世間が日常を取り戻すと仕事って奴は休んでいた分の反動が飛んでくる物なんですね……
執筆時間が全然取れなかったので本当に四苦八苦するハメに……
おかげでレクイエムもラスベガスなんて手も付けてねーや!!
けどいいのです。
私の狙いは第六異聞帯でモル子を引く事なんだから。
その為にも石は貯めておかねば!
人理修復記50日目
この頃海釣りに目覚めた剣キチです。
釣り糸を垂らすと謎のクロマグロとかカツオとかがポンポン釣れるので釣り自体の面白みはあまりないが、海産物を容易にゲットできるのはありがたい。
あまりにも爆釣りするものだから調子に乗って『フィィィィッシュ!!』と叫んでみたら、何故かエミヤに止められた。
なんか顔が引きつっていたけど嫌な思い出でもあったのだろうか?
趣味の話はこの辺にして特異点探索に話を戻そう。
前回、カルデア海賊団に参入したエイリーク氏の手下であるバイキング達。
彼等が作り上げた海図を基に航海を続けていると、とある小島へと辿り着いた。
彼等曰くここには女神と怪物が住んでいるらしい。
またしても女神かと思わず顔をしかめてしまったのだが、ローマの事を考えると女神が特異点の鍵を握っている可能性も十分にある。
そんなワケで探索を開始したところ、島の中央にそびえる岩山の付け根に小さな洞窟を見つけた。
あからさますぎてアレだが、怪しい以上は調べないわけにはいかない。
中に足を踏み入れてみると案の定、俺達を出迎えたのは苔むした岩肌……ではなく石造りの迷宮だった。
この時点でほぼ黒確定という事で『地下迷宮=お宝』と目を$マークに変えているドレイク船長を連れて内部を進むことに。
並みいる獣や骸骨などの先住民を薙ぎ倒して歩を進めていると、牛を模した鉄仮面を付けた巨漢が現れた。
ぱっと見、フィジカルだけで喧嘩しそうな力自慢だったので他のサーヴァントに任せようと思っていたのだが、直感がパワーファイターとの戦いに磨きを掛けるべしと囁いて来たので予定を変更。
手合わせする事に相成った。
襲い掛かって来た牛仮面君だが、たしかに身体能力は目を見張るものがある。
ハルバード二刀流となんて馬鹿げた戦闘スタイルから分かる様に、その剛力は聖なる数字を発動したガウェインを上回りガヘリスに迫るものがあるだろう。
しかし、それに反して技量の方がまったく話にならない。
力任せに武器を振り回す様は、はっきりいって癇癪起こして暴れまわる子供レベルだ。
その気になればあっさりとバラバラにできたのだが、奴が女神の身内である可能性を思うとそうもいかない。
万が一にも女神がこの特異点攻略に密接な関わりがあった場合、協力を得られないと詰んだも同然だからだ。
そうでなくても、ウチの姉御のように女神は自分のお気に入りを傷つけられると、そりゃあもうエゲツない返しをカマしてくるもの。
当然ながらそんな物を食らうのはノーサンキューである。
そんなワケで雄たけびを上げて牛仮面がハルバードを振り上げた隙に、額を貫光迅雷でコンと突いておいた。
傍からは鞘の先で軽く押しただけに見えるだろうが侮ることなかれ。
その実態は浸透勁を応用した一手で、刀身に込もる内勁を相手の防御ガン無視で体内へ叩き込む荒業なのだ。
喰らった牛仮面君は頭の中身を大幅に揺さぶられた事で、脳震盪を起こして床へと倒れ伏した。
英霊だろうが半人半魔だろうが、生物の形を取っている以上は急所に大きな差異などない。
人に通用する技法ならわりかし徹るものなのだ。
だからアルトリアよ、指さして人をエゲツないとか言わないように。
これでも命までは奪わない有情の剣でございます。
まあ、力加減間違えると脳の損傷で一生ものの障害が残るけどね。
そうして地面に這いつくばった牛仮面だが、気を失うことなく外れた仮面の下からあどけない顔を覗かせてこちらを睨んでいた。
さっきの一撃は意識を刈り取るには十分な勁を込めていたので、これにはわりと驚いた。
とはいえ頭部へのダメージが足に来ていて、とても戦える状態では無かったけど。
地面に這いつくばりながらも痙攣する身体に無理やり喝を入れて『……まも…る』と呟く巨漢と、鞘に入れた剣を肩に担ぐ余裕しゃくしゃくのヤクザ。
第三者に見られたら誤解されること間違いなしである。
その様子に『おーおー! どっからどう見ても旦那がボス敵だな。その悪っぷりには相棒を思い出すぜ!』とアンリ・マユがケタケタと笑っていた。
まったく、我がサーヴァントながら失礼極まりない。
子供達が真に受けたらどうしてくれるのか。
問題児のリアクションは兎も角として、わざわざ生かして無力化したのだから白旗を上げてくれないとこちらが困る。
どうしたものかと対応に苦慮していると、牛仮面の背後から小柄な影が飛び出してきた。
『わかった、わかったわよ! 私がついて行けばいいんでしょ!! 煮るなり焼くなり好きにすればいいわ!』と叫びながら牛仮面を庇ったのは、なんと第二特異点で出会ったステンノ神。
『何回も出てきて恥ずかしくないんですか?』という脳内に浮かんだ謎のセリフを黙殺して呼びかけてみると『私は
先ほどのセリフを聞くに、何やら多大な誤解があるようなので所長の提案で矛を収めて話し合う事に。
まずステンノ神とエウリュアレ神だが、彼女達はゴルゴーン三姉妹の内の長女と次女であり人間でいう所の双子のようなモノらしい。
ちなみに末の妹はかの有名なメドゥーサである。
次にエウリュアレ神がこの迷宮にいる理由だが、彼女が言うには非常にキモいロリコンの変態に追われて逃げ込んだとのこと。
何とか奴の魔の手から逃れてこの島に辿り着いたものの、隠れる為に飛び込んだ洞窟は牛仮面ことアステリオス君のテリトリーだった。
彼はギリシャ神話で有名な怪物ミノタウロスで(アステリオスが本名でミノタウロスは蔑称である)洞窟の中が迷宮化されていたのは彼の宝具の仕業だそうな。
そういった経緯で彼女から事情を聴いたアステリオス君は、エウリュアレ神を匿う事に決めて洞窟の侵入者を撃退する守護者を務めることに。
そこに俺達が乗り込んで来たので、アステリオス君が襲って来たというワケだ。
さて何故俺が彼の事を『アステリオス君』と呼んでいるのかだが、彼は体は大きいものの中身はほぼ子供だったからだ。
エウリュアレ神曰く、頭脳と精神年齢はだいたい5歳児前後とのこと。
つまり俺がやった事は完全にイジメだったわけだ。
それが発覚した時のアタランテの視線はまさに人間のクズを見るものだった。
俺が即座に彼へ謝ったのは言うまでもない。
話合いは紆余曲折あったものの、俺達はエウリュアレ神とアステリオス君を保護するという事で落ち着いた。
エウリュアレ神は乗り気じゃなかったようだが、ウチの女性陣が『変態に狙われている女の子を放ってはおけない!』と半ば強引に話を纏めてしまったのだ。
この島の噂を聞いた時点で女神の保護は決定事項だったので別に構わないんだが、ワガママそうなエウリュアレ神にまったく口を挟ませないで説得するとは恐るべき圧力である。
これはちょっとした余談なのだが、ウチのメンバーの中で唯一エウリュアレ神の名前を呼べない者がいた。
そう、ミユちゃんである。
どうも古代ギリシャの独特な発音がまだ舌足らずな彼女には難しいらしい。
いつの間にやら仲良くなったアステリオス君と発音練習したものの……
雷光『えうりゅあれ』
末娘『えうにゅあね……』
雷光『ちょっとちがう えうりゅあれ』
末娘『えうにゅあにぇ……』
とまあ、こんな感じだった。
うん、慣れないとギリシャ系の呼び名って難しいよね。
何度やってもうまく行かずミユちゃんが自分の不甲斐なさに泣きそうになっていたところ、それを見ていたモードレッドが『名前が難しかったら、あだ名で呼べばいいんだぞ!』と助け舟を出した。
そのアドバイスを受けてミユちゃんが捻り出したあだ名は『エウエウさま』
喜び勇んで呼びに行ったのだが、当のエウリュアレ神には不満だったようで『なによ その呼び方は!』とほっぺたをモチモチされてしまった。
こちらとしては娘の努力を買ってほしいところだが、名前に関する事なので無理強いするのも憚られる
頑張れミユちゃん! むこうは言うほど嫌がってないみたいだぞ!!
人理修復記51日目
アステリオス君の迷宮から出ると陽が落ちていたので、昨夜はこの島で一泊する事となった。
その際にエウリュアレ神から『ステンノと出会って何をしたのか?』と問われたので、新鮮なキメラ肉をくれたいい人だと答えておいた。
ちゃんとおすそ分けまでしたと言うと、何故か怒り出すエウリュアレ神。
魔獣肉をゲテモノ料理と見なしている彼女は、姉に食わせた事がお気に召さないようだった。
だがしかし、天然物のキメラの美味さを知る身としては『はい、そうですか』と謝罪するわけにはいかん。
文句があるなら実食してからにしろと言えば、むこうも『私に美味しいと言わせたら、あのふざけた呼び方を認めてあげるわ!』と言い返すエウリュアレ神。
場の勢いで妙な話になってしまったが、こちらも魔獣食に関しては浅からぬ経験がある。
たとえ女神が相手でも引くわけにはいかない。
そんなワケでエミヤを助手にしてキメラ肉を調理。
それを食べたエウリュアレ神は『こんなの、大したことないわよ!』などと言っていたが、完全に蕩けた顔では説得力なんて欠片も無い。
さすがは天然物のキメラ肉、余裕の大勝利である。
そんなワケで子供達限定で『エウエウさま』呼びが解禁となった。
ノリで俺もそう呼んでみたら、マリリン・マンソンみたいな表情で『殺すわよ』と言われてしまったが。
こちらに誤算があったとすれば、食物絶対コロスマシーンと化した愚妹、リリイ、アステリオス君によって半頭分ほど残っていた肉が全て喰われてしまった事か。
干して保存食にするつもりだったのに無念である。
昨夜の夕食の話はこのくらいにして、今日あった事に移ろう。
島のレイラインを利用してカルデアとのポートを築いた俺達は医薬品等の必要な物資の補給を行った。
物資の補給が済んで一息ついていると、ダヴィンチちゃんからある実験の提案があった。
その実験とはマシュ嬢の盾を介さず、なおかつ特異点で英霊召喚が可能かどうかというモノだ。
カルデアの召喚式はマシュ嬢の盾が必要不可欠であるため、通常ならばこんな事は出来ない。
しかし、ここにはグンヒルドさんというカルデアスタッフよりも魔術に明るい者がいる。
あまり考えたくはないが、先の事を思えばマシュ嬢の離脱や戦力の現地調達が必要となる場面が無いとは言えない。
そんな最悪の状態に陥った際に出たとこ勝負に掛けるより、ここで予行練習を行って可能か不可能かを確かめておいた方がいいと言うのだ。
そういうワケでカルデア初の試みとなった現地での英霊召喚。
参加したのは自力で英霊を保有できる魔力の所持者という事で俺とアルトリア、そしてグンヒルドさんとなった。
言うまでもないが子供達は体の負担の関係上アウトである。
さて、今回は令呪を媒介とするものの既存の召喚式とは別手段で呼び出すために、カルデア本部に戻るまでは電力による魔力のバックアップは受けられない。
故に自力で英霊を維持しながらも戦闘が可能な人間しかマスターになれないのだ。
今までの召喚よりもかなり魔力を持っていかれたが結果は無事に成功。
三騎のサーヴァントを仲間に引き入れる事に成功した。
でもって呼び出したサーヴァントの内訳はこうである。
グンヒルドさんはキャスター・葛木メディア。
何故かどう見ても現代人なスーツ姿の只者ではない旦那様とニコイチ召喚だった。
旦那様の名前は宗一郎、どう聞いても日本人である。
いったいどういう事なのか?
気になったので事情を訊ねてみると、彼女達は第五次聖杯戦争でマスターとサーヴァントとして出会ったらしい。
でもって宗一郎氏に一目ぼれしたメディア女史が魔術の秘匿とかそういった自重を一切合切投げ捨てて全力全開した結果、見事聖杯戦争を優勝。
詳しい手段は聞いてないけど、反則召喚したアサシンを生贄にセイバー・ランサー・アーチャーのマスターから令呪を奪取して、残りの勢力を火力で圧し潰したらしい。
そして例によって呪われていた聖杯から姉御のように魔力のみを抽出して受肉を果たした彼女は、子宝には恵まれなかったものの夫婦として最後まで添い遂げたんだそうな。
宗一郎氏とニコイチになった理由は、40年に及ぶ夫婦生活の中でせっせと拵えていたトンデモ術式を使って天寿を全うした彼を自身の宝具として座へと持ち帰ったからなんだとさ。
ちなみにここまで聞いた時点で俺・項羽殿・エイリーク氏は自然とアイコンタクトを取っていた。
一同の頭によぎった感想は『この人、ウチの嫁さんと同類や』だった。
宗一郎氏は後で『嫁の愛が重い同盟』に勧誘しておこう。
如何に愛する嫁さんでも、偶には愚痴の一つも吐きたい時があるだろうからな。
余談だがこのメディア女史、グンヒルドさんや姉御が所属する魔女ネットワークの一人らしい。
妊娠中の姉御がプラモにハマったのも、彼女が暇つぶしにボトルシップを勧めたのが原因だそうな
さて次にアルトリアだが、出てきたのは紫の髪に眼帯を付けたモデル風の美女だ。
彼女を見た瞬間に『ゲェ!? ライダー!』と驚く妹とニヤリと笑うエウリュアレ神。
『セイバーが私を呼び出したマスター、そして仲間にキャスターですか……。ずいぶんと妙な話になってますね』と物憂げに溜息を吐く彼女。
しかしそんな余裕も数秒と持たなかった。
『来るのが遅いのよ、駄メドゥーサ!』とエウリュアレ神がローキックをかました事で、あっという間に怯えるチワワのように挙動不審になってしまったからだ。
このセリフから分かる様に彼女の真名はメドゥーサ、ゴルゴン三姉妹の末娘である。
アルトリアやメディア女史と面識があるのは、彼女もまた第五次聖杯戦争に参加した経験があるからだそうな。
その後はマスターそっちのけで髪の毛を引っ張られながらエウリュアレ神の苦労話を聞かされる事となった彼女だが、なんか本人も幸せそうだしアレが彼女達のスキンシップなのだろう。
後で判明した事だが、メドゥーサが呼び出されたのは召喚陣の中にエウリュアレ神の髪の毛が入っていたかららしい。
なるほど、そりゃあ最高の触媒になるわ。
なんだかんだと妙な騒ぎになっていたが、一番シャレにならなかったのは俺の召喚だった。
何故なら呼び出した英霊がいきなり襲い掛かって来たからだ。
俺の召喚に応じたのは、なんとギリシャ最速の英雄アキレウス。
どうも奴はルーマニアの記憶があったようで、出てきた瞬間に『こうも早く雪辱の機会が巡ってくるとはな! さあ殺し合おうじゃないかっ!!』といきなり大反逆をブチかましてきたのだ。
まあ、セイントグラフが出た時点で敵『意』バリバリだったので、こっちも冷静に波濤任櫂で攻撃を捌いてから臥龍尾でカウンターを取ったんだけどな。
でもって令呪で正座させて事情を聴いてみれば、なんか召喚される際に向こう側から俺の姿を見て『リベンジの機会がキター!!』と荒ぶったらしい。
所長はヒステリックに『自害させなさい! 自害!!』と叫んでいたが、俺にはそんな気は毛頭ない。
言うまでもなくアキレウスは超強力な英霊だ。
人理修復という難関を乗り越える為には切り捨てるなど愚行以外の何物でもないだろう。
幸い奴もこちらがマスターだと理解したようで『しゃあない、今回は諦めるか』と戦意を引っ込めてるしな。
こういう根っからの戦士は敵と言う名のエサを与えておけば、あまり問題行動は起こさないもんだ。
万が一妙な駄々をコネたとしても、模擬戦でしばき倒せば大体の不満は吹っ飛ぶだろうし。
紆余曲折あったが戦力増強はうまく行った。
これで聖杯探索がうまく行けばいいが……
◆
どうも、目の前で起きている状況に困惑している剣キチです。
魔術王の聖杯探索の為に再び出航した俺達なんだが、エウリュアレ神と出会った島を離れてすぐに海賊団の襲撃を受けた。
それだけなら何の問題も無いんだが……むこうの首魁が人間的にあまりにもアレ過ぎた。
「デュフフフフ……エウリュアレちゃん、お待たせしましたぞ」
信じられるだろうか。
このセリフを吐いているのは、船長服を着た髭モジャのむさ苦しいおっさんなのである。
あれがカリブ海を荒らしまわった大海賊『黒髭』エドワード・ティーチだというのだから、英霊の伝承ってのはアテにならない。
「さて、おそらく同属性であろうオッキーさんと妹よ。アレを見てどう思う?」
「なんというか、わざとっぽいですね」
「うん、ヲタクって基本的に外じゃ一般人に擬態するからね。あんな風にひけらかすのは普通は仲間うちだけ、英霊なんて陽キャの前であんな態度を取るのは油断を誘う為のフリだよ」
さすが自他ともに認めるヒキニート、分析が正確過ぎである。
とはいえ普通の英霊はそんな物見抜けるわけがない。
「お前がエウエウさまを狙う悪者だなー!」
「エウエウさまをいじめるなー!!」
「くっ、この呼び名を受け入れるしかないなんて……」
「下姉様、あの呼び名は?」
「いらない事を詮索するんじゃないわよ、駄メドゥーサ!!」
「えうりゅあれ、まもる……」
何故懐いたのかは不明だが、エウリュアレ神を庇おうと彼女の前に立ちはだかるミユちゃんとモードレッド。
そしてアステリオス君はそんな子供達の盾になってくれている。
「うっひょおおっ! 新たなロリ発見ですぞ!! さすがにエウリュアレちゃんには及ばないものの、十二分にかわ───あっぶねぇっ!?」
モードレッドを卑猥な目で見ていた黒髭が飛び退くと、一瞬前まで奴がいた場所の背後にあるマストが吹っ飛んだ。
ふむ、外れたか。
ニニューさん謹製とはいえネタ兵器だしな、命中性能に難があるのは致し方ないだろう。
「…………おい、マスター。そのバケモノみたいな銃はなんだ?」
「対デウスマキナ用アーマードマグナム。制作者曰く、青銅巨人タロスの頭もブチ抜けるらしい」
俺に言葉に問いを投げてきたアキレウスの顔が引きつる。
威力は凄いんだけど弾頭に水晶蜘蛛の甲殻を使ってるから単発式だし、何より反動が凄い。
俺みたいに内勁で身体強化でもしてない限りは、筋肉もりもりマッチョマンの変態にしか扱えない代物だ。
「なんつーモン、ぶっ放してきやがる!?」
「人の娘を舐めるように見てる変態がいたんでな、礼として額でタバコを吸う方法を教えてやろうと思ったんだ」
「ふざけんな! そんなモン喰らったら額どころか全身ミンチになるわ!!」
涙目で抗議の声を上げる黒髭。
「黙れ、キモヲタ。兄上が撃たなかったら私が『汚物は消毒ですよ・ダブルカリバー』をぶっ放してるところです」
「まったくだ。子供達を性的な目で見るとは人間の風上にも置けん。これ以上モードレッド達に不埒な視線を向けるなら、その目を抉り飛ばすぞ」
「つーか叔父上、撃つなら声を掛けてくれよ。そうすりゃ船ごと消し飛ばしてやったのに」
「やめてよ、モーさん。そんなことしたら、アイツをブン殴れないじゃない」
「そうです! 騎士として、なによりお姉ちゃんとして! ああいう不埒な輩は槍で串刺しにすべきです!!」
それぞれ武器を構えながらもの凄い形相で前に出る保護者ガチ勢のサーヴァント達。
ちなみにブーディカさんはアステリオス君の後ろで二人を抱き抱えてます。
「ちょっと待って! そちら、いったい何騎サーヴァントいるでござるか!?」
「割とたくさん。こっちはマスターが6人いるからな」
あっけらかんと返してやると、黒髭の顔が盛大に引きつった。
「なんというチート!? だが拙者は諦めないでござるよ。ああいうチーターは最後には正規プレイヤーに敗れるのが世の定め! というワケで出ませぃ、ブラッド・アクス。キング!!」
「■■■■■■っ!?」
黒髭の指示に雄たけびを上げて飛び出してくるバーサーカー。
その瞬間、こちら側の空気が凍結した。
「そうか…貴様か……。空蝉とはいえ我が旦那様を隷属させているのは……」
顔を俯かせ、全身に鬼氣を纏わせながら一団の先頭へと歩み出たのはグンヒルドさんだ。
「何か言ったでござるかぁ? 全く聞こえないでござるよ、B・B・A!」
俺達ですら思わず距離を取る程に危険状態な彼女に更なる燃料を投下する黒髭。
その瞬間、俺はたしかに奴の背後でニヤリと笑う死神を見た。