Kaiserreichで幼女戦記   作:溶けない氷

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幼女、義勇兵として頑張る

どうも皆さまこんにちは

ターニャ・デグレチャフです。

軍人のいいところは手荷物一つで世界中何処へでもすぐに行けるように訓練されることでしょうね。

銃と鞄ひとつを持った私はベルリンを飛行機で出発し、空路で中国の山東半島ドイツ海軍基地へと出発することになりました。

「なぜ?私が今回の義勇兵として派遣されるのでしょうか?」

「すまないが、選定基準は我々にも知らされていない。

無論、拒否する権利はある」

そう言われて契約書を示された。

「契約の前に熟考する権利はある。だがこれは上層部からの推薦だ」

上層部のということは事実上命令ではないか。

なになに?

形式上少尉に昇進後に退役扱い…契約は六ヶ月ごとの更新

ドイツ帝国軍復帰時には現地からの推薦に従い、本国軍と同じ扱いと昇進が約束されている。

肝心の契約金は…月の給料が1000ライヒスマルクだと?

一ヶ月働いただけでライヒスワーゲン自動車が買えるではないか!

(日本円の感覚だと大体月収90万円くらいの感覚)

今の士官候補生の給料の10倍!少尉でも150RMに比べれば破格の給与。

「はい、ターニャ・デグレチャフ少尉はコンドル義勇兵団に志願します!」

 

 

機体は海路で運送されるとのことで、パイロットは一足先に北京で現場を見てこいとのことです。

ベルリン国際空港にやってきた私は駐機場のFw200旅客機に乗り込む。

軍もこれほどの長距離輸送には旅客機をチャーターしてくれるとはありがたい。

輸送機のユーおばさんは腰が痛くなってかなわんからな。

またキール軍港からの海路は英仏との関係が緊張する中でドーバー海峡が使えず時間がかかるとの事。

まぁ税金で中国旅行ができると考えれば悪くないだろう。

「あの!ここでよろしいですか?」

ああ、同じく中国行きの義勇兵とか、人のことは言えないが随分と幼いな。

「えへへ、私こんな大きな飛行機に乗るの初めてなんですよ。

え?少尉殿!?失礼いたしました!ヴィーシャ・セレブリャーコフ伍長です!」

ああ、私の階級章にやっと気づいたか。

「そう固くならんでいいよ、この機に乗っているということは義勇兵なのだろう?

形式上とはいえ退役し、民間人扱いだからな。

ターニャ・デグレチャフ元少尉だ」

 

「あ、はい。えーとデグレチャフさんでいいですか?」

 

「ああ、構わんよ」

 

「よかったぁ、私ウクライナから出てきて周りの人みんな知らない男の人ばっかで不安になってたところなんですよ」

 

ああ、いわゆるドイツ系ウクライナ人というやつだな。

ウクライナ王国は戦後に独立を果たし、ドイツの衛星国でドイツ人が王様をやっている。

「デグレチャフさんは、なんで義勇兵に?」

「私の場合は、軍の命令というやつだな。最新の実戦経験をフィードバックしたいという思惑があるのだろう。

私自身、訓練では得られない経験を実戦から汲み取ることを期待している」

「立派な目標があるんですねぇ…私なんかとは大違いです」

 

聞けばお金目的らしい、まぁそうだろうな。私も本音を言えば80%くらいは高給目的だ。

「この前の株価暴落でお父さんの会社も苦しくって、私が頑張って仕送りすれば借金が返せるんで…」

 

ああ、不況の悲しさよ。

実に世知辛い世の中だ。

 

ドイツから地中海を越えてスエズ、そこからペルシャ、セイロン島、シンガポール、海南島、山東というユーラシアを横断する長旅になるでしょう。

この時代、ユーラシアの政治情勢はカオスそのもの。

あっちこっちで山賊や空賊や海賊がヒャッハー!するなんて当たり前。

覇権国家のはずのドイツからして海洋国家ではないのだから治安は最悪と言っていい。

故に安全な遠回りをするしかなく世界旅行はほとんどの人間にとって縁遠いものとなっている。

Fw200は飛んでいく、我々を乗せてはるか東の空に…

 

2日後、我々は基地を次々と中継して北京空港へと到着した。

観光?ないよ

「うー腰が痛い」

空港に待っていたバスに乗り込んで北京飯店へ、中国北京でも古い外資系ホテルの部屋を取っている。

「ほう、一人部屋か。さすがにVIPルームとはいかないが品のいい部屋だな。

フランス人の作ったホテルなだけはある」

 

柔らかで暖かいベッドに潜り込んで長旅の疲れを癒す。

「ふふ、中国行きが決まった時は左遷かと心配したが…

給料は高い待遇もいい、昇進も決まっている」

我が世の春は決まったようなものだと安心して床に着くと疲れもあってぐっすり眠れた。


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