暗殺教室─私の進む道─   作:0波音0

26 / 108
転校生の時間・2時間目

アルカンシェルに行った日が晴れたのは気まぐれだったのか、またしとしとザァザァ雨の降る日に逆戻り……梅雨の時期が明けるのは、もう少し先になりそうだ。雨の中私は一人、E組教室を目指して傘をくるくると回して雨粒を飛ばしながら山道を登る……まあまあ激しい雨で前が見えにくいけど、私の前に誰か歩いているようで、黒いカーディガンが見えた時点でやっと誰だかはっきり分かった。私が気づいた位に彼も振り返る。

 

「ん……?……あ、アミサ」

 

珍しい、いつもなら遅刻ギリギリばかりなのに、朝一番のこの時間から学校に向かうカルマくんがいるなんて。

……あの日から、カルマくんは私のことを呼び捨てで呼ぶようになった。

本当はアミーシャの方が本名だし馴染みがあるだろうからそっちで呼びたいけど、まだ『アルカンシェルのリーシャの妹』だってことを隠してるみたいだし、それを知ってる数少ない人物であるのが気分いいから、せめて日本名の方で呼び捨てにしてみた、……っていうのをものすごく早口で説明されて、その勢いに私が思わず頷いちゃったのはしょうがないと思う。

でも、カルマくんからはちゃん付けで呼ばれるよりも呼び捨ての方がしっくりきたし、もっと仲良くなれた気がして嬉しかった。カルマくんが呼び捨てにするなら私も、と呼びかけてみたら、一瞬びっくりした顔をしてその後すごく優しい顔で笑うから……それを見た私の心臓が跳ねた気がしたんだ。すぐにおさまったから何が起きたのか今でも分からないけど。

 

「カルマくん、おはよう」

 

「…………」

 

「…ぅ…、……カ、カルマ、おはよう」

 

「ん、おはよ」

 

私はどうしても呼び慣れなくて、まだくん付になっちゃうことの方が多いんだけど……カルマはそのたびに無言の笑顔で見てくる上に呼び捨てで呼ぶまで返事をしてくれない。前にその事を渚くんに相談してみたら、「アミサちゃんって、呼び捨てで呼んでる人いないでしょ?初めてが自分だから嬉しいんだよ……あと、絶対見せつけるためだと思う……」と言っていて、頑張って呼び捨てに慣れるように励まされた。嬉しいのかどうかは分からないけど……毎回満足そうに私の頭を撫でるから、カルマく、……カルマとしてはこっちの方がいいんだとは思う。

 

「そういえば、烏丸先生からの連絡聞いた?また転校生って」

 

「……うん。これって律ちゃん以来の暗殺者……だよね?」

 

「だろーねぇ……今回は俺らの迷惑になんない暗殺してくれるといいけど」

 

「迷惑だったら?」

 

「サボる」

 

「即答した……」

 

くるくると傘を回しながら、私たちは雨の中E組校舎へ向かう……今日から新しい暗殺者(なかま)が増えるから、どんな人が来るのかちょっと楽しみだ。それに、その人は席順からして女の子ならカルマの右隣、男の子なら私の左隣に座る……確実にご近所さんになるんだ、早く仲良くなれるといいけど。

そうそう律ちゃんといえば、リーシャお姉ちゃんから受け取った私のエニグマ……あれのデータ部分に入り込むことに成功したと嬉しそうに報告してくれた。導力魔法(オーバルアーツ)はまだ使ってないからその解析や、お姉ちゃんに頼まれたって言ってたいざという時の機能の制御までは、構造が複雑すぎるのと日本(こっち)クロスベル(あっち)の技術の違いからまだ出来てないって言ってた。だけど……エニグマって通話機能くらいしかデータ部分はないと思ってたのに、この少しの間でよく入り込めたと思う。

……律ちゃんすごい。

 

「アミサ〜?何ぼーっとしてんのさ、置いてくよ」

 

「っ!…ま、待って……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

教室に着いても朝のHRになっても、転校生さんのことでみんなどこかザワザワとしていた。ほぼ確実に暗殺者確定の仲間が増えるんだから、殺せんせー暗殺の立派な戦力に……なるんだけど、前例に律ちゃん(というか、私たちのことを全く考えてない開発者)がいるからどうしても警戒してしまうんだろう。そんな空気の中でも自分を殺しに来るのであろう相手に対して、殺せんせーは歓迎モードだ。

 

「律さんの時は少し甘く見て痛い目を見ましたからね……先生も今回は油断しませんよ。いずれにせよ、皆さんに暗殺者(なかま)が増えるのは嬉しいことです」

 

「そーいや律、何か聞いてないの?同じ転校生暗殺者として」

 

「はい、少しだけ。初期命令では私と『彼』の同時投入の予定でした……」

 

そう言って彼女が語り出したのは、私たちにとって信じられないようなことばかりだった。

元々は律ちゃんと『彼』が同時投入予定だったのに、『彼』の調整(・・)に予定より時間がかかったこと……そして、律ちゃんの能力が『彼』よりも圧倒的に劣っていたことからサポートするには力不足だと判断され、単独での決行になったんだとか。このクラスの中で触手を破壊したことがあるのは、私とカルマと律ちゃんの3人だけ……そのうち私とカルマについては協力して2人で仕掛けた結果だ。単独で殺せんせーの指を飛ばした実力を持つ律ちゃんがその扱い……どんな怪物がやって来るというのだろう。さすがにその話を聞くと殺せんせーの顔は歓迎だけでは収まらず、汗を浮かべて警戒の色が走っている。

 

────ガラララッ

 

そして教室に響いた扉を開く音……みんな、慌ててそちらに注目する。だけどそこに居たのは、全身真っ白の装束に身を包んで目もほとんど隠した、少し……ううん、かなり怪しい人だった。あれが、転校生さん……?その人は無言で手を差し出して───ポン、と音を立てて鳩を出現させた。

 

「はは、ごめんごめん驚かせたね。転校生は私じゃないよ……私は保護者。まぁ、白いし……シロとでも呼んでくれ」

 

目、しか見えないけど……なんか、胡散臭い笑顔でカラカラと笑う人……シロさんは、これから来る転校生さんの保護者らしい。前触れもなくいきなり来たし、入ってきて早々手品をされてもビックリするしかないと思う。

 

「まあ殺せんせーでもなきゃ、誰だって……」

 

そういった渚くんの言葉通りこんな事では動揺しないだろう殺せんせーの方を見てみれば……あれ、教卓の近くの床に服だけ残して、先生の本体がいない?どこに行ったんだろうと思っていれば、視界の端……天井の近くで何かがヌルッと動いたような……あ。

 

「ビビってんじゃねーよ、殺せんせー!!」

 

「奥の手の液状化まで使ってよ!!」

 

「い、いやぁ、律さんがおっかない話するもので……。は、初めましてシロさん。それで肝心の転校生は?」

 

「初めまして、殺せんせー。ちょっと性格とかが色々と特殊な子でね、私が直で紹介しようと思いまして。はい、おくりもの」

 

愛美ちゃん作の毒薬を飲んでから使えるようになった奥の手……液状化を使って、シロさんが突然挙げた手による暗殺から逃れようとしたみたい。律ちゃんから聞いた話にビビりすぎだよ……これから暗殺に来ると分かってる相手の関係者に、いきなり手の内を見せちゃうあたりが殺せんせーらしいと言えばらしいのだけど。

そんな殺せんせーは、にゅるんと服の中に戻ってきて元の体を作り直すとシロさんに手渡された羊羹をなんの疑いもなく受け取り、さっそく包み紙を剥がして口に運んでいる。暗殺を疑って逃げたのに、物は受け取るんだ……先生の好きな甘いものだからかな。

……転校生なら烏間先生に連れられてやってくるはず、それなのにその烏間先生は廊下に立って教室の中を見ているだけ。シロさんも自分で転校生さんを紹介するって言ってるし、烏間先生も会ってないのかもしれない……色々と、掴みどころのない人だと思う、このシロっていう人。

 

「……?」

 

今、立ち止まって渚くんの席の方を見てた……?あの人目までほとんど隠しちゃってるし、私の席は一番後ろだから余計にうまく読み取れないけど、固まってはいる気がする。

 

「何か?」

 

「……いや、皆いい子そうですなぁ。これならあの子も馴染みやすそうだ。席はあそこでいいのですよね、殺せんせー」

 

私が感じた違和感と同じことを感じたのだろう殺せんせーによって、止まっていた動きを戻してぐるりと教室中を見回して言うシロさん。その声色は抑揚もあるし、しみじみという感じが伝わってくるけど……どこか冷たい。見回す視線が、私や律ちゃんのいるあたりに来たときにまた一度止まったのが気にかかったけど、転校生さんは律ちゃんが『彼』っていうあたり男の子だから、私の左隣が席になる……その彼の座る場所を確認したのと、転校生さんは律ちゃんと同時投入の予定だったって言ってたから、彼女のことを見ていたんだろう。だけど、私はシロさんからどこか嫌な雰囲気と先程も感じた胡散臭さを感じて、目を合わせなくてもいいように咄嗟に下を向いた。

 

「では、紹介します……おーい、イトナ!入っておいで!」

 

シロさんの声で私は顔を上げて、彼が呼びかけた方向……シロさんが入ってきたドアに注目する──遂に、その姿が見える……!

その時、私は背後から雨の音以外の音を聞いた気がして反射的に椅子から腰を浮かした、のとほとんど同時だった。

 

────ドゴンッ!

 

「っ!?」

 

「うわぁっ!?」

 

「なに!?」

 

律ちゃんと私の背後にある教室の壁が破壊され、髪が真っ白な一人の男の子が入ってきて……何事も無かったかのように席についた。私は慌ててカルマくん側に避けることが出来たから平気だったけど……、そのままでいたらあの壊れた壁の砂埃とか壁の木屑をもろに浴びていたんだと思うと少しゾッとする。それでも少しは舞っているホコリに咳き込んでいたら、カルマが立ち上がってそっと背中をさすってくれた。慌ててお礼を言って、……立ちっぱなしなのも嫌だったし、息が整ってから椅子だけ持ってカルマの近くに座っておく(避難しておく)ことにした。……転校生さんはというと、俺は教室の壁よりも強いことが証明された、それだけでいい……って確認するようにブツブツ言っている。

……私たちが言いたいことはただ一つ。

 

「「「いや、ドアから入れよ!!!?」」」

 

だった。殺せんせーが真顔でも笑顔でもなく、なんか中途半端なよく分からない表情をして固まってしまうくらい、衝撃的な登場だった、うん。彼は堀部イトナという名前らしく、シロさんは彼を紹介ついでにしばらく見守っていくみたい。この話が読めない転校生暗殺者さんも、白ずくめの保護者さんも、今まで以上のひと波乱を起こしていきそうだ。

 

「ねえ、イトナ君……ちょっと気になったんだけど。今、外から手ぶらで入ってきたよね?外、土砂降りの雨なのに……なんでイトナ君、一滴たりとも濡れてないの?」

 

カルマくんがそう言うのを聞いて確認してみれば、イトナくんが壊した壁から見える景色が白く見えるくらいの土砂降りの雨が降っているのに、どこも濡れていない様子の姿だった。

壁の外側に傘を置いてきたとか……ダメだ、彼が入ってきたあたりの屋根は設置されてないから、傘をたたんだ瞬間にびしょ濡れになってるはず。

雨に当たらないようなスピードで駆け抜けてきた……それもダメ、泥はねとかで制服がそこまで汚れてないし、何より人間が殺せんせーのような芸当ができるはずがない。

色々考えてみるけど、カルマの疑問は確かに気になる質問でクラスのみんなも気になるのかイトナくんの方に注目している。その視線を受けて、彼はキョロキョロと教室の中を見ていたかと思えば……椅子から立ち上がって、こっちに歩いてきた。

 

「……お前は多分、このクラスで一番強い。けど安心しろ……俺より弱いから、俺はお前を殺さない」

 

そう疑問には全く答えてない答えを言いながら、彼はカルマくんの頭を撫でる……ふと、隣に座っている私の方を見ると目を見開いた……気がした。そしてそのまま椅子に座る私の顔を覗き込むように顔を近づけてきて、至近距離で目が合う。

 

「な、……なに……?」

 

「…………お前、……」

 

そのまま数秒目が合ったまま静止した彼をビクビクしながら見つめ返していれば、イトナくんは無言で私の頭もそっと撫でた後に離れていった……な、何の意図があって彼がそんなことをしたのかが皆目検討もつかない。彼はそのまま殺せんせーの方へと歩いていく。

 

「俺が殺したいと思うのは、俺より強いかもしれない奴だけ……この教室ではまず、殺せんせー……あんただ」

 

「強い弱いとはケンカのことですか、イトナ君。力比べでは先生と同じ次元には立てませんよ」

 

「立てるさ。だって俺達……血を分けた兄弟なんだから」

 

「「「!?き、き、き、……兄弟ィィ!?」」」

 

「負けた方が死亡な……兄さん。放課後、この教室で勝負だ」

 

衝撃の事実、転校生さんは殺せんせーの弟だった……!?でも殺せんせーはタコ型超生物、イトナくんの見た目は人間……この時点ではそれが本当なのかどうか分からないし、殺せんせーは生まれも育ちも一人っ子だって主張している。……まず殺せんせー、親っているの……?だけど、少し引っかかることは確かにあった。律ちゃんの言った、『彼の調整に時間がかかった』……調整って、人間相手に使う言葉なのかなって。

イトナくんは放課後に勝負だと宣言して、今度はシロさんと一緒に教室前の扉から廊下へ出ていった。クラスのみんなが殺せんせーを問い詰める中、私とカルマは同じようにイトナくんに撫でられた頭に手を触れていた。私はいきなり撫でられた驚きから……多分、カルマは困惑。身長が高い分、頭を撫でられた経験なんてほとんどないだろうし、ましてやその相手が自分を確実に下に見ている言動をしていて……経験したことのないものが重なって理解できないんじゃないかな。

 

「なんだったんだろう……今の……」

 

「……さーね。ていうか、アミサもなんであんなに簡単に撫でられてんの?無防備すぎるでしょ」

 

「そ、そのままカルマにお返しします!私のは不可抗力だもん……!」

 

「じゃあ、俺だってそうだよ」

 

「…………あ、そっか」

 

「うん」

 

「「「(お前ら呑気だな!?)」」」

 

「アミサちゃん、そこで納得しちゃうんだ……」

 

前言撤回、多分、困惑じゃなくて拗ねてる。カルマの言葉を聞く限り、軽く見られたことからなのか、カルマ自身の頭を撫でられたことに対してなのか、私が撫でられたことに対してなんだとは思うけど……なんでそこに私が入ってるのかまでは理解出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4時間目の授業が終わってお昼ご飯の時間にイトナくんは教室に帰ってきた……大量のお菓子とともに。少し見てみたけど、『お昼ご飯』って言えるものが全くなかった……見事にお菓子、お菓子、ジュース、お菓子、ギリギリ食料の栄養食という甘いものだけ。教卓の方にいる殺せんせーも同じようなラインナップで、余計に兄弟疑惑が加速したことにムズムズと居心地が悪そうだ。焦ったのか落ち着こうとしたのか、殺せんせーはグラビア雑誌というものを読み始めた……ら、隣でも動く気配が、

 

「「「(巨乳好きまでおんなじだ!!)」」」

 

「これは俄然信憑性が増してきたぞ……!そうさ!巨乳好きは皆兄弟だ!!」

 

「3人兄弟!?」

 

「わぁ、3人とも読むスピード全く一緒……」

 

「アミサ、見なくていい」

 

「凛香ちゃん、なんで……!?」

 

「「「「なんでも」」」」

 

凛香ちゃんに止められた上、最後、一緒にご飯食べてたカルマ、 凛香ちゃん、千葉くん、愛美ちゃんみんなに言われたんだけど……!?と、その時視界の端っこに雑誌を読むイトナくんの腕がお菓子の山にあたり、一つ落ちかけたのを見つけて、反射的にキャッチする……む、無言で戻すのもあれだよね……?そう思って席から立つとお菓子の山を回ってイトナくんの正面からそっと差し出す。

 

「あ、……その、イトナくん……お、落ちたよ?」

 

「……あぁ……、……やる」

 

「……へ……?あ、ありがと……?」

 

「…………」

 

貰ってしまった、チョコレート……イトナくんは雑誌を伏せて私の方を見て話してくれてるんだけど、不思議なことに全く目が合わない。何ていうか、服の一点……ネクタイのあたりを見つめているようで……どこか汚れてたり裏返しになってたりするのかな、とその場でカーディガンをつまんだり、後ろを見ようとくるくる回って確認していると後ろから誰かに肩を掴まれて、そのまま無言で席に連れていかれた。誰か、なんて特徴的な赤髪ですぐに分かったんだけど。

 

「……カルマ?」

 

「だ〜か〜ら〜、無防備すぎるんだってばぁ……」

 

「真尾、今のはお前が悪い……イトナの奴、ガン見だったしな」

 

「え、え?」

 

「ほ、ほら!アミサちゃん、ご飯の残り食べちゃいましょう!?」

 

無防備だって言ったあとから机に伏せて話さなくなってしまったカルマに焦っていたら、千葉くんには私が悪いと言われ、愛美ちゃんは慌てたようにお弁当の残りを指して私を呼び、凛香ちゃんは、……静かに箸に卵焼きを掴んで私に向けていた。それはこのまま食べてってことなのかな、と私?と自分を指さして確認すると頷かれたので口を開けると、放り込まれる卵焼き。私の作ったものよりも甘めでふわっとしてて美味しい……え、あの、凛香ちゃん「次は……」って、私のお弁当まだあるよ、なんで凛香ちゃんのお弁当から次のおかず選んでるの……!?

 

「(速水のあれって……無言だけどあーん、だよな)」

 

「(まさかイトナ君が見てたのはアミサちゃんの胸だなんて言えないし、意識をそらそうと思いついたけど、やってみたら餌付けしてるみたいで楽しくなっちゃったのかもね。アミサちゃん、美味しいもの食べてる時の顔ってホントに幸せそうだから)」

 

「(俺、デザートにサクランボあんだけど、あーんしたら食べてくれんのかな!?)」

 

「(前原君……目の前で「女子だからまぁ許す」みたいな目をして見てるカルマ君が怖くないならやってみたら?)」

 

「(……、……やめとくわ、ガチで殺される未来しか見えねぇ)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、イトナくんが暗殺宣言をしていた放課後。雨も上がってお日様の光が差し込む教室の中では机を使ってリングが作られ、私たちはリングの外から囲み、殺せんせーとイトナくんはリングの中で向き合っていた。イトナくんはおもむろに襟巻きと制服の上着に手をかけると、それらを脱ぎ捨てて殺せんせーをじっと見つめている。

 

「ただの暗殺は飽きてるでしょ、殺せんせー。ここは一つルールを決めないかい?──リングの外に足がついたらその時点で死刑!……どうかな?」

 

「なんだそりゃ、負けたって誰が守るんだそんなルール……」

 

「いや、そうでもないよ杉野。皆の前で決めたルールを破れば先生として(・・・・・)の信用が落ちる……殺せんせーには意外と効くんだ、あの手の縛り」

 

「そういえば、私もみんなの前で言ったからかな。手で食べるお菓子は手で食べてね、っていうの、律儀に守ってくれてる。たまに対先生BB弾の粉末、表面にまぶしてるのに……」

 

「それ、食えなくね……?」

 

殺せんせーは先生ということに誇りを持っている。その先生としての信用を落とすというのは先生自身が許せないことだし、死ぬことと同義だから……このルールもきっと受けるんだと思う。

 

「……いいでしょう、そのルール受けますよ。ただしイトナ君、観客に危害を加えた場合も失格ですよ」

 

「では、合図で始めようか……」

 

案の定受けた殺せんせーは、追加で私たちの安全も加えてきた。こういうことをしてくれるから、この先生は信用できるんだ。それにイトナくんが頷いたのを確認したシロさんが、合図をとるらしい……え、シロさんってイトナくんの保護者なんだよね……?これって実質2対1なんじゃ……

 

「暗殺……開始!!」

 

 

 

────ザンッ

 

 

 

…………その音が響いた瞬間、私たちの目は一箇所に釘付けになった、なるしかなかった。それはいきなり切り落とされた殺せんせーの触手じゃない、驚いて動揺してる殺せんせーでもない、

 

「イトナくんの髪……触手……!?」

 

ピチピチと音を立てて蠢くそれは、殺せんせーと同じ触手だった……これでいくつかのことに説明がつく。

カルマくんの疑問だった『どうして手ぶらなのに一滴も濡れていないのか』……全て触手で弾けばすむことだからだ。アルカンシェルから帰ってきてE組校舎から家に帰る途中に律ちゃんが言ってた……私たちの負担にならないよう、風圧、チリ……触手を駆使してそれらを避けていたのを確認した、と。イトナくんだって同じことが出来ても不思議じゃない。

殺せんせーとの兄弟疑惑……殺せんせーが自分のことを話さないからちゃんとした関係とかは説明出来ないけど、何故先生が兄でイトナくんが弟なのかは分かる。同じ触手持ちで先生が先に、イトナくんが後から触手を手に入れたから……

それに私が引っかかっていた『調整』という言葉……あの触手は先天的なものじゃない、植え付けられたものでそれを制御する必要があるから、じゃないかな……

 

「…………………こだ……」

 

殺せんせー…?先生の顔が、だんだん黒く……、

 

 

 

 

 

「どこで手に入れた、その触手をッ!!!」

 

 

 

 

 

殺せんせーの顔が、真っ黒に染まって……これは、ものすごく怒ってる……?ビリビリするような空気に、思わず何かに縋りたくなる……一瞬さ迷わせかけた手を慌てて胸元でぎゅっと握りしめる。何を弱気になってるんだ、私。

見ているだけでも伝わって来る殺せんせーのド怒りに、なんてこともないように話すシロさん。両親も違う、育ちも違う……それでも2人は兄弟だっていうことを……やっぱり私の立てた2つ目の仮説は当たってそうだ。

 

「しかし怖い顔をするねぇ……何か、嫌なことでも思い出したかい?」

 

「…………シロさん、どうやらあなたにも話を聞かなくてはならないようだ」

 

「聞けないよ、死ぬからね」

 

腕を上げたシロさんの袖口から紫色の光が溢れて、殺せんせーのちょうど後ろくらいにいた私はちょうど真正面からその光を浴びることになった……まぶしい。目を細めながら腕で目を隠すと、すぐ隣で暗殺を見ていたカルマが無言で私の前に立った……もしかして、壁になってくれた……?すぐに光は落ち着いたようで、カルマのカーディガンの裾を軽く掴みながら横からリングの中を見ると……殺せんせーが、硬直していた。……なんで?こんなの、暗殺するのに絶好のチャンスに、

 

「この圧力光線を至近距離で照射すると、君の細胞はダイラタント挙動を起こし、一瞬全身が硬直する……全部知っているんだよ。君の弱点は、全部ね」

 

「死ね、兄さん」

 

やっぱりイトナくんがこんなチャンスを見逃すはずがなかった。怒涛の攻撃を殺せんせーに仕掛け、数多の触手乱打は先生の体を貫いたかのように見えた。

 

「殺ったか!?」

 

「いや……上だ」

 

「な、なに……あれ……?」

 

「そーか、真尾とカルマは知らないよな。殺せんせーって、月に1回脱皮するんだ……あの皮は、衝撃を吸収できるくらい強い、それも爆弾の威力も殺すくらい……」

 

貫かれたように見えたのは殺せんせーの形をした薄い皮……それは杉野くんの話を聞く限り、殺せんせーの奥の手のようだ。殺せんせー自身は天井の蛍光灯につかまって荒い息を整えようとしている。……これ、かなりイトナくんが優勢な状況じゃないかな。だって、そうでしょう?月に一度しか使えない技なのに、この段階で出さざるを得なかった……それだけイトナくんの攻撃に焦りを感じてるわけだ。

 

「脱皮か……でもね、殺せんせー。その脱皮にも弱点があるのを知っているよ?」

 

本気で殺せんせーの暗殺をしに来てるイトナくんは先生の息が整うのを待つはずがない。息をつく暇もないくらいの触手をぶつけていく……

 

「その脱皮は見た目よりもエネルギーを消耗する……よって、脱皮直後は自慢のスピードも低下するのさ。常人からすればメチャ速いことに変わりはないが、触手同士での戦いでは影響はデカいよ」

 

殺せんせーは防戦一方……反撃をする暇もないくらい、スピードが落ちてるってこと。

 

「加えて、イトナの最初の奇襲で腕を失い再生したね。再生(それ)も結構体力を使うんだ……二重に落とした身体的パフォーマンス、私の計算ではこの時点でほぼ互角だ…」

 

腕一本の再生と脱皮……これだけで互角ってことは、さらに腕を落とされたらどうなるのだろう。

 

「また、触手の扱いは精神状態に左右される。予想外の触手でのダメージによる動揺、気持ちを立て直す暇もない狭いリング」

 

殺せんせーはカルマにジェラートを食べられたことに周りが見えなくなって、床にぶちまけられた対先生BB弾に気づけず踏んだ。理事長先生にいきなり投げられた知恵の輪に慌てて自分で自分の触手に絡まってた。……それくらい、テンパるとうまく動けなくなる。

 

「更には……保護者の献身的なサポート」

 

また、あの光。一瞬の硬直を見逃さないイトナくんは、先生の脚を更に2本切断した。

 

「フッフッフ、これで脚も再生しなくてはならないね。なお一層体力が落ちて殺りやすくなる」

 

「安心した。兄さん、俺はお前より強い」

 

……殺せんせーがこのE組に来たのは4月、今までに先生をここまで追い詰めた人はいなかった。殺せんせーは地球の爆破を企んでる……だから殺さ(暗殺し)なくちゃいけない存在。イトナくんが殺してくれるのはいいことのはずなのに……なんでこんなに悔しいんだろう。なんでこんなに嫌な気持ちなんだろう。殺せば、全部終わりなのに。

 

……終わり?

何が終わりなの?

殺せんせーを殺さなくちゃいけない、この生活が終わるの?

私たちが殺さなくちゃいけないんだ、暗殺のサポートをしなくちゃいけないんだっていう重圧の日々が終わるの?

 

……違うよ、……私たちの、今の、ここでの生活が終わるんだ。

殺される側のはずの先生によって教えられるこの環境……改善した、私たちの学習法の数々……上がった成績……下を見るしかなかった私たちが上を見る、駆け上る意欲……そして、『殺せんせーを殺す』、その殺意で繋がった私たちの絆……それらが全部。

そしてそれが終わったからには『エンドのE組』という、ただの落ちこぼれたちの集まり、劣等感の塊に堕ちるそんな生活に戻るということ。

それに……後から後から出てくる、私たちの知らない殺せんせーの弱点。本当なら、私たちの手でその弱点を見つけて、後からやってきた他人なんかにじゃなくて……私たちの手で、殺したかった。

……私はいつも肌身離さず持っているナイフとエニグマを手に取る。……私は、効くかどうかは別として殺せんせーを有利にできる力を持っている。イトナくん(あっち)は二人で攻めてるんだから、先生側だって二人だっていいじゃないか……あんなの全然フェアじゃない、私が援護したっていいじゃないか……そんなこと、この暗殺が始まってから何度も思った。だけど、暗殺対象を助けるなんておかしなことだし、かといってあっちに加担したくもない。もやもやする気持ちをどうしようも出来なくて、私は唇を噛んで下を向いた。

 

「脚の再生も終わったようだね……さ、次のラッシュに耐えられるかな?」

 

「……ここまで追い込まれたのは初めてです。一見愚直な試合形式での暗殺ですが……実に周到に計算されてる。あなた達に聞きたいことは多いですが……まずは試合に勝たねば喋りそうにないですね」

 

「まだ勝つ気かい?負けダコの遠吠えだね」

 

「シロさん、この暗殺方法を計画したのはイトナ君では無い。あなたでしょうが……一つ計算に入れ忘れていることがありますよ?」

 

存外殺せんせーが近くから聞こえて、私は顔を上げる……すぐ、眼の前にいる。ふと、隣を見ると渚くんもナイフを手に持って殺せんせーを見つめていて……あぁ、もしかして。

思いついたことを確認してみようと、私は机の上に対先生ナイフをそっと置いた。

そんな私の行動を不思議そうに見るのは、私の前に立っていたカルマくらいで、他の人はみんなリングの中に注目している。ちら、と殺せんせーがこちらを見た気がした。

 

「計算に入れ忘れ?……無いね、私の性能計算は完璧だから。──殺れ、イトナ」

 

────ドドドッ

 

今まで以上の渾身の一撃が、殺せんせーに襲いかかる。だけど、私はもう心配してなかった……だって。

 

「おやおや、落し物を踏んずけてしまったようですねぇ〜」

 

私と渚くんのナイフを先生が床に置いて上にハンカチ、その上に殺せんせーが乗り、イトナくんの攻撃に合わせてハンカチごと移動した……っていうところかな。見事にナイフへぶつけたイトナくんの触手は弾け、彼は相当動揺しているみたいだ。シロさんの入れ忘れた計算……それは、私たちE組生徒の予想外の行動だ。

 

「先生と兄弟……同じ触手を持つ者同士ということなら、対先生ナイフが効くのも同じ……そして触手を失えば動揺するところも同じです。そして、先生の方が君よりちょっとだけ老獪ですよ!」

 

動揺して、動けなくなったイトナくんを殺せんせーの脱皮した皮で包み、先生は皮ごとイトナくんを窓の外へと放り投げる!

 

「先生の抜け殻で包んだからダメージはないはずです。ですが、君の足はリングの外についている。先生の勝ちですねぇ……ルールに照らせば君は死刑、もう二度と、先生を殺せませんねぇ」

 

ニヤニヤと笑う舐めた顔色の殺せんせー……形勢逆転、私たちの先生が勝っちゃった。どこかホッとした私は自然と笑顔になって……掴んでいたカルマのカーディガンから手を離した。

 

「生き返りたいのなら、皆と一緒にこのクラスで学びなさい。計算では測れないもの……それは経験です。君より少しだけ長く生き……少しだけ知識が多い。先生が先生になったのはね、経験(それ)を君達に伝えたいからです。この教室で先生の経験を盗まなければ……君は私に勝てませんよ」

 

「……勝てない?俺が、弱い……?」

 

あれ、なんだか雲行きが怪しくなってきた……?ザワザワと揺れるイトナくんの触手が黒く染まっていく。殺せんせーの場合、ものすごく怒った時に顔が黒く染まっていた……ということは、イトナくん、キレてる……?一瞬で窓を吹き飛ばし、足をかけたイトナくんは殺せんせーに飛びかかっていき……

 

────ピシュン

 

小さな音とともに崩れ落ちた。

 

「すいませんねぇ、殺せんせー。どうもこの子は……まだ登校できる精神状態ではなかったようだ。転校初日でなんですが……しばらく休学させてもらいます」

 

「待ちなさい!担任としてその子は放っておけません。1度E組(ここ)に入ったからには卒業まで面倒を見ます。それにシロさん……あなたにも聞きたいことが山ほどある」

 

「いやだね、帰るよ。力ずくで止めてみるかい?」

 

イトナくんを抱えて教室から出ていこうとするシロさん……彼が、麻酔銃か何かでイトナくんを止めたようだ。暴走していた彼を止めてくれたのはありがたいけど、今日来たばかりでいきなり休学なんて……。シロさんの言葉通り、止めようとした殺せんせーはシロさんの方に触手を伸ばし……

 

────パンッ

 

……触手が溶けた。

 

「対先生繊維……君は私に触手1本触れられない。心配せずともまたすぐに復学させるよ、殺せんせー……3月まで時間はないからね。」

 

責任もって私が……家庭教師を務めた上でね。

そういって、触手を持った暗殺者と奇妙な保護者は去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、何してんの殺せんせー……」

 

二人が出て言った後、リングにしていた私たちの机を元に戻している時に殺せんせーは、顔を染めて触手()で顔を隠し、恥ずかしい恥ずかしいと言い続けている。何が恥ずかしいんだろう……あんなにカッコイイ先生としての殺せんせーを見せてくれてたのに。

 

「……シリアスな展開に加担したのが恥ずかしいのです。先生どちらかといえばギャグキャラなのに」

 

「自覚あったんだ!?」

 

「かっこよく怒ってたね〜……〝どこでそれを手に入れたっ!その触手を!!〟」

 

「いやあぁぁ!!言わないで狭間さん!!改めて自分で聞くと逃げ出したい!」

 

綺羅々ちゃん、上手だなぁ……殺せんせーの真似。手は動かしつつ、そちらを見ているとキャラが崩れるとかなんとかいいながらさらに沈んでいく先生……殺せんせーは自分のキャラを把握して且つ、計算していたことがよく分かった。

 

「でも驚いたわ……あのイトナって子、まさか触手を使うなんて」

 

ずっと、あの暗殺劇を見ていたイリーナ先生がポツリと言った言葉を機に、私たちはちょうどいいとばかりにそれに乗る……先生の正体について。

 

「ねぇ、殺せんせー……そろそろ説明してよ。先生の正体について……先生の正体、いつもはぐらかされてたけどさ」

 

「あんなの見せられたら、もう聞かずにはいられないぜ」

 

「そうだよ、私たち生徒だよ?聞く権利あるよね……?」

 

何故、触手を持っていることに対してあんなにも怒ったのか。

何故、私たちが誰も知らない、防衛省で依頼してきた側である烏間先生すら知らない、殺せんせーの弱点をシロさんが知っていたのか。

……何故、先生は生まれたのか……

 

「仕方ない、真実を話さなくてはいけませんねぇ……実は、先生……人工的に造り出された生物なんです!」

 

 

 

 

 

てん てん てん まる。

 

 

 

 

 

「だよね」

 

「で?」

 

「にゅやッ、反応薄!?これって結構衝撃的な告白じゃないですか!?」

 

これぞ、衝撃の告白!って勢いで言われたけど、正直予想できていたことだったし全然衝撃でもなくただの事実確認のようなものだった。ので、私たちが知りたいのはその先のこと……予想もつかない、真実の方だ。

 

「残念ですが、今それを話したところで無意味です。先生が地球を爆破すれば、皆さんが何を知ろうがすべてチリになりますからねぇ……逆に、もし君達が地球を救えば……君達は後からいくらでも真実を知る機会を得る」

 

……言わない、つもりなんだ。

もしくは言えないのかな、……言葉巧みに今、私たちが知ってもどうにもならないって伝えてるように聞こえたよ。

 

「殺してみなさい、暗殺者(アサシン)暗殺対象(ターゲット)。それが先生と君達とを結びつけた絆のはずです」

 

そう、それが私たちと先生の関係。普通ならありえないはずの縁、それを結びつけたのはまさにそれなのだから。

殺せんせーが恥ずかしがりながらも出ていった教室で、私たちは考えた。私たちは暗殺者……でも、まだまだ未熟で少し訓練を受けただけの、何の力も持ってないに等しい子どもでしかない。私たちだけで、達成できる依頼なわけがない……なら、どうすべきか。

 

 

 

++++++++++++++++++++

 

 

 

「烏間先生」

 

「……君達か、どうした大人数で」

 

「あの、もっと教えてくれませんか?暗殺の技術を……」

 

「……今以上にか?」

 

私たちの考えついた行動……それは、私たちよりも経験を積んで、知識も豊富な大人に頼ること。頼って、自分たちのスキルアップを目指すことだった。

今までのE組は、『先生という存在を殺してしまいたい』と明確な殺意を持って暗殺に挑んだ私とカルマ以外は、どこか他人事のように暗殺へ臨んでいた。

全員で銃撃をして、誰かの弾で殺せたらいいや。

誰かに任せて、それで殺せたらいいや。

私がやらなくても、きっと誰かが……って。

だけど、律ちゃんが来て、私たちの教室で私たちへの依頼なのに横取りされるのは嫌だと思った。イトナくんが来て、私たちが殺りたいターゲットなのに今まで接してきたのは私たちなのに後出しのように追い詰めるのは腹が立った。このままでは、何のためにこの3ヶ月をここで努力してきたのかが分からなくなる……だから、思ったんだ。私たちの担任を自分たちの手で殺して、真実を知りたいって。

 

「……いいだろう。では、希望者は放課後に追加で訓練を行う……より厳しくなるぞ!」

 

「「「はい!!」」」

 

「では早速、新設した垂直ロープ昇降20m、始めッ!!」

 

「「「厳しッ!?」」」

 

烏間先生、これ、授業でやる気だったのかな……準備が良すぎる。だけど先生の協力が得られて、私たちはまた一歩先に進んだ気がした。

立ち止まれば、先は全く見えなくても……進めば、道は晴れてくる。そろそろ私たちの教室も梅雨明けだ。

 

 

 




「次ッ!」
「はい。」
「はーい。」
「「「!?!?!?」」」
「……真尾さん、赤羽君、降りてこい……」
「……?えと、どうかしましたか……?」
「「「お前ら、初めてやるのに登るの早すぎだろ!?!?」」」
「え、でも(私は初めてじゃないし)まだ楽なほうかなって……」
「なーにー?もう終わり?(俺は喧嘩で腕の力はあるしね)……あ、アミサ、スカートなんだから見えないようにゆっくり気を付けて降りてよ」
「……?えと、下にスパッツ履いてるから見えても平気だよ?ほら……」
「アミサちゃん、そういう問題じゃないから!!そんなとこでめくろうとしないで!」
「ダメだあの子、やっぱりこの危機感のなさだけは何とかしないと……!」



「そういえばさ、殺せんせーがナイフ使う気だって気づいてたの?あの時」
「んと……、渚くんと私がナイフを出したのを見てから殺せんせー、私たちの方に来たし……そうかなって。机にナイフ置いた瞬間に先生がこっち見たから、正解だったって分かったの」
「なるほどね……ある意味あのタコを助けたっていう貸しを作ったってわけだ……♪」
「……イタズラ、しちゃう?」
「もっちろーん!」


「ぶるっ、嫌な悪寒がしますねぇ……」





「あの教室には、怪物が……匹……ふふ、次が楽しみだ」


++++++++++++++++++++


イトナ、初襲来でした。
今回のお話は切ってしまうか迷いどころだったのですが、切りにくい気もしたのでビッチ先生登場回と同じく長めですが載せてしまうことに。
原作、アニメとはいくつかセリフを変えさせていただきました……ほとんどは関係ないのですが、一つだけはワザとです。作者が忘れてさえなければ、のちのち、生きてくる……はず。

本編をいじるのも好きですが、後書きは毎回フリースペースのようにキャラのちょっとした会話を書いています。本編では絡ませにくい軌跡シリーズのキャラの噂を書いてみたり、本編では上手く組み込めないけど今後絶対必要な要素を盛り込んでみたりしてるので、たまに読み返してみると「あ、ここでこんなこと言ってたのは、これの事だったのか!」みたいな驚きに







したいな、と思ってます。
出来てるかは謎です。

では、次回は球技大会でお会いしましょう!


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。