当時の世相を反映しているだけです。
実際はもっとひどいから大丈夫(マテ
作中ではそこら中に銃火器が転がってますが、現実でもアフリカの遊牧民がAK-47で武装しているなんて普通ですよ
大国が崩壊すると作りまくった武器が捨て値で世界中に流出するのは今も100年前も同じ
むしろ制御できる力のある国が全部消滅したこの世界の方が危険かもね
みなさまこんにちは、ターニャ・デグレチャフです。
あの後、敵の96式戦闘機とドッグファイトを繰り広げた私は撃墜されて広州の東亜総合商社の病院に入院が許可されました。
ドイツ人が打ち立てた南チャイナの支配者である東亜総合商社。
要するに東インド会社のドイツ版。
列車で通りかかったドイツ人の為の市街地は石造り、煉瓦造りのいかにも富裕層の街。
投資家・大資本家の為の町であり、許可なしには有色人種は入れません。
ゲーテッドコミュニティーとはそういうものなので特に問題ないでしょう。
そこからちょっと離れた壁を隔てれば漢人の支配代理階層の為の中産階級の街。
実際に労働者を統括し、被支配層からの憎悪を一身に浴びるのが彼らの役目。
そこから更に目を凝らせばあばら家が密集する労働者被支配層漢人の為のスラム街。
君らの代わりなんていくらでもいるんだよ?ああ、素晴らしきかな資本主義
治外法権の巨大な租界。
これは大日本帝国から漢人は白色人種に媚びへつらいアジアの未来を売り渡していると非難されても仕方ないですね、実際尻尾を振る便利な道具扱いですし。
風光明媚で高地の避暑地に設けられた南昆山の雲天海にある療養病院に入院し、そこで一階級の昇進、勲章授与と療養検査入院を行います。
ま、入院検査と言っても軽傷だったので本部にしてみれば手柄を立てた私への慰安も兼ねたつもりなんでしょう。
「商社警備隊への戦技教導任務?でありますか?」
療養を手配してくれた清軍の軍事顧問の中佐は私に次の任務先を伝えてきたことによれば、
ドイツでの最新の航空機操縦技術を生徒に教導してほしいとのこと。
「そうだ、中尉。君は反乱軍との戦争で素晴らしい成果を上げたと聞く。
清からの推薦で広州に開かれる商社と清軍の航空部隊パイロット養成学校の戦技監督官に就任してほしいとのことだ」
成る程、確かに外国からの傭兵パイロットに頼りきった今のチャイナの空軍ではお話にならない。
将来的には自国で自前のパイロットを養成したいというのは頷けるところだ。
しかしそれなら私ではなくとも他に多くのドイツ人パイロットがいるのでは?と聞いてみたら
「…わかった、正直なところを言おう。
流石に8歳の少女を実戦に出したというのはドイツ本国や清からしても対外的にイメージが悪すぎるとのことだ」
(そりゃそうだ、今更ようやく気付いたのか…
「はい、ターニャ・デグレチャフ中尉は療養期間が終了次第、広州パイロット養成学校の指導員として赴任いたします!」
ここだ!軍人らしく常に毅然とした態度を見せ、このチャンスを確実にものにする!
それからはいい気分で、湯船に浸かり美味いソーダを嗜む。
火照った体を高原の爽やかな風で冷まし、揺れるハンモックを楽しむ。
ああ、なんと心地よい時間だ!くだらない戦争から離れ、優雅な暇人としての時間を楽しむ。
これぞわが無上の喜び。
「ふふふ…よくやっった、よくやったじゃないかターニャ。
怪我の功名とはこの事、これをきっかけに商社の中枢メンバーとコネを作れば良い投資先に縁故でありつけるというもの。
おまけに安全な後方での教導任務…今度こそ快適な職場で有意義な時間を過ごさせてもらうぞ」
そう、私はこの時確信していたのだ。
流石に幼女がもう前線に立つことはもう無いだろう、これからは後方勤務だと。
そして確実な未来のための投資に給料を注いで快適なアーリーリタイアメントを果たすのだと!
で、なんでこうなった。
広州に到着するなり、そこでは東亜総合商社本社がボーボー燃えて大火事になってた。
町中そこかしこに火がつき、町中は暴動と略奪でえらい騒ぎである。
「西洋人は出て行けー!中国人のための中国!中華民国万歳!」
あっちこっちで漢人が暴動を起こしているという知らせが舞い込んできた。
「ドイツ人の皆様は速やかに租界地域に避難してください!
危険です!危険」
漢人の警察官が市民に避難誘導を行なっていると、パンパンという音がし咄嗟に身を伏せる。
「死ねぇ!漢奸!裏切りもに死を!国際組合主義万歳!大中華民国万歳!」
狂ったように拳銃を振り上げてそこかしこに発砲する暴漢がそこら中にいた。
警官は撃たれて血を流しているので、私も常に携えているMP18を引き抜くとそいつに向かってぶっ放す。
「うわぁぁぁぁぁぁ!」
職務を忠実に実行していた公僕に暴力を振るったのだからこうなるのは当然のはずが、一発食らっただけで喚いて倒れた。
ああ、所詮組合主義者にそそのかされたチンピラなぞこの程度だろう。
「な!?警官?怯むな!ただのガ…」
バカが、戦場で身を晒すなど…こいつらど素人だな。
分厚いコンクリートの遮蔽物に身を隠し、路上で銃を手にいい気になっていた暴漢を私は確実に射殺していく。
「全く、こういうのは普通は憲兵の役目だろうに…これは時間外勤務手当になるのかな?」
ようやく憲兵が到着した時には十人を超えるゴロツキの死体が出来上がっていた。
やれやれ、いくらなんでも遅すぎだろうに。
後で聞いた話によると町中で武装暴動が勃発したらしい。