求を全て呑むべきである。

 

「穢土転生で蘇ったイタチと、イタチに付いてきたサスケがカブトの穢土転生を解いた。そして、今からサスケが歴代火影に里の在り方とかを聞こうと大蛇丸様を蘇らせたって所。」

「ふーん。よく分からないけど、敵じゃないってことね?」

「うん、そうだな。」

 

『今の所は』って但し書きが付くけど。

 

「なら、さっさとサスケの用事を済ますわよ!ほら、準備しなさい!」

 

俺たちを促すアンコ。

 

「なぁ、なんでそんなに張り切ってんの?」

「決まってるでしょ!潜入、監視の任務だったから戦いたくてウズウズしてんのよ。けど、サスケや大蛇丸がここにいるから見張っておかないとね。だから、サスケの用事をさっさと終わらせて早く戦場に行きたいのよ。はぁー、戦場が楽しみだわ。」

 

恍惚とした表情で語るアンコはとても楽しそうだった。そんなアンコを見た水月の表情と横にいる重吾の無表情のコントラストが素晴らしかったのをここに明記しておく。

 

+++

 

「人型の封印像と見られるチャクラがロストしました!状況から見て、ナルトとビーさんの尾獣玉の攻撃が当たったと思われます!」

 

本部に歓声が沸く。

 

「よし!後はマダラとオビトだな!…ヨロイ!五影の治療はどうなっている?」

「現場で治療中です。あと、30分はかかるかと。…シカクさん。少々マズイ事態になっちゃったみたいです。」

「どういうことだ?」

「感知水球を見てください。」

「これは…?」

 

一点に伸びるように膨らむ感知水球。前例のない事態にシカクさんが固まる。

 

「十尾の封印が解かれたみたいですね。」

「そうだな。」

「あれ?あまり驚いていないようですが。」

「予想はしていた。金銀兄弟の封印架が消えたという報告があってからな。…全員、気を引き締めろ!これからが、本番だ!」

『ハッ!』

 

慌ただしくなる本部を見ながら椅子に深く腰掛ける。

マダラと戦っていた“俺”が戦況を立て直すために飛雷神の術で本部に移動したとシカクさんたちに報告し、五影たちが危ないと医療部隊をマダラと戦っていた五影の元に送った。俺の双蛇相殺の術でマダラを一度殺した上で封印ができることを狙っていたが、マダラはあの状況で手を打ち、封印しに来た五影を返り討ちにしたらしい。

 

「各部隊の状況は?」

「あと、数分で全部隊到着します!」

 

さてと…一つ二つ準備して俺も戦場に向かうか。

椅子から立ち上がり、シカクさんに声を掛ける。

 

「シカクさん、俺ももう一度出ます。ですので、本部の指揮はシカクさんが取ってください。」

「ああ、分かった。ここが最終戦となるだろう。頼むぞ。」

「もちろんです。先ほどの戦いでマダラの動きを分析しました。もう負けはしません。」

 

印を組み、飛雷神の術で飛ぶ。

予めマーキングをしていた本部の最上階に降り立ち、別の術を発動させる。

 

「口寄せ 穢土転生。」

 

音もなく俺の目の前に棺が一つ現れた。その棺の扉が少し音を立てて開く。

 

「…ヨロイさん。」

「そう睨むな。俺はナルトの味方だ。そして、それはお前もだろう?イタチ。」

 

イタチは警戒を崩さない。懐に手を入れるとイタチの顔が強張り眼を変える。

 

「そう警戒するな。戦況が一気に動いてな。俺もすぐに行かなきゃならない。お前にやって貰いたいことはここに書いている。」

 

巻物をイタチに向かって放る。

 

「俺を信じてくれ。」

「信じるに足るものがアナタにはない。」

「口寄せの術。」

 

ボンッと軽い音を立てて一人の男が現れた。煙の中から現れた人物を見て、イタチの目が大きく見開かれた。

 

「…シスイ。」

「久しぶりだな、イタチ。」

「お前…なのか?」

「ああ、うちはシスイはオレだ。…済まなかった。あの時、お前に押し付けるようにして。」

「いや、いいんだ。それより、シスイ。なぜ、お前がこの人と行動を共にしているんだ?彼はダンゾウと繋がっていたハズだ。」

「ヨロイの立場は色々と複雑だったからな。けど、こいつのことは信じられる。ずっと同じチームでやってきてたからな。」

「…。」

「イタチ、ヨロイを信じてくれ。」

 

言葉はなくイタチは押し黙ったまま。

 

「イタチ…。」

「シスイ。オレは他人を信じず、己の力だけで事を成そうとしていた。そして、それは失敗だった。だから、今度は他人を信じてみようと思う。…ヨロイさん。他でもないアナタを。」

「ありがとな、イタチ。…シスイ。お前は待機だ。」

「分かった。」

 

掌を合わせ、逆口寄せでシスイをアジトへと送り届ける。

 

「俺は行く。ここはお前“たち”に任せたぞ。ああ、言い忘れていた。本部の者にその巻物を見せたらスムーズにいくハズだ。」

「何がですか?」

 

イタチは不思議そうな表情を浮かべる。

 

「退避が。あとは頼む。…飛雷神の術!」

 

+++

 

飛雷神の術で飛んだ先には既に忍たちが到着していた。

その中を通り抜け、目の前にいるうずまきを背負った忍の肩を叩く。

 

「アイツらに教えてやれ。」

「分かってるってばよ。」

 

ナルトは指を十字に組む。

と、俺たちを覆っていた霧が猛烈な風で消し飛ばされた。

 

「これでもうウゴウノシュウってのじゃねェ…!今、ここにあるのは…忍連合軍……の術だ!超スゲー忍史上、最高最強の忍術だってばよ!無限月読に勝る術だ…覚えとけ!」

 

ナルトの後ろに並ぶ忍連合軍。

ナルトの影分身じゃない。消えることのない本物の忍たちだ。

さぁ……始めよう。

 


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