暗殺教室─私の進む道─   作:0波音0

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名無しの時間

渚side

今、E組の教室は喜びとはまた違ったざわめきで満ちていた。原因はカルマ君が見つけてきて、そのまま教卓に乗せられたアミサちゃんの二学期期末テスト答案用紙。……正確には国語、数学、理科、社会、英語、五教科全ての答案が『100点満点』の回答がされてるのに、上から0点と書き換えられた、だけど。E組全員50位以内という目標を達成できたかと思えた矢先の出来事だったから、驚きどころの話じゃなくて……とりあえず、僕等だけでコレについての話し合いをしているところ。

 

「原因……理由っていってもなー……、……アミサちゃんがこの結果に納得できなくて、自分で上から0点って書き換えたとか」

 

「100点が納得できないってどんなだよ……まず、全校に貼り出される順位表に名前がない時点で本校舎側も結果は把握してるってことだろ?自分で書き換えたって線は無くなるんじゃないか?」

 

「……考えたくねーけど……本校舎の先生の嫌がらせか?」

 

「本校舎の先生がアミサちゃんの名前をわざと消して、0点扱いにしたってこと?」

 

「……おう。生徒目線でのE組差別はだいぶ落ち着いてきてるけど、先生からのは別だろ……」

 

「……確かに、真尾はE組落ちの時に先生との確執があったわけだし……有り得るな」

 

「……いや、多分これはアミーシャが自分でやったんだと思う。名前の記入欄がキレイすぎる……一度書いて消されたんだったら跡が残るはずだよ」

 

一枚の答案……多分数学だね、それを手にして空白の記入欄を指でなぞるカルマ君に、皆が何も言えなくなる。見せてもらった答案の最終問題には、ほんの数行だけ答えが書かれてるんだけど……よく見なくても大量の計算式を書いた跡が残っている。もし、アミサちゃんがちゃんと名前を書いていて、それを別の人が消したのだとしたらこんな感じに跡が残ってるはず。

……ホントに彼女は、なんでいきなりこんな事をしたんだろう……理由を聞こうにも、アミサちゃんはいつの間にか教室からいなくなってて聞けないし。彼女の答案を手に持ったまましばらく黙っていたカルマ君は、殺せんせーを振り返って窓の外を指さした。

 

「……殺せんせー、まだホームルームを始めるまでに時間ってあるよね?俺、その辺探してくるからさ、行ってきていい?」

 

「にゅ……そうですねぇ、では……」

 

「待ってカルマ、私達も探しに行くわ」

 

「お前なら真尾がどこにいるのか見当ついてそうだけど、今回に関してはお前らの問題ってわけでもないし。協力させてくれ」

 

「……、……でもさ、あの子相ッ当頑固だよ。時々計算して話してんじゃないかってくらい無自覚なまま会話の主導を持ってくからね」

 

「そんなの、1年この教室でクラスメイトやってるんだから知ってるよ〜。でもそれってさ、カルマ君が相手でも変わらないってことだよね」

 

「1人よりは2人、2人よりかはクラス全員でだろ!」

 

「2人からいきなり規模でかくなり過ぎだし。……しょーがないなぁ……ありがたく扱き使ってあげるから、存分に働いてよね」

 

「言い方がいちいち腹立たしいんだよ、お前!」

 

「なんだ、今のが寺坂に向けて言われた事だって気付いたのか」

 

「てめぇもだぞイトナァッ!」

 

いつものように1人で動こうとしていたカルマ君だったけど、殺せんせーが言い切る前に片岡さんと磯貝君が一緒に探すことを申し出る。自分がやるべきだと思ってるのか理由は分からないけど、カルマ君はその協力を渋ってて……だけど、その程度で折れるほど僕等は甘くない。ある意味、今回起きた事は個人的な事に過ぎないんだ。今回のテストにはE組全体の目標をかけて挑んでたから皆過剰に反応してるけど……要点を絞ると『アミサちゃん個人のテストの扱いについて』なんだから、僕等には関係ないっていえば関係ないんだよね。だけど僕等E組は、殺せんせーの暗殺で繋がり、トップ50位以内という目標を殺るために同じ場所を目指す結束力の強い集団でもある。たった1人の事だとしても、放っておくはずがない。

僕等に諦めるつもりがないと察したんだろう、カルマ君は大きくため息をついて、いつものように寺坂君を雑に扱って憎まれ口を叩きながらも頼ってくれた。……こうしてみるとこのカップルって、こういう人を巻き込まないために人を頼らないあたりがそっくりだなぁ。サラッと毒を吐いたイトナ君に詰め寄る寺坂君を何人かでなだめていると、カルマ君が「ちょっと、」と僕等に声をかける。

 

「寺坂はどうでもいいんだけどさ「あァ!?」……探しに行く前に1ついい?もし、俺以外でアミーシャを見つけて会話することになったら、見といて欲しいことがあるんだけど」

 

「……見ておくこと?」

 

「うん。俺も最近気付いたんだけどさ……もし、────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

渚side

 

「(……で、僕が見つけちゃうっていうね)」

 

カルマ君からのお願いというか……アミサちゃんの本心を知るための手掛かりとして〝あること〟を教えてもらい、各々心当たりの場所──まぁ、大抵が裏山なんだけど──へと探しに出た。テスト返しが終わってこの後にはもう授業が無いとはいえ、一応まだ下校時間じゃないから、根が真面目なアミサちゃんは学校の敷地からは出て無いだろうってことで。ちなみに殺せんせーは、もしも僕等がいない間にアミサちゃんが戻ってきた時のために、教室に残るらしい。

で、教室から出ていく皆を追いかけようとしたら僕1人がカルマ君に止められて……参考になるかわからないけどって前置きの後に教えてくれたんだ。アミサちゃんは自分がキャパオーバーしたり、何かしら行動を起こしたりした時には、カルマ君の行動をなぞる時があるってことを。なんでそれを僕に教えてくれたのかは分からない……でも、彼はこれを見越してたのかな。裏山にあるプール付近を見に行くというカルマ君を送り出して、僕はその手前……僕と、カルマ君と、アミサちゃんと、そして殺せんせーしか来たことが無いに等しい、2人が飛び降り暗殺を仕掛けたあの場所に来てみたら……居たんだ。崖から迫り出した細い木の上に、崖の向こうを見ながら危なげなく立っている彼女が。

 

「……アミサちゃん」

 

「……渚くん……?なんで、……あ、そっか、答案用紙……机に入れてきちゃったから、誰か……カルマが見つけたのかな?……失敗しちゃったな……」

 

後ろからいきなり声をかけたにもかかわらず、アミサちゃんは全く動じてなくて……軽く顔だけをこちらに向けた彼女はまるで見ていたかのように、彼女が教室を出たあと僕等がどう動いたのかを正確に予測している。ただ、それは僕との会話として成り立ってなくて、自分で納得するように言い聞かせてるようにも聞こえた。それだけを口にして、また黙ってしまったアミサちゃんの一挙一動に注意を向けながら、僕はちゃんと会話をしようと口を開く。

 

「順位表にアミサちゃんの名前が載ってなくて、皆驚いてたよ。で、テスト見てもう1回驚いた」

 

「驚いたって……みんな、怒ってないの……?」

 

「怒ってるっていうよりは、……うーん困惑してるって感じかな。今までにも学年のテストはあったのに、何でこのタイミングでやったんだ?って」

 

そう、別に僕等は怒ってない。確かに『全員で』っていう目標があったのに、皆が本気で取り組んでることも分かってたのに、なんでわざわざ0点にされるような行為をしたのかって思いはあるけど……その程度だ。だってさっきも言ったけど、全員50位以内なんていうのはあくまでも殺せんせーが出した目標で……個人のテストをどうしたってそれはその人の自由であり、強制することなんて出来ない。まあ、扱いは0点でも、彼女は実質500点満点って結果を出してるわけだし。

……ていうかそれを気にしてるってことは、もしかしてアミサちゃん、僕等に「なんでこんな事をしたんだ!」……みたいに怒られるのが嫌で逃げてきたってこと?……いやいや、まさかねぇ……なんて、思わずアミサちゃんなら有り得そうなことを想像して乾いた笑いが出そうになった時、目の前の彼女が木の上で僕の方を振り返って困ったような顔で……かすかに動いた右手が着ているカーディガンの裾を握りしめたのを見て、僕の思考はそこで止まった。

 

 

 

「そっか…………えへへ、ちょっと前から気になってたんだ。名前を書かないでテストを受けたらどうなるのかな〜って……。テストが返ってきてから、みんなが目標に向けて頑張ってる中で、私だけふざけたことしちゃったなって思って……つい、逃げちゃったんだけど」

 

 

 

……………………。

カルマ君、君が言っていたのはこれの事なんだね。

 

 

 

「……そっか。……他には?」

 

「……、……え、」

 

「他にも、何か教室に居づらくなった理由はない?」

 

「……それだけ、だよ?」

 

心配して理由を尋ねてる風を装った2回目はうまく誤魔化されちゃったけど、カルマ君の言ってることを信じるなら……少なくとも最初の言い訳は何かを隠してるサインだ。僕の態度を不思議そうに見る彼女は気付いていない(サイン)……カルマ君は僕等がアミサちゃんを探しに教室を出る前に言っていた。

 

『──右手で何かを握る仕草?』

 

『そ。アミーシャってさ、素直すぎるくらいだからほとんど嘘つかないし、ついたとしてもすぐに分かるんだけど……たまにつく何があっても隠し通したい嘘って、俺でもほとんど分からないんだよ。……一人称が『アミサ』になる時と、右手で何かを握る仕草をする時以外は』

 

……って。

カルマ君がそれに気付いた最初のきっかけは、夏休みにホテルへ潜入した時の事らしい。僕等全員に毒を盛られてることが分かってから、カルマ君はことある事にアミサちゃんの体調を気遣っていたけどその都度大丈夫だと返されるばかり。見た感じ普通の表情や言動だったから自己申告がない以上納得するしかなくて……結果、彼女は自分が既に致死性の高い毒に侵されている事を倒れるまで誰にも悟らせなかった。その時、件の右手を動かす仕草があったらしくて……振り返ってみたら、中1で知り合った時から時々見せていた仕草だってことに気付いたらしい。その時その場面でしていてもおかしくないさり気ない仕草だからこそ全然気付けなかったし、未だに分からない時の方が多いことに変わりはないらしいんだけど。

 

「もう一度言うけど、僕等は怒ってなんかないよ。ただ、やった事を知らせずに黙っていなくなったから、何かあったんじゃないかって心配してるだけ」

 

「……ホントに?」

 

「ホントに。ちゃんと、そうやって説明すればいいんだよ……だから、教室に帰ろう?」

 

「……うん」

 

今、僕の目の前にいるアミサちゃんは表情も声色も何もかも普段の彼女と変わりないし、言ってる内容にも納得がいく。まるで怒られることを怖がってる子どもみたいで……彼女の右手はカーディガンの裾にシワが寄るくらいの力で握りしめられている。……あの仕草、どこかで見たことがあると思ったら学園祭だ。わかばパークでカルマ君とイチャついてるから『きしのよめ』なんてあだ名を付けられたんじゃないかってからかわれた時に、メイド服のスカートを握りしめてた。……『子どもの前でイチャついてなんかない』っていうあれも、ある意味隠したい嘘だよね。

ゆっくりと僕の方へ戻ってきた彼女に手を差し出して、一緒に教室へ戻るように促すと、そっと重ねられる彼女の右手……それにはあまり、力は込められてなくて……二言三言、何か言ったように聞こえたけど、ほとんど聞き取れなかった。

 

「…………捨てる方法なんて……私には……これしか思いつかなかったから…………」

 

「……?どうかしたの?」

 

「……ううん、なんでもないよ……それよりも……ごめんね。みんなで50位以内を達成するって言ってたのに、こんな形で裏切っちゃった……」

 

「それは僕1人じゃなくて、皆に言うことだよ。……でも実力自体は学年1位なわけだし、むしろ誇っていいんじゃ……」

 

「でも、……公的な記録には載ってないもん……っ」

 

「ああぁあぁぁ……な、泣かないで……っていうか、後からそんなに気にするくらいならやらなければよかったのに……」

 

「……うぅ、無記名で0点にされるの知らなかったからぁ……」

 

「だよね、そう言ってたもんね!…………これ、 泣かせたら僕のせい……?」

 

じわりと目を潤ませるアミサちゃんには、今、何を言ってもネガティブに受け取られてしまいそうで……僕は落ち着かせようと必死だった。律にはアミサちゃんを見つけたことを報告してあるから、皆も教室に戻ってる最中だろうし……皆にバレる前に何とか泣き止ませないとマズい気しかしない。繋いだ手が痛い……ていうか、なんで1教科だけを無記名とかじゃなくて、全教科で試しちゃったんだろうこの子……。

……結局、アミサちゃんは泣きかけた程度でなんとか落ち着いたけど、教室に戻った僕等を見たカルマ君にはものすごくいい笑顔で詰め寄られたってことだけ、報告しておこうと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な・ぎ・さ・くーん…………説明。

 

「(なんで泣かせかけたって分かるのさ!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

教室に帰ってきてから、渚くんに伝えたのと同じ事をみんなにも言って、きちんと謝りました。そうしたら、みんな安心したように大きく息を吐いて……曰く、私が本校舎の人たちから自分たちの知らないところで嫌がらせを受けてたんじゃないかって思ってたみたい。渚くんの言った通りだった、みんな怒ってなかった……むしろ今回のテスト云々よりもそっちを心配させてた。

 

「さて、少しドタバタしましたが……このテスト結果を見て、この山から出たいという人はまだいますか?」

 

「いないに決まってんだろ!」

 

「二本目の刃はちゃんと持てたし、こっからが本番でしょこの教室は!」

 

「こんな殺しやすい環境は他に無いし……ねッ!」

 

仕切り直しとばかりに殺せんせーが私たちに問掛ける……このE組から出る最低ラインの学年50位以内の成績はクリアした、あとは元のクラス担任が受入許可を出せば本校舎に戻れると。E組生は2学期の期末テストが終わったすぐ後に転級申請を出さないと、自動的に椚ヶ丘高校への内部進学は不可能となる。外部受験をするなら入ることはできるけど……内部生に比べるとやっぱり狭き門だから、これがラストチャンスだ。

でも、殺せんせーもE組のみんながなんて答えを出すのかは分かりきってるんだろう……お茶を飲みながらのんびりと聞いてきてるわけだし。武器を構え、メグちゃんの言葉に隠した合図を聞いて一斉射撃をする……お茶をこぼさないまま軽々と避けていく殺せんせーに、笑顔で、暗殺で答える。それを見て、受けて、先生はとても嬉しそうだ。

 

「ヌルフフフ……茨の道を選びますねぇ。よろしい!では、今回のご褒美に先生の弱点を教えてあげm」

 

 

 

──ドガッシャァァン!!

 

 

 

突然響いた物凄い音に思わず耳を押さえ、同時に起きた校舎の揺れにたたらを踏む。何が起きたの……?校舎の中には私たちE組生と殺せんせー、教員室に烏間先生とイリーナ先生がいるけど……学校というだけでなく『殺せんせー暗殺の舞台』であるここを壊すような人はこの中にはいない。ということは、……外!そこまで考え、揺れが小さくなる前に体勢を整えることができた私は、すぐに運動場側の窓へと駆け寄り勢いよく開く……運動場に異常はない……、!

 

「何アレ……」

 

「校舎が……!」

 

私が外に原因があると考えて走ったのを追いかけてきたんだろう、メグちゃんが私よりも教室前側の窓から顔を出して驚愕の声を上げた。視線の先には半分くらいが解体されて、崩れているE組の校舎……さっきの轟音と衝撃はきっとこれが原因だ。私たちの声に教室の中にいたみんなも窓に近づいてきて……同じように崩れた校舎と解体を続けようとショベルを振り上げる重機を見上げて呆然としている。

 

「退出の準備をしてください」

 

「「「理事長!!」」」

 

「今朝の理事会で決定しました。この旧校舎は今日を以て取り壊します」

 

校舎を壊す業者に指示を出していたのは、浅野理事長先生だった……あと3ヶ月くらいで卒業っていうこの中途半端な時期に、この人は何を言いだすのだろう。理事長先生がいうには、この校舎を壊して卒業までの残り3ヶ月……新しく開校する系列学校の新しいE組校舎、そこの性能試験に協力しろということだった。常に見張られ、自分の意思では逃げ出せず、まるで刑務所の生活を強いられた中での勉強……それが、理事長先生の考える教育理論の完成系だという。

 

「い、今さら移れって……それに、勝手すぎる!」

 

「嫌だよ!この校舎で卒業してぇ!」

 

そんな理不尽に対する私たちの当然の反論には全く耳を貸さず、私たちの前に出てくれた殺せんせーに対しても理事長先生は態度を崩さない。それどころか……

 

「……ああ、勘違いなさらずに。新しい学び舎にあなたの存在はないのだから……私の教育にもうあなたは用済みだ」

 

そう言って理事長先生が懐から取り出したのは、1枚の書類。

 

「今ここで、私があなたを殺します」

 

「ヒイィィィィィィィィィィィィッッ!!」

 

それは、椚ヶ丘中学校の理事長だから……上に立つ支配者だからこそ行使できる権限……殺せんせーの解雇通知だった。

 

 

 

 

 

++++++++++++++++

 

 

 

 

 

さっきの轟音で気付かないはずがないんだけど……外の様子を確認する前に、私たちに怪我がないかと烏間先生とイリーナ先生が教室に走り込んできた。この人たちは、ホントに生徒を大切に思ってくれている。廊下に1番近かった木村くんが誰も怪我をしてる人がいないことと事情を2人に説明してくれて……烏間先生は1度目を伏せただけで何も言わなかった。

 

「とうとう……禁断の伝家の宝刀抜きやがった……」

 

理事長先生は、このE組という校舎を殺せんせー暗殺の場として提供している立場、そして殺せんせーを教師として雇っている雇い主でもある。前に鷹岡さんがこの教室に来た時にも言っていたけど、教師の任命権があるのはこの人……だからこの場を使わせてもらっている立場である防衛省の烏間先生は何も口出しできないってことになる。

 

「は、はわわわわわ……ふ、不当解雇です!あなっ、あなたが理事長だからって私が人間じゃないからってとんでもない暴挙に出ましたねぇ!こ、こんなの黙って受けるわけにはいきませんよぉ!私だって何か、何か出来、そう、分身、分身します、私分身ができるんですよ!分身して学園の前で大挙してデモをしてやります!そしてそのまま……!」

 

「そんでコレ、面白いほど効くんだよこのタコには……」

 

「超生物がデモに訴えるのはどうなの?」

 

突きつけられた解雇通知にあわあわしていた殺せんせーがどうするのかと思っていれば、『不当解雇を許すな!』とか『浅野學峯は腹を切って地獄の業火で死ぬべきであるだって横暴だもの』とか『労働者よ立ち上がれ』とかのプラカードを持って1人デモ活動をし始めた。殺せんせー、先生として責められることに弱いから……。自分で言ってるみたいに分身してないのは慌ててるからなのかな……?それと『あと給料やっぱり安いと思うの!』っていうカードは解雇には関係ないんじゃないかって突っ込むべき?

 

「早合点なさらぬよう……これは標的を操る道具に過ぎない。先程も言ったでしょう、私はあなたを暗殺しに来たのだから」

 

「……本気ですか?」

 

「確かに理事長(あんた)は超人的だけど……思いつきで殺れるほど、うちのタコ甘くないよ?」

 

磯貝くんやカルマの言葉に対してにやりと口角を上げた理事長先生は、業者の人に声をかけて解体を止めさせた。正直、この1年近く暗殺を狙ってきた私たちでも無理だったのに、突然来た理事長先生が突然仕掛けてもうまくいかないとしか思えない。

信用できなくて不振なものを見る目の私たちへ教室の中から外に出るように指示したあと、理事長先生は殺せんせーに対して一言だけ言った。

 

 

 

もしも解雇(クビ)が嫌ならば、もしもこの教室を守りたいのならば、私とギャンブルをしてもらいます、と。

 

 

 

 

 




「きっと、なんで1教科じゃなくて全教科で無記名にしたんだろうとか、考えてるよね……渚くんは優しいから」

「でも捨てる方法なんて……私には……これしか思いつかなかったから」

「それに、もう言えないよ……」

「だって、これからもっと怒られるようなことをしようとしてるのに」



「……?どうかしたの?」

「……ううん、なんでもないよ……」


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無記名=名無し=解雇通知(役職が無い的な)
かなり強引ですが、今回のお話タイトルはこんな意味で付けました。なぜオリ主が無記名でテストを提出したのか、なぜ教室から逃げ出したのか……表向きの理由も嘘というわけではありません。ただ、まだ何かを隠しているということを知って欲しかったので、このような形に落ち着きました。
カルマと渚が気付いたように、実はこのお話にたどり着くまでの90話の中で、オリ主は数回だけ嘘をついたり隠し事をしたりしてます。その時の言葉や前後の仕草をよく見ると……実は、ということが分かったり。元々嘘つきの仕草はこの連載をする前から考えていたのですが、……オリ主が……素直すぎて……嘘をつかない……ッ!←
というわけで、ものすごーく貴重ですが、数回そんな描写があります。誤字かな……と思われた読者さんがみえるかもしれませんが、それはオリ主が隠し事や嘘をついているってサインです、よく気付かれました!(もし探してくださる方がみえましたら、おじさんぬやキーアがヒントです。彼等はオリ主が隠したい事を普通に察しちゃってる代表ですが)

理事長先生、登場はさせられましたがキリがいいので今回はここまでです。次回こそ、生死を賭けたギャンブルですね!


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