暗殺教室─私の進む道─   作:0波音0

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紡ぐ時間sideアミサ

イトナくんがE組に来てから6日目……1日の授業が全て終わって、クラスのみんなが帰宅したり校庭へ烏間先生に追加で暗殺訓練を受けに行ったり分からないところをイリーナ先生に聞きに行ったり……とそれぞれがそれぞれの放課後を過ごしている中。私はこれから教員室である予定の『イリーナ先生放課後塾』の準備をしながら左隣の()()……イトナくんの席に自然と目が行っていた。

帰りのHRが終わった瞬間、殺せんせーが有無を言わせずイトナくんをどこかへと連れ去ったのだ……何か、紙の束のようなものを持ってたし、廊下を外じゃないほうに曲がっていったのは見えたから、校舎のどこかにはいると思うんだけど。

 

「殺せんせー、何する気なんだろ……」

 

「何かあったの?アミサちゃん」

 

「殺せんせーが紙の束と一緒にイトナくん抱えてどっかいっちゃったから、どうしたのかなって」

 

「うわ〜、紙束がテストとかプリントだったら嫌かも……」

 

「E組に来て1日目、学校もひさしぶりっていうのでそれはない……と思いたいね。あ、それでね、」

 

私の独り言に返事があって前に顔を戻してみると、桃花ちゃんと陽菜乃ちゃんが私の席に来るところだった。陽菜乃ちゃんの一言で、なんかあの紙束がテスト用紙なんじゃないかって気がしてきたよ……イトナくん、あんまり勉強好きじゃないって言ってたから、1日学校で過ごした後にまた勉強ってストレス溜まりそうだし、イトナくんって静かにストレス溜めて後から爆発させるタイプな気がする。後からなにか起きちゃったりしないよね……?

何も無いといいけど……そう思いながらカバンを持ったところで桃花ちゃんに待ったをかけられた。なんでもさっき廊下でイリーナ先生に会って、今日の放課後が空けれなくなっちゃったから明日に回してほしいって言われたみたい。一緒にイリーナ先生のところへ行くためにこっちに来たんじゃなくて先生からの伝言を伝えるために来てくれてたんだって……危ない、誰も居ない教員室でひとりぼっちの待ちぼうけになるところだった。放課後塾の日はカルマたちを待たせるのも悪いってことで先に帰ってもらってるし、今日の帰りは2人と一緒に帰ることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、次の日の放課後……隣の席では、無表情なのに雰囲気だけはドス黒いイトナくんが、殺せんせーが教室から自分へのご褒美のために飛び立っていったのを確認したあと、カバンからそっといくつかの部品を取り出し組み立て始めた。……ちなみに殺せんせーは、お給料が出たから上海ガニを食べに行くんだって……「~アルネ」とか「いーあるさんGO!」って、言葉遣いだけちょこっとなりきってた。なんで中国語の中に英語を混ぜたのかは考えないことにする。

 

「イトナくん、それは?」

 

「仕返し用戦闘車……の、部品諸々だ」

 

「細かいのがいっぱい……仕返しって、やっぱり昨日……」

 

「……あのタコに次から次へとテスト受けさせられた……見てたなら助けてくれ」

 

「うわぁ……って私、殺せんせーがイトナくん連れ去ったとこしか見てないよ」

 

陽菜乃ちゃんの予想は大当たりだったみたい……やっぱりストレスは溜まってたみたいで、手に持ったドライバーが怒りからか折れそうなくらいミシミシいっている。この話ぶりだとテストは1教科だけ、とかじゃなくて全教科受けさせられたんだろうな……今日まで1週間あったんだからせめて1日2教科くらいに抑えとけばよかったのに、殺せんせー。相変わらず段取りが悪い。

イライラとした様子で、でも手元はとても慎重に動くイトナくんの様子見て、この戦闘車はだいぶこだわるつもりなんだということが分かる。そして、こういうのにあまり詳しくない私はほとんど手伝えない……むしろ、女性陣はみんな難しい気がする。だったら他になにか……と考えて、ふと思いついたことをそのまま言ってみる。

 

「……じゃあ、この戦闘車作戦が終わったら、私の家においでよ。……お疲れ様会、しよう?私、何か作って待ってるから」

 

「……俺はアミサの家、知らない」

 

「あれ……?あ……そっか、そうだよね。殺せんせーの下着泥棒疑惑の新聞が出た前の日、泥棒役はイトナくんがやってたって言ってたから私の家に来たのイトナくんだと勝手に思ってた……ごめんね」

 

「……いや、いい」

 

疲れたあとは甘いものってよくいうし、イトナくん甘いもの大好きだし……ちょくちょく村松くんの家にご飯を食べに行ってるみたいだから、たまには他の物を食べる機会があってもいいかと思って、何も考えずに彼を家に誘った。ただ、教えてないんだから家知らないのは当たり前ってこと、忘れてた……

あの日、窓の外で物音を立てた()()()は結局今もわからないまま……今までは、その、リストの中に私も入ってたことから一応実行犯のイトナくんが私の家にも来たんだと考えてた。確かにこれは本人から聞いたわけじゃなくて私の想像でしかない……なのに疑って、申し訳ないことしちゃったな……。少しの間、無言のまま手元で作業を進めていたイトナくんは、何か思いついたように顔を上げて私を向いた。

 

「……他に呼んでもいいか?」

 

「他にって、誰かをってこと?私の家、そんなに広くないから、E組の人であんまり大人数にならなければいいけど……誰か誘いたいの?」

 

「とりあえずカルマ。行き方教えてもらう」

 

「あ、なるほど……うん、いいよ。来る日になったら教えてね」

 

「あぁ。その時成果を話せるよう努力する」

 

確かにカルマなら私の家に何度も来たことあるし、この1週間見てたけどイトナくんとの相性もよさそうだから大歓迎だ。ちょっと言葉の端々にトゲトゲしたものを感じるくらいで。

……イトナくんは、私のことをお姉ちゃんみたいだと言ってくれた。身長はイトナくんより小さいし、甘えたな自覚のある私にはお姉ちゃんらしいところなんて思いつかなかったけど、彼は包み込んでくれるあたたかさが年上のように感じたと言った。その分、守らなきゃいけないって思わせる無茶をしょっちゅうするからその辺は心配だと言われちゃったけど……なかなか会えない本当の家族とは別に、新しい家族が増えた気分。

話がまとまったところで私は席を立つ……今日は昨日できなかったイリーナ先生の放課後塾だ、今日はどんなお話が聞けるのかなぁ……教室を出る前に振り向いたらイトナくん(おとうと)がこっちを向かないまでも手を振ってくれたのが嬉しかった。

 

 

++++++++++++++++

 

 

「ビッチ先生またね」

 

「お先に失礼します!」

 

「次は私がお菓子もってきます!」

 

「なら、スイートショコラをリクエストしとくわ……アミサなら作れるでしょ、あれ。あんた達全員、寄り道しないで帰りなさいよ」

 

「「「はーい!」」」

 

昨日出来なかった分、とイリーナ先生が入れてくれた紅茶とクッキーなどのお菓子を出してくれて、それらを味わいながらたくさんのお話を聞いた。またちょっとした会話術も習い、どうせならE組の男子にも試しなさいと言われて、もしやるなら誰に仕掛けるといいかや無理だと思うならその対策などなど、実際にはきっと使わないことを想定して色々相談するのはちょっと面白かった。主に、みんながそれぞれ男子にどんな評価を向けているのかがわかって……高評価だったのは磯貝くん、酷かったのは岡島くんで私以外の全員の意見が一致したのがまた、すごい。私は高評価はともかく、低評価は誰にもつけられなくて諦めました。

 

「ねぇ、帰りにカフェ寄っていこーよ、ケーキ食べたい!」

 

「行く行く!」

 

「言われたそばから寄り道じゃん、それ」

 

「あははっ!アミサは行ける?」

 

「うん、行きたい!………?」

 

教員室から廊下へ出てすぐ、ふと、いつもの廊下とは違う……なにか違和感がある気がした。周りを軽く確認すると、足元に小さな戦車が置いてあることに気づいた。廊下の木の色に近い薄いカーキ色だから、同化してて分りづらかった……もしかして、これがイトナくんの作った戦闘車だったりするのかな?

 

「アミサちゃん、どうかしたの〜?」

 

「……あ、なんでもな……え、と……私、教室にお財布置いてきちゃった……先に行っててもらっていい?」

 

「え、財布!?」

 

「なんで貴重品を教室に忘れるの……」

 

「その……筆箱見つからなくて1回カバンの中身全部ひっくり返したから、多分その時」

 

「もう、そーいうとこがドジだねぇ……下駄箱のところにいるから、行っておいで〜」

 

「うん、ありがとう!」

 

先に歩いていく4人を見送ってから戦闘車の近くにしゃがみこむ……お財布を忘れたってのは嘘、ただ3年E組の教室へ行く口実が欲しかっただけ。まじまじと見つつ車体を軽く撫でてみる……近くに誰もいないし、多分これ遠隔操作で動かすラジコンだ……違和感は感じたとはいえほぼ同化できていた色もそうだけど、音もほとんどしなかったし……あの細かい部品を組み立てて動くものを作っちゃうなんてイトナくんってすごい特技を持ってるんだなぁ……あ、ちゃんと戦闘車らしく主砲もついてる。飛び出てくるのは対先生BB弾ってところかな……仕返しって言ってたけど、暗殺にもちゃんと絡めてるんだ。

そっとラジコンを持ち上げて教室へと向かうとそこにはE組の男子がカルマ以外みんな揃っていて、イトナくんの席を囲んで何やら話し合いをしている最中のようだった。邪魔しちゃうのは悪い気がしたけど、戦闘車(これ)、持ってきちゃったし……

 

────コンコンコン

 

「「「!!!?」」」

 

「あ、えと……お、お邪魔してごめんなさい……そ、そんなに驚かれるとは思わなくて……」

 

「お、おー……」

 

「真尾か、お前でよかったよ……」

 

「???」

 

「お前らなぁ……ま、いいか。どうしたんだ?」

 

「その……コレ、教員室の前のとこに……イトナくんが作ってたやつだよね?多分廊下のへこみに引っかかってたんだと思う……動かなかったから、持ってきちゃった」

 

ノックした瞬間に全員の目が一気に私へ向いたのがちょっと怖かったのだけど、私だとわかった途端に殆どの男子が安心したように息を吐いたのを見て、お邪魔してもだいじょぶなのだと判断する。とりあえず目的は果たさなくちゃと思って男子の輪の中に入れてもらい、イトナくんへ戦闘車を手渡すと、今度は息を呑む音が……や、やっぱり邪魔だったのかな……?

余計なお世話だったかと思って少しへこんでいたら、そっと手の上から重さが消えた。

 

「助かる。……ちなみになんで気付いた?できる限り最小限の駆動音に抑えていたはずだ」

 

「んー……色、かな。教員室から出た時に、なんか廊下に違和感があるなって……」

 

「……なるほど、要改造点だな」

 

動揺も何も無く普通に受け取ったイトナくんは戦闘車の蓋をパカリと開けて、なにやらまたいじり始めた。そっか、対先生用のラジコンってことはバレたら意味が無いってこと……人間である私が気づいたものに殺せんせーが気づかないはずがないってわけだ。それを聞いていた菅谷くんがならば学校に紛れるようにするためにも、学校迷彩を塗ると買って出ていて……男子で協力して、自分の得意分野を活かして計画を立ててるってことがわかった。これはこれ以上ここにいたらホントに邪魔になっちゃう。

 

「じゃ、じゃあ、頑張って完成させてください……お邪魔しましたっ!」

 

「意見ありがとな〜!」

 

「気をつけて帰れよ!」

 

出入口でおじぎしてから廊下を走らない程度に急いで下駄箱へ向かう。1回教室を振り返ってみたら、既に男子はまた集まって何か相談をしているようだった……途中から暗殺教室に加入した元敵、という立場であるイトナくんが馴染めるかどうか……少し、不安だった。

 

「……ね、E組のみんなはあったかくて優しいんだよ、……心が苦しくなるくらいに」

 

「あ、やっと来たアミサ!」

 

「ちゃんと見つけた〜?」

 

「……うん、お待たせしましたっ!」

 

だけど、私が見たのは彼を中心にして1つにまとまってる光景で……それがとても安心できるもので。そんな事実を誰かに共有したくて、この後のカフェで4人に報告したら、4人ともが嬉しそうに笑ってくれた。みんな、心配してはいたけど信頼もしてたんだなってわかった。彼らの計画が、どこまで通用するんだろう……結果を教えてもらうのが楽しみになってきた放課後だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、アミサのケーキ来たよ」

 

「わあぁ……!いただきますっ!」

 

「ほら、逃げないからゆっくり食べていいんだよ〜……ふふ、クリームついてる」

 

「よし、倉橋さんが気を引いてる今のうちに」

 

「……ねぇ、どう思う?」

 

「どう思うって……殺せんせーがいないって分かってて校舎内を走るラジコンねぇ……」

 

「試運転って言ったらそれまでだけどさ、カルマ以外の男子全員が揃ってて、アミサが教室に行ったら驚かれたんでしょ?」

 

「オマケに『真尾でよかったよ』、ねぇ……」

 

「「「…………」」」

 

「……?陽菜乃ちゃん、みんなどうしたの……?」

 

「気にしなくていいんだよ〜!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日の朝……私はいつも通りに待ち合わせて学校に行こうと思っていたんだけど、一緒に行く渚くんと杉野くんそれぞれから先に学校に行っているとメッセージが送られていた。その時間、朝6時前……なんでも昨日のメンバーは朝一番に集合、菅谷くんが学校迷彩を塗った装甲、内部のギアを吉田くん、というようにそれぞれの担当部位を持ち寄って組み立てを完成させ、ついでに試験走行まで済ませておきたいんだとか。

登校時間になると私の家までカルマが迎えに来てくれて、いつもなら2人との集合場所に行くけど、今日はそのまま一緒に学校へと向かう。

 

「そういえば……男子はみんなイトナくんの作戦に参加してるみたいなのに、カルマは行かなくていいの?」

 

「あー、うん。俺はメカよりも自分の手で殺りたいし……なにより、昨日も途中で帰ったから詳しいことはなんにも聞いてないんだよね」

 

カルマはイトナくんが戦闘車の主砲とモニターの連動を試して、殺せんせーの最大の急所……【心臓】のことを明かしたあたりまでは教室にいたけど、試運転のあたりになってからは特に手を貸せるような物もないし見てるだけはつまらない、と帰ってきたらしい。だから私が教室に行った時にいなかったんだ。

E組へ向かう山道を登りきり、校舎に近づくと……あれ、教室がなんか騒がしい……?昨日と同じようにイトナくんの席の周りに男子が集まって、渚くんと磯貝くんだけが少し後ろで見守ってるようにも見えるけど……教室にメグちゃんを筆頭に女子が入っていった途端お説教の声が……下駄箱まで響いてきてるよ、声。状況が飲み込めないまま、カルマと2人首をかしげながら、離れたところに立っている渚くんに聞こうと前側の扉から教室へ入る。

 

「なにやってんの?」

 

「ちょっと、痴情のもつれが……」

 

「ふーん……」

 

痴情のもつれって……男女で喧嘩してるからそういうことなのかな……?渚くんは言葉を濁すし磯貝くんは苦笑いするばかりでよく分からない、と思っていたら、私たちが教室に来たことに気づいたんだろう……男子に何か説教していた女子メンバーがぐるりと振り向いた。

あまりにも一斉に、しかも怒った表情(かお)のまま振り向くものだから、私は驚きすぎてカルマの後ろに隠れてしまった……私が怒られてるわけじゃないはずなのに怖いよ……

 

「ちょうどいいところに来たわ、カルマ!」

 

「いえ、先に確認よ。あんた、こいつらが昨日から何やってたか知ってる?」

 

「何って……せんせー暗殺用の戦闘車じゃないわけ?俺興味無いから途中で帰ったけど」

 

「「「よし、カルマは白だ」」」

 

「「???」」

 

白……ってことは、なにかの犯人ではないってことでいいのかな……?でも結局何が起きているのかはまだ教えてくれてないから聞きたくて、後ろから少し顔を出してみれば私に気づいたおかーさんが手を広げて「アミサちゃんはおいで」と呼んでくれたから、遠慮なく抱きつきに行く……と、カエデちゃんに耳を塞がれた。そのまま教室の隅でじゃれあい、抱きつきあって遊んでいる背景では、詰め寄る女子がいろいろ言い訳しながら逃げようとしている男子に対して……

 

「こいつらそのラジコンのカメラで女子のスカートの中を見ようとしてたのよ!」

 

「アミサはあんたらの態度を疑ってないけどね、女子に隠して実行してる上、来たのがアミサでよかったって……女子に対してよからぬ事考えてるんじゃないかって思ってたのよ!」

 

「だから、実行に移す前にイタチに壊されたんだって!」

 

「どーだか……」

 

「てか実行しようとしてる時点で一緒よ!」

 

「へー……ねぇ、アミーシャの見た奴いるの?いるなら俺とちょーっとお話しよっかぁ?あ、もちろん何でもありのね」

 

「殺される……!」

 

「だから見てねぇって!」

 

……説教と怒りの話し合い(?)が行われていたらしい。

 

 

++++++++++++++++

 

 

「そっか、あの戦闘車壊れちゃったんだ……」

 

その日の放課後、約束通り戦闘車での暗殺(してないけど)作戦が終わったので、イトナくん学校復帰して1週間お疲れ様会を開くことにした。確かに来る日になったら教えてね、とは言ったけど、まさかあの女子対男子の剣幕の中をサラッと抜け出して私たちがじゃれているところまで来て、

 

〝アミサ、終わったから今日がいい〟

 

〝……?〟

 

〝家、呼んでくれるんだろ?〟

 

〝はぁ?なんでイトナがアミーシャの家に、〟

 

〝カルマ、俺は今日サボる。いい場所教えろ……その時話す〟

 

〝ふーん?……いいよ〟

 

という感じに言いに来るとは思わなかった。私の家にイトナくんが来るって聞いた瞬間、カルマは威嚇してたのに、2人で外へサボりに行って帰ってきたらなんか意気投合して盛り上がってたし……この2人ってよくトゲトゲした言葉でぶつかりあってたから、どうなることかと思ってたけど、仲良くなったならよかったかな。むしろどんな話題でそんなに盛り上がったのか教えて欲しいくらい。多分そのサボってる時に誘ったんだろうね……6時過ぎくらいにイトナくんが事前に言ってた通りのカルマと、あと渚くんも一緒にやってきて、時間も時間だからとテーブルを囲んで今に至る。

 

「いや、開発に失敗はつきもの……今回ダメなら次、それもダメならまたやればいい」

 

「イトナくん、淡々と作業してたもんね……新たな仕事人が誕生したみたいだったよ」

 

「それが何をどうしたら覗きに発展しちゃうかな……」

 

「年頃の男子だからってことにしといて」

 

落ち着いたあとに教えて貰ったのだけど、あのラジコンの主砲にはカメラが取り付けてあって、それを見ながら遠隔操作ができる作りになってたらしい。で、それを見ながら試運転してたところに映りこんだのが……イリーナ先生の放課後塾を終えて教員室から出てきた私たちだった、と。

見てた男子曰く「際どかったけど見えなかった」みたいで、そこでやめておけば何も言われなかったのに、好奇心が疼いて止まらなくなったんだとか……ちなみになんで渚くんもご飯会に誘ったのかを聞いてみれば、あの計画に参加せずむしろ止めようとしていたから、らしい。

 

「あはは……でも、無事に一段落したから……はい、できたよ」

 

「……うまそう」

 

「美味いよ〜アミーシャが作るの。たまに作ってる最中に爆発音するけど」

 

「カルマ君の家に泊まった時はアミサちゃんがご飯作るんだっけ?」

 

「そうそう、最近原さんに料理習ってるらしくてだんだん上達してるから、今日も楽しみだったんだよね」

 

「もっと上手くならなくちゃ、カルマに負けたくないし……その、3人とも男の人だし足りるかわからないけど……1週間お疲れ様でした。……召し上がれ」

 

「「「いただきます」」」

 

頑張って作ったご飯を美味しいと言いながら食べてくれるのを見ると、照れくさいけど嬉しい。カルマで慣れてるつもりだったけど、さすがは男の子って感じの速さで消費されていくのには想像してたけど……予想以上だった。食べながら箸休めに色々なおしゃべりを楽しみ、お疲れ様会は幕を閉じた。

私のご飯を気に入ってくれたのか、これを機に週に1回か2回、勉強嫌いなイトナくんが私の家で課題をすることを条件にご飯を食べに来るようになる。

 

 

 

 

 




「そうだ、聞いておこうと思ってたことがある」
「私に……?」
「アミサ、履いてるか?」
「「「……………………?」」」
「?」
「履いてる……?あ、スパッツ?」
「違う」
「?」
「……言葉が足りなかった。下着、履いてるか?」
「「ちょ!?」」
「へ!?は、履いてるよっ!い、いつそんな疑惑をもたれちゃったの……?」
「アミサが戦闘車を教室に届けてくれた日」
「う……た、確かに、あの日は乾いてなかったからスパッツは、履いてなかったけど……」
「……アミーシャ、もしかしてだけど、戦闘車の前にしゃがんだりした?」
「え、……うん。教室に持っていく前に色々触らせてもらった」
「……まさか、イトナ君……」
「その時、一瞬映った」
「「「」」」
「ちなみに他の男子は他の事で忙しそうだったから見てないはずだ……俺も、さすがに画面を隠した」
「……もしかして」
「カルマ君、どういう事か分かったの!?」
「多分ね。……アミーシャ……俺、前に普通の女性下着にしてって言わなかったっけ……?」
「だ、だって、暗殺するのに邪魔なんだもん!動きにくいし……」
「やっぱりそういう事か……だからって、Tバックはやめてよ……俺、泊まりの時に洗濯回すの、ものすごく辛いんだけど、いろんな意味で」
「(想像以上だった)」
「アミサ、せめてスパッツがない時は普通のを履いた方がいい」
「……そんなにダメかなぁ……」
「「「ダメ」」」


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紡ぐ時間でした。
女子視点だと難しいなーと思いながら書いてました。オリ主、下ネタ系に強くないことで周りから純粋認識されているためか、男子の輪に入っても警戒されずに送り出されました。まさか男子達はそこでオリ主が見たこと聞いたことあったことを女子に、話してしまっているとは思いもしなかっただろう……当然オリ主に告口のつもりはなく、完全に善意です。

フリースペースは、後付けです。本編の中でなんの躊躇もなく戦闘車の正面にしゃがみこんだオリ主……これ、絶対見えてるよな!?から、この会話が生まれました。ちなみに下着については前々から考えていた設定だったりします。だから、夏の水着選びの時、紐ハイレグという際どすぎるものでもあまり動じなかったという裏設定……だって、普段着ているものの形に似ていますから、抵抗なんてあるはずが←

今回はsideアミサです。つまり、次回はsideイトナになります。こっちが捏造を含むちゃんとした本編かもしれません。




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