暗殺教室─私の進む道─   作:0波音0

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夕方の時間

渚side

鷹岡先生による殺せんせー暗殺計画にかこつけた、僕等……正確には僕とアミサちゃんに対する復讐、その大規模な潜入任務(ミッション)を終えて、僕等の宿泊するホテルへと帰ってきた。ホテルで待っていたみんなにもう大丈夫なことを伝えて、栄養剤を飲んでもらって、体力はまだまだでも元気の出てきたクラスメイトを見てやっと安心できた。

戻れる人から大部屋の布団の並べ方とか決めるために片岡さんの先導で移動し、動ける人で後片付けをして……大体の収集がついてから磯貝君と一緒に、帰りのヘリで眠ってしまった2人を迎えにいくことになった。……僕的には2人で迎えにいくつもりだったんだけど、カルマ君が珍しく寝てると知った中村さんと前原君と岡島君は、さっきまで寝込んでたのが嘘のように生き生きとした顔で我先にとヘリの中へと入っていって……慌てて追いかけた磯貝君を見て、まぁこれはこれで仕方ないかと思っていたら、

 

「ちょ、うぎゃっ!?」

 

「!!……何かあったの!?」

 

中から悲鳴と何かが倒れる音が響いた。僕は一番後ろにいたから何が起きたのか全くわからず、何事かと慌てて足を踏み入れた。そこには……

 

「……………………」

 

座ったまま、ものすごく不機嫌そうに対先生ナイフを突き出した格好で威嚇しているカルマ君と、ヘリコプターの床に尻餅をついて痛そうに背中をさすっている前原君、威嚇するカルマ君を宥めようとしている磯貝君、持ってきていたらしいカメラを素早く後ろに隠した岡島君、我関せずスマホを向けている中村さんがいた。ちなみにカルマ君の膝で眠っていたアミサちゃんは、今はカルマ君が抱き抱えていてそこで丸まって寝てる……うん、この修羅場で起きなくてよかったよ……

 

「……イテテ……悪かったって。でもやっぱり布団の方が休めるだろ?」

 

「珍しく俺等の前で無防備に寝てんだもん、起こすに起こせなかったんだよ」

 

「だったらアミサは先に部屋連れてって、カルマは起こして歩かせた方がいいかなって思ってさー」

 

「お前等とここに来てるメンツ以外は全員大部屋行ったからさ、そろそろ呼ばなきゃなーって」

 

「……呼ぶ前に運ぼうとしてたから怒ってんじゃん。それくらいわかんないわけ?ていうか磯貝とか渚君ならまだしも、そもそもお前等病人。さっさと寝ればぁ?」

 

……話を聞く限り、どうやら珍しく無防備に寝ていたカルマ君を起こすに起こせず、まだ起きれないだろうアミサちゃんを先に部屋へ運んでやろう……と、フェミニスト精神を発揮させた前原君が抱えようとした途端カルマ君が気が付いて、ナイフを突き出した、と。アミサちゃんのことに関しては本当にどんだけなセンサーなんだか……でもカルマ君だから仕方ないと言ったらそれまでかも。そしてついでとばかりにカルマ君は元病人の3人に対して正論をぶつけていて……うん、それに対しては僕も同感だ。カルマ君は分かりにくいけど遠まわしに心配してるし、さっさと部屋に行けばよかったんだから。

 

「それに、その手に持ってる物がねぇ……アミーシャを連れてって俺を起こすだけで済む、なんて説得力ないよね」

 

「いや、コレはあれだ!別にお前の寝顔に落書きしてやろうと思って菅谷に借りたとかじゃねーから!(メヘンディアートの塗料)」

 

「お、俺だって、体調戻ってきたから今のうちに夜の海の写真撮ろうとしただけで!別に寝顔撮ってやろうとか考えてねーからな!(高画質一眼レフカメラ)」

 

「いーじゃん、寝顔くらい(スマホ)」

 

「元気になった途端お前らなんなの。しかも中村に至っては誤魔化してすらないし」

 

「だって今も撮ってるもん、動画」

 

ちょっと

 

「ま、まぁまぁ……起きちゃうって」

 

……悪びれもせずに今も動画を取り続ける中村さんも含めて、生き生きと迎え組に名乗りを上げて何か企んでるとは思ってたけど、彼らは落書きやら盗撮やらするつもり満々だったみたいだ。でもカルマ君はアミサちゃんを抱えてるのもあって口では色々言うけど、特に大きな動きをしようとはしてない……こういうところからも大事にしてるのがよく伝わってくるし、一応未遂だったからやり返すつもりもないんだろう。……でも、そろそろカルマ君のイライラが最高潮に達しそうだったから、さすがに僕も止めに入ることにした。

 

「はぁ……で、アミーシャの部屋は?同室の奴って決まってたっけ」

 

「いや、最初は個別の部屋のつもりだったけどこんなことになっただろ?今から個別よりはってことで、片岡が大部屋の準備進めてくれてるし、まだ寝てる奴もいないだろうから融通きくぞ?さすがに男女一緒は他の奴らのことも考えて無理だけど」

 

「チッ、やっぱダメか。……まだ決まってないならさぁ、神崎さんか中村、あと茅野ちゃんあたりと近くにしてやってよ」

 

「は、私?」

 

「なんでそのメンツ?」

 

カルマ君、舌打ちしたよね今。ま、あの様子のアミサちゃんを放っておきたくないのも分かるけどね……とりあえず想定はしていたのか(舌打ちはしたけど)すんなり諦めたカルマ君が指定したメンバーはよく分からないものだった。先にホテルで部屋の準備を担当してくれている片岡さんに律を通して連絡を取りながら答えた磯貝君も不思議そうに顔を上げた。

茅野は普段からよく一緒にいるから分かるけど、神崎さんと中村さんっていうのがよくわからない……アミサちゃんが女子みんなから可愛がられているとはいえ、カルマ君はなんでその2人を選んだんだろう。

 

「茅野ちゃんはアミサちゃんと一番仲がいいってことで言わずもがな。あと2人については……あー……神崎さんってさ、アミサちゃんのお姉さんに似てるんだよね……それに中村はお姉さんの師匠に。……代わりにするってわけじゃないんだけど、雰囲気だけでも安心するんじゃないかと思ってさ」

 

……そういわれてみると、確かに神崎さんはアミサちゃんのお姉さんであるリーシャさんによく似ている。雰囲気も仕草も、どこか声色も似ていて……アミサちゃん自身、珍しく早いうちに自分から甘えにいっていた、数少ない人物だ。中村さんはイリアさん……あれだ、舞台を降りたあの人にそっくりなんだ。アミサちゃんにとってのイリアさんは僕等が知ってる『炎の舞姫であるイリア・プラティエ』ではなくて、舞台を降りたその人だろうから。……代わりというのはあまりいい感じはしないけど、病気の時とかに安心できる人をそばに置きたい気持ちはわかる。

 

「私は全然いいわよ、むしろ大歓迎!保護者(カルマ)公認で近くなんてラッキーだわ〜」

 

「サンキュ。……ついでにその動画止めてくれたらもっと感謝するけど」

 

「や・だ♡」

 

「はぁ……あ、律。アミーシャ以外のE組全員と先生達に伝達」

 

『はい、なんでしょうか?』

 

「あの栄養剤、殺し屋から渡されたんじゃなくてこの子が鷹岡から奪い取った治療薬の中身がそれだったってことで伝えといてよ。……命懸けで奪い取ったのが必要ないものだったとか、知らなくていい」

 

『……ふふ、カルマさんはアミサさんのことが本当に大切なんですね。了解しました!』

 

それは彼女の心を傷つけないためにつくことを選んだ〝やさしい嘘〟……きっと本当のことを知ってしまったら、彼女は毒に侵されていたとはいえ自分が勝手にピンチになったせいで助けなければならなくなった、僕にいらない傷をつけさせてしまった、そんなことを考えてしまうだろうから。あの時、アミサちゃんのことがなくても僕は鷹岡先生に向かっていったと思う……それでも。

そして磯貝君先導のもと、やっと動画を撮るのをやめた中村さんとアミサちゃんを抱えたカルマ君が先に大部屋へ向かい、他のメンバーも忘れ物や見落としがないか確認しながら部屋へと入っていく。そしてみんな、それぞれの疲れで泥のように眠った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

きがついたら、くらいせかいが、ひろがっていた。

 

まばたきをしても、せかいはかわらない。

 

まわりには、だれもいないし、さむいきがする。

 

……あれ、さっきまで、なにもかんじなかったはずなのに。

 

さっき?……さっきってなに?……いつからだっけ。

 

おもいだせないし、気にしなくていいのかな……まだ、ねむたいや……

 

「……起きたの?」

 

だれのこえ?……そういえば、わたし、たおれて……

 

たおれて?なんで、たおれたんだっけ……

 

そうだ……とーさまと、おねーちゃんと……しゅぎょうしてたきがするから……そのせいかな。

 

「……とーさま……」

 

わたしは、いもうとだから……よわいし、かぎょうをつぐ、しかくはないかもしれない。

 

ほんとうは、いっしそうでんのでんとうなのに、とーさまが、くつがえしたから。

 

わたしに、〝そしつがある〟っていって。

 

そのきたいに、こたえられてるかは、わからない。

 

でも……

 

「……へへ、あみさね、おねーちゃんくらい……つよくなる。……とーさまに……はじない、……、……に……」

 

わたしだって、……の、けいしょうしゃ、だから。

 

あたまをなでられたきがした。

 

そのては、とーさまよりも、やさしくて……

 

あれ、とーさまじゃない……?

 

くらやみに、ひかりがさしこんだ、きがした。

 

 

++++++++++++++++

 

 

まぶたの外側が明るい気がして、だんだんと私の意識は浮上した。目を開くとそこは知らない天井の部屋で……ゆっくりと体を起こして周りを見てみれば、そこにはE組の女子、みんなが眠っていた。……いつの間にか、ホテルまで帰ってきてたんだ。それに穏やかな寝息……みんな助かったんだ……よかった。私の記憶は渚くんが鷹岡先生に膝をつかせたところで終わっているから、あの後何が起きたのかはわからない。目が覚めるまでに、夢かなにか見ていた気がするけど……ダメだ、思い出せないや。ぐるっと部屋を見渡してみる……目の前でみんなが眠っているこの光景は、ひどく安心できるものだった。

 

「……ん……、……あれ……」

 

「……?おはよう、莉桜ちゃ「アミサ!!」……わっ!」

 

隣で眠っていた莉桜ちゃんが目を覚まして、何かを探すように私の布団をパタパタと叩いている。……私が起きて動いたから起こしちゃったかな、そう思いながら声をかけてみたら飛び起きた莉桜ちゃんに抱きつかれ、そのまま布団に逆戻り……押し倒された。その時になって、私はやっと気がついた……触られてる、感覚が戻っていることに。触れた彼女から、あたたかい体温を感じることに。

 

「莉桜ちゃん、どうし……」

「どうしたじゃないわよ!あんた、また無茶したんでしょ……聞いたわよ!自分だって苦しかったくせにっ……潜入組の中でたった1人だけ目を覚まさないで帰ってくるなんて、心配させないでよ……おバカッ!」

 

抱きついたまま、莉桜ちゃんに怒られた。ぎゅっと、力をいれて抱きしめられて、それだけ心配をかけていたこと、帰ってきたことに安心してくれていることがわかった。そっと、彼女の背に腕を回す……少し、震えているのが伝わってきた。

 

「……ごめんなさい」

 

「……いいわよ、謝って欲しいわけじゃないから……ありがとね、私達のために頑張ってくれて。それに、言いたいことがあるのは私だけじゃないんだから」

 

「え……」

 

「アミサちゃん」

 

「!」

 

気がつけば、部屋の中で眠っていた女子みんなが目を覚まして、私たちの近くに来ていた。私の布団を囲むように座ってるから、最初は怒られるんじゃないかって思ったけど……みんな、優しい顔をして笑っていて。そっと体を起こされて、莉桜ちゃんと同じように抱きしめてくれたり、頭を撫でてくれたり、手を握ってくれたり……感覚の戻った私の体はひどく重たかったけど、触れられるみんなの体温はとてもあたたかくて……優しかった。

 

「ありがとう」

 

「治療薬、私達のために取ってきてくれてありがとう」

 

「おかえりなさい」

 

「ちょっとは頼ること覚えなさいよ、ホントに」

 

「あんたは抱えるのが好きよね、まったく……」

 

「これからは1人でやろうとしたら私達が介入するからね!」

 

お礼や迎える言葉、心配するだけじゃなくて一緒に抱えようとしてくれる言葉、私を見てくれているから出てくる言葉……やっぱり、みんなはとても明るい。暗い世界だけしか知らなかった私には、まぶしすぎるくらい光のような人たち……そしてそれを、その心地よさを教えてくれた人たち。

 

「……ありが、とう」

 

少し気恥しくなって、そう小さな声で言ったら、みんなが笑って応えてくれた。私も、みんなが照らすその光の中に、いつか心の底から入れたらいいな。

 

「……よし、湿っぽいのは終わり!と、いうことで〜……神崎ちゃん、茅野ちゃん、確保!」

 

「う、うん!」

 

「りょーかい!」

 

「へ……?」

 

あの、優しい空気で終わるみんなじゃなかった。さっきまでの、優しいゆったりとした空間はどこに行ったの?というくらい、いきなり空気が変わってしまい、私は動くに動けない。後ろから有希子ちゃんに腰のあたりで抱きしめられ、カエデちゃんが私の腕をとり、周りを他の子たちに囲まれる……一気に、逃げ道がなくなった。……何、何がはじまるの……?

 

「いくつか聞きたいことがあるのよね……いいかしら」

 

「大丈夫だよ?怖いことはしないからね〜?」

 

「え、う、うん……?」

 

正面に座るのは莉桜ちゃんとメグちゃん。真剣なんだか、楽しんでるのかよくわからない声色で声をかけられて、少し身構えながらだけど返事をする。

 

「まずは1つ目……なんて呼ばれたい?」

 

「………………へ?」

 

最初からいきなりわけのわからない質問がとんできた。なんて呼ばれたいって……質問の意図がよくわからなくて、聞き返してしまった。

 

「あの山のホテルへ行く前に言ってたでしょ。『本名はアミーシャ・マオ』だって。つまり、今まで私達は偽名の方で名前を呼んでたわけじゃない?」

 

「名前の呼び方で何か変わるとも思えないけど……アミサちゃんが、本名の方がいいってことなら私達はそっちで呼ぶし、どうかな?」

 

「カルマなんて、あんたが本名みんなに公開した途端、見せつけるように〝アミーシャ〟って呼ぶようになるしさぁ……あんたはどっちがいいのかなって」

 

そういえば、『月の姫の縁者』が誰だって話になった時に、名前をバラしたんだった……あの時はタイムリミットはあるし命の危険はあるしでバタバタしてて気にしてなかったけど、みんな、覚えててくれたんだ。……言われてみれば、カルマは私のこと名前で呼んでた……自然すぎてスルーしてた。

みんなが私の応えを待っているとわかって少し考える、考えるけど……私の中で答えは決まっているようなものだった。わざわざ聞いてくれたみんなには申し訳ないけど……

 

「私は……みんなには、今まで通り〝アミサ〟って呼んでほしい。確かに本名じゃないけど……アミサって呼んでくれるのはみんなだけだから。特別な名前だから……その、……だめ……?」

 

最初は日本の学校で少しでも溶け込むために、そして私を私として見てもらいたくてお姉ちゃんとのつながりを隠すために考えた名前だった。でも、3年生になってE組に来てからはE組女子のみんなだけが呼ぶ、特別な名前……あだ名のようなものになった。それを変えてしまうのは少し寂しい気がしたから。

もしかして、みんなは隠していたことで怒っていて、本名で呼びたいからこんな質問をしてきたのかな、とか思ってたんだけど……ビクビクしながらの私の答えにみんなは顔を見合わせて……

 

「ダメなわけないでしょ!」

 

「私たちだけの特別な呼び名かぁ……へへ、特別ってなんかいいね〜」

 

「じゃあ、これからもよろしくね、アミサ!」

 

そう、言ってくれた。拒否されたらどうしようって気持ちがあったから、ちょっと安心して笑ったら優月ちゃんに「あーもー、ほんとこの子ってば……」と言われながら頭をぐりぐりと撫でられた。

 

「よし、じゃあ2つ目ね。正直こっちのほうが気になってるんだけど……あの山のホテルでロビーを突破したあと、アミサ、顔真っ赤にして逃げてきたじゃない?カルマと何があったの?」

 

「え、何それ……カルマ君、ついに我慢出来ずに手を出したってこと?」

 

「アミサちゃんが分かってないのをいいことに……!?」

 

「もしそうならお姉さんたちがあいつ呼び出して、いつでも『お話し』してきてあげるから、正直に言いなさい!」

 

「え、えぇ……?」

 

意味はよくわからないけど、なんかカルマに不名誉なイメージがつきそうになってる気がするし、これは話すまで解放してくれないやつだ……そう悟った私はあの時の様子を必死に思い出す。ロビー……それって、私が《月光蝶》を使って非常階段の様子を見に行くついでに全体の警備を確認して、ただでさえ危険な所へ送り出すのに余計な危険に足を突っ込まないでって心配したって怒られたやつ、だよね……?あの時、何があったか……デコピンされて、それで…………

 

「────ッ!」

 

「あ、真っ赤になった」

 

「ほんと、何があったのよ……」

 

「あ、その、えと…………まず、1人で突っ走ったから怒られてデコピンされて……その後、私のおでこに、カルマがおでこで、コツンって……」

 

「「「おお……」」」

 

「か、カルマが……ギューってしてくるのはいつものことだけど、あ、あんなに近くで顔を見たことなんてなくて……その、…………」

 

「……カッコよかった?」

 

「ドキドキした?」

 

「…………………………(コクン)」

 

「「「(やっと通用したのか、カルマ君のアピール……!!)」」」

 

「で、でもでも、こんなに心臓ドキドキしたことなくて……っ、私、病気になっちゃったのかなぁ……」

 

「「「(あ、ダメだ。理解はできてない……どんまい、カルマ)」」」

 

頑張って思い出しながら……思い出してる最中にも顔が熱くなってきて、心臓がバクバクしてきて、なんでなのか分からなかったのだけど……みんなには言いたいことは伝わったみたいで、どこか苦笑いみたいな顔をされてしまった。

 

「うん、……まぁ、ドキドキするって感情がわかっただけ進歩だよね」

 

「この子と一緒ならあいつも人が変わったみたいにおとなしくなるし……ぜひともくっついて欲しいし」

 

「とりあえず、1番アドバンテージあるんだから頑張って欲しいわ」

 

「???」

 

「気にしなくていいよ」

 

またみんなだけでわかる会話をする……でも、気にしなくていいって有希子ちゃんがいうならそうなんだろう。いつもそうだったから、嘘は言ってないと思うし。

これで聞きたいことは終わりだったのか、みんなは自分の荷物のところへ行って着替えをすることに……今になってやっとスマホを見たんだけど、律ちゃんが示した時間は午後4時……もう、夕方だったんだ。烏間先生からのメールが届いていて、もうすぐ完全防御形態の解ける殺せんせーを、ダメ元ではあるけど戻った時に殺せるよう、周りに被害が出ないところでがっちり固めておくんだって。きっとこのメールを見たE組のみんなは外へ行くと思う。

 

「さっ、もう夕方だけど……時間いっぱい楽しむためにも!」

 

「神崎ちゃん、そのままその子連れてきて!」

 

「はーい」

 

「え、また……!?」

 

「はいはい、お着替えターイム」

 

……今ほど私の身長が小さいことを恨んだことは……!……いっぱい、あるけど……!軽く持ち上げられただけで運ばれてしまい、私の荷物の所へ。うぅ、メグちゃんならともかく、有希子ちゃんとは15cmくらいの差なのに……軽く運ばれた……。そのまま私の髪を結びたいと桃花ちゃんと陽菜乃ちゃんにいじられ、もうめんどくさいし動きやすいしジャージでいいよねーっと言いながらみんなで着替えて……きっと、元気になったであろう男子たちもいる外の海岸へと足を踏み出した。向こうの方に、私たちが来たことに気づいて手を振る姿が見える。さて、殺せんせーは……どうなったのかな?

 

 

 

 

 




※その頃の男子部屋
「さてカルマ……」
「あの時ロビー突破後何があったのか、包み隠さず話してもらうぞ」
「ちょっとした話し合いだよ」
「……何コレ、すごいデジャヴなんだけど」
(番外編・動画の時間)

~律による、女子の尋問(?)を中継されて~

「「「………」」」
「……何」
「お前……やっと、通用したのか……!!」
「あんなに真っ赤になってたから、なにか進展したんだとは思ってたけど!」
「気づかれてないけどな!」
「上げてから落とさないでくれる?」
「あはは……(女子からの評価も散々だなぁ……)」
「でも、これだけやってもカルマの気持ちに気付かない真尾すげぇな……いや、名前で呼んだ方がいいのか?」
「本人に聞いた方がいいんじゃね?あとはそこで不機嫌になってるやつとか」
「…………」
「いいじゃん!お前は本名で呼んでんだし!」
「そーだけど」


++++++++++++++++++++


普久間殿上ホテルから帰還後、それぞれの部屋での出来事でした。一応まとめて夕方の時間ということに。番外編に当たるのかな、とも思いましたが、番外編は明らかに時間軸がずれる時や本編の裏側などをまとめた方がいいと思い、本編のひとつの話としてこちらに。

中村さんってホントにいいポジションだと私は思うのですよ……!いろいろと!なので今回いっぱい動いてもらいました。そしてE組女子の中でオリ主は完全妹ポジションです。からかいがいのあるネタであり、構えば何かしらの反応が返ってくる子どものようであり、何かと無茶をするから放っとくのが怖い……そんな子になりつつあります。(地味にキーアのような子に……念の為に、零の至宝のような力は持ってませんと宣言しておきます)

次回は肝試しに入れるかな……くらいです。多分、あと2回くらいは沖縄リゾート編が続くと思います。まだまだ夏は続きます。


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