旧年はつたない拙作に目を通していただき、本当にありがとうございます。
本年も精進して出来るだけ面白い作品を書いていくように精進する所存ですので、どうかよろしくお願いします。
で、今年の福袋。
来たのはAUOでした。
あと、呼符で北斎も来た。
なんだか、今年はヤバい事が起こる予感がががががが……
皆様、新年あけましておめでとうございます。
人類最後のマスターをしております、藤丸立香です。
カルデアで催した新年会ですが、意外なゲストのお蔭で盛り上がってます。
そのゲストとは『死んだらグランドセイバーになること間違いなし』と言われている異世界ブリテン産のチート剣士、アルガさんのご家族。
「貴女が私のお母様なのですね! お顔を拝見できてとても嬉しいです!」
「貴女は違う世界のアルトリアなのね。私も会えて嬉しいわ」
平行世界のアルトリアことヒロインXに師事しているリリィは、イグレーヌさんの豊かな胸に顔を埋めて至福の表情を浮かべている。
とっても微笑ましい光景なんだけど、それを見てる青セイバーを始めとしたアルトリアシリーズがえらい表情だ。
何というか、イグレーヌさんへの興味は津々なんだけど、話しかける切っ掛けが無くて悶々してるって感じ。
しかし、イグレーヌさんって獅子王にそっくりだなぁ。
獅子王は凛々しい感じだけど、イグレーヌさんは癒しオーラが漂ってるって感じ。
「アビシャグ! アビシャグじゃないか!!」
「え!? えっと……ごめんなさい、人違いです。私はガレスっていって、アビ……シャグさん? ではありません」
「そうなのかい? でもそっくりだよ! ところで、この宴会の後で僕の部屋で添い寝でもぉぉぉぉぉぉぉっっ!?」
「うおおおおっ!? 嬢ちゃんの影からデカい白犬が出て来てダビデを喰ったぁぁぁぁっ!!」
「ちょっ!? 思いっきり上半身咥えられてる! って、左右にブンブン振るなぁぁぁ!!」
「はわわわっ!? コロぉ! ペッしなさい、ペッ! って、デュラハン騎士団も攻撃しようとしちゃダメぇぇぇっ!?」
あ、ガレスさんにコナ掛けようとしてたダビデマンが犬の餌になりかけてる。
なんか首なし騎士の集団がトドメをさそうとしてるし。
あと、こっちのガウェインが『あれがガレス……。あの娘も騎士にならなければ、あのような令嬢に……』とか言って目頭押さえてるんだけど。
ところで、あの娘ってどうやってあの犬とか首なし騎士を連れてきたんだろ?
「聞いてよ、兄ちゃん達! オレ、大活躍したんだぜ!! トコロテンってところで、こっちのアグ兄に剣で勝ったんだ!!」
「トコロテンではなくて特異点ですよ、モディ」
「しかし異世界とはいえ、よくアグの奴に勝てたな。こいつの防御ってスッゲー固いのに」
「たいてんりゅーの技使ってこなかったから、防御はぜんぜんだったぞ! それに攻撃も遅かった!!」
「この世界には父上がいないからな。理合いを知らぬ私など、今のモードレッドの相手にはなるまい」
あとは、現代風の装いに身を包んだ向こうのガウェイン達三兄弟に甘えまくってるモードちゃんを、こっちのモードレッドが信じられないモノを見る目で見てる。
ガウェインやアグラヴェインはこっちと同じだからすぐに分かった。
後のちょっとヤンチャっぽいアーサー似の青年がガヘリスなんだろう。
「そちらのギャラハッドさんは、盾を使ったりはしないんですね」
「こちらと違って、ブリテン時代に円卓には入らなかったからね。使えるのは剣だけなんだ」
「それもアルガさんから教えてもらったんですか?」
「うん。アグゥ兄さんやモディのように、戴天流を本格的に習ってはいないけどね」
「本当に私の中にいるギャラハッドさんとは違うんですね……」
「名前も出生も同じだけど、育った環境が違うから。ただ君の命を救えたことは、彼も喜んでいると思うよ」
「どうして分かるんですか?」
「ただの勘さ。とはいえ、世界は違えど同じ人物なんだ。信憑性は保証するよ」
マシュと楽しそうに話しているすみれ色の髪をした青年。
あれが向こうのギャラハッド。
アルガさんの話だと、エレイン姫とランスロットが育児放棄をした為に彼の手で育ったらしい。
なんというか凄く優しそうな人で、マシュと並んでいると兄妹みたいに見えてくる。
「おのれ、私のマシュとイチャイチャしおって……。どこの馬の骨だ、あの男は」
平行世界の貴方の息子です。
あと、マシュはあんたの物ではない。
「あなたぁ、留守番ばっかりで寂しかったよぉ」
「はいはい。正月中はむこうで過ごすから、甘えるのは帰ってからな」
で、アルガさんにベッタリなのが、奥さんであるモルガンさん。
こっちでは魔女だの何だのと言われているが、本人はいたっていい人だ。
ナーサリーやジャックを始めとした幼年組にお菓子のお土産持ってきてくれたし、今回の宴会だってお客さんなのに料理とかずーっと準備手伝ってくれた。
人当たりもいいからメディアさんやブーティカお姉さんなんかとすぐに仲良くなったしね。
場の雰囲気もいい感じに温まってる事だし、司会進行のダ・ヴィンチちゃんからお声が掛かる前にこうなった経緯を説明する事にしよう。
事は昨日の朝、アルガさんが妖精郷に帰省すると言い出した事から始まった。
カルデアに来て数か月、特異点で私達の手助けやセイバークラスの剣術指南なんかをしてたから、アルガさんは全然実家に帰ってなかったのだ。
というか、人理焼却の所為でカルデアの他に家があるって、言われるまで思い至らなかったし。
私達の多くが快諾する中、これに異を唱える者もいた。
ジャックを始めとした幼年組だ。
小さいモードレッドことモードちゃんと仲良くなった子供達は、お正月も一緒に過ごすものと思い込んでいたらしい。
半ベソでモードちゃんを引き留める子供たちに、モードちゃんも涙目。
特に、クリスマスイベントで一緒に海を見に行ったジャンヌ・リリィはギャン泣きで、
「モードと一緒に初日の出を見る約束をしたんです! だから、行かないでください!!」
アルガさんの上着にしがみ付いて行かない様に説得していた。
さすがのアルガさんもこれにはお手上げだったらしく、苦笑いを浮かべると携帯電話で自宅のモルガンさんと相談。
その後ダ・ヴィンチちゃんの許可を得て、皆さんをこっちに呼んだわけだ。
アルガさんをビーコンにして現れたご家族だけど、なんというかイケメン家族だった。
獅子王やランサー・オルタを穏やかにしたようなイグレーヌさんとモルガンさん。
ゆるふわアルトリアなガレス。
ガウェイン達兄弟はいわずもがなだ。
そういえば、アルガさんもアーサーによく似てるんだよね。
目つきが滅茶苦茶鋭いけど。
モルガンさんを始めとした家族との再会の後、女性陣はブーティカお姉さん達と共に新年の準備に、男性陣は血の気が多い連中と共にシミュレーションルームへと別れて行った。
料理の鉄人ぞろいの厨房に入る度胸の無かった私は、男性陣の後を追ってシミュレーションに行ったわけだが、そこでの光景は何というか……凄かった。
アルガさんの息子という事で兄弟三人が腕試しを求められていたんだけど、『イィークイップ!!』という掛け声と共に特撮ヒーローみたいなバトルスーツに変身した彼等は、戦隊ものみたいな謎の曲がりくねったビームやレーザーブレードをふんだんに使って大暴れ。
英霊と同等の能力に、神秘を纏った科学という反則兵器を駆使して結構な勝ち星をあげた。
あと、むこうのガウェインが使っていた妙にメカメカしくなった太陽の聖剣や『ガラティーン、チャージ・アップ!!』の掛け声の後で、全身に炎を纏って斬りかかっていくのを見た時、こちら側の太陽の騎士は白目をむいていました。
なによりドン引きしたのは、そんな三人を一度に相手取ってボロ勝ちしたアルガさんなんですけどね。
曰く『得物を頼りにしてはいけない。木の枝でも過不足なく戦えるくらいに腕を磨きなさい』
第五特異点でクーフーリン・オルタを木刀で圧倒した人の言うセリフだから、その重さは半端なかった。
その後、参加者は各々シャワーで汗を流して会場入り。
そして今に至るというわけだ。
ふと見ると、アルガさん達の席には結構な面々が集まっていた。
アルガさんの受け流す技術に感動して師範呼びで師事しているアーサーに、魔猿から掛けられた離別の呪いを斬ってもらったことで、一緒に過ごす事が出来るようになったラーマ夫婦。
あとはアズライールの霊廟で超人対決したり、ティアマトの時に協力して奴の羽を斬った初代様もいる。
第四特異点が終わった頃に合流したけど、アルガさんに助けてもらった事って多いよねぇ。
ギフトをもらった獅子王の円卓を相手にした時は、そのギフトを悉く斬っちゃうし。
あの人がいなかったら、もっともっと多くの命が失われたと思う。
あ、アルガさんが席を立った。
子供達を始めとして、自分より年下の人達に何か配ってるみたいだけど……なんなんだろ?
「立香ちゃん、あけましておめでとう。少し遅れたけど、これはお年玉な」
そう言って渡されたのは、なんと呼符十五枚。
「え……これってどうしたんですか?」
「ダ・ヴィンチちゃんの工房に敵を倒して得た素材を持って行ってね、交換してもらったんだ。子供達にもスキルや再臨用の素材を渡してあるから、後で使ってあげてくれ」
「あ、ありがとうございます」
「なんの。今年一年も色々と大変だろうけど、頑張ってな」
そう言って席に戻っていくアルガさん。
いやはや、カルデアに来てまでお年玉をもらえるなんて思わなかったよ。
能力は無茶苦茶だけど、こういうところは常識人だよね、あの人って。
「立香ちゃん、マスターとしてみんなに一言お願いできるかな?」
おっと、ダ・ヴィンチちゃんからお呼びがかかった。
取り敢えず、これはありがたく頂くとして、今年最初の大仕事だ。
ビシッと決める事にしましょうか!