暗殺教室─私の進む道─   作:0波音0

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死神の時間・4時間目

カルマside

死神によって俺等もろとも殺せんせーの暗殺が行われようとした時、目の前には鉄格子を挟んで烏間先生と……助言はくれるものの死神の仲間だと思われていた《(イン)》さんの背中があった。俺がよく知ってる烏間先生は元々隙をみせない人ではあるけど、さっきまではただ上着を脱いで戦闘の意思があることを示していただけだった。だけど《銀》さんが先生の隣に並んでどこから取り出したんだってほど大きな黒い剣を構えて死神に向き直ると、ようやくいつでも飛び出せるよう戦闘態勢に……ていうかあのでかい剣、本トにどこから出したんだよ?あの周辺にもあの人の体にも何も無かった気がするんだけど。

烏間先生に向かって歩いていく《銀》さんを余裕の笑みで眺めていた死神は、いきなりの手のひら返しとも言える契約破棄に、その笑みを固めながらもそれ以外に表情を変えず、静かに口を開いた。

 

「……何故だ?《銀》、お前は契約主の判断に従うと……!」

 

──従っただろう?『生徒28人の命は地球より重い、お前が彼らごと殺すというのならば止める』という言葉に

 

「……まさか、」

 

初めから私の契約主は防衛省……そこのカラスマだ。お前の依頼を受けたのも政府からの依頼をこなすのに必要だったまで

 

死神が信じられないとばかりに《銀》さんの言葉を指摘してるけど、彼自身はシレッと『自分は元々政府側だ』と言い放った。隣に立ったことを何の疑問も持たずに受け入れたってことは、烏間先生は《銀》さんが元々こちら側の人間だってことを分かっていたってことで……つまり、《銀》さんは政府と死神との間で二重スパイのようなことをしていたのか。

そういえば、殺せんせーは《銀》さんがアミーシャを匿っていると聞いた時に、彼だったら納得できる行動だと笑ってたけど……それは、このことを知ってたから……?

 

「にゅやっ!?《銀》さんは元々烏間先生と通じていたんですかっ!?」

 

…………知らなかったみたいだね。

E組の生徒が烏間先生と《銀》さんがカッコいいって歓声をあげてる中、殺せんせー1人が敵味方の立ち位置についてで慌てながら騒いでる……あ、烏間先生がうるさいとばかりに青筋が入った握りこぶしを見せつけてきたから先生黙った。

死神は少しの間悔しそうにしていたけど、烏間先生と《銀》さんの隙とか実力を測って、このままこの場で二人ともを殺してからでは遅いと判断したんだろう。作り物のような笑顔を崩すことなく予備動作もなく、共闘関係にあるはずのビッチ先生に何も伝えることもなく、扉に向かって駆け出した。

 

「チッ……《銀》殿!子供達のフォローを任せる!」

 

……ああ

 

「烏間先生!トランシーバーをONに!」

 

死神が動くのを見て烏間先生はすぐに《銀》さんへ指示を出すと、あとを追って建物内部への扉を潜っていった。カン、カン、カンと階段を駆け上る音が響いてたけどそれも次第に聞こえなくなって……この場に残った《銀》さんが俺等を背に守りながら、死神もいないからと剣をしまう頃には、『プロというのはそんなに気楽じゃない』……そう言われてからどこか呆然としたような、迷うような表情を浮かべていたビッチ先生に余裕が戻っていた。

 

「……、死神(カレ)を倒そうなんて無謀ね。確かにカラスマも人間離れしているけど、彼はそれ以上……そこのタコですら簡単に捕まえたのよ?……《銀》、あんたは……」

 

フン、この《銀》があの死神よりも弱いとでも?

 

「……そうね、失言だったわ」

 

そう言いながら首の爆弾を外し、指でくるくると回す……やっぱり俺等のとは違ってただの脅し用か何かで簡単な作りになってるんだろう、爆発することもなくビッチ先生の手の中にある。……なんて事ないようにビッチ先生と2人で言葉を交わしてるけど、《銀》さんは随分と自分という存在に自信を持ってんだな……実際嘘じゃないんだろう実力を肌で感じるし、誇りを持ってるってのも言葉や態度の端々から伝わってくる。

殺せんせーはビッチ先生の言葉を聞いて悔しいのを表現するようにハンカチを噛んで唸ってるけど、E組は……特に放課後塾でビッチ先生に懐いていた彼女等はまだ信じられなさそうに次々と言葉をかけていた。

 

「……怖くなったんでしょ。プロだプロだってこだわってたあんたが、ゆる〜い学校生活で殺し屋の感覚忘れかけてて……俺等を殺してアピールしたいんでしょ。『私、冷酷な殺し屋よ〜』って」

 

知ってたのに、信じてたのに、仲間だと思ってたのに。そんな数々の言い方はビッチ先生を責めるものでしかなかったんだろう……だんだんと俯いていく先生へ、ちょっと感じた罪悪感を笑顔の裏へ隠して俺も続いた。本トに俺等の事を好きになってくれていたのなら、これはきっと痛い言葉だと思うけど、煽って本音を引き出せたら万々歳かな、なんて。

予想通りそれをきっかけに顔を上げて睨みつけてきたビッチ先生は、さっきまでの『俺等なんてどうでもいい』という冷めた表情とは違って、受け入れてはいけないと押し殺していた感情を爆発させてその気持ちに困惑するような顔で首輪とともに言葉を叫ぶように叩きつけてきた。

 

「私の何が分かるのよ……考えたことなかったのよ!自分がこんなフツーの世界で過ごせるなんて!弟や妹みたいな子と楽しくしたり恋愛のことで悩んだり……そんなの、違う。私の世界はそんな眩しい世界じゃない……ッ」

 

そう言って息を荒らげていたビッチ先生が不意に耳へと手を当てる……長い髪で隠してインカムかなにか、そこに付けてるんだろう。聞こえなかったけど、多分死神からなにか指示が来たんだろうね、了解の返事を返して烏間先生達と同じ扉を通ってビッチ先生も姿を消した。

そしてここには殺せんせーを含めた俺等E組と《銀》さんだけになる。しばらくの間、彼は先生達が去っていった扉の方を見ていたけど何やら呆れたような、しょうがないというような……そんなため息をついたのに気がついて、全員の視線がそちらへ集中していた。

 

『自分とは違うフツーの世界、眩しい世界』……か。フン、確かにその通りだな

 

「《銀》さん……」

 

お前たちは恵まれている……私たち暗殺者にとって、血を浴びる生活は日常。そして今が非日常なだけで、この国は本来危険とは縁遠い……そんな場所に生まれることができたのを感謝することだ

 

「それ、ビッチ先生も言ってた……」

 

「生きるとか重い事じゃなくて、女を磨けって話だったけどね」

 

……そうか。ならばイリーナは、生きるために必要だった『殺し屋』としての日常以外に……比べる対象になる『普通』というものを知っているということだ。どんなに少なくても、普通の幸せを……だからお前たちを案じる言葉が出てくるのだろう

 

「……それって、《銀》さんにはないって言ってるように聞こえるけど?」

 

私か?私の場合、物心ついた頃にはこの世界にいたからな……そんなものは知らない。それに……私のように血に染まった暗い世界に生きる者が踏み入っていい世界じゃない

 

確かに、比べられなかったら自分の生きてきた道なんて、あってるとか間違ってるかとか、他人と違うかどうかなんて考えることもなく受け入れているよね。受け入れた人生なんて、それがその人にとっての当たり前に決まってんだから……突然違う道を示されたって受け入れられないか、受け入れられてもいつか現実との違いを突きつけられることになる、ということか。

ビッチ先生の場合は後者の可能性が高いんじゃない?てことは、その現実との違いで迷っても認められ、居場所がありさえすれば、あるいは……。《銀》さんについては、あまりにも自分が見てきたかのように語るからなんとなくで聞いてみただけだったんだけど……『依頼であればそう振る舞うが』って……《銀》さんこそが暗殺者としての世界を当たり前に生きてきた人だってことか。ハッキリ言い切る割にはなんだかその答えに感情がない気がして、少しやるせない気持ちになったのは……俺もアミーシャの優しさだとかに影響受けてたりすんのかな。

 

「考え方から何まで、さすがは歴戦の殺し屋達ですねぇ……おや、死神が設置していた監視モニターで断片的にですが強者対強者の戦いが覗けそうですよ」

 

 

++++++++++++++++

 

 

モニターに映るのは死神を追いかける烏間先生……死神はさすがに自分が仕掛けた監視カメラの位置や死角は分かってるんだろう、ほとんど映らない。断片的だけだけどモニターに映し出される烏間先生の追跡は……とにかく、烏間先生の人間離れしているところを強調しまくっているものとなっていた。

 

「あ、烏間先生いた!」

 

「なんでドアノブ持ったまま固まってんの?」

 

「ふむ、恐らくあの向こうにトラップがあるので……、……あ。」

 

『……チッ、思ってたより強力だった』

 

「「「…………、……?……!?」」」

 

ほう……トラップの内容に気づいていたな。あえて時間短縮のためにそのままドアを開け、ドアを盾にしながら爆風と同じ速さで後ろ受け身をとった……か

 

「沖縄のホテルでアミサさんが同じことをスーツケースを代用してやってましたねぇ……明らかに規模が違いますが」

 

殺せんせーの言う通り、ドアの取っ手を動かす感覚で何かを察したらしい烏間先生は、ほんの少しだけ迷った後に勢いよくドアを開け、その途端に爆発……したはずなのに、次の瞬間何事も無かったかのように先生はその爆煙の中から出てきてまた走り出した。映像を見てた俺等にとっちゃ、何か起きたのか全く意味がわからなかったんだけど、《銀》さんの呟くような説明で到底真似できないししたくないことをやったんだってことは理解できた。

てか、なんかデジャヴな説明だとは思ってたけど目の前でアミーシャが実践済みのアレか……だから彼女が至近距離の爆発を受けても無事だったんだと、今ならわかる。

 

「……!烏間先生、行っちゃダメッ!多分そこの曲がり角に!」

 

────ドガガガガガッ

 

『くっ……銃を撃てるよう訓練された軍用犬か……!卑怯な……!』

 

「さすが死神の手腕……あれだけの数をきっちり仕込んで飼い慣らすとは……」

 

「……ん、卑怯?先生、卑怯って言わなかった?」

 

『……()()()()()()()()()()()()。だから傷つけられない……悪いが優しく通らせてもらおう』

 

「「「え、笑顔ひとつで抜けおった!!」」」

 

「うーわー……犬の方が怯えて道譲ってる……」

 

「烏間先生、今撫でたよね……懐かれてると思ってんのかな……?」

 

「……いや、でも……犬の気持ちちょっと分かるわ……あの人の笑顔、めちゃくちゃ怖ぇーもん。笑ってたシーン思い出してみ、半分は人を襲ってる時だぜ」

 

「「「(確かに!!)」」」

 

原さんがトランシーバーに向けて烏間先生へ警告した直後に鳴り響く銃声……原さん達C班は情報収集の最中に一度遭遇でもしていたんだろう……銃を撃てるように訓練されたドーベルマンが廊下の先に待ち構えていた。あれだけ乱射された銃撃の隙間を通り抜けることなんて無茶だ、みんなそう思っていたのに、烏間先生は先生なりの笑顔で犬の前を普通に歩き始めた……千葉が言った通り、烏間先生の笑顔は怖い。あまり見ない珍しい顔だからというか、作り方が下手というか、先生が楽しいと感じる物事の方向がおかしいというか……説明できないけどとにかく怖い。

この他にも烏間先生は、振り子のように揺れる鉄柱を素手で捕まえたり、両手が塞がった中に飛んできたボーガンを刺さる前に掴んだり、鎖に巻かれても引きちぎったり、火炎放射器を無いものとして通り抜けたり、飛んできたナイフを歯で受け止めたり……全部、なんてこともないように罠を攻略していく。

 

「マジでうちの先生人間やめてるよな……」

 

「勝てないわけだ……才能も積み上げた経験(もの)も全部段違い」

 

「そう、彼等は強い。それにこの牢屋もとても強固(つよい)……対先生物質と金属とを組み合わせた2種の檻。爆薬でも液状化でも抜け出せません」

 

自分達とは桁違いの実力、才能、力……それらを見せつけられて落ち込む俺等に対して、殺せんせーは少しも慌てずいつものように続けた。

 

「弱いなら弱いなりの戦法がある。いつもやってる暗殺の発想で戦うんです」

 

答えまでは言わない殺せんせーの教え……いつもの事だけど、こう、命がかかった時にまでねぇ……なんて時に口火を切ったのは、E組の中でもあまり自分から前に出てこない珍しい奴だった。檻の中と外の監視カメラを観察し、ビッチ先生が残していった首輪の爆弾を確認して……少し自信ありげにそいつが、三村が言った。

 

「……全部がうまくいけばの話だけど……できるかも、死神に一泡吹かす事」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

烏間side

対先生物質に囲まれたあの狭い檻の中では無能に等しいあのタコだけでは心許なく、《銀》殿にE組のクラスメイト達を任せ俺単身で死神を追いかけている道すがら。俺が跡を追うこの短時間でよくこれだけの種類・量のトラップを張ったな、と言いたくなるほどの少し進むたびに遭遇するワナ、わな、罠の山……まあ、急いで設置したものなだけあって軽いものばかり、全て俺の力で対処出来たから問題ないが。トランシーバーの向こうから生徒達の様々な声が聞こえた気がしたが、関係の無い声以外はあえて詳細は無視しておき……もうそろそろ追いついてもいい頃だと……ッ!

 

「くッ……!」

 

「へぇ、殺気の察知も完ペキか……正直見くびってたよ、烏間先生」

 

「……まるでトラップの見本市だった。多彩なもんだな」

 

進もうとしている廊下の先からドス黒い澱んだ殺気が流れ込んできたのを感じて、柱の影に体を隠す……いつでも撃てるよう銃を構えながらつい比べてしまうのは、俺があの暗殺教室で浴びたことのある2つの澄んだ殺気だった。渚君の蛇に巻かれるような純粋な殺気と真尾さんの鎖に締め上げられるような繊細な殺気……あの2人のを知っているからこそ、死神がどれだけ濁った殺意を持っているのかというのを考えさせられる。人殺しのスキルを手に入れたら使いたくなるとか、どんな狂人だ……いや、これまでの言動を見てきた限り元々こんな奴だったな。

死神の気配に集中していると、背後からも何やら気配がやってきたことがわかる……この場で自由に動けるのは《銀》殿……だが、彼には生徒達を任せている、ならば。直後跳んできた銃弾を間一髪で避け、視線や意識は死神に向けたまま、俺の銃口のみを背後から近づいてくるイリーナへと向けた。

 

「……死ぬぞ、イリーナ」

 

「死ぬなんて覚悟の上よ。アンタには理解できないだろーけど、死神(カレ)は分かってくれた……『僕とお前は同じだ』……って」

 

「そうだね、昔話をしてあげたっけ……」

 

そうして語られた死神の身の上話は……言っては悪いが殺し屋の世界(この業界)ではよくある話だった。イリーナもそんな環境で生まれた、ただ、血の世界へ足を踏み入れたのは自分を守るための最後の悪あがきのようなものからだったと『彼』から聞いている。似ているといえば似ている境遇の2人……だからこそ自分の立場から来る感情や気持ちを分かり合えると、……俺では理解できないからと、イリーナは協力する事に決めたのだろうか。

 

「イリーナなら、僕の気持ちをわかってくれるよね。たとえ──」

 

 

──僕が君を捨て石に使ったとしても。

 

イリーナの選択について考えていたせいか、死神への警戒が若干逸れた。慌てて意識を戻した時には死神が何やら手元の端末で操作している最中で……《銀》殿の情報通りなら、この施設の簡単な設備をあれで操作できる……監視カメラやマイクはもちろん、ここまでのトラップと同じように死神によって仕掛けられたものだったら。今、この状況で発動できるものだとしたら……!

その考えに至った時には遅かった。頭上で爆発が起き、俺とイリーナへと崩れ落ちた天井が降り注ぐ……想定していた俺はなんとか防御姿勢が取れたため、すぐに立ち上がることが出来たが、進行方向……つまり死神がいる側とこちらを隔てて天井の瓦礫が積み重なり、すんなり通り抜けることが出来なくなっていた。

 

「生きてるんだ、さすがだね。おそらく、君やタコ単独ならこのトラップも抜けただろう。……彼女は、君たちを惑わすためだけに雇ったんだ」

 

その言葉を聞いて振り返ると、そこには俺と違って瓦礫の下敷きになり意識を落としている様子のイリーナが倒れていた。……死神、俺だけを巻き込んだ崩落だけでは飽き足らず、自分を信用してついてきた仲間(イリーナ)を利用するだけして捨てたというのか……!?

前に進むにしてもイリーナを助けるにしても瓦礫をどかすことに時間がかかる……死神はこの結果を満足したように操作室へと歩き出してしまった。俺はイリーナを再度振り返る……イリーナ1人を助けるために生徒27人を、どこか別の場所にいるという1人(真尾さん)みすみす死なせるわけにはいかない、ここは進むべきか……。前に進む瓦礫へ手をかけた時、トランシーバーから声が響いた。

 

『…か……ま…………!………烏間先生!モニターを見てたら爆発したように映りましたが、大丈夫ですか!?イリーナ先生も!』

 

……彼等にはこの事実をどう伝えるのが正解なんだろうか。イリーナへの伝え方を間違えたせいで、彼女を死神側へと走らせてしまった俺が。

 

 

++++++++++++++++

 

 

カルマside

《銀》さんの言う通り、死神へは映像だけで音声が届かないならと三村が思いついた作戦を堂々と口に出して説明し、それぞれの得意分野で役割分担を済ませて行動し始めたあたりで……作戦の主力ではないからとモニターを見て状況を調べていた奴等が慌てたように声を上げた。急いで何人かと殺せんせーが近寄ると監視カメラのモニターには砂嵐の画面がひとつ増えていて……見ていた奴の話では、いきなり爆発して瓦礫が落ちる映像を最後に何も見えなくなったんだとか。すぐに殺せんせーがトランシーバーを通して烏間先生に連絡を取ると、少しの間躊躇するように黙っていた先生は俺等の催促に重たい口を開いた。

 

『……俺はいいが、あいつは瓦礫の下敷きだ』

 

「「「!!」」」

 

『……だが、構っているヒマはない。道を塞ぐ瓦礫をどかして死神を追う』

 

俺等を助ける、という目的のためだったら正しい選択なんだろう。だけど……

 

ダメ!!どーして助けないの、烏間先生!!」

 

『倉橋さん……』

 

倉橋さんが殺せんせーの近くでトランシーバー越しの様子を伺っていた奴らを押しのけて訴えた。烏間先生曰く、これはビッチ先生なりに考え、結果を求めて死神と組んだ結果だからプロとしての自己責任……考え無しの行動ではない故に責めることも助けることもしないという結論を出したとのことだった。それで納得できるほど、俺等は子ども(ガキ)じゃない。

 

「プロだとかどーでもいーよ!15の私がなんだけど……ビッチ先生、まだ21だよ!?」

 

「うん、経験豊富な大人だって言ってる割にはちょいちょい私達より子どもっぽいよね」

 

「多分……安心のない環境で育ったから……ビッチ先生はさ、大人になる途中で、大人のカケラをいくつか拾い 忘れたんだよ。だから……助けてあげて、烏間先生。私達生徒が間違えた時も許してくれるように……ビッチ先生も」

 

『……時間のロスで君等が死ぬぞ』

 

烏間先生が俺等を優先してくれようとしてるのは分かるけどさ……俺等だって伊達にこの暗殺教室で生徒をやってるわけじゃない、先生達におんぶに抱っこでいるつもりなんてサラサラない。

 

「大丈夫!死神は多分、目的を果たせずに戻ってきます。だから、烏間先生は()()にいて」

 

「てことで、《銀》さーん。殺せんせーじゃ目立つし《銀》さんにやって欲しいな〜」

 

「め、目立つって……せんせーだって何かやりたい」

 

「「「ダメ!」」」

 

「死神が見てるのは私達もだけどほとんど標的の殺せんせーなんだよ?わかってるの?」

 

「怪しまれちゃいけない先生が怪しい行動とって疑われたら意味無いじゃん」

 

「シクシクシク……」

 

……カラスマ、お前の生徒たちはこう言っているが?

 

『……後ろの茶番は無視していいんだな?……分かった、信じるぞ』

 

「「「了解!」」」

 

《銀》さんが烏間先生に確認をとったのは、俺等のフォローを頼まれているとはいえ依頼主は先生……その指示を仰いだってところなんだろう。そして、俺等の返事を最後にトランシーバーの向こうから音が聞こえなくなった……烏間先生が俺等を信じてくれるなら、きっとビッチ先生を助けに行ったはず。死神は確実に殺せんせーを殺すために、きっと水を流す前にこの牢屋の中を確認する……その時が勝負だから死神が操作室に到達する前に細工を終わらせなくちゃいけない。

 

「さあ、時間が無い……皆、急いで準備するぞ!」

 

「「「おう!」」」

 

E組(おれら)の反撃スタートだ。

 

 

 

 

 

 

 




「やって欲しいな〜……はいいけどさ、こっちとあっち、鉄格子で隔たれてんじゃん。どうやって《銀》さんは俺等の方に来るわけ?」
「……考えてなかった……」
「いや、死神側にいたんだし、実はどこかに出入口があるとかじゃ」
「脱出不可能って言ってなかったっけ」
「「「…………」」」
……何を迷っているのか知らないが、別に出入口など必要ない
「へ……」
「なっ……」
「何も無いところから……」
「て、鉄格子を通り抜けた……?」
「どうやって……!?いや、《銀》さんが抜けれるなら俺達も一緒にいけるんじゃ、」
これは誰でもできることじゃない。期待しないことだ
「…………」
……さあ、望み通りこちらに来たが……お前たちは私に何を求める?


++++++++++++++++++++


死神の時間・4時間目です。まだ続きます。
烏間先生人外説が有力となるお話となりました……何をどうしたら本当にあんな超人が生まれるのでしょうか……。歴戦の殺し屋である死神にまでそう思われるなんて相当だと思います。でも、それでこそ暗殺教室の烏間先生なんだろうな、とも同時に感じちゃうわけですが。

《銀》は障害物は関係ないと思ってます。ゲーム本編でも黒月の壁を抜けて屋根へとワープのごとく移動してましたし……アーツなのか気功術なのか定かではありませんが、可能なのだろうということで、この小説ではオリジナル設定のひとつとして採用させてもらってます。フリースペースにちょこっとだけですので分かりづらいかと思いますが、アレです。空間が歪んで姿を消す→空間を歪ませて現れるっていう……書いておきながら余計にわかりにくくなった気がします。

では、次回は死神の時間・5時間目!激闘、人外対決!(に、なるのかな?)



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