バカな筋肉と優等生   作:諦。

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第十一問

「おかえりー!代表!優子!!心配したんだよー!?!?」

「わぷっ、あ、愛子、落ち着いて!」

「……………………苦しい……」

 

教室に入るなり、勢いよく愛子に抱きしめられる。

…心配してくれているのは嬉しいけど…息が苦しい…っ!!

 

「夏目君、樋野君…無事で良かった」

「急に飛び出すものだから、心配したよ。…怪我、酷いね。大丈夫かい?」

「ああ、心配ない。掠り傷だ」

「篝!!」

「お、おう?」

 

隣では、久保君と本田君、それから笂さんが夏目と樋野君に駆け寄っていた。

掠り傷って…………殴られたり蹴られたりしていたくせに、よく言うものね。

 

「……嘘つくんじゃないわよ、ちゃんと手当てしないと」

「何処へ行く」

「保健室に決まっているでしょう」

「何故」

「何故、じゃないわよ馬鹿。絆創膏とかもらってくるわ」

 

保健室から手当て用の道具をもらってこようとすると、

 

「ユーコ!ちょっと話したいことがあるヨ!ワタシもいい?」

 

と、ジェシカが駆け寄って来た。

 

「別に構わないけど…」

「アリガトー!じゃあチャチャッと行くヨ!」

「あ、ちょっと!引っ張るんじゃないわよーー!」

 

ジェシカに襟首を掴まれ、まるでペットのように引っ張られる。く、首が…!!

 

「…そ、それで、話って何よ」

 

しばらくしてから解放してもらい、げほげほと咳をしながらジェシカに尋ねる。

 

「今日の事件を経て、ワタシ考えたヨーー明日も同じことが起こる、かもしれない!二度あることは三度あるってやつヨ!!」

「…そうね、十分可能性はあるわね」

「でも閉店にするのはちょっとシャクヨ!ワタシ達が負けたみたいで悔しいネ!」

「……まあ……そうね」

「そこでワタシ考えたヨ!安心安全デ、かつ、ドカンと明日売れる方法ヲ!!」

「ふぅん…。教えて頂戴、その方法とやら」

 

「フフン、それはズバリーー」

 

             ☆

 

「ーーで、それが男子がメイド服を着る案だったと?」

「そういうこと。似合ってるわよ、横田君」

「全く嬉しくない…!!」

 

文化祭最終日の朝。がらんとした店内には、メイド服を着たーー数十人の、()()()()

アタシの前にはフリフリで丈の短いメイド服を着た、横田君が居心地悪そうに立っている。

 

「いやはや!ジェシカさんナイスとしかいいようがありません!!これで弘さんコレクションが増えるというものですヤッフーー!!!」

「勝手なコレクション作るんじゃない!!」

「オーマイガッ!?!!?」

 

岡田さんのカメラのレンズに正確無比なフォークが何本と刺さる。相変わらず見事な腕前だ。

 

「あれ?夏目君は燕尾服なの?」

 

体操服の上からエプロンを着て、頭に三角巾をした愛子が、数少ない燕尾服を着た夏目に尋ねている。

ちなみに、昨日ウェイターをしていた子達は調理場に入ってもらうことにした。大森君もいることだし、大きな失敗もないだろう。

 

「ああ、昨日はメイド服だったからな」

 

さらさらと流している赤い髪はオールバックにしており、ワックスが陽光を浴びてきらきらと輝いている。

黒を基調とした燕尾服はガタイの良い体によくフィットしていた。黒のピッチリとしたパンツはすらりと長い足によく似合う。ゴツゴツとした傷だらけの手は、白い薄手の手袋で覆われていた。

…………普段とは違う雰囲気に、正直戸惑った。まるで、御伽噺の一ページに出てきそうな、或いは、ドラマの中のワンシーンのような。立っている、それだけなのに様になる、流麗な佇まい。

 

「…………優子、見惚れてる?」

「ひょえっ!?あ、だっ、だだだ、だいひょ、いや、そんなわけ…!!」

「…………顔、真っ赤」

「あ、熱いだけよ!あぁ熱い熱い!エアコンでも付けようかしら!?」

「…………素直じゃない」

 

楽しそうに笑う代表の頬を引っ張る。

違う、違う、戸惑っただけで、見惚れる、なんて!そんな!!

とにかく、これ以上は目に毒だと別の場所へと視線を巡らせる。アレはーー下田君??

 

「…意外と…似合ってる…」

 

黒髪の間から覗く、男子にしては丸っこい瞳。露出の低いメイド服から見える雪のような白い肌。頬は恥ずかしさからか、ほんのりと赤く染まっている。

 

「…………本当。可愛い」

「あら、素敵なメイドさんですわね」

「や、やめろ……!」

 

代表と菊池さんが褒めると、ブンブンと首を振り否定する下田君。…………少し口元が緩んでいるのは、女子と話せたことが嬉しい……のかな……?顔を赤くしたり青くしていたりするところを見ると、色々と複雑なんだろうなぁ…。

 

「む。俺のナンバーワンメイドの座は渡さないからな!」

 

そんな下田君人気に口を出したのは、これまた絶世の美女と化した半田洋介君だ。女子でも中々着るのを躊躇ったミニスカメイドを臆することなく着こなしており、整った顔立ちと惜しげも無く晒した生足はかなり眩しかった。

 

「………そんなもの、元々いらない」

 

そう否定する下田君の鼻からは鼻血がぼたぼたを流れている。先程までの幸の薄そうな雰囲気は消え去り、むしろ残念さだけが色濃く残ってしまった。

 

「…勝った!」

「味方をダウンさせないで頂戴」

 

メイド服に鼻血が付かないよう、慌てて下田君の鼻にティッシュを突っ込む。

………全く、このメイド服は高かったんだから、汚されるのは困るのよね。また何かに使うかもしれないし…。

 

「…木下、そろそろ時間なんじゃないか?」

 

ゴツいガタイには合わない、黒髪のロングヘアーと長いメイド服のスカートを揺らすのは安田・アンドリュー・陽太君だ。ウィッグを被ってもらっているため、一瞬誰だかわからなくなってしまうのはネックだけれど、坊主頭にメイド服よりはマシだろう。

 

「そうね。…さ、代表、そろそろ開店にしましょう」

「………………皆、頑張ろう」

 

その言葉に、全員が頷く。

アタシ達の文化祭最終日は、静かにその幕を開けた。




出演キャラクター【()内は作者様】
・下田聡(ドM犬様)

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