バカな筋肉と優等生   作:諦。

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感想にて、原作のようなドタバタ感が好きという声をいただきます。一ファンとしてはとても光栄な限りです…ありがとうございます…!


第四問

雲一つない、よく晴れた土曜日。

いよいよ文月学園の清涼祭が幕を開けた。

 

『いらっしゃいませー!』

『1Aの焼きそばはいかがですかー!?』

『寄ってらっしゃい見てらっしゃい!可愛い娘いますよー!』

 

なんて謳い文句がそこかしこから聞こえてくれる。

文月学園は試験校として有名なため、一般客もたくさん来ていて、混みようも凄いものだ。廊下を歩くのも少し大変そうなくらいである。

 

「お帰りなさいませ。ご主人様、お嬢様」

 

ホールもキッチンも任せるのが怖かった夏目と、お目付役と少しでも華やかになるように、と菊池理恵さんに売り込みに行ってもらってるわけだけど…さっきから客入りが順調なところを見ると、上手くいっているらしい。

 

「四名様で宜しいでしょうか」

 

中学生くらいの子達だろうか。

しっかりしてそうな眼鏡の男の子と、元気そうな藍色の髪の女の子、大人しそうな黒髪の女の子に、赤髪の小さな女の子が連れられている。

 

「はい」

「こちらへどうぞ」

 

男の子の返事を聞いて、空いている席へ案内する。

…それにしても…この男の子、何処かで見たことがあるような…??

 

「いやあ、Aクラスって凄いねえ」

「そうだね、こんな豪華な設備で勉強が出来るなんて…久保君のお兄さんが羨ましいな」

「あはは…まあ、兄さんは良く勉強しているからさ」

 

「…久保君の弟さん?」

 

その会話に、思わず口を挟んでしまう。

 

「あ、はい。…いつも兄がお世話になっています」

 

と男の子ーー改め久保君の弟君が丁寧に頭を下げた。

なるほど確かに、雰囲気とか真面目そうなところは久保君によく似ているな、と思う。

 

「こちらこそ。久保君にはよくお世話になっているわ」

 

とにこりと微笑みかけると、「あ、いえ、」とほんのり赤らめた顔で返事を返された。

そんな久保君の弟を、藍髪の女の子と黒髪の女の子はジトリとした目で見つめる。

…何だかそんな反応も新鮮で、面白い。

なんて心の中でニヤニヤしていれば。

 

「…あ、そう言えば」

 

と黒髪の女の子が鞄から何やらごそごそと取り出し始めた。

 

「あの、吉井明久さんって知っていますか?」

 

彼女が取り出したのは、海外からのものであろう手紙だ。宛名の欄には達筆な文字で『吉井明久様へ』と書かれている。

 

「ええ、知っているわ」

「よかった…!どのクラスにいるか、ご存じですか?」

「彼なら二年F組にいると思うけど…今、丁度大会で席を外していると思うわ」

「二年F組!?」

 

そう返事をすれば、藍髪の女の子が凄く食いついていた。

 

「そういえば、土屋さんのお兄さんは二年F組に所属しているんだっけ?」

「そうだよ!よかったねえ、Fクラスに行けば万事解決だね!」

 

と、ぴょんぴょんと跳びはねる藍髪の子。

…そうか、こっちはあまり似ていないから気付かなかったけど…Fクラスの土屋、と言えば思い当たるのは小柄な男の子ただ一人だ。

 

「へえ…貴方があの土屋君の…」

「!康兄を知ってるんですか!?」

「ええ。少しだけど…話したり、遊んだり」

 

席に着くと、左側に久保君の弟が、右側に土屋君の妹さん、黒髪の女の子、最後に赤髪の女の子が座る。

その時、赤髪の女の子がさげている鞄についた浅黒の女子高生のストラップが揺れたのが目に焼き付いた。

あれ…何処かで…??

 

「………………優子、そろそろ時間、」

「へあっ!?…あ、ああ、大会のね、わかったわ。…それでは、ごゆっくりお過ごしくださいませ」

 

代表にいきなり話しかけられ、変な声を出してしまう。

慌てて持ち直してぺこりと頭を下げ、その場を離れる。

あう…恥ずかしいことをした…。

 

「代表、いきなり後ろから話しかけないで…!!」

「………………ごめん、でも、遅れると失格になるから」

 

そう小声で注意すると、代表も申し訳なさそうにしていた。…そんな顔されると強く言えない…!!

でも、時間ギリギリまで接客をしていたのは事実のようで。

会場に着いた途端に、その場にいた木内先生が時計をチェックする。それから高らかに宣言した。

 

「これから試験召喚大会、第1回戦を開始します!」

 

「「「「試獣召喚(サモン)!!!!」」」」

 

それぞれの足元に幾何学模様の魔法陣が浮かび上がる。その中央から自分をデフォルメしたような召喚獣が現れた。

深みのある黄緑色のインナーにの上に西洋鎧を重ねてあり、ベルトの中央の金具には赤色の文字でAと書かれている。そして手には少しの装飾が施された大きなランスを構えていた。

そして、横にはテストの点数が表示される。

 

『Eクラス 中林宏美 & Eクラス 三上美子

 数学   105点  & 102点      』

           VS

『Aクラス 霧島翔子 & Aクラス 木下優子

 数学   332点    313点      』

 

うん、この点差なら問題なさそうだ。

 

「やあーっ!」

 

と、突撃してくる相手(三上さん…だったかしら)の召喚獣をジャンプで躱し、ガラ空きの頭上へ向けてランスを一突きする。すると、三上さんの召喚獣は粒子となって消えていった。

 

『きゅうう…』

 

そんな声が聞こえ、横を見ると代表と対峙していた中林さん?の召喚獣も消えていた。

 

「うう、悔しい…」

「いきなりAクラスと当たるなんて、ついてない…」

 

顔を覆い悲しそうに俯く二人。

…何だか申し訳ないけど、これも勝負だしね。代表のこともあるから負けるわけにもいかないし。

 

「勝者、霧島翔子&木下優子ペア!」

 

第1回戦を無事勝利で収め、アタシと代表は会場を後にした。




出演キャラクター【()内は作者様】
・菊池理恵(倶利伽羅峠3号様)

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