アポ5話の完成です。
今回の執筆スピード、本編=二日 モル子日記=3時間。
……これはいったい。
FGO
ようやく、二部配信となります。
またしても地獄の本編が始まるのかと思うと、武者震いがががががが……
とりあえず、復刻セイバーウォーズで得た素材を使って、プーサーピックアップですり抜け召喚したラーマ君を強化しようかね……。
ルーマニア旅行記 6日目
今日の夕刻、突如としてトゥリファス近辺に巨大な空中要塞が出現した。
アグラヴェインが飛ばした偵察用ドローンに映ったその姿は圧巻の一言。
あんな非常識なものを空に浮かべるなんて、サーヴァントの宝具以外に考えられない。
先日寝る前にジ●リの映画を見ていたお子様2人組は、この画像に『ラ●ュタ! ラピ●タ!』と大喜び。
キラキラと目を輝かせながら、飛行機を持つガウェインに『連れてけ!』と
ほのぼのとした心温まる光景は置いておくとして、戦術的に見ればあの空中要塞は曲者である。
さすがの俺もあの高さまでは……軽功術を使ったら行けんことはないか。
それはともかくとして、ああいうデカブツに頭上を押さえられていると言うのはこの上なく厄介だ。
あそこからアーチャーを始めとした射撃特化の連中にいいようにされては、地上にいる者など鴨撃ち同然になってしまうだろう。
映像に映った緑髪のイケメンや半獣人っぽい狩人からして、あの要塞が赤の陣営である事は間違いない。
頭上を取られた黒の陣営が上手く対処してくれればいいが、主力であるセイバーを失っていることを思えば難しいと判断せざるを得ない。
漁夫の利狙いのウチとしては両者共倒れがベストであり、一方が
となれば、現状不利である黒の陣営と手を組むのが常道なのだが、二・三日前にクレームを付けに行った身としては『味方でござい』と行くのはさすがに辛い。
そんなこんなで家族会議の結果、『状況を見て、不利なほうに手を貸せばいいじゃない』という何ともコウモリな結論に落ち着いたのだ。
ということなので、ガヘリスや。
どういうつもりで熱いドリル推しをしてるのかは分からんが、それはちゃんとしまっておきなさい。
さて、今回現場に出るメンツだが俺とガウェイン、ガヘリスの三名に決定した。
情報等々のバックアップはアグラヴェインと姉御、救護に関してはお袋さんが担当する。
拠点となるキャンピングカーは魔術による隠蔽の上に、障壁やら何やらで要塞化した。
まず見つかる事は無いし、万が一のことがあってもアグラヴェインとギャラハッドが控えているので護りは大丈夫だろう。
今回行動するに当たって懸念すべき事は、生きていた炎槍使いによって赤の方に俺の情報が行ってる可能性がある事だ。
姿を見られるようなヘマをした憶えは無いが、菩薩掌を食らって生き延びたことを思えば可能性が無いわけじゃない。
黒の方にもガウェイン達を助け出した時に矛を合わせた連中がいるので、ヘタに首を突っ込んで結託されては元も子もない。
行くなら顔を隠した方が良いだろう。
デスクィーン師匠の面は前回で壊れてしまったから、姉御に別のモノを用意してもらわねばならん。
上手く都合出来ればよいが……。
◇
ミレニア城砦の前に存在する広大な平原。
そこでは武具を手にした紫色の骸骨と、白の制服に身を包んだ兵士とゴーレムが一進一退の攻防を繰り広げていた。
一昔どころか中世にまで立ち戻った剣や槍、弓などを主武装とした野戦である。
第三者が安全なところから見れば、映画の撮影としか思えないだろう。
しかし、これは現実だ。
戦場の彼方此方に打ち捨てられたホムンクルスの
そんな中、周りに気付かれることなく三人の男が降り立った。
一人は神域に到達した氣功術、他の2人は妖精郷が生み出した魔導科学のステルスによって己が気配を絶った彼等には、ホムンクルスはもとよりゴーレムや竜牙兵ですら反応を示さない。
『HQより各員、現状を報告する』
インカムから聞こえるのは今回の参謀を任されたアグラヴェインの声だ。
ドローンを始めとした彼の諜報機器とモルガンの魔術によって、この戦場は丸裸と言っていいほどの状態となっている。
『開幕直後の赤のアーチャーの宝具とライダーによる戦車の突撃によって、黒の陣営はゴーレムとホムンクルスの半数を失った。だが、直後に開帳した黒のランサーによる宝具が功を奏して、赤の側の竜牙兵も四割が消滅している。あと、それに伴って黒のランサーの真名が発覚した』
「歩兵戦力に関しては、完全とは行かなくても拮抗状態にあるという事ですね。それで、黒のランサーの真名は?」
『「ヴラド三世」だ』
「かつて小戦力でオスマン帝国を退けたワラキアの公王。この国の英雄でしたね」
『そうだ。そして奴の宝具は串刺し公の逸話通りに杭を召喚するモノのようだ』
「なるほど。赤のランサーについては真名は割れていないのですか?」
『残念ながら、な。奴は炎を使うことと、尋常ではないレベルの防御力を誇ることしかわからん』
「了解しました。あちらについては私自身の手で暴く事にしましょう」
「すまんな、『A』。過去に戦ったことがあるような気がするんだが、なにせ千五百年も前のことだから忘れちまった」
「気にしないでください、『B』。相手の真名を暴くこと、それもまた聖杯戦争の醍醐味でしょう」
申し訳なさそうに後頭部を掻く紫の仮面に、茶色の仮面は朗らかに笑ってみせる。
『現在は赤と黒のランサーが交戦中。赤のアーチャーは遊撃に徹しており、ライダーは当初の速度を保ったままミレニア城砦に向かっている』
「まどろっこしい説明は要らん。俺達がどう動くかを教えてくれ」
焦れた様に声を上げる白い仮面の男に、アグラヴェインはインカム越しにため息を吐いた。
『貴様に難しいことを言っても無駄か。……『A』はこの一キロ先で交戦中の黒のランサーを援護しろ。アーチャーが向かっているようだから、遠距離攻撃には注意が必要だ。『S』はもうじきライダーがここを通るから、足止めを頼む。『B』は……この先の森に人間と思わしき反応があります。もしかしたらどちらかの陣営のマスターかもしれませんので、そちらをお願いします』
「了解だ。───聞いたな、二人とも」
「ああ」
「はい」
紫の仮面の男の確認に、茶色と白の仮面は頷きあう。
「では、これより各自行動を開始する。くれぐれも無理はしないこと。ヤバいと思ったら躊躇わずに脱出用の礼装を使うんだ」
「大丈夫です、『B』。今の私は夜でも三倍を維持できます、相手が何者であろうと遅れは取りませんよ」
「そういうこった。父ちゃんこそ、ドジ踏むなよ」
「自信を持つのは結構だが、油断だけはしないように。あと、『S』はコードネームを使え」
「ラジャー!」
「よし。では散開!!」
おどけたように敬礼を取る白い仮面の男を一瞥し、三人は各々が場所へと掛けていく。
英霊達に匹敵する速度で戦場を駆け抜け、最初に目標地点に到着したのは『S』だった。
前方に見えるは、ホムンクルス達を跳ね飛ばしながら疾走する戦車。
光を纏いながら超音速で迫る相手に、『S』は手にしたハルバードを大きく振りかぶる。
そしてその姿を捉えたライダーもまた、凄絶な笑みを浮かべながら戦車を引く神馬に更なる鞭を入れる。
2人の超人が交差する寸前、『S』は渾身の力を込めて一歩踏み込んだ。
生前でも太陽の加護を受けた兄を上回るといわれた剛力。
英霊となり義体を手に入れた事で更なる強化が成されたそれは、踏みしめた大地を爆砕して次々と鋭利な岩の隆起を生み出す。
自身に襲いかかる大地の怒りさながらの土の牙に目を見開くライダー。
しかし、彼も伊達に歴史に名を残してはいない。
「へっ、おもしれぇ!!」
御者台を下から突き上げられはしたものの神馬に命を下して体勢を立て直し、青銅の槍を手に『S』の頭上から強襲を掛ける。
降り注ぐ青の槍と迎え撃つ銀の斧槍。
甲高い金属音が空気を振るわせた後、ライダーが降り立ったのは愛車ではなく荒れ果てた大地だった。
「よもや、アーチャーの他に俺に傷を負わせる者がいるとはな。貴様もまた神の血を連ねる者か!」
薄く裂かれたわき腹に手を当てながら、英雄殺しの槍をかまえるライダー。
その先に立つ『S』は、切っ先が掠めて血が流れる右腕にも気に留めずにゴキゴキと首を鳴らしてみせる。
「そういや、母ちゃんと婆ちゃんが神だったな。気にしたこと無かったけど」
「やはりそうか! 名を名乗れ、戦士よ!!」
「コードネームでよければ答えてやるよ。『食●んマン』だ」
ゴーレムとホムンクルスの混成軍と竜牙兵が相打つ戦場。
人型をした人在らざる者達が次々に屍を晒す、混沌の釜の中を一人の騎士が駆ける。
白銀の鎧に青色のマントを棚引かせ、手にした炎を宿す聖剣で道を拓く。
顔を覆う茶色の仮面が無ければ、英雄譚の一シーンと見間違うほどの光景である。
並み居る者達を蹴散らして彼が辿り着いたのは、地面に乱立する赤黒い杭の群れと太陽を思わせる灼熱が
そこには互いに槍を手に相打つ2人の英雄があるばかり。
加勢や邪魔をしようとする者達は、ある者は炎によって骨も残らず焼き尽くされ、またある者は極刑の杭によって生きたまま身体を串刺しにされて果てる。
有象無象が立ち入る事は許されない、そこは正しく英雄達の戦場だ。
だがしかし、様子を見ていた『A』の前で、その鉄火場に飛び込まんとする者がいた。
半獣人のごとき女狩人、赤のアーチャーだ。
アーチャーは突き立った杭を足場とすることで燃え盛る地面を避けながら、黒のランサーに向けて矢を放つ。
無数の杭を巧みに操りながら、赤のランサーとアーチャーの猛攻を凌ぐ黒のランサー。
しかし、いかに万に及ぶ魔杭の主とはいえ、英霊二人を相手にしては多勢に無勢は否めない。
まるでヤスリで削り取るかの如く、じりじりと戦況は赤の陣営に傾きつつあった。
「ふむ……。HQからの指令は赤と黒の戦力を拮抗させること。ならば、助力する側は決まりましたね」
そう呟くと、『A』は戦場に向けて足を踏み出した。
数歩の加速でトップスピードまで駆け上がった白銀の騎士は、護国の鬼将へと振り上げられた槍に向けて剣を一閃させる。
刹那に木霊する鋼の悲鳴と、ついで巻き起こる天をも焦がさんばかりに猛り狂う火柱。
押し出される形で火柱から現れたのは赤のランサー。
それに一拍子遅れて、騎士もまた大地を揺らしながら鬼将の傍らに着地する。
「貴様はいったい……」
「ワラキア公王殿。故あって、この場は貴方に助勢させていただきます」
突如として現れた騎士に対しての戸惑いの声は、その快活な返答によって封じられた。
黒のランサー・ヴラド三世は目の前の騎士を知っている。
もちろん、聖杯大戦で知り合ったわけではない。
それどころか、生前の知人にもこのような偉丈夫はいなかっただろう。
ならば、どこで知りえたのか?
それは座にある本体より送られた記憶にある。
数日前にミレニア城砦を訪れた剣士、彼が世界を向こうに回して取り戻した息子の一人がこの騎士であった。
アーサー王に仕えし円卓の騎士達、その中でも武勇に名高い太陽の騎士ガウェイン。
それが眼前の男の真名だ。
「それはそなたの父君の判断か?」
「そう思ってもらって構いません。我々はこちらの目的に利する限り、あなた方に手を貸すでしょう」
騎士の返答に、黒のランサーはその口角を吊り上げた。
思わぬアクシデントで攻撃の要の一つであるセイバーを失ったが、それを補って余りある戦力が補充された。
太陽の騎士もそうだが、あの神域の剣士が味方に付いたのならば戦力差は一気に覆ることだろう。
「我が鎧に刃を立てるとは、その剣もまた太陽の恩恵を受けたものか」
警戒を露にする赤のアーチャーを傍らに、蒼白い肌に袈裟型に刻まれた傷を見つめる赤のランサー。
その言葉を『A』は何の気負いも無く肯定する。
「ご明察です。そう言う貴方もまた、太陽に縁の有る英雄のようですね」
「いかにも。だが、いかに同じ縁を持とうとも、オレの前に立ち塞がるならお前は俺の敵でしかない。その剣の危険性も考慮して、全力で排除させてもらう」
「いいでしょう! ならば、この『あん●んマン』の振るう剣、とくと味わってみるがいい!!」
言葉と共に仮面の騎士は、焔が猛る聖剣を構えるのだった。
ミレニア城砦付近の深い森。
本来ならトゥリファスとこの城を結ぶ道にして認識阻害の結界の源であるこの場所では、現在破壊の暴風が吹き荒れていた。
「ウウウウウウッ! ナアアアァァァァァァァッ!!」
甲高い咆哮と共に身の丈ほどのメイスを振り回す黒のバーサーカー。
爆発的な
しかし、彼女が狙った真の標的は、危なげなく空中へと避難していた。
「いやぁ、さすがはバーサーカー。すごいパワーですね」
そんな破壊の後も気にする事無く、パチパチと手を打ち合わせて賞賛の声を送る少年。
彼の名はシロウ・コトミネ。
聖堂教会から派遣された今回の聖杯戦争の監督役、同時に赤の陣営のマスターでも有る。
彼が敵対する黒のサーヴァントの前にあるのは、当然理由がある。
シロウは知りたかったのだ。
己が抱いた大願が、神に認められるかどうかを。
もし、ここで目の前のバーサーカーに惨殺されたのなら、神は己が抱いた思いを受け入れなかったという事だ。
しかし、この窮状を生きて帰る事ができたならば、それは神がシロウの願いをお認めになったという証に他ならない。
それがあるならば、如何なる犠牲が生じても彼はその大望に向けて動き続けるだろう。
そんなシロウの内心など知ったことではないと言わんばかりに、黒のバーサーカーはさらに猛攻を続ける。
人間風情に舐められているのもそうだが、彼女は目の前の男を倒せばこの戦争の天秤が大きく傾くことを理解していた。
サーヴァントとマスターの関係はバーサーカーでもよく知っている。
目の前の人間を倒せば、赤の陣営に所属するいずれかのサーヴァントを無効化できるのだ。
このチャンスを逃す手は無い。
黒のバーサーカーは自身を呼び出したマスターの少年を気に入っていた。
魔術師らしからぬ常識的な性格と優しさから、つっけんどんながらもこちらとコミュニケーションを取ろうとしてくれたことが、黒のバーサーカーはとても嬉しかった。
生前、生みの親にすら恐れられて捨てられた少女には、そんな不器用な優しさは万の言葉よりもよく効いたのだ。
ユグドミレニアの一族の中で見れば、彼は落ちこぼれかも知れない。
しかし、彼女にとってカウレスという少年は誰よりも優秀で信頼できるマスターなのだ。
だからこそ、バーサーカーは手柄を欲した。
自身の主がしっかりと胸を張れる様に。
しかし、彼女の攻撃は当たらない。
音速を超えるほどの速度を宿した鋼鉄のメイスは、何度振るっても空を切る。
さらには相手が放った投剣をなんとか防いでみれば、こちらが大きく後退してしまうほどの衝撃を受ける始末。
クラス補正である狂気に染まった頭でバーサーカー、フランケンシュタインの花嫁は考える。
これではまるでサーヴァントを相手にしているようではないか、と。
「ナアアアアアァァァァァァァァオオオオォォォォォォォッ!!」
いくら竜牙兵を蹴散らそうとも、肝心の獲物を仕留められない苛立ちからバーサーカーは咆哮をあげる。
だがしかし、怒りによってかえって粗雑となった動きは眼前の少年に対しては逆効果でしかない。
大振りの打ち下ろしをバックステップで躱すと、シロウは一足でバーサーカーの懐へと飛び込んだ。
先程の一撃でメイスが大きく地面にメリ込んだバーサーカーは、シロウの一手に対して攻撃も防御も間に合わない。
「残念ですがここまでです。黒のバーサーカー」
いっそ穏やかな宣言と共に、右手に携えた一刀を突き出すシロウ。
彼の持つ刀は後方で騒いでいる喜劇作家風の男、赤のキャスターの手によってCランク相当の宝具と同じ力を得た業物となっている。
その刃を急所に受ければ、いかにサーヴァントといえど落命は免れない。
だが、その切っ先が純白のドレスに突き刺さることは無かった。
凶刃がバーサーカーの胸元を捉える寸前、闇夜を裂いた銀閃がシロウの手首から先を斬り飛ばしたからだ。
「ぐああっ!?」
突然の事に、赤い飛沫が吹き出る傷口を押さえながら後退する少年神父。
対して、剣戟の主は地面に刺さった刀からシロウの手を剥ぎ取り、堂々と二度、三度と試し振りをしている。
「随分と良い刀じゃないか。そこの坊やには勿体無い代物だな」
「……ッ、何者だ!?」
手傷を負わされたうえに愛刀をダシにバカにされた事が堪えたのか、珍しく声を荒げるシロウ。
だがしかし、振り返った男の顔のあまりの意外性に思わず息を呑んでしまう。
ロングコートを始めとして黒ずくめの服を身に付けたアッシュブロンドの男。
奴が顔を隠すように付けていた面は、シロウの祖国において知らぬ者はいないというほどに有名なアニメの悪役だったからだ。
「……見て分からんのか? 『ばいき●マン』だ」
そう名乗った男は、ちゃっかりと手にした刀、三池典太を懐に収めるのだった。