暗殺教室─私の進む道─   作:0波音0

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名前の時間

「はー……」

 

「木村くん、どうしたの……?朝からため息なんてついて」

 

「いや、さー……真尾、イトナ達の会話、聞こえたか?」

 

「んー……変わった名前、ってやつ?」

 

「そう、それ」

 

朝、私が学校へ登校してすぐくらいに、自分の机でため息をついてる木村くんの姿が見えた。少し気になって声をかけてみると、教室の後ろの方でイトナくんとカエデちゃん、メグちゃん、陽菜乃ちゃんたちが話している内容が原因らしくて……少しだけ聞こえてきた会話内容は、〝糸成〟という名前はキラキラネームだとか、珍しいとか、なんとか。でも、それが原因と言われてもよく分からないし……いろいろ考えてはみたけど答えは出なかった。

 

「……ピンと来てないだろ、その顔は。……いや、でも真尾なら有り得るな……お前、俺のフルネーム言えるか?」

 

「え……木村〝せいぎ〟くん、だよね……?」

 

「違うよアミサちゃん、〝まさよし〟君だよ!ほら、アプリの名前もそうでしょー?」

 

「あ、カエデちゃん」

 

木村くんからされた突然の問いかけに素直に答えると、教室の後ろから私たちの方へ近づいて来ていたらしいカエデちゃんが、訂正してくれた。……確かに、全体チャットとかでの木村くんのメッセージを確認してみれば、平仮名で〝まさよし〟と書いてあって……私、半年近く名前を間違えて覚えてたってこと……!?

 

「あー、2人とも違うわよ」

 

「「へ?」」

 

「木村の下の名前、〝正義〟って書いて〝ジャスティス〟って読むから」

 

「「ジャスティス!?」」

 

カエデちゃんに言われるまま、スマホのメッセージアプリを見て確認してから慌てて謝ろうとしたところで、合流していたメグちゃんたちが苦笑いで私とカエデちゃんの頭を撫でて止めてきた。その行動を不思議に思っていたら杉野くんが教えてくれた答えは、私もカエデちゃんも間違っているということ……。教えられた木村くんのファーストネームを聞き間違いかと思って、思わず木村くんを見てホントかどうか確認すると、彼はまた大きなため息をひとつついて机に突っ伏してしまった……ホントなんだ。まさか名前の漢字でそんな読み方が存在するとは思わなくてかなり驚いた。

 

「入学式で聞いた時はビビったぜ……」

 

「てか、茅野は知らなかったんだな」

 

「皆、武士の情けで〝まさよし〟って呼んでくれてんだよ。殺せんせーにもそう呼ぶよう頼んでるし、俺も基本それで通してるし……だから茅野が勘違いしてたのはしょうがない」

 

「アミサちゃんの場合はE組に入るまではみんなの名前、全く知らなかったでしょ?そこから覚えた上に本名がアミーシャってことは、日本に来るまではカタカナでの名前に慣れてるってことだから……」

 

「あー、もし途中で知ったとしても、変わってるって感じないわけか……」

 

渚くんの言う通り、私の周りにはカタカナの名前の人しかいなかったから、ジャスティスって名前の方が身近に感じる。……というより、私は日本に馴染めるためにってわざわざ〝真尾有美紗〟という名前を作ったのだから、みんなにとってはあまり聞かない名前の方が違和感があるんだろうな。

木村くんの両親は警察官らしい。正義感で舞い上がってつけられた名前らしく、本人にとってはかなりいじられるしコンプレックスなんだって。ちなみに弟は勇気と書いて〝ブレイブ〟と読むらしく……兄弟そろって英語読みの名前でいつも大変な思いをしてるんだとか。木村くんは卒業式でも名前の読み上げがあるから、その時にまた公開処刑されることが嫌で仕方ない、と机に伏せたままぼやいてた。警察か……ロイドさんたち、元気かなぁ……。

 

「そんなモンよ、親なんて……私なんてこの顔で〝綺羅々〟よ、〝きらら〟!〝きらら〟っぽく見えるかしら?」

 

「い、いや……」

 

私たちが名前について話しているのが気になったのか……綺羅々ちゃんもこちらにやって来て話に混ざり始めた。彼女も自分の名前に思うところはあったみたい……可愛い名前をつけられても、育つ環境によってはその通りに育つわけがないって言い切っちゃった。でも、綺羅々ちゃんってかなり女の子らしいと思うけどな……キラキラしてて可愛いというよりは、文系の静かなお姉さんって感じで。

 

「大変だねー、皆。ヘンテコな名前つけられて」

 

「「「え!?」」」

 

「え、俺?俺は結構気に入ってるよ、この名前。たまたま親のへんてこセンスが俺にも遺伝したんだろうね。それに……好きな子に呼んでもらえる名前が嫌いになるわけないでしょ?

 

「みっ……!」

 

「「「(何言ったのかは聞こえなかったけど、なんとなく想像がつく……)」」」

 

なんでもない事のように割り込んできたカルマこそ、みんな曰くキラキラネームというものらしい。確か、〝業〟と書いて〝カルマ〟と読むのは仏教用語……だったかな。普通に読むなら〝ぎょう〟か〝ごう〟だもんね。私も多分、口で自己紹介されてなかったら、今頃〝ごう〟くんって呼んでたのかな……それは無いか、あの当時からカルマのことはみんな下の名前で呼んでたし。本人がみんなにそう呼ばせてるくらいだから、気に入ってるとは思ってた。

そんな風にカルマの名前のことを軽く考えていたら、いきなり彼の方へと体を引かれて耳元で小さく……また、恥ずかしいことを照れもせずに言う……ッ!わ、私、まだ何も返事してないのに……。顔が真っ赤になってる自覚があるまま、囁かれた耳を片手で押さえて少し彼から体を離そうとしたのだけど、引き寄せられたまま固定されてて動けない。周りを見て助けを求めてはみたけど、……みんな、目を逸らさないで、助けてください……っ

 

「先生も、名前については不満があります」

 

「殺せんせーは気に入ってんじゃん。茅野が付けてくれたその名前」

 

「気に入ってるからこそ不満なんです!!」

 

急にカルマの後ろからニョキりと現れた殺せんせー……いつの間に来てたんだろう。殺せんせー的には名前が気に入らないっていうのではなくて、気に入ってる名前を呼んでくれないことが不満みたい……その烏間先生とイリーナ先生(呼んでくれない2人)の方を恨めしげに見ている。その2人の先生は、いい大人なのにあだ名で呼ぶのが恥ずかしいから嫌みたいで、ぐちぐち言ってるのが聞こえた。

イリーナ先生が最初に殺せんせーのことをちゃんと呼んでたのは、油断させるための演技だったし……でも、もっと年上のはずのロヴロさんは、標的(ターゲット)と呼ぶことはあっても基本殺せんせーって呼んでたような……大人でも名前で呼ぶかどうかは人それぞれってことかな?

 

「じゃあさ、いっその事みんなコードネームにして呼び合うっていうのはどう?」

 

イリーナ先生と喋っていて、そのボヤキを聞いていた桃花ちゃんが思いついたそれは、夏休みの沖縄暗殺旅行で出会った殺し屋さんたちを参考にしたんだそうで……確かにあの人たちは本名を隠してお互いを呼びあってたな、と思い出す。

 

「ではこうしましょう。今から皆さんにクラス全員分のコードネームを考えてもらいます。それを回収し、先生が無作為に一つ選んだものが、皆さんの今日のコードネームです」

 

殺せんせーが乗り気になってクラスの人数分それぞれに配られた白い紙……自分たちの第2の名前か……殺し屋さんたちは、毒ガスが武器の人は〝スモッグ〟、素手が武器の人は〝グリップ〟って感じで、見ただけ、その人の人となりが名前を聞いてだけでわかるものだった。私たちが参考にできるコードネームと言えば、それくらいだから……きっとみんなが考えるものも、本名から遠いそんな感じの名前になる、ハズ……ハズだけど……どうしよ、何かとんでもない名前ばかりになる気がするのは気のせいかな……!?

 

「アミーシャ、書き終わった?」

 

「う、うん……」

 

「……どうしたの?」

 

「その……なんか、すごい名前ばかりになる気がするなー……って」

 

「あー……まぁ、それがそいつの印象なんだからしょうがないっしょ」

 

「……カルマ、絶対いくつか変なの書いたよね」

 

「ヒッミツー♪」

 

ちょっと……ううん、かなり嫌な予感に襲われながらも、なんとか全員分書き終えて出席番号順に並べてまとめ、殺せんせーへ提出する。全員分のコードネーム候補を殺せんせーが紙が破れない程度にマッハを駆使して確認し、笑ったり、微妙な顔をしたり、えー……って顔をしたりしてるのに不安になりながらも発表を待つ。

 

「それでは、今日1日……名前で呼ぶの禁止ッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここはE組校舎の裏山……そこでは、29人の暗殺者がたった一人の標的(ターゲット)を追う、殺伐とした任務(ミッション)繰り広げられていた。

 

「『野球バカ』、『野球バカ』!標的(ターゲット)に動きはあるか!?」

 

殺伐と、した……

 

「まだ無しだ、『美術ノッポ』。『堅物』は今、一本松の近くに潜んでいる……『貧乏委員』チームが『堅物』を背後から沢に追い込み……『ツンデレスナイパー』が狙撃する手はずだ」

 

……お互いに呼んでる名前が自分たちの考えたコードネームでさえなければ、殺伐としたものになっていたんだろう、きっと。

私たちは体育の授業で、早速朝のHRで決めたコードネームを用いたシュミレーション的な授業を受けていた。標的はお腹と背中に的を貼り付けた烏間先生こと『堅物』。暗殺者はペイント弾を詰めた銃一丁と連絡手段であるスマホを武器に、『堅物』を追い詰めようと裏山に散らばる私たちだ。私たち、なんだけど……予想してた通りに、やっぱりひどいコードネームをつけられた人がたくさん出てきたせいで、何かしら行動を起こすたびに精神的な何かを削られていってる気がしていた。例えば……

 

「甘いぞ2人!包囲の間を抜かれてどうする!特に『女たらしクソ野郎』!銃は常に撃てる高さに持っておけ!」

 

……『女たらしクソ野郎』こと、前原くん……誰かから恨みを買ってるのかな。

 

「くっそ……『キノコディレクター』!『神崎名人』!『ゆるふわクワガタ』!そっち行ったぞ!」

 

「……もし逃げた場合、方向をお願いします!太陽なら『鷹岡もどき』グループ、プールなら『ポニーテールと乳』グループが近くなるはずだよ」

 

「オーケー!……っ、方向変えた!太陽!」

 

『女たらしクソ野郎』の言葉を聞いて、私はスマホのマイクに口を近づける。近接特化の私は、射撃がことごとく苦手……つまり、今日の授業はかなりの苦手分野だから、もし『堅物』と相対しても勝負になるとは思えない。だから専ら妨害と撹乱で使ってもらうくらいしか役に立てない……代わりに情報収集、精査が得意だから、E組の参謀や司令官たちが立てたいくつもの作戦の中で、スマホを通して送られてくる情報を元に全員が次にどうなるかを予測しやすいようにいくつかの候補をあげる。作戦自体を選ぶのは、実行者その人におまかせするけどね。

 

「『ホームベース』!『へちま』!『コロコロ上がり』!」

 

「やるな、『鷹岡もどき』……だが、足りない!俺に命中一発では奴には到底当たらんぞ!」

 

聞いただけで誰なのかすぐに分かるあだ名を付けられた人たちもいれば、分かりにくい人、悪意しか感じない名前を連呼される人もいて、正直どんどん更新されていく標的の情報を聞いているとどうしても時々気が抜けてしまうのが現状……なんで自分が呼ばれてるわけじゃないのにこんなに余波が来るんだろう……。私は攻撃としての役割が決められてない分、まだ名前を呼ばれてないけど……これ、私が呼ばれる番になったらなったで反応できない気がしてきた。

……と、考え事をしていたら『鷹岡もどき』こと寺坂くんが1発当てたみたい。スマホからの音を聞く限り、注意を他に引き付けて自分の気配を隠し、狙撃するのに成功したって感じかな。この後、『毒メガネ』と『永遠の0』が正面に来た『堅物』を狙うために潜む草むらをかわされたとしても、その先に『凜として説教』が指揮する『ギャル英語』と『性別』が待ち受けていたはずだ。

 

「……スコープに捉えた、いつでもいい」

 

「了解、『変態終末期』と『このマンガがすごい!』、そろそろです」

 

「了解!『中二半』、追い込むから退路を塞げ!」

 

「オーケー、……反対側頼んだよ、『天然小動物』」

 

「……、…………あ、私だった。はーい」

 

「……忘れてたでしょ」

 

早速名前を忘れていたけど、笑顔で誤魔化しておいて位置につく。『ギャルゲーの主人公』のスナイプ可能距離に標的が入ったことを確認してから、『凜として説教』による射手の位置を特定させない射撃で一方を、背後から追い込む『変態終末期』と『このマンガがすごい!』の2人でもう一方を警戒させ、『中二半』と私……『天然小動物』が退路を塞ぐ。最後の仕上げ、舞台は整った。

 

「『ギャルゲーの主人公』!君の狙撃は常に警戒されていると思え!」

 

正確無比な『ギャルゲーの主人公』による超遠距離スナイプ……指導官である『堅物』は当然その実力を知ってるし、それが私たちの切り札だと考えてるだろう。まさに今、気配を完全に消した彼からの狙撃を板きれ一枚で防いでみせた。でも、それ以上に機動力のあるジョーカーがまだ潜んでいるのは予想外なんじゃないかな。

 

「そう、仕上げは俺じゃない……いけ、『ジャスティス』!」

 

「なっ……」

 

──パパパパァンッ!

 

 

++++++++++++++++

 

 

「ヌルフフフ、さて……どうでした?1時間目の体育をコードネームで過ごしてみた感想は」

 

「「「なんか、どっと傷ついた」」」

 

「ポニーテールと乳って……」

 

「すごいサルって連呼された……」

 

「誰だよ俺の考えた奴……」

 

まだ、1時間目が終わったばかりなのに、この精神的にくる疲れは……どうしようもないんだけど、どうにかしたい。6時間授業だから、これがまだまだ続くってことだよね……。今は2時間目の殺せんせー受け持ちの授業で、早速1時間目の体育を自分たちでつけたコードネームで過ごした感想を聞かれていた。みんながいろんな意味でへとへとになっている様子を見て、何故か殺せんせーは嬉しそうだ。

 

「殺せんせー、なんで俺は本名のままだったんだよ」

 

「1時間目の体育の内容は知ってましたし、君の機動力なら活躍すると思ったからです。実際、さっきみたいにかっこよく決めた時なら、『ジャスティス』って呼ばれてもしっくりきたでしょう?」

 

「うーん……」

 

まだあんまり納得していない木村くんに対して、殺せんせーは改名手続きは比較的簡単にできると続けた。普通なら難しいことだけど、木村くんの場合は普段から〝ジャスティス〟ではなく〝まさよし〟をフリガナに当てて生活している。病院など、本名が必ず必要な公的機関以外……つまりそれ以外のところではかなり読みづらい名前を読みやすい名前にしている、ということで、改名手続きの条件はほぼ満たしてるんだって。それを聞いた木村くんは安心したような顔をしたけど、殺せんせーはそれでも、と続けた。

 

「もし、君が先生を殺せたなら……世界は君の名をこう解釈するでしょう。『まさしくジャスティスだ』『地球を救った英雄の名にふさわしい』……と」

 

名は体を表す、とも言うけど、それは今回のように私たちが見た限り、見たままに名前をつけたらそうなるということ。でも、親が名前に込めた願いはともかく、大事なのはその人が人生の中で何を成したか。だから名前は人を作るとは言いきれない……その人が歩いた足跡の中にそっと名前が残るだけだ、と。

少なくともこの暗殺が全て終わるまでは、その名前(ジャスティス)を大事に持っておいてはどうかと言われ、照れたように、でもスッキリした顔で受け入れている木村くんに、ちょっと安心した。……ここで終わればいい話、いい授業だなー……でよかったのに。

 

「そうそう、今日はコードネームで呼ぶ日でしたね……では、先生のことも〝殺せんせー〟ではなくこう呼んでください」

 

あぁ、そっか。烏間先生は『堅物』、イリーナ先生は『ビッチビチ』というコードネームを決めたのに、そういえば殺せんせーの分の投票はしてなかったっけ。自分で考えたので今から書きますね!と、ノリノリで黒板に装飾付きで書き始めた。

 

「『永遠なる疾風の運命の王子』……と」

 

無駄にキメ顔で。

一瞬の沈黙のあと、みんなからの不満が対先生BB弾の嵐となって一気に向けられていた。私たちはひどい名前でも「だってー、先生は無作為に選んでますからー」とか言って変更させてくれなかったのに、1人だけ自分でかっこいいのを付けてずるい!ついでに長すぎて呼ぶ気が失せそう。

結局このあと満場一致で、殺せんせーは『バカなるエロのチキンのタコ』と呼ばれることになる。……長いことには変わりなかったけど、これこそ、名は体を表すの代表例だな、と思いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝決めた通り、1日の間コードネームで過ごしてみて、呼んだり呼ばれたりするたびに何かが刺さる気分になりながらも、楽しく過ごすことが出来たと思う。何度かんだ順応すれば、受け入れられちゃうものなんだね。

 

「今日はなんか色々とすごい日だったね」

 

「コードネームなぁ……もっとかっこいいもんかと思ってたわ、な、『コロコロ上がり』」

 

「黙れ『野球バカ』」

 

「ひっでぇのー」

 

思いつきで始まったこととはいえ、みんなのネーミングセンスとかを垣間見て、面白かったことに違いはない。ずっとこれからもこのまま過ごすってわけじゃない分、だいぶ気楽に言いあえてたんじゃないかな。まぁ、何人かなんでわざわざそんなコードネームで投票したんだって人もいたわけだけど。完全にコンプレックスを名前にされたカエデちゃんや渚くんとか。メグちゃんの『凜として説教』とか優月ちゃんの『このマンガがすごい!』とか……もはや名前じゃないよね。言い得て妙、って感じがあるのがみんな、よく見ている証拠だなとは思うけど。

とりあえずカエデちゃんは今日1日なんとか我慢してたけど、今はもう終わりだからってイトナくんの意味がわからないってため息に便乗して、不満を前面に押し出しプリプリと怒ってる。多分、悪意を持って書いたものではないと思うよ……カエデちゃんが嫌がってるってことは下着泥棒の事件の時からみんな知ってるんだもん。怒らないで、って気持ちを込めて抱きついてみれば、カエデちゃんも抱きつき返してくれて、幸せ……と思っていたら、彼女は思い出したようにそういえば、と前置いて話し始めた。

 

「殺せんせーに聞いたんだけどさ……アミサちゃんのコードネーム候補、ある意味すごかったらしいよ?」

 

「?」

 

「アミサちゃんのコードネームって『天然小動物』だよね?……それよりも?」

 

「うん。というか……クラス全員28通りの違うことを書いてるはずなのに、コードネームのどこかに『天然』か『妹』か『小動物』って言葉が必ず入ってたって」

 

「え」

 

何その3択、どういうこと?と思って、とりあえずこの場にいるカエデちゃんたちは何と書いたのかを聞いてみればどういうことかわかるかと思って、軽い気持ちで聞いてみたら、

 

「私は『月姫の妹』だよ。沖縄でのカミングアウトが印象に残ってたし、アミサちゃんって月が似合うから」

 

「俺『天然な妹』って書いたわ。イトナは?」

 

「『鈍感小動物』……天然を入れるかは迷った」

 

「僕は『天然記念物』って書いたかな……ちなみにカルマ君は?」

 

「『天然爆撃機』」

 

「「「一番直撃くらってたもんね」」」

 

まともなものを考えてくれていたのは、カエデちゃんだけだった。ほかの男子組、あんまり大差ないと思う……ねぇ、なんでカルマのそれを聞いてわかるって頷きあってるの……?当事者の私がわからないんだけど……!今度は私がプリプリと怒る番で、少しカエデちゃんの腕の中で拗ねていたら、彼女に頭を撫でてもらえて少し気分は浮上……そのまま軽く体重をかけて懐いてみることにした。

こんな感じで私たちなりに楽しく、一生懸命前に進む毎日が続いていたのだけど……私たちは本校舎から差別されるクラス、このまま何も起きずに楽しく終われるってことはないんだ、ってことを……忘れていた。

 

 

 

 

 




「本トは『無自覚天然爆撃機』にしたかったんだけどね」
「長いわ。……あれだろ、修学旅行の……」
「あとプールに……」
「沖縄でもやらかしてた気がする……」
「「「…………」」」
「……俺はその状況を見てないから知らないが……とにかく、野放しは危険ってことか」
「「「それだ」」」



「あ、通知だ……」
『アミサさん、E組の人じゃないですよ?』
「ふふ、だいじょぶだよ。半分くらいの人はまだ怖いけど……この中の2人は、すごく優しいもん」
『……いざとなったらアラーム鳴らしますから、言ってくださいね?』
「ありがと律ちゃん。……えっと、明日の放課後か……だ、い、じょ、ぶ、で、す……と」
『メッセージ、私も呼んでいいですか?』
「いいよ。といっても、放課後お茶しに行こうってお誘いされただけだから、変なメッセージじゃないよ?」
『いえ!行き先くらいは私でも下調べできるかと思いまして!……えぇと、「kunugi-kaze」です?』


++++++++++++++++++++


コードネームの時間でした。
オリ主に、合う名前が思いつかず……結果、いつもと変わらない感じで終わりました。でも、色々あったとは思います笑

ちなみに、オリ主がE組面々に対して書いたコードネーム候補はこちらです↓
赤羽→赤色キャット
磯貝→触覚委員長
岡島→カメラ小僧
岡野→スポーツウーマン
奥田→サイエンティスト
片岡→イケメグ
茅野→木の葉ちゃん
神埼→お姉ちゃん
木村→スピード自慢
倉橋→いきものがかり
潮田→青色ラビット
菅谷→アーティスト
杉野→野球投手
竹林→お医者さん
千葉→スナイパー
寺坂→物理リーダー
中村→姐さん
狭間→文学少女
速水→猫好き
原 →おかーさん
不破→漫画LOVE
前原→雨の日お兄ちゃん
三村→映像作家
村松→料理人
矢田→ポニテ
吉田→バイク好き
律 →ハイスペックPC
糸成→発明家
何人か、コードネームというより職業だったり見た目だったりする人がいますが、気にしない方向でお願いします。

次回は、本校舎との絡みですね……!2回くらいに分かれる気がします。


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