剣狂い転生漫遊記   作:アキ山

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 6章後半をチマチマやってます。

 妖精騎士ロリスロットの誘惑はなんとか跳ねのけました。

 6周年に水着と物欲を試されるイベントが目白押しなのだ。

 モルガンゲットで底が尽きそうな石をここで使うわけにはいかんのだよ


剣キチが行く人理修復日記(28)

 人理修復記55日目

 

 どうも、世界は斬れないけど次元は斬れて割と満足な剣キチです。

 

 この度第三特異点の修復が無事完了いたしました。

 

 俺がアルケイデスを下した後、虞美人渾身の死の舞踏によってミミ……魔神柱やそのサポートをしていた少女メディアも撃滅され、我等カルデア一行は無事に聖杯を手にすることができた。

 

 その際、少女メディアは魔術王に魔術で敗北したこと、魔術では誰にも奴に勝てない事、そして『だから───星を集めなさい。いくつもの輝く星を』と言い残して消えたらしい。

 

 あ、葛木夫人に『自分だけ素敵な再婚相手見つけやがって……少女趣味や残念なところがバレて愛想をつかされろ!』的な呪詛も残していったんだっけ。

 

 でもってそれを受けた夫人は『もう全部バレてるわ! 宗一郎様がそんな事で愛想をつかすか!』と中指を立てて呪詛をキャンセルしたとか。

 

 というか、過去の自分と争うってどうなんですかねぇ……

 

 ちなみに虞美人がゲットした魔力塊によって項羽殿は無事に受肉を果たし、その際にテンションが上がった彼女は『勝った! 人理修復・完!!』と言い切ってアルゴー号に乗り移っていた全員からツッコミを受けたそうな。

 

 うん、一から百まで項羽殿しか考えていないとか、一周回って感心したわ。

 

 でもって、目的を達した俺達はレイシフト解除に備えて近隣の島に降りたんだが、そこで待っていたのは現地召喚された野良サーヴァントのダビデだった。

 

『のんびりしていたら波に乗り遅れちゃったよ』とまったく悪びれていない彼と話すことしばし。

 

 今までの魔術王の蛮行を聞いた彼は、父親としてそれは本当にソロモンなのかと疑念を口にした。

 

 曰くソロモン王は残酷で悪趣味なロクデナシだけど正直者だから、人類を滅ぼすなんて事は隠れて付き合っていた愛人10人に裏切られるくらいの事が起こらない限り考えもしないんじゃないか、とのこと。

 

 これには育児に興味がなかったとか言ってる割に見るべきところは見ているんだなと少し感心した。

 

 こうしてダビデの話が終わると、タイミングを見計らうように特異点の修復が始まった。

 

『なんだかんだあったけど今回は楽しかったよ。縁があったら一緒に騒ごうじゃないか』 

 

 そういって部下と共に消えたドレイク艦長。

 

『貴方達、人間にしてはなかなか頑張ってたわよ。運が良ければまた顔を見せてあげる。……そこのゲテモノ食いは別だけど』

 

『……またね』

 

 何故か俺にだけ当たりが強いエウリュアレを肩に乗せて一緒に消えたアステリオス君。

 

『そんじゃあ行くな。旦那衆はまた嫁の愛の重さについて相談に乗ってくれよー』

 

『ダーリンひっどーい! そんなの他の人に相談しなくてもいいじゃない!!』

 

 あの軽さとは裏腹に俺達と同類だったオリオンとアルテミス。

 

 機会があったら愚痴でも聞いてやるから、それまで浮気で嫁さんに殺されんなよ。

 

 そんなこんなでダビデを残して俺達はカルデアに帰って来たわけだ。

 

 コフィンから出ると今回は待機要員だった立香ちゃんとマシュ嬢が迎えてくれた。

 

 マシュ嬢の顔色も以前より良くなっていたし、ドクターや医療スタッフと看護師としての勉強をしていた立香ちゃんも表情が明るくなっていた。

 

 ま、訳の分からん魔術なんかより夢に向かって努力する方が精神的にはよっぽどいいわな。

 

 場合によっては立香ちゃん達はレイシフト組から外した方がいいかもしれん。

 

 あ、現地召喚組はちゃんと付いてきていたぞ。

 

 もしかしたら特異点の消滅と同時に契約が切れるかと思っていたから、ダヴィンチちゃん達は一安心だそうだ。

 

 ともかく魔術王の事をはじめ色々と謎も残った人理修復だったが、終わり良ければ総て良しという事にしておこう。 

 

 

人理修復記56日目

 

 

 カルデアに戻ったので一息つきたいところなんだが、アキレウスがウザい。

 

 どうも奴さん、アルケイデスに負けたのがよっぽど気に食わなかったらしく暇を見つけては手合わせをしろと言ってくるのだ。

 

 気持ちは分からんでもないが、戦闘時の天性の勘なんてもので強くなるには英霊のアイツは頭打ちだ。

 

 どっちかと言えば地道に基礎を固めて、高速移動時に繰り出す一つ一つの技の精度を高めた方がよほど腕が上がるだろう。

 

 アキレウスにもそういう風に説明はしたんだが、本人的にはどうも乗り気ではない様子。

 

 曰く『先生のところに居たような地味な事はしたくない』そうだ。

 

 まったく、これだから無駄に才がある奴は嫌なのだ。

 

 天才は一を以て十を知るというが、それは逆に言えば基礎という足場を固める事なく段階を跳び越す形で上に上がるという事だ。

 

 人より理解が早いという事はアドバンテージであり、それが元で慢心だって生まれる。

 

 となれば退屈で地味な素振りや型なんてやりたがるワケがない。

  

 しかし俺から言わせればその地味な基礎こそが肝要なのだ。

 

 ただの刺突や袈裟斬りに胴薙ぎ、そんな基本の技でも幾億と振るって無駄を省き技の精度を高めれば、宝具すら断つ絶技と化す。

 

 世界斬りや次元斬だってそうやって鍛え上げてきたのだ。

 

 まあ、アキレウスは戦士であって武術家じゃない。

 

 奴にとって武は勝利のための道具でしかないのだから、極めるって考えに至らないのは仕方ない事なんだがな。

 

 奴に比べれば己を鍛えて技を習得しようとしていたアルケイデスの方がまだ武術家に近い。

 

 そんなワケで模擬戦でルーマニアの時よろしくボッコボコにしておきました。

 

 だから体幹がブレて技の質が落ちてたら、いくら速くても意味ねーから。

 

 奴さんを鍛えなおすにはケイローン氏を呼ばんといかんかもな。

 

 

人理修復記57日目

 

 虞美人が自称『項羽様との愛の巣』に引き籠って出てこなくなった。

 

 インターホン越しに声を掛けたところ、『人理なんぞの為に項羽様を危険に晒せるか! 私達はここで永遠の蜜月を過ごすのだ!!』と超絶自分勝手な答えが返ってきた。 

 

 いや、向こうの言い分も分かるんだよ。

 

 地球って星の触覚である精霊としては、環境を汚染しまくる人類なんかの為に旦那を戦場に送りたくはないわな。

 

 だが昔の人は言いました。

 

 『働かざる者食うべからず』と。

 

 奴さんも項羽殿も食う必要はないだろうが、二人の愛の巣は所長であるアニムスフィア家の所有物だ。

 

 滞在するとなれば当然家賃という物が発生する。

 

 そんなワケで所長が『宿賃代わりに人理修復手伝えや!』と交渉を持ち掛けたのだが、虞美人は『マリスビリーはいるだけでいいって言った!』と更に拒否の意思を示しおった。

 

 ちなみにマリスビリーとは所長の親父さんで先代のカルデア責任者だ。

 

 虞美人は彼にスカウトされてここに来たらしい。

 

 『お父様が死んだ時点で契約は無効だ!』や『やっぱり人間は汚い! 勝手に滅べ、コンチクショー!』などと何ともアレな押し問答が続いた末に項羽殿の執り成しもあって2回に一回特異点攻略に参加すればいいという形で落ち着いた。

 

 人類の存亡を背負った組織にしては何とも締まらない話だが、雇用関係や労働環境は大切な事だ。

 

 人員を使い捨てするような組織にならない為にもこの辺はしっかりするべきだと思う。

 

 

人理修復記58日目

 

 第三特異点修復から3日。

 

 帰還組も落ち着いたところで恒例となった新戦力召喚を行うことになった。

 

 正直言って現地で召喚しているからエエやんと思ったのだが、今後の事を思えば戦力はいくらあっても困らないという所長の方針から実施に踏み切ったらしい。

 

 決してメデューサの『姉を召喚しろ』という念の籠った視線に耐えかねた訳じゃないとは本人の言である。

 

 そんなワケで今回白羽の矢が立ったマスターは俺と所長に立香ちゃんだった。

 

 子供たちに関してはこれ以上負担を掛けるわけにはいかんので今回は除外。

 

 ニートの方は『今引くとキャスターの私が来るような気がします』と意味不明な理由で拒否って来た。

 

 キャスターって、お前魔術なんか使えんだろうが。

 

 兄はお前が自室で『メドローア』なる魔術を使おうとして、何も出なかったという悲しい場面をしっかり見ているんだぞ。

 

 妹の痴態は胸の中の金庫にそっとしまっておくことにして、なんと今回は俺も聖晶石召喚をしていいというお達しが来た。

 

 ロクデナシしか呼ばないと言われて出禁を食らっていたはずなのに、いったいどういう風の吹き回しだろうか?

 

 そんな疑問も他所に行われた召喚の儀。

 

 まずは立香ちゃん。

 

 彼女が例の長い呪文を唱えると、召喚陣から現れたのは銀の髪に青いバラの意匠が施された肩当て、そして白のビキニ水着を纏い大剣を手に眼鏡を掛けた女性だった。

 

『ブリュンヒルデです。ええと……夏の霊基ということで……普段とは異なるバーサーカークラスです。どうかよろしくお願いいたします、マスター』

 

 彼女は北欧神話に出てくる戦女神の長女ブリュンヒルデだそうな。

 

 しかし夏でもないのに水着で現れる離れ業はさすがの俺達もビックリである。

 

 とはいえ、召喚に応じてくれた英霊であることに変わりはない。

 

 立香ちゃんは『スタイルいいー! 肌白ーい! うらやましいー!!』と大はしゃぎだった。

 

 そんな彼女の背をじっと見つめる清姫嬢の姿を見たような気がしたが……きっと気のせいだろう。

 

 次に所長。

 

 『いい加減私も金枠を引くわ!』と訳の分からん気合と共に召喚陣を回した結果、現れたのはなんとルーマニアの黒のアーチャー・ケイローンだった。

 

 『シャア! オラァッ!』とコロンビアポーズを取る所長を見ながら『そこまで喜んでくれるのなら、召喚に応じた甲斐もあるものです』とにこやかに笑うケイローン。

 

 噂をすれば何とやらを地で行ってしまったワケだが、モードレッドやランサーのガレスとの訓練中にアキレウスに絡まれないのは喜ばしい。

 

 奴の鍛錬は全部師である彼にブン投げることにしょう。

 

 そしてドクターがメチャクチャ嫌な顔をした俺の番である。

 

 初めてだし高ランクのサーヴァントなんかいらんから召喚が成功したらいいやと石を投げると、現れたのは金のセイバークラスを現すセイントグラフ。

 

 そしてそこから現れたのは銀髪に黒の仮面と鎧を付けた偉丈夫だった。

 

『サーヴァント、セイバー。我が真名を───』

 

 召喚陣も消えてこちらへ名乗りを上げようとするセイバーに突然飛び掛かる影。

 

 それは先ほど立香ちゃんが召喚したブリュンヒルデだった。

 

『貴方、貴方……愛おしい貴方、シグルド……』  

 

『我が愛、ブリュンヒルデ! その姿は……』

 

『私にも詳しくは分かりません。何時か何処かでこのような霊基を獲得したのでしょう。ただこの姿の私は普段よりも抑制が効く状態です。愛する貴方へ膨れ上がる殺意の炎を意識することなく、言葉を囁くことができます。寄り添うことも……』

 

『おお……なんという僥倖か。この手でおまえを抱きしめる事が出来ようとは……!』

 

 二人の会話を聞くに彼はブリュンヒルデの夫であり、北欧神話にこの人ありと謳われた戦士シグルドらしい。

 

 しばらくの間二人の世界に入っていた我がサーヴァントは、俺の存在に気が付くとブリュンヒルデを抱きしめながらこう言った。

 

『マスター、貴方に感謝を! 当方がこうして我が愛と寄り添えるのは貴方が召喚してくれたからだ!』

 

 とまあこっちが引くぐらいに信頼度が爆上がりしていた。

 

 聞けばブリュンヒルデはその呪われた運命によってシグルドを殺害し、自身も愛憎と後悔の炎に焼き尽くされたという。

 

 そして英霊になってからもブリュンヒルデは勇者の命を楽園に導くワルキューレの習性とシグルドを殺してしまった逸話によって『シグルドを見ると殺さずにいられない』という厄介な爆弾が備わっていたらしい。

 

 しかし今の彼女は夏の霊基という謎の召喚形式の為、その殺意を自身で抑える事ができるというのだ。

 

 うん、すげえよ水着。

 

 ちなみにこの二人の邂逅を見て立香ちゃんは感動して涙目。

 

 所長の方は『やってらんねーや!』と言わんばかりにヤサぐれてスマホを弄っていた。

 

 ともかく、シグルドも嫁の愛がとっても重い事が判明した。 

 

 今度葛木氏を歓迎する飲み会を開くことだし、彼も誘ってやろうと思う。

 

 

人理修復記59日目

 

 目が覚めるとメッチャファンシーな国にいた。

 

 なんでもこの世界は魔法少女の世界らしく、様々な魔法少女が国を統べて領土の取り合いをしているらしい。

 

 魔法少女なんて子供に夢を持たせる世界観なのに、なんでそんなに殺伐としているのか。

 

 ちなみにこれを教えてくれたのは、16歳くらいに縮んだ姉御……の分霊である魔法少女ロードレス・モルガンだった。

 

 成人した子供がいるのに魔法少女を名乗るとか、俺が少年剣士を自称するのと同じくらいに無理がある。

 

 思わず『おふくろさんが聞いたら泣くぞ』と突っ込んだら、分霊だからいいんだと半泣きで反論された。

 

 さて、姉御がこんな珍妙奇天烈な姿になった理由だが、なんでも俺がこの世界に迷い込んだのを察知した本体が縁を通じて分霊を派遣したらしい。

 

 うーむ、姉御の監視機構ってこういう時に役に立つから侮れない。

 

 ともかくカルデアに帰らんといかん訳だが、モルガンにも帰り道が分からないらしい。 

 

 だったら空間をぶった切ってみるかと思ったのだが、それをすると特異点が崩壊するとモルガンに止められた。

 

 あとここは魔法少女の夢と希望に溢れた世界なのでヴァイオレンスは封じられているらしいのだが……その辺の縛りは斬っておいた。

 

 剣キチから刃物と暴力を奪ったら骨も残らんからな!

 

 

人理修復記60日目

 

 ビスケットのゴーレムやら七色に光る食えそうにないワイバーンをぶった切って進む事一日と少し。

 

 なんか知らんが行き倒れを拾いました。

 

 メッシュのように前髪に白髪が混じった赤銅色の髪に、ところどころ褐色になった肌が特徴のアジア系の少年。

 

 通りかかるのが少し遅れていたら、ワイバーンのおやつになっていたところだ。

 

 モルガンに頼んで治療したところ、目を覚ました彼は衛宮士郎と名乗った。

 

 なんでも冬木市に住む住人らしく、妹を守る為に戦っていたところ、敵に必殺技を食らって気が付いたらここにいたそうな。

 

 ちなみにモルガン曰く彼の身体は色々とヤバい状態にあるらしく、魔術を使うとあっさり死ぬ可能性が高いそうだ。

 

 たしかに氣脈を診てみたところ、経絡のところどころが他人の物に置き換わっているという意味不明な状態になっていた。

 

 変わった場所が親子や兄弟レベルの近しい人間の物のように適合率が高いからよかったものの、これが縁もゆかりもなかったらとっくにあの世逝きである。

 

 士郎君は『自分のやるべきことは全てやったから思い残すことはない』なんて言っていたが、二十にもなっていない若造がそんなセリフを吐くにはまだまだ早い。

 

 そんなワケで彼の延命と新たな生きがいを探すためにカルデアまで連れていくことにした。

 

 なに、カルデアの技術でダメなら妖精郷がある。

 

 前に連絡したら、ニニューさんが何処ぞの漂流物から勇気に反応してエネルギーを生み出すエメラルドを拾ったっていうし、衛宮君は根性がありそうだからそれを使ったら自力で生きられるだろうさ。  


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