暗殺教室─私の進む道─   作:0波音0

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お話の時間

「あ、あの……先程はほんとに、ありがとございま……!わ、わ、!」

 

「ちょ……っ、あははっ!」

 

「わ、大丈夫!?これ使って!……カルマくんも笑ってないで手伝いなよ」

 

「ごめんごめん…っ、くくっ!慌てすぎ…っ!!」

 

「あ、あああ……オレンジポテトになっちゃった…!」

 

「〜〜〜っ〜っ」

 

「カルマくん!」

 

あの路地裏で助けてもらった後、緊張してたのかなんなのか腰を抜かして立ち上がれなくなった私は赤髪の彼……カルマくんに、その…俗にいうお、お姫様抱っこというもので、問答無用で運ばれました。当然私は暴れてでも下りようとしたんですよ?はじめましての人にいきなりそんなことされて普通でいられる人なんていないと思うのだけど……カルマくんに暴れたら投げ捨てると言われたので大人しく捕まってるしかなかったのです。

水色の彼……渚くんはそんな私を見て苦笑いでついてくるだけで、私に味方はいないのだと察しました。一応表へ出る前には下ろしてもらえたので安心したけど……落としていた私のカバンは渚くんが拾っておいてくれたみたいで、カルマくんに下ろしてもらってから受け取りました、ありがとございます。

そして現在、せっかくだからと二人に誘われ、某ファストフード店へ入りそれぞれ注文し、席についたところです。私はオレンジジュースとポテト、渚くんはコーラとハンバーガー、カルマくんはイチゴ煮オレシェイクとハンバーガーにポテト…だんだん種類が増えてるのがおもしろい。席は私が一人、正面に渚くんとカルマくんが並んで座りました。

そこでやらかしたのが冒頭のやりとり……改めてお礼しなくちゃ、と思って私が勢い付けてお辞儀をしすぎたせいか、気づいたらトレーの上のオレンジジュースを見事にひっくり返してました、という。ポテトは水没するし、カルマくんは笑い転げてるし……前言撤回します。渚くん、さっきは味方じゃないとか言ってごめんなさい…今、唯一の味方です…!

 

「うぅ、ごめんなさい……いつもは家でしかこんなドジしないのに…」

 

「むしろ家ではするの!?」

 

「あははははっ、は、腹痛い……っ!!」

 

置いてあった台拭きとか紙ナフキンとかで一緒に拭いてくれる渚くんと、笑いながらも手伝ってくれたカルマくんのおかげで、被害は奇跡的に私のトレーの上だけでおさまった。なんとかこぼしたジュースを片付けたところで、新しいジュースを買うのももったいないからとセルフの水をとってきてくれた渚くんはすごく優しい。ありがたく頂くことにして、残る水没ポテトはもったいないから食べるしかない……その頃にはカルマくんの笑いもなんとか落ち着いたみたいで、笑いすぎたせいで出たらしい涙を拭っていた。

 

「あー…、笑った。おもしろいね、アミサちゃん」

 

「……笑いすぎです」

 

「くくっ、ごめんって」

 

「はは……そういえば、真尾さんは何組なの?会ったことないし……同じクラスじゃ無いよね?」

 

「あ、えっと、私のことはアミサでいいよ。カルマくんもいつの間にかそう呼んでくれてるし…。クラスだよね、私はB組だよ」

 

「あ、ありがと…。そうなんだ……僕とカルマくんはD組だよ」

 

「……二人とも一緒のクラスなんだ……いいなぁ」

 

同じクラス…道理で仲がいいはずだ。椚ヶ丘のクラス分けはA組だけ特進クラスであとのB組~D組は横並びだったはず……だからといって、クラス内の学力差別とかがないわけじゃないのだけど。その環境の中でも仲が良さそうでとても羨ましい。

第一印象では正反対の二人かもって思っちゃったけど、案外それがいいのかもしれない。喧嘩が強くて勝手気ままで、それでいて真っ直ぐなカルマくんに、穏やかで警戒心を与えないような、小動物のような渚くんの組み合わせ……まだ出会って少ししか経ってないから私のイメージでしかないけど、とにかく、そんな二人が羨ましかった。

そんなことを思っていれば、ゴソゴソと何かを取り出したカルマくんと私の目が合い、ニヤリと……あれ、なんだろう……今、悪魔の笑みを見た気がする。

 

「B組っていってもさぁ、アミサちゃんはA組に入れるくらいの学力じゃん?……ほら」

 

「ううん、私はそんなこと…、………え゛」

 

「国語88、英語95、数学97、理科60、社会84。合計424点……理科が足引っ張ってる感じ?」

 

「な、なんで…私のテスト…あ!?」

 

カルマくんがさらっと取り出したのは、今日返却された私のテスト結果だった。不良に追いかけられた時、手に持っていたからどこかで落としたのだろうとは思ってたけど、まさかカルマくんが手に入れていたとは……それ、個人情報です!

慌てて立ち上がって取り返そうと手を伸ばしたけれど、カルマくんまで立ち上がってしかも手を上にあげて遠ざけられてしまった……机を挟んでるし、私はチビなので届くわけがありません。諦めて椅子に座り直せばカルマくんの隣に座ってる渚くんまで私たちの攻防に呆れながらもしっかり覗き込んでるし……うぅ、カルマくんの頭に悪魔の角が見えるよぉ…

 

「うわぁ、アミサちゃん、高得点ばっかり。勉強頑張ったんでしょ?」

 

「…え…ぁ……、家ではそうだけど……どう、なのかな……私、あんまりあの学校の中ではやる気になれなくて…」

 

「へ?」

 

「なんで?」

 

「が、頑張ってる二人を相手に言うことじゃないんだけど……私、あんまり好きになれないの、中学校(あそこ)E組()へ落ちないために、みんな勉強ばかりしていて。それは、いいことのはずなんだけど…自分より下の成績の人は見下して、上の人には媚を売って……だから…その…誰も人を人として見ていない気がして…。私は、もっと自由になりたい。…成績はそれについてくる形でいいのにな、って……」

 

だんだん小さくなっていく私の声。私の意思をこうやって人に話すのは随分久しぶりなことだったし、これが正しいことを言っているのかがだんだん分からなくもなってきて、自信がなくなってきてしまったからだと思う。

だって、こんなことを考えるのは椚ヶ丘中学校(あそこ)に通う生徒としておかしな事なんでしょう?それに絶対同じ学校の生徒である二人にも失礼なことを言っていると思う。

唖然とした表情をした正面に座る二人の顔を見て、やってしまったと思った。だから慌てて、「入学して半年で何言ってるんだって感じだけどね」、と二人に笑って見せた。……ほんと、何言ってるんだろう、私。みんなそれが当たり前なんだから、それが正しいのに。こんな私みたいな異分子なんて迷惑でしかないのに。

 

「…んー…そーかな?俺はいいと思うけどね」

 

「……え」

 

「だって俺、しょっちゅうサボってるもん。分かってるものをやる必要なくね?先生は俺が正しいっていつも言ってるからさ……自分が正しいと思ったことをして何がいけないの?上手に力抜いてやりたいことはやればいいんじゃね?」

 

「サボりはいいことじゃないと思うけどね……でも、僕も悪いものじゃないと思うよ、アミサちゃんの考え方。自由に、勝手気ままでもいいんじゃないかな?僕はそういうの、憧れる」

 

カルマくんに続いて、渚くんにも肯定された。

私だけだと思っていたのに。

……そう、なのかな。

私も自分の思う通りにしていても、いいのかな。

 

 

「それよりさー、ずっと気になってたことがあんだよね。……アミサちゃん、髪長くね?」

 

「……渚くんも、長いよ?」

 

「ぼ、僕は…その、家の方針だから……っていうか、アミサちゃんのはそれ以上でしょ!」

 

 

………でも、

 

 

「そうなんだ、家の方針……うん、私もそんな感じ、かな。私の一族…ううん、家業を継ぐことになったら髪をバッサリ切って示すの。お姉ちゃんもそうだったし、私も小さい頃からそう言い聞かせられてきたから…でもまだ、決心つかなくて。いつの間にか、こんな長さに…」

 

「へー、お姉さんがいるんだね」

 

「うん、…自慢の、お姉ちゃん。すごく綺麗でスタイル抜群で、…私の目標なの」

 

 

私には、決められた道があるから……意味を見いだせないままだけど、それが運命だから、これでいいの。

 

 

「ふーん…」

 

「聞いといて、全然興味無さそうだね…カルマくん」

 

「だって…ねぇ?」

 

──あんな諦めたような顔してるのをみたら、さ。

そんなカルマくんの呟きと渚くんの会話なんて、そっちを見ないで俯いていた私には全く気づいていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

渚くんとカルマくんに出会った日の次の日。

今日も〝いつも〟と変わらない日常が来るのだろう。上辺だけのクラスメイトとお話して、進学校らしい授業を受けて、部活のある人は部活に出て、あとは勉強、勉強、勉強……。

息がつまる午前中を過ごして、お昼の休憩時間。この時間も勉強に励む人がいるし、それを見たくない私は視界に入れなくてもいい場所にご飯を食べに行こうと4時間目の授業道具を急いで片付けていく。お昼休みが終われば、また難しい授業だ。中高一貫校の椚ヶ丘中学校は、どんどん授業が進んでいく……とくに、国語と英語、数学はとても進むのが早い。それに備えて休息を取らなくては、私は絶対に身が持たない。そんな気持ちでいた私は知るはずもなかった。

……私の知っている〝いつも〟はここまでだということに。

 

──────ガラッ

 

「アミサちゃん、いる〜?」

「!」

 

なんで、ここにいるの?

 

「……カルマくん?」

 

「お、いたいた〜」

 

「僕もいるよ」

 

「…渚くんも…どうしたの?B組(こっち)に来て…」

 

急にB組の扉を開けたのは昨日の二人。周りでは他クラスの二人が、昨日までは関わりがなかった私を探して近付いて来るのを見て何やらひそひそ話している。

なんだろうって思いながら首をかしげていると、二人して顔を見合わせてにっこり笑ったかと思えば、私に向かって何かを突き出した。

 

「一緒にご飯食べようと思って!」

「一緒に昼飯食おうと思って!」

 

カルマくんは、菓子パンとか紙パックのジュースが入ったコンビニ袋。

渚くんは、お弁当の包みと水筒。

 

 

……お姉ちゃん。

もしかしたら私、生まれて初めてのお友達ができたかも知れません。

 

 




「へぇ、弁当おいしそーじゃん。手作り?」
「私、一人暮らしみたいなものだから……楽しいよ、作るの」
「すごいね」
「……あの、」
「なーに?」
「どうしたの?」
「……その、急に来たから、ビックリしちゃった…」
「……言い出しっぺはカルマくんだよ」
「え…?」
「ちょ、渚くん、それ言わないでよ(恥ずかしい)」


++++++++++++++++++++

急速にネタがふってきたので、急いで書き上げました。
別名、初めてのお友達ができる時間(長い)

オリ主は気を張り続けていれば外見優等生ですが、気が抜ける家では物を落としたりぶつかったり転んだりとドジを踏みまくっています。

あとクロスオーバー先の暗殺者は一子相伝が公式ですがここでは姉妹二人ともに技術が継がれています。

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