教室で殺虫剤(?)のスプレー缶を爆発させて、殺せんせーやみんなにひどいことを言って、寺坂くんが教室を出て行っちゃってから次の日。朝のHRが始まっても、騒ぎを起こした彼はまだ教室に姿を見せていなかった……さすがの彼でもクラスに入りづらいのかな。だけど、このクラスの中でそのことを気にかけている人がいるようには見えない……いつも一緒にいる吉田くんと村松くんすら彼の席に目を向けようとしてなくて、少し不安になった。吉田くんは言わずもがな昨日の昼休みにあった殺せんせー特製木造バイクを蹴り壊してしまった事件、村松くんは殺せんせーの『模試直前放課後ヌルヌル強化学習』を受けたことが寺坂くんにバレて責められたみたいで、あそこまで横暴なことをされるとついてけないって言ってた。
「ズズッ……はい、今日も皆さん元気に学校へ来てますね……寺坂君は、ぐすっ……休みですか」
殺せんせーもちょっと寂しそう……でも先生のことだから、内心「E組に入って先生に会ってこのクラスの一員となったからには何としてでも馴染ませてみせます!」とか意気込んでるような気がする。このクラスの生徒が困れば、道に迷えば、自分のことのように一緒に考えて、お節介すぎるくらいに世話を焼いてくれる先生だもん、きっと寺坂くんだって……、……それにしても殺せんせー、なんで泣いてるんだろう……?
◆
午前中4時間の授業が終わって、今はお昼ご飯の時間。いつもならカルマとか近くの席の子とかと一緒に食べてるけど、今日はイリーナ先生の英語の授業があったから……その時に私と桃花ちゃん、莉桜ちゃん、陽菜乃ちゃんの4人で先生をお昼ご飯に誘っていたから別々に食べることに。今日の放課後はイリーナ先生に用事があるらしくていつものイリーナ先生の課外授業が開けないって前から聞いてて……だったら、お昼ご飯バージョンでというわけでお願いしたのです。……しょうがないわね、って言いながらも嬉しそうにお弁当を持ってきて付き合ってくれるから、イリーナ先生大好き。
「せんせー、それでそれで?」
「そうね、あんた達がもってるモノで魅せるなら……」
話してる内容は、季節が季節なこともあってプールとか、水着とか、夏っていう感じのばかり。イリーナ先生の昨日披露できなかった新作セクシー水着はもっといい場面で出すことにしたんだっていう話とか、今までに男の人を悩殺してきた夏の海での女の魅せ方とか、聞いててすごく楽しい。気になったことを聞くとそれを私たちがやるとしたら……っていうさりげないアドバイスと共に教えてくれるから、今後の参考になりそうなんだけど、ここは教室……クラスの男子にも聞こえてるから、ちょっと居心地悪そうな人もいる。いつもは放課後の教員室か空き教室でお菓子を囲みながらやるから……でもごめんね、この集まりに参加し始めてから少しずつイリーナ先生の英語の授業でも照れずに参加できるようになってきたから、受けときたいんだ。
「そういえば……あのタコがプールを作った初日にアミサがまたやらかしたらしいじゃない」
「あー……アレね、カルマがかなりかわいそうなことになってたアレ」
「うう……、水の中にいる時に人の上に乗ったら危ないなんて、誰でも知ってることなのに……あとちょっとでカルマを溺れさせちゃうとこだったの……」
「うん、多分アミサちゃんが反省するのはそこじゃないかな〜」
水辺の話題が出ていれば、自然と出てくる私の失態……陽菜乃ちゃん、そこ以外にどこを反省するの?水の中の事故は人が上に乗ったことで水の上に上がれなくて溺れるってケースもあるんだから……!と言い張ったのだけど、私が気をつけなければいけないのはそこじゃないらしい。教えてってねだったのだけど、イリーナ先生にはそのままの方が反応が面白いし今後が楽しみだからって、結局教えてもらえなかった。
「でも……無意識とはいえ、さりげないボディタッチをするのは大事っていう私の教えは実践できてんのね」
「ビッチ先生、あれは全然さりげなくなかった」
「アミサちゃんくらいだよね、カルマ君をあそこまで動揺させられるのって」
「あー今
「……で、あんたはさっきからなんなわけ?ニヤニヤしながら話を聞くのはわかるけど、意味もなく涙流して」
「いいえ、鼻なので涙じゃなくて鼻水です。目はこっち」
「まぎらわしっ」
殺せんせーは午前の授業中ずっと泣きながら、ハンカチとかティッシュとかで顔を拭きながら、鼻をすすりながら授業をしていてだいぶ辛そうだった。どうやら昨日からずっと調子が悪いらしくて、鼻水が止まらないみたい……殺せんせー、目よりも鼻の方が上にあるんだ……
────ガラッ
「!!おおお、寺坂君!今日は登校しないのかと心配してました!」
誰よりも嬉しそうに、無駄にマッハを使って教卓から教室後ろの彼の席まで飛んでいく殺せんせー……あぁ……鼻水止まってないまま近づいたから飛び散って寺坂くんの顔が大変なことになってるよ……。色々言われたことよりも正直今の寺坂くんの方が不憫に見えて、あんまり気にならなくなってくる。
殺せんせーはそんなことにお構いなく、不満や悩みがあるなら直接話そうって提案している……やっぱり、先生はしっかり考えてたんだ。彼がまた昨日みたいに怒るんじゃないかって少しビクビクしてたんだけど、思っていたよりも落ち着いて見えて、先生のネクタイを使って顔にたくさんついた先生の汁を拭いた……放課後、プールで暗殺を決行するらしい。みんなにも手伝えって声をかけてるけど……あまり、気乗りしないみたい。
「……寺坂、お前ずっとみんなの暗殺には協力してこなかったよな。それをいきなりお前の都合で命令されて……皆が皆、ハイやりますって言うと思うか?」
「……ケッ、別にいいぜ来なくても。そん時ゃ俺が賞金百億独り占めだ」
そう言ってまた教室を出ていってしまった寺坂くん……みんな、彼の暗殺には参加しない気のようでまたご飯を食べ始めた。渚くんが少し迷ったように箸を動かしていたけど、何かを決めたように教室から走って出ていった……方向からしても多分、寺坂くんを追いかけたんだと思う。
クラスのみんながどちらを選んだとしても、私は放課後プールに行くつもりだ。いつからかは気づかなかったけど、寺坂くんの言葉に温度が感じられなくなっていた……どこか、彼自身の言葉に聞こえなかった借り物のような気がしたから。彼の不安定さ、揺れている意識の波がなんだかおかしく感じたから。このままだと取り返しのつかない何かを起こしてしまいそうで、……壊れて、しまいそうで……怖くなったから。たとえ私一人だったとしても……手伝いたい。
「皆行きましょうよぉ……せっかく寺坂君が私を殺る気になったんです、みんなで一緒に暗殺をして気持ちよく仲直りですよぉ……」
「うぉわ、粘液で固められて逃げられねぇ!」
「まずあんたが気持ち悪い!!」
…………殺せんせーが粘液ダダ漏れなことを利用してみんなを説得しにかかってきた。これはみんなで行くことになりそうです。
「ふわぁ……は、皆何してんの……?」
昼休み中、外の木陰でお昼寝してきたみたい……眠たそうにあくびをしながらカルマが帰ってきて……教室の惨状を廊下の窓から見て固まった。そうだよね、教室中一面に広がった黄色のよくわからない物体に足を取られたみんなをいきなり見たら固まるよ……
「カルマ、助けて欲しいけど少しの間それ以上入んな!!お前まで動けなくなったら本末転倒だ……!」
「……アミサ、何コレ」
「あ、カルマおかえりなさい。殺せんせーの鼻水らしい、よ?でも頭のてっぺんからも出てるから……何だろ?」
「うっわ気持ち悪……そこから出たらすぐに洗いに行こうね」
「そんなハッキリ!!?先生だって、止まらなくて困ってるんですからもう少しオブラートに……!」
「「「いや、俺ら(私ら)全員洗いたいと思ってるから」」」
「皆さんんんッ!?」
◆
何故か
私もすでに着替えてあるから、あとは向かうだけの状態……で、毎回のごとく私は水着に着替えず自分の席であくびをしてるこの人を連れ出そうとしているわけで。
「……だーから、俺は行かないって。なんで計画の共有もせずに突っ走るヤツを手伝わなきゃなんないの……」
「でも、昨日話したこと……」
「ああ、寺坂はバカだって話?」
「そ、そうだけどそうじゃなくて……渚くんが言ってたの。寺坂くんはビジョンがあるとかどうとかって言いながら自分に言い聞かせているようで、自分の言葉に自信を持ってるようには見えなかったって……」
つまり寺坂くんは何かを信じて行動しているように見える。一つのことを盲目的に信じていてイレギュラーが起こる可能性を端から考えていない、自分の意思で決めてみんなを動かそうとしているようには見えない……そんな感じだ。
「……まあ、鷹岡の時のことがあるしね……分かった、プールまでは行くよ。エニグマって防水だったっけ?スマホよりは壊れないだろうしなんかのために持ってって」
「…………プールサイドの上着の上に置いとく」
教室からは連れ出せそうだけど、暗殺に参加させるまではいかなかった。それでもいざとなった時に頭のいいカルマにはいてほしいし……これでもいい方かと思って、先に行ったみんなを追いかけた。
++++++++++++++++
プールでは寺坂くんの指示で、みんなが対先生ナイフを持ちながらプール全体に広がる。ここでも上から目線の彼は指示っていうよりも命令で、上のジャージを羽織ったまま渋っていた竹林くんを突き落として……まるで、暴君のようだった。私は身長の関係と泳げないカエデちゃんにもしものことがあると困るからサポートできるようにってことで、浅瀬のプールサイド付近で彼女の隣に待機している。ちなみにカルマは制服のまま、寺坂くんがいるところとは別の岩場に座ってる。
「つか、カルマ!!テメーはなんで制服着てんだよッ」
「えー、寺坂だって制服じゃん?それに俺は
「……チッ、」
そのうちに殺せんせーもやってきて、これから何をしようとしているのかを早速見破っていた。誰かが先生を水に突き落として、みんなが刺す……その作戦はたしかに考えたことがあるけど、先生がそう簡単に落ちてくれるとは思えないし、見破られてる時点で落ちてくれるわけがない。……なのに寺坂くんは対先生BB弾のエアガン一丁で自信があるようだ。
「覚悟はできたかモンスター」
「もちろん出来てます。鼻水も止まったし」
「ずっとテメーが嫌いだったよ……消えて欲しくてしょうがなかった」
「えぇ、知ってます。
寺坂くんが殺せんせーにエアガンを向ける。だけどそのエアガンの向きはプールと平行で、とてもじゃないけど1回の射撃で先生をプールに落とせるとは思えなかった。じゃあ彼はなんであんなに自信があるのだろう……射撃が目的じゃないとしたら?もしかしたら私が知らないだけで他の誰かには計画を話してるのかもしれない……それでその合図が銃声、とか。朝、教室に来なかったのもこの暗殺の準備のためだったのかもしれないし、それなら納得がいくんだけど……
あからさまにナメた表情の殺せんせーにイライラした様子の寺坂くんは、引き金を引いた。それを見てプールにいる全員が気を引き締める……なんだかんだ言ってても、殺せんせーが水に落ちるなら暗殺のチャンスには違いないから。でも、引き金が引かれても銃弾は飛び出さず、引き金を引ききったカチッという音だけじゃなくて、少し遅れて小さくくぐもった『ピピッ』という電子音が鳴った気がして音の方を振り向いた……瞬間だった。
────ドグァッ!!
爆音が響いたかと思えば、プールの水を止めていた堰が壊れ、貯められていた大量の水が一気に放出される。その勢いはとてもじゃないけど泳いで抜け出せるものじゃない……それにこの近くは確か、危険な岩場ばかりの崖だってあったはずだ。
「カエデちゃんごめんね……っ!」
「っ!?きゃ……っ!」
水の流れがおかしくなった瞬間、私は後先考えずカエデちゃんをプールサイドへと思い切り突き飛ばしていた。カエデちゃんは泳げないから少しでも水が緩やかな方へ、可能なら水の外へ……。彼女が無事だったかどうかを確認する余裕もなく、私は彼女を突き飛ばした反動でプールの深い所まで流され、強すぎる水の勢いに飲み込まれていた。早く、水面に上がらないと……流れが早すぎてうまく体勢を保てないけど、せめて、1回息継ぎをしなくちゃ、ッ!?
「っ!!がぼ……っ…!」
何か、なのか、誰か、なのかも分からない。だけど水の中から水面に上がろうとした瞬間に後頭部に重たいものが当たり、再び水中へ引き戻された。ぐるぐるぐるぐる……どっちが上か、分からないし、水、飲んだ……っ、ムリ、もう……息、もたな……、
◆
カルマside
正直、来るつもりなんてなかった。どうせ寺坂の考える作戦なんて大したことないだろうし、中身だってないだろうし……でも、何となく嫌な胸騒ぎがしてたのも事実で、アミサの直感だけじゃなく渚君の感じた胸騒ぎも気にかかって、来るだけ来てみた。……もう、あの最低教師の時みたいな後悔はしたくないしね。
んで、作戦は案の定、先生水に突き落として刺すって……そんなの全員1度は考えてるし、片岡さん中心で殺る前から殺せんせー本人に無理だって言い切られたらしいやつじゃん。その割りにはなーんか自信ありげだし……だから不信感しかなかったんだけど、こいつは予想通りやらかしてくれた。
「……なんだよ、これ……ウソだろ……こんなの、聞いてねーよ……!」
あのバカが引き金を引いた瞬間、アミサがプールの堰を振り返った……と思ったらプールが爆発を起こした。アミサは音や気配に敏感だ……多分あの時、何かを感じ取ったんだと思う。一気に放出される水の流れに流されるクラスメイトたち……呆然とする寺坂を残して殺せんせーが水の中に飛び込み、流される生徒達を助け始めた。先生は俺らがどんな無茶やろうが見捨てることなんて絶対しないって分かってるから、そっちはとりあえず任せて俺はこいつだ。
「……寺坂、どういうつもり?」
「……俺は、何もしてねぇ……話が違げーよ……イトナを呼んで突き落とすって聞いてたのに……」
「!!なるほどねぇ……自分で立てた計画じゃなくてまんまとあの2人に操られてたってわけ。……アミサと渚君の懸念通りになってんじゃん……」
「言っとくが俺のせいじゃねーぞカルマァッ!!こんな計画やらす方が悪りーんだ!!みんなが流されてったのも、全部奴らが……」
全部、聞く気になんてなれなかった。
言い終わるのも待たずに俺はこいつの顔面を利き腕でぶん殴る……こいつは今、なんて言った……?引き返すところはいくつもあったんだ。プールができる前、狭間さんの離脱、村松や吉田との仲違い、アミサの気づき、俺の忠告、渚君との対話、殺せんせーの説得……それらを全て聞かずに楽な方へと逃げ続けたこいつの自業自得じゃん。何、責任転嫁してんの……?
「標的がマッハ20でよかったね……でなきゃ今頃お前は大量殺人の実行犯にされてるよ。流されたのは皆じゃなくて自分じゃん……人のせいにするヒマあったら自分の頭で何したいか考えたら?」
それだけ言い残してバカは放置。俺は途中でアミサのエニグマを回収しつつ岩場を降っていく……堰から離れたところにいた連中は何人かだけプールの中にいたけど、大半は離れたところまで流されたと見ていい。木に投げられた奴、岩場に降ろされたやつ、茂みに落とされた奴……人数を数えながら順に見て回るけど2人だけ姿が見えないし、どの辺りにいるか知ってる奴もいない……アミサと、茅野ちゃんだけがどこにもいない。すぐにでも動けそうな奴は磯貝に任せて下流へ行かせ、俺は近場を探す……と、何かが聞こえたような……泣き声?
「……ねぇ!起きてよ……アミサちゃん……!」
「!!」
聞こえたのは茅野ちゃんの声……呼んでるのは、アミサ?明らかに何かが起きてるその声に焦る気持ちをなんとか抑えながら、声の聞こえた方へと走ると……プールから少しだけ外れた茂みの近くに彼女たちの姿が。多分殺せんせーに茂みに投げ込まれるように助けられたんだろうけど……必死に名前を呼びながら頬を叩いている茅野ちゃんと、ぐったりとして顔色を真っ青にしたアミサが、そこにいた。
「茅野ちゃん……!」
「!!カルマ君、アミサ、息してないのッ……!私のことを、岸に押し上げて、代わりに流されて……!どうしたらいいの、なんにも反応ない……!」
「代わって、茅野ちゃんは意識戻らないか様子見てて」
パニックになりかけてる茅野ちゃんと場所を代わって記憶を掘り起こす……慌てるな、溺れてからまだそんなに時間は経ってない。応急手当、心肺蘇生法、……どうやればいいんだっけ……焦るな、人形使ってやっただろ、烏間先生の応急手当の授業……!
意識の確認……反応ないし、茅野ちゃんが言ってた通り呼吸も無い。ならまずは気道確保か……次は、胸骨圧迫……胸の真ん中を真っ直ぐに、体重をかけて早く、リズムよく、途切れずに押す。烏間先生は全体重乗せるつもりでやれって言ってたっけ……アバラ、折れたらごめん。
次に、……こんな形ですることになるなんて、思ってもみなかったけど躊躇ってる暇はない。俺はアミサと唇を合わせてゆっくり息を吹き込む……………、これが初めてで、これで終わりなんて絶対に認めないから。
「アミサちゃん……!」
「……ねぇ、戻ってきてよ…ッ……アミーシャ……!!」
心臓マッサージを、人工呼吸を繰り返すほどに時間が過ぎていく。具体的な数字は覚えてないけど、確か呼吸が止まって数分が勝負のはず。何回目かの蘇生法を試した頃、アミサに呼びかけ続けて様子を見ていた茅野ちゃんが、慌てて俺を呼ぶ。
「……!カルマ君ストップ!動いた!」
「……っ、え、」
「ッ!……げぼっ、ごぼ…ッ…」
「…………水、吐いた……は、はは……よかった……」
まだ、少し苦しそうだけどアミサは水を吐き出して自力で呼吸し始めた……まだ予断を許さない状況ではあるけど、助かった……。うっすらと目を開けてはくれてるけど、意識はまだはっきりしてないみたいだから、茅野ちゃんに手伝ってもらいつつ今のうちに他に外傷がないかを見る……奇跡的に、血が出てる所も打撲痕もなさそうだ。
「……か……ま、……えで、ちゃ……」
「まだ、話さなくていい。一応死にかけたんだから……」
「……元気になったら、お説教、なんだからね……!死んじゃったかと、思ったんだからぁ……!」
「……けほっ、……ん、」
返事をして小さく笑う彼女を見て、茅野ちゃんがボロボロ泣いてる。だいぶ消耗した体力はそう簡単には戻りきらないだろう……これの実行犯はあのバカだけど、主犯はシロとイトナだ。ということは殺せんせーを狙った作戦だろうし、彼らは標的の対応に追われてる……と、信じたいけど、下手にここに残していくのも危ない気がする。
「……他の奴らと合流するよ。茅野ちゃんは自力で来れるよね」
「……ぐすっ、うん!」
「アミサ、持ち上げるよ……捕まらなくていいから、意識だけはなんとか起きて保っといて」
「…………ん、」
できるだけ体に負荷がかからないように持ち上げて、川下へと向かう。捕まらなくていいと言ったのにアミサは俺のカーディガンに手を伸ばして握ってるし……その弱いながらも込められた力に、生きてることが実感できた。危うく失うところだった、腕の中の存在……もしサボってたら、ここに来なかったら間に合わなかったかもしれない。本ト、よかった……
◆
カルマside
「カルマ君に茅野……!」
「真尾……無事だったんだな……!」
明らかに水の落ちる音じゃない戦闘音が聞こえる。俺ら以外の生徒はその場所を見ることが出来るできる高台に全員集まっていた。渚君や杉野がいち早く駆け寄ってきて、俺らの状態を確認してる……それはそうだ。俺はともかくアミサは意識はあっても俺に抱き上げられたままぐったりしてるし、茅野ちゃんは泣いた後なのもあって目が真っ赤でアミサのことをしきりに気にしてる。……傍から見て気になるのは分かる、でも悪いけど優先事項はあっちなんだよね。
「今の状況は?」
「殺せんせーの触手が水を吸ってて、だいぶ動きが鈍いところにイトナ君の猛攻にあってる……でも、押されすぎな気がする。あの程度の水のハンデはなんとかなるんじゃ?」
「……水だけのせいじゃねー」
追いついてきたらしい寺坂によって、やっと今回の全貌が明らかになった。プールを破壊したのは指示されたからだが、おそらく爆弾を仕掛けたことを隠すため。教室にまいた殺虫剤()は、殺せんせーにだけ効くスギ花粉のようなもので、それによって粘液は出尽くしている。そして、イトナを呼ぶ合図だと聞かされていたエアガンもどきは……プールの堰を破壊するための爆弾のスイッチだったということ。
「それに、力を発揮できねーのはお前らを助けたからよ、見ろ……」
「……おかー、さん……」
「真尾がお母さんって呼ぶのは……って、ぽっちゃりが売りの原さんが今にも落ちそうだ!!」
「殺せんせー、原さんたちを守るために……」
「あいつらの安全に気を配るから、なお一層集中できない。あのシロの奴ならそこまで計算してるだろうさ……恐ろしい奴だよ」
「助けないと……」
「でも、どうやって……?」
寺坂がここに来たってことは、自分がやった事のでかさを認めたんだろう……認めて、自分に出来ることを考えたんだろう。
「お前ひょっとして、今回のこと全部奴等に操られてたのかよ!?」
「……フン、あーそうだよ。目標もビジョンも無ぇ短絡的な奴は……頭のいいやつに操られる運命なんだよ。だがよ、操られる相手くらいは選びてぇ……奴等はこりごりだ、賞金持っていかれんのもやっぱり気に入らねぇ。だからカルマ、テメーが俺を操ってみせろや!その狡猾なオツムで俺に作戦与えてみろ!カンペキに実行してあそこにいるのを助けてやらァ!」
「いいけど……実行出来んの?俺の作戦、死ぬかもよ?」
「やってやンよ、こちとら実績持ってる実行犯だぜ」
それが『実行犯になること』、だなんてね。……さて、それじゃあ俺は……このバカで考えなしで体力と実行力だけは有り余ってるこいつを使って、全員助ける作戦を考えてやろうじゃん。
ぐるりと辺りを見て、絶対に巻き込まれる心配のない木陰にアミサをもたれさせる……まだ体力が戻ってないし、寝かせた方がいいのかもしれないけど……なんとなくこっちの方がいい気がしたから。水に落ちての二次災害が怖いからって茅野ちゃんがこのまま付き添ってくれるみたいだし、俺はアミサの頭をそっと撫でて……そういえば、アレを持ってきてたんだっけ……彼女が肌身離さず持ち歩いてる、彼女曰くエニグマという名前の
「あ、そーいえば……一応持ってきたんだった、渡しとくよ」
……それをそっと握らせる。その瞬間、重たげにしていた彼女の瞳がパチリと瞬きしたのにどこか違和感があったけど、そのまま背を向けた。
◆
……体中にいくつもの重りをつけられたみたいで、全然動かせない。
……なのに意識はふわふわとしていて、どこかに飛んでいきそうなほど頼りない。
でも、言われたから……起きててって。
そっと、近くの木にもたれるように座らせられる。
そっと、頭を撫でられた。
「あ、そーいえば……一応持ってきたんだった、渡しとくよ」
握らされたソレは、私にとってはとても馴染みのあるもので……手に持った瞬間、少しだけ意識がはっきりした。みんなは、コレは不思議な力を使うための媒体のようなものって認識してるんだろうね……その通りだけど、コレにはもう2つの使い道がある。
1つは通信機能、スマホや携帯電話と同じで、合わせた周波数に対して通信することが出来る。もちろん受信も可能だ。
もう1つは……持ち主が装備することで、中にセットしたものによって異なる効果が得られること。体は全然動かせない中でも意識だけはスッキリし始めたのは、多分これのおかげだと思う。
……多分、また後で怒られるんだろうな……そう思ったけど、やらないで後悔はしたくないから。
指示を出す彼の背中を見ながら、動かすのも億劫な体を無理やりズラし、ソレの蓋を開けて……
◆
カルマside
殺せんせーの全身の触手がだいぶ水を吸って腫れ上がってる……無理もないだろうね、背後に生徒を庇っているから水からあがって体勢を立て直すこともできないんだから。それをいい事に、イトナも、指示を出すシロの奴もやりたい放題だ……流石に何の対策もしてなきゃ、俺ではあの中に飛び込んで無事でいられるとは思えない……でも、そろそろ手を出させてもらうよ。
「おい、シロ、イトナ!!よくも俺を騙してくれたな……!」
「寺坂君か……近くに来たら危ないよ?」
寺坂が単身崖から飛び降りてシロの気を引き、イトナに対してタイマンを挑む。できるだけこちらの意図に気づかれないように、『自分に攻撃させること』だけを要求するように言っておいた。あいつの場合は下手に演技なんてさせるより、本心から言える言葉を引き出せる状況に持っていけば、ある意味素直なバカをだーれも疑わないだろうし。
案の定、シロはのってきた……あとは、
「カルマ君!!」
「いーんだよ、死にゃしない」
++++++++++++++++
殺せんせーなら生徒がどんな状況でどう行動するか……それはこれまでの経験でだいたい分かってる。あとは俺らの持つ
「よし、とりあえず原さんは助けずに放っとこう!」
「……おいカルマァ、ふざけてんのか……?原が一番危ねーだろうが!ふとましいから身動き取れねーし、ヘヴィだから枝も折れそうだ!!」
……寺坂、多分その大声だとこの戦闘音でも消せてないと思うよ。気付いてなさそうだから放っとくけど。面白そうだし。
「……寺坂さぁ、昨日と同じシャツ着てんだろ?同じとこにシミあるし。ズボラだよなー……やっぱお前、悪だくみとか向いてないわ」
「あァ!?」
そう、……面白いんだよ。
「頭はバカでも体力と実行力持ってるから、お前を軸に作戦立てるの面白いんだ……俺を信じて動いてよ、悪いようにはならないからさ」
「……バカは余計だ。いいから早く指示よこせ」
それなら、と周りにいる動けるE組を近くに集めて俺らを囲むように指示する。これで下には届かない程度に、でも全員に伝達できる最小限の声量で話しても伝わるはず。
「まずは寺坂以外がやること……イトナに水をかける、以上。タイミングは俺が指示するから」
「は!?あの中に入れって……」
「だーかーら、タイミングは俺が出すって、聞けよ最後まで……それに、その頃には触手は止まってるし、原さんたちも救出済みだから」
「「「!!」」」
それなら水を汲める物や、かけられる物を探してこようと何人かが駆け出した。プールまで戻ればそこで使うように持ってきてた道具も転がってるだろうし、裏山だからこそビニールとかゴミがあるかもしれない。探しに行かない連中は、飛び降りても平気そうな場所、降りるための経路を探すために戦闘の様子を見るフリして下を覗き込んでいる。いやー、察しのいい奴らは助かるねぇ〜……俺と寺坂以外がそれぞれ何かやるべき事を探してここを離れた時、
「んで、寺坂……お前はイトナの触手をその制服で受け止める、それだけだよ」
「……?……!?死ぬだろ!!?」
「声でけぇって……安心しなよ、イトナはほぼ確実にシロの指示に従って動いてる……つまり、作戦やら何やらを立ててるのはシロの方。そのシロは俺達生徒を殺すのが目的じゃない……生きてるからこそ、殺せんせーの集中を削げるんだ。だから原さんも同じように殺さない……つまり、お前が飛び出しても殺さない」
「…………」
「邪魔者を蹴散らすのに自分の手を汚すことはないだろうから、実行するのはイトナだろう。気絶する程度の触手は喰らうけど、逆に言えばスピードもパワーもその程度……死ぬ気で喰らいつけ」
「信じて、いいんだな……?」
「もちろん」
────その時だった。
「あ、アミサちゃん……!?」
茅野ちゃんが慌てて名前を呼ぶ声が聞こえて、俺と寺坂がそちらに目をやった所では……アミサがさっき渡したエニグマを手にして目を閉じ、彼女の周りが青い光に包まれ、足元には何かの光の陣が描かれていた。
「……補助アーツ、
その言葉と共に彼女が瞳を開けると、寺坂の周りに茶色の光が集う……地面から光の岩が生み出されてこいつの周囲を回ると共に体の中へと吸収されていった。
「今のは……」
「うけとめるんでしょ……?だから、ぼうぎょ、あげてみた……これで、すこしはへーき、だよ……」
……そうだ、後のことを考えないバカはもう1人いたんだった、ただでさえ体力尽きかけてんのに、何やってるんだろうこの子……
思わず頭を押さえて大きくため息をついた俺をものすごく同情する目で見てきた本物のバカにはムカついたけど、ここで使い物にならなくなっても困るし我慢するしかなかった。
++++++++++++++++
「……渚君たちは道具探しやらで俺らの近くから離れてたから知らないだろうけど、色々対策済み。あとは、あの制服で触手を受け止めればいい」
ドッと、すごい音を立てて触手が寺坂の腹に決まる。かなり強い一撃だったみたいだけど、寺坂は制服1枚でイトナ君の触手を抑え込むことに成功していた。受け止めた寺坂の素肌から淡い茶色の光が見える……完全に防御するものではないみたいだけど寺坂の表情を見る限り、本トに今の勢いを軽減したみたいだ。
「……?ふぇ、くしゅんっ」
「……くしゃみ?」
「寺坂のシャツが昨日と同じって事は……昨日寺坂が教室にまいた変なスプレーの成分を至近距離でたっぷり浴びたシャツってこと。殺せんせーと弱点が同じ……ならイトナだってただで済むはずがない……で、」
────バキッ
「!?」
「イトナに一瞬でも隙を作れば原さんはタコが勝手に助けてくれる……さぁ、みんな出番だよ」
寺坂にも見えるように手でサインを送れば、全員がさっき探しておいた場所へと移動する。寺坂も吉田と村松へ飛び降りるように指示を出していた……あいつらには皆が何をするか伝えられなかったけど、流石はずっと一緒につるんでただけあるんだろう……しっかりやるべき事は伝わったようだ。
「殺せんせーと弱点一緒なんだよね?じゃあ同じことやり返せばいいわけだ」
一気にみんなが飛び降りたことで、大きな水しぶきが上がる。それだけじゃない、各々拾ってきたバケツやビニール袋、木の枝、口や手のひらを使ってイトナにどんどん水をかけていく。どんどんどんどん……そうしているうちに、彼の触手も水を吸って膨らみ……ハンデが少なくなった。
「で、どーすんの?俺等も賞金持ってかれんの嫌だし、そもそも皆あんたの作戦で死にかけてるし、ついでに寺坂もボコられてるし……それに、」
そこで俺も制服のままだけど飛び降りながら、対先生BB弾の代わりに奥田さん特性のペイント弾を装填したエアガンをシロに向かって発砲する。いきなりイトナじゃなくてシロを狙ったことに反応が遅れたのか、心臓を狙ったソレはシロに当たって白い服装に赤いシミが広がる。
「……俺の大事な子、心肺停止にまで追い込んだんだ。あのタコを狙っておきながら何の関係もない生徒を殺しかけたこの暗殺……まだ続けるなら、こっちも全力で水遊びさせてもらうけど?」
俺の言葉に後ろのみんなが反応した気配があるけど、今は無視だ。元凶がいるあいだは気が抜けないから。少しの間睨み合いが続いていたけど、先に動いたのはシロの方だった。
「……してやられたな。ここは引こう……この子らを皆殺しにでもしようものなら、反物質臓がどう暴走するかわからん。帰るよ、イトナ」
また俺等によって暗殺を邪魔されたイトナがキレかけてるところで、殺せんせーがイトナに対して口を挟む。
「どうです、皆で楽しそうな学級でしょう……そろそろちゃんとクラスに来ませんか?」
「イトナ!」
「…………フン、」
そして、彼らは去っていった。何とか追い払えたみたいだ……俺もエアガンを下ろしてようやく息をつく。これだけじゃ全然やり足りないけど、目的は倒すことじゃなくて追い払うことだったから仕方ない。
「カルマ君、アミサちゃんが心肺停止って……!」
…………俺、そういえば口走ってたっけ。慌てて駆け寄ってきたのは渚君と、殺せんせー……他の皆は聞き耳を立ててるのかな、こっちには来ない。
「あー、うん。何とか水も吐き出させたし、体が動かせないだけみたいだから……烏間先生の授業が役に立ったよ。……だけど、殺せんせー……外傷はなさそうだったけど、脳とかにどれだけダメージがいってるかがわかんない」
「病院へ連れていった方がいいでしょうねぇ……もっとも、回復アーツはほとんどの外傷やダメージを回復させますから、瀕死から脱すればすぐに元気になる気もしますが……」
「……は?」
その言葉と共に崖の上を見やる殺せんせーに続いて俺も見上げてみると……茅野ちゃんに支えられながら崖の下の俺たちを心配そうに覗き込んでいる彼女の姿が。離れるまで全く動けなかったはず……もしかして、俺らがいなくなった後、自分に回復アーツをかけたってこと……?
「……はぁ……もうちょっと、自分を大切にできないかな」
「アーツって、あの前原君達にかけてたやつのことだよね……アミサちゃんらしいっていえばらしいけど……。あと、それカルマ君が言っても全然説得力ないよ」
呆れながらも渚君と話しながら彼女らを眺めてれば、やっと元に戻ったんだって気になってきた。今度はなんだかんだで寺坂もE組にしっかり仲間入り……あいつは高い所から命令するよりも実行部隊として前に出る方が向いてるし、それによって他の皆を引っ張ることが出来るんだから、これでちょっとは自分に出来ることも分かったんじゃね?それにあいつ分かりやすいからこそ操りやすいんだよね〜、今回はそれを逆手に取られたんだけどさ。
「それにしてもやっぱり聞こえてたんだ、あの悪口。寺坂ってバカなだけじゃなくて無神経だよねー。単純だし手のひらの上で簡単に転がされすぎ、さすがバカ」
「バカバカ言ってんじゃねーよ、カルマ!!」
俺、正直に思ったことを言っただけなんだけど。この後、俺も巻き込まれて水浸しになるまで、あと────
「そーいや寺坂君、さっき私のこと散々言ってたね。ヘヴィだとかふとましいとか」
「うぐ、い、いやあれは、状況を客観的に分析してだな……!」
「言い訳無用!動けるデブの恐ろしさ見せてあげるわ!」
「それにしてもやっぱり聞こえてたんだ、あの悪口。寺坂ってバカなだけじゃなくて無神経だよねー。単純だし手のひらの上で簡単に転がされすぎ、さすがバカ」
「バカバカ言ってんじゃねーよ、カルマ!!」
「ぶ!?はあァ!?何すんだよ、上司に向かって!」
「誰が上司だ!真尾がいなきゃ完全に生身で触手受けさせる気ぃだっただろーが!だいたいテメーはサボり魔の癖にオイシイ場面は持っていきやがって!」
「あー、それ私も思ってたー」
「この機会に泥水もたっぷり飲ませようか。それに……」
「烏間先生の授業ってアレだろ、心肺蘇生法。それをやったって事は……」
「……、よし、教室帰ろっかなー」
「「「捕まえろ!」」」
「あ、コラ!」
「……みんな、楽しそう……」
「ダメだからね?……ねえ、アミサちゃん」
「?」
「溺れてから目が覚めるまでのこと、覚えてる?」
「……?何を……?」
「んーん、何でもないよ(人工呼吸……覚えてたらどんな反応だったのかな)」
「…………」
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実行の時間でした。
今回の原作改変点
・カルマがプールまでついてきた(でも制服)
・カルマが自分から飛び降りる(でも制服)
・気付いたらシロに一撃与えてた(ペイント弾)
・武器は奥田さん作成の特別品!(いつの間に。多分なかなか落ちない成分とか服を溶かす成分とか含まれてる)
オリ主が途中から瀕死のためにほとんどカルマ視点になりました。カルマ、内心で寺坂君のことをバカバカ言いすぎ……何回言ってるんだろう。※作者は数えてません
一応、回復アーツを使わなくても下記の理由から徐々に徐々に体力は回復してます。でも微々たるものだからほとんど瀕死と変わりはないので、最後の水浴び(?)はカエデちゃんとお留守番です。地味にフラグを回収してしまったオリ主……
※ここからは軌跡シリーズを知っている方にしかわからない専門用語が出てきます※
オーブメントにセットしていたものはもちろんクオーツのこと……一応設定としては『治癒』と『水耀珠』のつもりです。これだけで……というか、『治癒』というクオーツだけで充分《クレスト》が放てるという。そして、『治癒』のクオーツを装備していると、少しずつHPが回復していきます。
まだ公開してませんでしたが、オリ主の戦術オーブメントは幻縛りが1つある2本ラインのアーツ特化です。しかし、姉よりもラインが長い分EP上限は高く設定予定です。ただし、同じようにラインの長さにしては低め。なので強力なのも撃てる代わりに連発ができない感じです。
では、次はいよいよ期末テスト編です!
E組の運命やいかに!
浅野君出したいな……(願望)