暗殺教室─私の進む道─   作:0波音0

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ビフォーの時間

色々と波乱のあった体育祭も無事に終わり、磯貝くんのE組残留も無事に決まり、私たちE組では2週間後に迫った戦いに向けての準備が進められていた。戦い……それはもちろん、

 

「さぁさぁ皆さん!二週間後は二学期の中間テストですよ!いよいよA組を越える時が来たのです!熱く行きましょう、さぁ熱く!熱く!!

 

「「「暑苦しいわ!!」」」

 

……と、いうわけで、中間テストです。毎回のテストのごとく、殺せんせーの大量分身によるマンツーマンのテスト対策授業では、これまで以上に気合いの入った指導が行われていた。今までみたいな生徒1人につき殺せんせー4、5人っていう分身どころか、体だけじゃなく顔だけで大量分身をして単語の暗記に務めたり、顔色を変えて立体視を駆使してきたり……もうやりたい放題だ。それでも、これらは全て私たちのため……与えてもらえるなら与えられた分だけ吸収するのが1番いい。そう思って、私は今まで通りに取り組んでいたのだけど。

……最近みんな、どこか落ち着かない様子を見せていた。たしかに勉強は大事だ、もしも疎かにしたら殺せんせーはいなくなっちゃうし……。でも、大事だってことは分かっていても今はもう10月……殺せんせーの暗殺期限まで残り5ヶ月しかない。私たちは勉強と並行して暗殺をすることが目標なのに、このままでいいのだろうか、と。

 

 

++++++++++++++++

 

 

「…………」

 

「……行っちゃったね」

 

焦りと勉強による疲れ、様々な重圧(プレッシャー)で落ち着かない日々を過ごしていた私たちを、いい発散方法を見つけたと岡島くんが連れてきたのは、E組の校舎がある山の麓近くから広がる住宅街の入口だった。……麓、はちょっと言い過ぎかもしれない……だって、山の入口ってわけじゃないし、足元にはちょうど家々の屋根が来るくらいの高さがあるから。

彼曰く、この屋根伝いにフリーランニングで行くと、ほとんど地面に足をつけることなく隣町の駅まで行けるルートを見つけたらしい。ただ、通学しているだけなのにフリーランニングの訓練になるし、スリルや非日常が味わえるからいい気分転換になるだろう、と。

磯貝くんやメグちゃんは烏間先生との約束である『裏山以外で使わない』ということを持ち出して止めようとするけど、1度乗り気になった人たちを止めることは簡単じゃない。結局大半の人たちが飛び出してしまい、委員長2人も追いかける形で走り出してしまった。

 

「元気だねー、若人は……」

 

「安全そうなら明日は私も行こーかな〜」

 

「…………」

 

「どうかした?アミサちゃん」

 

「え、あ……岡島くん、危険な場所はなかったって……」

 

「言ってたね。まあ、私たちに危険がなければ、体育の訓練の延長で烏間先生も許してくれるかもしれないし……」

 

「あ、そうじゃなくて……私たちに危険はなくても、…………ううん、やっぱりなんでもない」

 

「そう?」

 

カエデちゃんや有希子ちゃんと話してから、みんなが走っていった住宅街を振り返る……確かにここから見た限りでも建物に高低差もないし障害物も見えないから、()()()()危険はないだろう。でも、私たちにとっては道であっても、それ以外の人たちにとっては人が屋根の上を伝って飛び越えてくなんて絵空事なんじゃないか……なんて、考えすぎかな。

岡島くんについてここまでは来たけど、いつも通りに山を降りて帰ることを選んだのは、私、カルマ、カエデちゃん、有希子ちゃん、おかーさん、綺羅々ちゃん、愛美ちゃん、陽菜乃ちゃん、竹林くん、イトナくん、…………え、これだけ?!男子なんて10人以上……半分以上の人たちがついていっちゃったんだ……

 

「アミーシャ、行くよ」

 

「……あ、うん!」

 

「あら、カルマ君と勉強会でもするの?」

 

「えへへ……うん。カルマ、1学期の期末テストだいぶ悔しかったみたい……今ね、すごい勢いで予習から復習までこなしてるよ」

 

「そっかぁ……あ、じゃあ私はこっちだから、また明日ね」

 

山を降りるまで一緒に歩いていたおかーさんと別れて、少し先で待ってくれているカルマの隣へ駆け寄る。私がおかーさんにカルマの勉強の様子を話していたのが聞こえてたのか、追いついて隣に立った途端に軽く頭を小突かれた……カルマのことだから、隠れて努力してるのを知られたくないとかそんな所だろうけど、そんなに人に知られたくないものなのかな?

帰り道では、今日あったことだったり、なんでもないことだったり、殺せんせーがまたおかしなことをしていたってネタだったり……そんな風にいつものように話していて。もうすぐ私の家、という所でカルマが躊躇うように口を開いた。

 

「……あのさ、アミーシャ」

 

「?」

 

「俺等さ……言いたいことがあっても、伝えようとしたその時に限って毎回何かと邪魔が入ってるじゃん?そのせいで、『タイミング逃したし今はやっぱりいいや』……ってなってるのが常でしょ?」

 

「そう、だね……?」

 

「だから……今回はお互いにその逃げ道を塞いじゃいたいんだよね」

 

そこで足を止め、顔を上げたカルマは今までの会話のような軽い雰囲気には全く似合わない、とても真剣な表情をしていて。その真剣な表情に、場違いかもしれないけど私の心臓がどくりと大きく音を立てた気がした。そのまま、決心したように彼は、

 

 

 

「アミーシャ、中間テストで俺と勝負して」

 

 

そう、持ちかけてきた。

 

「ルールは単純に点数勝負……アミーシャと俺の成績はほぼ互角だし、不可能な勝負じゃない」

 

「…………」

 

「勝負するからには当然報酬もつける……無難に勝った方のいうことを一つ聞く、でどう?」

 

「……私にできることならやるし、別に勝負にしなくったって……」

 

「最初に言ったでしょ……俺は今までみたいに理由をつけて逃げることが出来ないようにしたいんだ。……俺の願いはアミーシャの逃げ道を塞ぐことでもあり、同時に俺も逃げられない状況を作るものだから」

 

「…………、」

 

「もちろん、アミーシャが勝てば好きに願い事をしてくれていい。……この勝負、受けてくれる?」

 

今まで、私に大切なことを伝えようとするカルマの真剣な表情は何度も見てきた。だけどそのほとんどを、殺せんせーだったり、クラスメイトだったり、はたまたそれ以外の何かにだったり、ワザとじゃないかと勘ぐりたくなるタイミングで邪魔され、言い出せずに終わることや後回しになることなんてざらだった。

カルマが私に何をしてほしいと思っているのかはわからない……だけど、前回はカルマの慢心が原因とはいえ私の方が上だったから……一歩及ばない実力の私でも、いざとなったら彼に勝つことができないわけじゃないし、一度、自分の力を試してみたい気持ちもある。

彼の瞳を見返して、私はひとつ頷いた。

 

 

++++++++++++++

 

 

【緊急連絡】

 

【今日の放課後、E組生徒がフリーランニングの使用により一般人を負傷させるという事案が発生した】

 

【程度は軽いため歩けるまでに全治2週間だが、君達は全員国家機密の身。交渉の結果、────、】

 

【なお、この場にいなかった赤羽君・奥田さん・茅野さん・神崎さん・倉橋さん・竹林くん・狭間さん・原さん・真尾さん・堀部君の10名は詳しい事情を説明するため、明日7:00にE組校舎へ集合してほしい】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昨日の夜に届いた烏間先生からのメール。そして、今朝の事情説明で岡島くんたちが一般人のおじいちゃんをケガさせてしまったことを知った。なんでも、着地地点を確認せずに飛び降りたせいで、地上()を自転車で走っていたおじいちゃんを驚かせてしまったんだそうだ。下敷きにすることは避けられたけど、おじいちゃんは自転車ごと転倒……右足の骨を折るケガをしてしまった……心配していたとおりのことが起きてしまった。

 

「ここが、今日からお世話になるわかばパーク……?」

 

「看板あるしそうじゃね?俺等10人以外は先に行ってるはず……」

 

「あ、みんな、こっちだよ」

 

ケガをしてしまったおじいちゃん……松方さんはここ、『わかばパーク』という保育施設を運営している園長先生で、入院のために2週間経営から離れなくてはならなくなった。その間、私たちE組が代わりに働き、復帰した松方さんに認めてもらえれば今回の事件は公表しないでもらえるんだそうで……E組は今日から2週間、テスト勉強の一切が禁止され、ここでの生活に集中することになる。

 

「まったく、なんで無関係の私らまで連帯責任かねぇ……」

 

「面目ねぇ……」

 

「私達ももっちりビンタされたよ。全員平等に扱わないとと不公平だからって」

 

「ごめんよ〜……」

 

殺せんせーが私たちに手をあげた……生徒に危害を加えることを禁止されている先生が、いつものように言葉を尽くして諭すのではなく、そうするしかなかったなんて……相当堪えたんだろう。岡島くんたちはかなりへこんで申し訳なさそうにしている。

 

「気にしないで……他人にケガとか、予測出来なかった私達も悪いし」

 

「間違ってることは他人に教えられるよりも、1回自分で間違いを経験した方がしっかり実感出来るし……今回のコレも、ある意味いい経験になるんじゃないかな」

 

「勉強禁止……まぁ、学校で出来ないなら家でこっそりやればいい。E組(クラス)の秘密を守るための二週間労働……賞金に対する必要経費(コスト)と思えば安いものさ」

 

「竹林……パンツ一丁じゃなきゃいいこと言ってくれてるんだけどな」

 

「やんちゃな子が多い……」

 

カルマと勝負をしている以上、1日のほとんどを勉強に当てられないのは正直痛い……でも、代わりを務めることでE組の秘密を守ってもらえるなら、たしかに安い代償だ。

それにしても、やんちゃしてる子が多いなぁ……寺坂くんにぶら下がってる子は彼の首筋に噛み付いてるし、竹林くんのズボンをずり下げてる子はいるし……と、ずっと遠くから私たちを見定めるように眺めていた1人の女の子が近寄ってきた。

 

「で?何やってくれるわけおたくら。大挙して押しかけてくれちゃって……減った酸素分の仕事くらいはできるんでしょーねェ」

 

……この子もなかなかとんがってた。

他の子どもの話を聞いていると、この子……さくらちゃんはここにいる児童の中でも最年長で不登校……学校に行ってないらしい。その後、さくらちゃんは近くに立てかけてあった箒を持って飛びかかってきたけど、元々いたんでいた床が抜けちゃってその穴にはまり、痛みに蹲っていた。1番近くにいた渚くんが、慌てて助けに走る。

磯貝くんが思わずというように建物の老朽化と修繕について職員さんに聞いているけど、お金が無くて思うようにいかないのだと教えてくれた。松方さんは待機児童や不登校児がいると格安で預かってきて、職員すらまともに雇えないから本人が1番動き回っているんだとか……そんな大事な戦力を潰してしまったんだ。

 

「29人で2週間……か。なんか色々できんじゃね?」

 

「できるできる!」

 

「よし、皆!手分けしてあの人の代わりを務めよう。まずは作戦会議だ!」

 

「「「おー!」」」

 

盛り上がるみんなの近くから、私は渚くんに抱き上げられたさくらちゃんのことを見ていた。他の子どもたちがなんだかんだと私たちを受け入れる中で、この子だけは明らかに嫌そうな態度を崩そうとしない。施設の中でもリーダー格みたいで、みんなを、自分を守ろうといきなり来た異物(私たち)を拒否してる……そんなふうに感じた。

 

 

 

 

 

「子どもの心をつかむなら劇だよね!」

「……台本くらいなら書いてあげてもいいわよ」

「ほんと?ありがとう狭間さん!」

「子どもでもわかりやすい内容なら……お姫様と魔物が出てきて、それを倒すヒーロー物とか?」

「あ、それなら俺が騎士か何かやるよ。寺坂魔物で」

「おいコラ俺の拒否権どこいったカルマァ!」

「いいじゃない、あんたやりなさいよ。()()当てるのなしって注釈入れとくわ……」

「うぐっ……!」

 

 

 

「おかーさん、料理するなら、私お手伝いするよ?」

「本当?だったら出張お料理教室みたいな感じで一緒にやりましょうか」

「うんっ!」

「あ?料理は俺もやるに決まってんだろ!原ばっかりにやらせるかって……」

「……?村松くんも、手伝うことあったらいつでも言ってね」

「……………、……おう」

「ふふ、村松君もアミサちゃんにかかれば形無しねぇ」

 

 

 

「木材はE組の裏山のを切ればいいし、廃材も結構あるよな?」

「じゃあ力仕事班は…………寺坂どうする」

「一番の戦力だよなぁ……演劇に引っ張られてったけど、あっちが片付き次第こっちに来てもらうか」

「律、この柱は……」

『そうですね、こちらの図面のここの部分はいかがでしょうか?あと、……』

「2週間でどこまで組めるか……ここを削って……」

「……で、あの仕事人は何を」

「律曰く、世界中の設計図面を参考にしてリフォーム考えてるんだと」

「じゃあ、俺等はとりあえず材料になるもん運べばいいんだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして始まったわかばパークでのお手伝い。今、この施設の広間では、カエデちゃんがお姫様、カルマが騎士、寺坂くんが魔物役で演劇をしているところだ。私はおかーさんと村松くんの手伝いで食器などを運びながら、食事をする部屋とキッチンを行ったり来たりする間にそれを眺めているんだけど、カエデちゃんの子どもたちを惹きつける演技、カルマと寺坂くんのケンカ……じゃなかった、本格的なアクション、……あ、愛美ちゃんが魔女役で、ってクロロホルム使うの!?ツッコミどころはあるけど子どもたちは楽しそうだっていうのが伝わってきた。

 

「村松くん、置いてきたよ。おかーさんにはこっち……三村くんとイトナくんが買ってきたやつ」

 

「ありがとね〜」

 

「おう、サンキュ……って、おま、何でその量を1回で持ってくんだ!……むしろそのまま三村とイトナに持ってこさせろよ」

 

「だって、靴を脱ぐのを待ってるより私が運んだ方が早そうだったんだもん」

 

「はー、はー……いた!真尾、お前なぁ……」

 

「アミサ、カルマにチクるぞ」

 

「そ、それはやだ!」

 

「ま、その量運ぶ時に広間通ってるわけだからバレバレだと思うけどな」

 

何もしないで動かないのが嫌で、村松くんのお手伝いついでに買い出しから帰ってきた三村くんとイトナくんが靴を脱ぐために置いていた荷物をキッチンまで運んだんだけど、体育祭の片付けと同じように持ってきすぎたのか……私が運びきれなかった食糧を持って慌てたように2人が追いかけてきた。といっても、流石に重くて持てなかったのは油の缶くらいで、それ以外は私が全部持ってきちゃったから、イトナくんは手ぶらだけど。

 

「よし、一段落付いたしアミサちゃんも子どもの方に行っておいで」

 

「……え、あ…………うん」

 

「どうしたー?」

 

「な、なんでもない!行ってきます!」

 

不思議そうな4人から逃げるようにキッチンをあとにする。……ここは、学校じゃないんだから……誰も、私を知ってる人はいないんだから……怖がる必要は、ないんだから……。そう自分に言い聞かせて、子ども相手に不安になっていたことを隠しながら広間の方へと歩く。

ちょうど演劇が終わったところだったみたいで、室内にいる子どもたちは劇に出ていたカエデちゃんたちにまとわりついて遊んでいる。早速劇の役職をあだ名にして呼んでる子たちもいて……そういえば、私が寿美鈴ちゃんのことをおかーさんって呼ぶからか、真似してママって呼んでる子がいたなぁ……。思い出して少し笑っていたら、勉強する小学生たちから少し離れた所で幼児が一つの本に集まっていて……少し調子の外れた声が聞こえてきた。

 

「……みんな、何を見ているの?」

 

「あ、おねーちゃん!あのね、あのね、しっぽのおねーちゃんが、ほんくれたのー!」

 

「おすとね、おとでるんだよー!」

 

しっぽのおねーちゃん……本をくれたって言ってたし、近くの家に読まなくなった本を貰えないか交渉しに行ってる桃花ちゃん、かな。近くに座ってその本を一緒に覗いてみると、ボタンを押すと聞いたことのある童謡の音楽が流れ、付属の楽譜には歌詞や音階などが書かれているってことが分かった。……だけど、流れる音楽にはメロディだけで歌詞はないし、読んでいるのは幼児だから『押したら音が出る』くらいの認識みたいで、音に合わせて知っているところは歌い、分からないとハミングで合わせて流していたみたい。

 

「…………~♪」

 

「「「!」」」

 

1番は知っていても2番は知らない、とかよくあるもんね……そう思いながら、なんとなく子どもが流した曲に合わせて歌詞を口ずさんでいたら、いつの間にか全員が黙って私を見つめていた。こころなしかみんなの目がキラキラして、なにか期待しているような……

 

「おねーちゃん、うたえるの?」

 

「これは?これも!」

 

「わたしもいっしょにうたうー!」

 

「ぼくも!おねーちゃん、おひざのっていい?」

 

……いつの間にか、室内で本を読んでいた幼児が他にもいくつかあった本を持って集まっていた。何人かは劇を見ていた子もこちらに来ていて……少し呆然としていたら膝に乗りたいと言った子が本を差し出しながらニコニコと期待したように笑っていた。

……子どもは無邪気だ。何も汚れた部分を知らず、ニコニコと笑顔を振りまいて、感情表現もまっすぐで……なんだか、癒される。……成長したら、嫌な部分をたくさん知って、誰かを傷つけることに力を使って……こんな幸せな時期を忘れてしまうのかな、なんて、寂しい考えが浮かんでしまった。

 

「……いいよ、お膝、おいで?」

 

「やったー!」

 

「あ、ずるいー」

 

「じゃあわたしおねーちゃんのせなかー!」

 

「1個ずつ好きなの歌ったら交代しよっか?」

 

「「「はーい!」」」

 

……この子たちはこの子たち、こんな優しい場所で育ってるんだから……きっと、そんな寂しい考えと同じ未来にはならないよね。私がこのくらいの歳の小さい子たちと過ごすのは日曜学校以来のことで、いきなり注目されることになって少しドギマギしていたけど、幼児たちのキラキラした笑顔に囲まれていたらなんだかどうでもよくなってきた。

それからは子どもたちからねだられるままに一緒に歌を歌ったり、膝や背中に子どもをくっつけながら絵本を読み聞かせたり、お昼寝の時間には近くで子守唄を歌うか隣に寝転んで軽く背中を叩いて寝かしつけたり……。学校では教えてもらえない、経験できない勉強をたくさんしながら2週間はあっという間に過ぎていった。

 

 

 

 

 

 




「「「…………」」」
「茅野もそうだったけど……」
「真尾の奴、一瞬で子どもの空気を掴んだな」
「体型といい、感情表現のしかたといい……あの幼児の集団の中にいて違和感なさすぎるだろ……」
「あの一角に癒しの空間が出来上がってる……」
「それにしても流石だね、アミサちゃん。歌が上手いっていうか感情がこもってるから、聞いてて気持ちがいい」



「…………」
「……集中出来なくなってきたみたいだし、ここまで終わったら、君も行くかい?」
「……!はい!」
「金髪のおねーさん、俺も行きたい」
「あいよ。……小学生まで惹き付けちゃってるよ、アミサのやつ」



「きしー、なんか怒ってる?」
「……べーつにー?あ、コラぶら下がるなって……」
「カルマ君、子どもにまで嫉妬向けないでね?」
「茅野ちゃん、流石に子どもにはしないって……あー、俺もあっち行こうかなぁ……」
「メガネのお姉ちゃん、きし、あのお姉ちゃんが好きなの?」
「ふふ、そうですよ。騎士のお兄ちゃんはあのお姉ちゃんのことが大好きですから。あの子達は近くにいられて羨ましいんですよ」
「……奥田さんはちょっと黙ろうか」
「ひめー、あのお姉ちゃん歌上手だね」
「歌が上手だから、うたひめ?」
「えー、きしのよめじゃないのー?」
「あ、あはは…………収集がつかなくなった」


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今回入れたかった場面
・カルマとオリ主の勝負
2人が賭けをするって場面使いたいなー……と思ったのは実は1学期末テストの時から考えてました。あの時は使う以前に2人が喧嘩してしまったのでお流れに。これから使いたい展開を思いついたので、いざ!結果は、次回ということで。

・子どもと癒し空間作成
オリ主の設定のひとつに音楽が得意というものがあります。なかなか使う機会が無いのですよね……最初はクラップスタナーの応用で使うつもりが、下手に組み合わせると凶悪すぎる能力になりそうでボツ。このビフォーアフターの時間を読み返していて、待機児童がいるという言葉から幼児がいてもいいよね、なら歌のお姉さん化してしてまおう!ということでこのお話ができあがりました。

・オリ主にもわかばパークの子どもたちにあだ名をつけてもらいたい
カルマは『きし』、カエデは『ひめ』、寺坂くんは『じゃいあんとぶたごりら』……他にも何人かいますが、オリ主にもなにかつけたいなーと。フリースペースでさっそく子どもたちが相談中です。どうなるかは未定ですが、そろそろカルマ君も癒し空間に突撃しそうですからここで終わっておきます。


次回は後編、アフターの時間です。
勝負の結果もここで出せたらいいなと思ってます。

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