サバフェスクリア記念として、ニートリアネタです。
いやはや攻略サイトとか見てなかったから、次にレイドボスがでるとは思わなかった。
ぶっちゃけ間に合いません。
水着ジャンヌ・オルタには、宝具1で我慢してもらいましょう。
私事ですが、出雲に旅行に行ってきました。
小ネタの方でデジタル・デビル・ストーリーの二次創作を書いているので、黄泉平坂で伊邪那美様にお祈り。
こんな作品描いてるけど、罰を当てないでね!
……絶許と聞こえたのは気のせいだと思いたい。
現世歴2018年 8月 12日
非常事態です。
ルルハワに蔓延する毒気に当てられたのか、ガレスまでもが本を出すと言い始めました。
即売会開催まであと4日しかないとか、それ以前に隠れヲタがウ=ス異本を出すとか『正気か、貴様!?』とツッコミどころが満載ですが、姪の決意は固いようです。
作品に関しては以前から書き溜めていたようで、あの子の携帯端末には完結した雛型が入っていました。
表題は『ブリテンの影の騎士』
兄上をモデルにした小説なんですが……これって創作じゃないですよね。
登場人物は全員実名ですし、姉上がやらかした事を姉弟の禁断のラブロマンス的に書いてあることと、ロット王の洗脳うんぬんをボカシてるのを除いたらほぼ事実通りです。
どうしてこんなモノを書いたのか? と当人に問いを投げたところ、私の世界のアーサー王伝説において兄上の扱いがあんまりだった事に反感を覚えたと答えが返ってきました
たしかに我々の史実だと、悪魔に獲り付かれて序盤で私の邪魔をするキチな人ですからねぇ。
中盤以降は知らない間にフェードアウトしますし、娘としては許せないと思うのも理解できます。
ここだけの話、ブリテン王国に関わる兄上の功績って私達が意図的に隠した部分が多々あるんですよ。
理由に関しては大小様々なモノがありますけど、一番大きいのは兄上をブリテンの政治に巻き込まないためです。
蛮族に対する防衛戦で敵軍の一翼を一人で壊滅させたことや、本土から移住してきたモン・サン・ミッシェルの巨人討伐をはじめとした領内での幻想種対策など、兄上がブリテンで残した功績は円卓の騎士を大きく上回ります。
これがランスロットやトリスタンのように流浪の騎士であれば円卓に取り立てるだけで事は済んだのですが、兄上は現王である私の異父兄。
これだけの功績が明るみに出れば子供の無かった私の予備としての王位継承者、下手をすれば私に不満を持つ貴族達が対抗馬として担ぎ上げる可能性も少なくありませんでした。
ぶっちゃけ王座になんて未練もクソもありませんが、家族を巻き添えにする形で降りるなんて真っ平御免です。
そも、兄上はブリテンという国の為に動いているわけではありません。
あくまで私個人を助ける為に手を貸してくれていたのです。
そんな兄上を貴族達の神輿にするなど、恩を仇で返すも同然ではありませんか。
だからこそ、私は兄上の功績を闇に葬ったのです。
この辺の事をガレスに話すと『そういう事情があったのですね』と感心して、雛型の改定に乗り出しました。
どうやら、あの子は本気でこれを世に出すつもりのようです。
母上や姉上の教育の賜物か、それとも妖精郷で知り合った
ガレスの文章構成力は下手なラノベ作者よりも上でした。
話の方も当事者が協力しているおかげ(ラブロマンスになったのは姉上の仕込みに違いありません)か、かなりのクオリティに仕上がっています。
しかし、ほとんどノンフィクションなのにオレTueeeeモノのラノベに見えるのは何故なんでしょうね?
あと、この前に見た映画『キングスマン』に影響を受けたのか、主人公である兄上は黒のコートではなくスーツ姿。
さらには言動共に妙に紳士的になってました。
まあフィクションですし、この辺は許容範囲内だと思いますよ、うん。
さて読了した感想ですが、叔母の贔屓目を抜きにしても面白いと思います。
即売会で小説というのは漫画よりも不利になりそうですが、手に取って貰えれば売れることでしょう。
そう感想を告げると、ガレスは嬉しそうに『実は頑張って挿絵も書いたんです!』と、タブレットの画面を向けてきました。
…………あれは何と表現すればいいんでしょうね。
例えるならゲルニカとピカソの絵を悪魔合体させた、『コンゴトモヨロシク』と言いそうな外道絵画と言えばいいのでしょうか?
見ているだけで呪われそうなゴッツイ
次に現れたのは、モッコスと双璧を成す『邪神セイバー』そっくりの絵でした。
ヤヴァイですね、一瞬意識が遠のきました。
あれって絶対に『アルトリア特攻』が付いてましたよ、きっと。
認めたくはありませんが、ここまでくれば目を背けるわけにはいかないでしょう。
どうやら私の姪はアレな意味で画伯だったようです。
私が外道絵画の感想を何とか誤魔化した後、ガレスは兄上達に本を出したいと話を持ちかけました。
その際、全く何も知らない純真無垢なフリをやってのけたガレスは、とてもあざと可愛いと思います。
ウ=ス異本の正体を知らない兄上達は『これも一つの経験』と快諾。
『ブリテンの影の騎士』の出来にも満足した様子でした。
まあ、さすがに姉上とのラヴシーンでは、見た本人から『誰これ?』と言われてましたけど。
あと、ランスロットの描写に関しては悪し様に書き過ぎていると指摘がありました。
親交があった兄上は兎も角、ガレスにしてみれば兄三人を手に掛けた極悪人ですからね。
自然と悪役に書いてしまうのも仕方ないでしょう。
とはいえ、それは読者には関係の無い事です。
往々にして、ランスロットは円卓の騎士、布いてはアーサー王伝説に於いての英雄。
それを悪く書けば、奴を慕う者達から良い感想を得られなくなるでしょう。
作者の感情がどうであれ、その辺は作品から切り離す必要があります。
その後、兄上はランスロットがどういう人間だったかを語り、ガレスもそれを受けて加筆修正を行っていました。
私も読ませてもらいましたが、落としどころとしては悪くないと思います。
さて、本のクオリティを高めていくのはいいのですが、出すとすれば顧客ではなく出店者側で参加する事になります。
しかしながら、即売会など行った事がない我々にはその手のノウハウは全くありません。
兄上達にこういったコネはあるわけがないので、ここは私が動くべきでしょう。
取りあえず、オッキーに相談してみる事にしましょうか。
現世歴2018年 8月 13日
先日、ガレスがウ=ス異本を出すと決意表明したわけですが、その作業に思わぬところから協力者が現れました。
その助っ人の名はアグラヴェイン。
『ブリテンの影の騎士』を読んだあの子は『ブリテンが滅んで久しいのですから、そろそろ父上の功績を世に出してもよいでしょう』とやる気満々。
誤字のチェックや製本時のバランス確認など、全面的にガレスをサポートし始めたのです。
中でも驚いたのは、あの子の絵の才能です。
義体の機能を駆使したとはいえ、絵画と間違うほどの挿絵を描いてみせたのには驚きを隠せませんでした。
というわけで、本格的に作業に入ったガレス達を置いて、私と母上は街へと繰り出しました。
缶詰め確定のあの子達の為に必要なものの買い出しもありますが、オッキーからのアドバイスを参考にサバフェスへ出店側としての参加を申し込む為です。
道中で印刷会社の秘書だという褐色のケモ耳女性を見つけることができた事で、印刷の依頼の発注は済みました。
しかし、会場で運営に問い合わせてみると肝心の出店スペースはすべて埋まっているという返答。
思わぬ事態に母上と二人で肩を落としていると、ホテルへの帰り道で大声で泣いている5歳くらいの子供を見つけました。
黒髪に抜けるような白い肌の女の子で、迷子になったらしく『ととさま、かかさま』と大号泣。
元ニートとはいえ、こんな子供を放っておくほど私は人間が腐っていません。
母上と共に声をかけてアイスキャンディーを与えるなどして慰めていると、雷鳴のような大声と共に土煙を上げて走ってくる影が見えました。
アスファルトを踏み砕きながら現れたのは、2mをゆうに超える長身に全身巌のような筋肉に覆われた男。
間違いありません、第五次聖杯戦争で兄上と矛を交えたバーサーカーことギリシャの大英雄ヘラクレスです。
衝撃波が出そうな勢いで近寄った彼は、女の子の前に止まると感極まった様に抱きしめました。
女の子の方も『ととさま、ととさま』と泣きながらキュッとしがみ付いていたので、人違いの線は無さそうです。
そのあと、娘さんを保護した縁でヘラクレスと話す機会があったのですが、なんと彼は私が体験した第五次聖杯戦争に召喚されたバーサーカーの本霊でした。
なんでも、今回は座で暮らしている妻や子供に家族サービスの為にルルハワへ来たとか。
兄上といいヘラクレスといい、父親とは大変なものですね。
因みに神話では後妻を娶ったと言われていますが、それは後の人々による創作で彼自身は奥さんと死別した後は独身で通したそうです。
そんな彼の死因は自死。
神託に従って12の試練を乗り越えても、彼の心から愛する妻子を手に掛けた自責が消える事はありませんでした。
胸を掻きむしらんばかりの自己嫌悪の中、ヘラクレスはオリュンポスから与えられた栄誉を全て断ります。
これには自分には栄誉など似つかわしくないという自虐の念と、神々の顔に泥を塗る事によって自身に狂気を植え付けたヘラへのささやかな意向返しするという意味があったそうです。
そうして自身に関わる全ての事に始末をつけた彼は、自裁の為に誰もいない荒野でヒュドラの毒を呷りました。
内臓の全てが腐り落ちる地獄など生易しいと言えるほどの苦しみを受け入れた末に命を落とした彼は、人理の意志によって英霊の座へと招かれ、そこでメガラさん達家族と再会したそうです。
神話とは随分と違いますが、あの漢前な姿を見ているとそっちの方が真実であると納得がいきました。
第五次の話題で話していた際も彼は自身のマスターであったイリヤスフィールの安否を気にしていたので、ちゃんと聖杯の呪縛から解き放たれて健康体を取り戻した事を伝えました。
胸のつかえが取れたとこちらに礼を告げるあたり、やはり彼は善人なのでしょう。
そういえば、ホテルを出る際に髭のオタッキーとトリ野郎に絡まれていた親子。
子供の方はイリヤスフィールにそっくりでしたね。
まあ、ご婦人と年端の行かない子供にコスプレを強要していた愚か者二人は、新技『ロンゴミニアド・ハリケーンヒート』で串刺しにしておきましたが。
トリ野郎が『我が王』とか言ってましたが、間違いなく人違いです。
私は王ではありませんし、私の知るトリスタンという名の男は中途退職したので部下ではありません。
なにより、子連れのご婦人に鼻息荒く卑猥な格好を強要する変態など、部下に持った覚えはありませんので。
十分程度の立話を得て、懐で寝息を立て始めた娘さんを抱いたヘラクレスは奥さんたちの下へと戻っていきました。
別れ際に兄上への伝言として『今度はベストコンディションで剣を交えたい』と残して。
実現すれば周辺一帯がグラウンド・ゼロになること間違いなしなので、是非とも止めて欲しいモノです。
ヘラクレスの事は置いておくとして、今はすぐそばにある問題に目を向けましょう。
出店スペースがいっぱいなのは仕方がないとして、このままではガレスが本を売ることが出来ません。
1つだけ手段はありますが、正直なところこれは使いたくはない……。
ぶっちゃけ、最終手段に廻しておきたい代物です。
聞けば、私達の泊まっているホテルはサバフェス出店者も多く滞在しているそうですし、人の好さそうな参加者に委託販売を頼んでみることにしますか。
現世歴2018年 8月 14日
本日、昼頃ですがワイキキビーチが崩壊しました。
主犯は女王メイヴ。
実行犯はヘラクレスとウチの兄、その他大勢です。
事は午前九時に
ガレスの息抜きも兼ねてビーチへと繰り出した私達は、浜辺で行われているとあるイベントに出くわしました。
張られた横断幕には『メイヴちゃん主催 浜辺の女王のキス争奪大チャンバラ大会』と書かれてありました。
それを見た姉上は『メイヴって、あのメイヴ? 相変わらず馬鹿な事をしているわねぇ』と呆れ顔。
チャンバラはともかく、賞品に関しては全く関心の無い兄上もチラリと視線を送って肩をすくめるだけでした。
このまま我々が通り過ぎれば『隣でバカ騒ぎをしてるなぁ』程度で済んだわけですが、二日前に見た『邪神セイバー』の呪いか、そうはいきませんでした。
副賞として、ハワイ最大の遊園地の一日団体無料券が出ると聞いた兄上が、『あそこの費用がタダになれば、もっと色々遊べるよな』と参加を決めてしまったのです。
最初はヤキモチを焼いていた姉上ですが、『ベイブ? 豚のアニメだったっけ?』と素で答えていた兄上に毒気を抜かれたようで、あっさりと矛を収めました。
兄上が色気目的に剣を振るとかありえないでしょう。
あの人、姉上を除けば女性との浮いた噂0%の男ですよ。
百名ほど集まったムサい男どもとは全く別の理由で参戦した兄上でしたが、無料券を狙うのはウチだけではありませんでした。
なんと昨日出会ったヘラクレスも参加を決めていたのです。
言うまでも無く目的は家族サービス。
こういう理由で無料になってもなぁ、とため息をつくメガラ夫人と姉上とは別に子供達は大興奮。
『ヒャッハーーーーッ!!』と奇声を上げてガヘリスまで参加してしまいました。
今大会のルールは、ソフト樹脂の芯にスポンジを巻き付けた模擬武器を使ったバトルロイヤルチャンバラ。
スポンジには赤いインクを沁み込ませており、ヒットすると相手の身体にインクの後が残る仕組みになっています。
そして、胴体・首・頭部にハッキリと跡を付けられたら敗北。
手足に付いたり、上記三か所であっても掠る程度ならセーフだそうです。
武器は剣をはじめ長柄の物も用意されていたのですがヘラクレスに合うものは無く、仕方が無いので彼は持っていたイルカの浮き輪で戦う事になりました。
各々が武器を手にして、後は開始の合図を待つばかりだったわけですが、ここで会場の空気が一変しました。
睨み合う兄上とヘラクレス。
百人以上いた参加者の中に、二人に近づこうとする者はいませんでいた。
まるでドーナツのようにぽっかりと開いた人だかりの中、パッツンパッツンになったアロハシャツを纏ったヘラクレスの背中に『ととさま、がんばれーー!』と娘ちゃんの声援が。
瞬間、大英雄の身体が大きく変化しました。
パンプアップした筋肉で纏っていたアロハシャツは弾け飛び、身体には半神の証拠である赤い痣が浮かび上がります。
そして『北斗の拳』のような効果音を立てて赤いオーラが立ち上り、手にしたイルカの浮き輪は精悍な
その威圧感はまさに暴威。
隣で観戦していた某聖女さんの使い魔であるイルカが、その鯱を見ただけで失神したほどです。
参加者、観客が息を飲む中、声を上げたのはモードレッドでした。
『父上、負けるなーーーー!!』という声援を受けた兄上は、傍らに立ててあった業務用のビーチパラソルへと剣を振るいました。
私の目でも追い切れないほどの鋭い剣閃は、インクの跡も残さないままに鋼鉄製のパラソルの軸を寸断してしまいます。
これには参加者のみならずメイヴもドン引きでした。
安全のためのソフト武器がなんの意味もありません。
というか、スポンジ製の丸い棒でどうやったら鉄が斬れるのでしょうか?
戦慄する私達を他所に鳴り響く開始の合図。
次の瞬間、爆音と共に砂浜に巨大な砂煙が立ち昇りました。
地面から次々と突き出る、牙のような岩壁に吹っ飛ばされる参加者たち。
この惨劇を齎したのは、言うまでも無くヘラクレスです。
開始の合図と同時に浮き輪を地面に叩き付ける事で、砂浜を支える岩盤を叩き割って隆起させたのです。
だがしかし、ウチの兄上も只者ではありません。
突き出る岩盤を足場にすると、一足でヘラクレスへと飛び込みました。
そうして振るわれる一刀は、振り上げられた鯱によって阻まれます。
しかしスポンジとビニールで出来た武器が、岩と金属が咬み合うようなギャリギャリとした音を立てるのは、一体どういうことなのでしょう?
そうして始まった大決戦。
バーサーカーで召喚された際はあっさり倒せたはずなのに、正気を保った彼では勝手が違います。
というか、明らかにバーサーカーより数倍は強いですよ、あれ。
馬鹿げた筋力を卓越した技量で十全に活かし、さらには直感や感覚の鋭敏さは特A級。
かろうじて見えた動きが間違いでなければ、兄上の防御術をパクッてたんですけど!?
『なるほど。受けるではなく、逸らし流すか。これはなかなかに使えそうだ』
『たった三手でこちらの技を真似て見せるとは、大英雄の面目躍如といったところかな?』
『なに、手本が良かっただけの事だ。それに今のままではこの技は猿真似にすぎん。座に戻った際には十分に研鑽させてもらうとするさ』
とりあえず、爆音に紛れてこんな会話が聞こえてきました。
アグラヴェインにあの技ってあんな簡単に盗めるのか聞いたところ、『できるわけないでしょう!?』とキレられてしまいました。
ともかく、流石はヘラクレスといったところでしょうか。
正直、フル装備で行っても勝てる気がしません。
対する兄上は身体能力で数段上を行かれているうえに、技を盗まれているにも関わらず、技量一つで互角にまで持っていってます。
相手もそうですが、こっちも大概おかしいです。
まあ今更ですよね、この辺は。
そして、少し目を離した隙にクー・フーリンに喧嘩を売っている我が甥2号。
『家族が見てるから、手柄無しじゃ帰れねえんだ! つーワケで、その首置いて逝けやぁ!!』
『上等だ! テメエこそ、その心臓置いて逝きやがれ!!』
随分と仲良く殴り合いしてますが、ルール分かってないようですね。
急所に一発食らったら負けですよ。
もう全身真っ赤じゃないですか、二人とも。
脇でも見逃せない戦いが起こっていましたが、その間にもメインイベンターの両者は火花を散らしていました。
海は割れ、地面は爆砕し、そして参加者が次々と星になる。
超絶の強者二人のあまりのガチ具合と広がり続けるビーチの被害に、さすがのメイヴも涙目。
周辺にも影響が出始めた事でギャラリーが避難を始める中、気づけば私の隣にはメカ子改め『謎のヒロインXX』の姿が。
どうしたのか? と聞いてみると、セイバーとフォーリナー反応を検知してやってきたとの答えが返ってきました。
フォーリナーが何なのかは不明ですが、セイバーの事は分かります。
いえ、私じゃありませんよ。
私はただの農作業員、クラスに例えるならファーマーです。
セイバーならあそこでヘラクレスと戦ってるじゃないですか。
ええ、ウチの兄上は現職は『NOUMIN』ですが、生き様は紛れもなくセイバーです。
アレを見て勝てると思うなら、存分に挑戦するといいですよ。
私としてはロンゴミニアドとパワードスーツがぶった切られて、ヘラクレスの一撃で貴女が挽肉になる未来しか見えませんが。
え、なになに?
『あの人からは、最終局面っぽいところで出会った極女将の10倍ヤバい気配がします!』
『というか、あの人って別世界の人ですよね!? 具体的に言うとニトロで+な的な! 他の人は竹内絵なのに、あの人だけ中央東口だし!!』
『あと、あの人の太刀筋からは青セイバーイヂメが大好きなウロブッチーが、脊椎反射で書いたインチキ必殺剣的な臭いがします! あれって、アルトリアな私が関わったら絶対にヒドイ目に遭うじゃないですか!?』
XXの言う事はよく分かりませんが、敵対するとひどい目に遭う事は間違いないと思いますよ。
あと、兄上が別世界の人間とか言い掛かりは止めなさい。
誰彼構わずに竜だと冤罪を吹っ掛けるライダーだって、似たような絵じゃないですか。
XXがメカと同調して泣くという器用な真似を披露している間にも、状況は待ったを掛けません。
天変地異のごとき猛威を振るう二人の戦いは、互いの奥義を放った事で終わりを告げました。
いくら魔力や氣で強化したところでお遊びの模擬剣や浮き輪では二人の全力には耐えられなかったらしく、一手目が合わさった瞬間に爆音を伴って互いの得物は粉砕したのです。
技の威力によって打ち上げられたインクが雨のように降り注ぐ中、全身を真っ赤に染めた二人はニヤリと笑みを浮かべると同時に踵を返しました。
こうして『メイヴちゃん主催 浜辺の女王のキス争奪大チャンバラ大会』は終わりを迎えたワケですが、その代償は少なくありませんでした。
砂の殆どが吹き飛ばされ、クレーターだらけの死の荒野もかくやという光景になったワイキキビーチは使用不能。
当然、その責任は全てメイヴに降りかかることになりました。
彼女は怒れるサクラっぽいサーヴァント相手に『自分は被害者だ』と訴えていましたが、主催者である以上はそんな言葉は通用しません。
その姿には、流石の兄上達も一日優待券を寄越せと言えなかったようです。
メイヴが癇癪を起す前に撤退した方がいいと判断した私達は、彼女が呆然としている間にその場を後にしました。
正直なところ気の毒だと思わなくも無いですが、自業自得なので仕方がありません。
こんなサーヴァントがゴロゴロしている場所で、遊びだとしても武術まがいの大会を開くなど迂闊にもほどがありますから。
余談ですが、シャワーでインクを落とした後に兄上が『同着二位だから優待券は貰えなかったけど、もう一つの賞品はいただかないとな』と言って姉上の唇を奪ってました。
兄上にとって『浜辺の女王』は姉上だったというオチですね。
姉上が顔を真っ赤にして『あわ…あわわ……』と言ってましたが、そういうのは見なかったことにするのが『デキる妹』というものです。
現世歴2018年 8月 15日
明日はサバフェス本番。
ガレスとアグラヴェインは追い込みに入っています。
アグラヴェインは原稿データのチェックに余念がありませんし、ガレスも兄上に剣術の事を聞いています。
イベントは明日ですが、印刷については問題はありません。
私達が依頼した印刷所は因果を逆転する印刷機を使っているらしく、データでも原稿でも物を渡せばその場で印刷が可能だとか。
そういうワケなので、委託販売の相手を見つけるという私の言葉を信じてあの子達は頑張っているワケです。
さて問題の委託販売先ですが、OKが出そうな候補は隣のセイバー組のみ。
委託を受けてもらう立場が贅沢を言うべきではないのは重々承知なのですが、正直気が進みません。
可愛いガレスの初作品が、妄執溢れる『ブリタニア列王記』やあまつさえ『チーターマン攻略本』と一緒に並ぶというのは、叔母としては絶対に避けたいところです。
そんな事を考えながらウロウロと散策していた私は、ホテルのレストランで一人の少女と出会いました。
彼女の名はフジマルリツカ。
衛宮少年によく似た面影を残す彼女は出店側の人間で、聞けばサバフェスも同人も初めてだと言います。
パンケーキを食べながらその事を聞いた瞬間、私のアホ毛にビビッと来ました。
直感は叫びます『彼女なら委託を引き受けてくれる』と。
ダメ元で事情を話してみると、リツカは快く応じてくれました。
『初参加同士、困ったときはお互い様だよ』と言ってくれるリツカに、私は後光を見た様な気がします。
最も頭を悩ませていた案件も解決した私は、足取り軽く部屋に戻ろうとしていたのですが、またしても隣の部屋に引きずり込まれてしまいました。
待っていたのは前回よりも三割増しに修羅場感が増した室内と、死人のような表情をしたセイバーの姿でした。
彼女の要件は『新刊が落ちそうだから手伝ってくれ』と以前と同じ。
違うところは、脅迫ではなく頭を下げて助力を乞うてきた事です。
さて、策を弄されるならば断固とした態度を取ることが出来る私ですが、こうやって真摯に頼まれるのには弱い。
ガレス達の事も気になるけれど、以前の戦友が窮地に立たされているのを黙って見過ごすわけにはいきません。
気づけばメンバーにメディア夫人や夫の葛木氏まで加わっていますし、ここは衛宮家警備隊再結成と行くべきでしょう。
こうして覚悟を決めた私は、ガレス達に事情を説明して手伝えない事を謝罪すると、ジャージに着替えて隣の部屋に舞い戻りました。
残りは原稿用紙にして二十枚ほど。
とはいえ、Web公開版の加筆修正なので一から書くのよりは時間がかかりません。
アイデアを絞り出そうともがき苦しむセイバーとライダー。
リラックス効果のある香を用意してくれる夫人に、誤字脱字のチェックを掛ける葛木氏。
ひたすらに原稿用紙に書き殴られた文字をPCに打ち込んでいく私。
そして、ファミコン版『シャドウ・ゲート』でバンバカ死神の顔を見まくるボブ。
約一名は地獄に突き落としたくなりましたが、往年のチームワークはそのままです。
そうして深夜まで掛かった作業は実を結び、同人のクセに500ページを超える大作『ブリタニア列王記①』は完成しました。
実はこのブリタニア列王記ですが一定の固定ファンがついているらしく、100ギルドルオーバーでも買う人がいるんだとか。
そういう熱心な読者を獲得した事は純粋に凄いと思います。
あと余談ですが、作業中にずっとチーターマンのテーマを流し続けていたボブは絶対に許さない。
おかげで、頭からあの曲が抜けなくなったじゃないですか!
作業中も気が付けば口ずさんだり、勝手に体がリズムを取ったり。
どうしてあんなに中毒性が高いんでしょうか、あの曲。
腹が立つので、これからボブの事を『エイプマン』と呼んでやりましょう。