剣狂い転生漫遊記   作:アキ山

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 お待たせしました、最新話完成です。

 ようやく人理修復に戻ってきましたが、久々なので中々に苦戦しました。

 おさらいしたオケアノスのシナリオはかなりのボリュームなので、上手く表現できればいいのですが……。

 FGOも新たなコラボが秒読みですし、色々と楽しみです。
 


剣キチが行く人理修復日記(22)

 人理修復記47日目

 

 

 そんなワケでやって来ました第三特異点。

 

 眼前に広がる巨大な水平線を見て子供達は『う~~~~~み~~~~~~!!』と大はしゃぎ。

 

 モードレッドもミユちゃんも海を見るのは初めてではないけれど、打ち寄せる波と何処までも広がる海面を見ればテンションが上がるのは仕方がない。

 

 さて、今回のメンツだが立香ちゃんが欠員になっている。

 

 なんでも人理修復が終わった後に待つ看護大への入学試験の勉強と、マシュ嬢に休養を取らせたいそうな。

 

 所長は盛大に愚痴っていたが俺的には大いに賛同する。

 

 彼女は数合わせの一般人枠だというし、この業界には元より未練など無いのだろう。

 

 ならば自分の掲げた目標の為に努力するのは当たり前である。

 

 それに実戦経験がほぼ無いにも拘わらず、前線に立ち続けたマシュ嬢も疲労が蓄積しているだろう。

 

 彼女は立香ちゃんの最後の盾なのだから、ここらでリフレッシュさせるのは必須と思われる。

 

 今まで力を振るってきたクー・フーリンやジークフリートが抜けるのは痛いが、この辺は俺達が頑張ればフォローも不可能ではない。

 

 その代わりに所長と虞美人も参加しているのだ。

 

 なんとかなるだろうさ。

 

 ……まあ、虞美人ははた目から見ても分かるくらいにやる気が無いのだが、普段から彼女は人間嫌いを公言しているのでこの辺は仕方がない。

 

 いざとなったら『働かざる者食うべからず』理論を使うか、項羽殿に頼めば動いてくれるだろうさ。

 

 そんな感じで始まったオケアノスだが、やはり着いた早々に厄介事が待っていた。

 

 俺達がレイシフトで現れたのは、なんと海賊船の上だったのだ。

 

 当然甲板の上にいた海賊たちに取り囲まれるハメに。

 

 強面の野郎に囲まれた程度で泣くほどウチの子はヤワではないが、親として放っておくなど論外だ。

 

 『まずはチビ共! お前達は奴等への人質だ!』と海賊の一人がモードレッドに手を伸ばした時、俺達の中から猛スピードで飛び出した影があった。

 

 それは俺のランサーこと並行世界のガレスだった。

 

 モーさんと違って素直で甘えん坊のモードレッドに骨抜きにされた彼女は『私の可愛い妹に何しやがるですッッ!!』と件の賊へと全力ブチかましを慣行。

 

 最初の一人がダンプカーにでも轢かれたかの勢いで吹っ飛ぶと、それに続いてお子様ガチ勢であるアタランテとマルタ女史が続く。

 

 女傑三人の前では海の荒くれ者も形無しだったようで、あっという間にボコボコにされて甲板に沈む海賊たち。

 

 その間に俺達もチョチョイのチョイと海賊共の相手をしていた。

 

 所長から『交渉の余地があるかもだから殺しはダメ』と指示が有ったので五体満足で転がしたのだが、女傑たちの戦いにほとんどのヤツが腰が引けていたから楽だった。

 

 そんなワケであっさりと制圧して海賊船を支配下に置いた俺達は、奴等が補給のアテにしていた海賊島という場所に向かう事に。

 

 とはいえカルデア海賊団に入った奴等も他の同業者から聞いた場所なので、当然ながら島には先客がいた。

 

 こちらを見つけるなり、何故か『ヒャッハー!』と声をあげて襲い掛かって来る海賊たち。

 

 エイリーク氏曰く『海賊の習性』だそうなのだが、彼我の戦力差も見抜けずにこんな事をしてたらアッサリ死ぬと思うんだが。

 

 先ほどと同じくチャチャッと返り討ちにして情報を絞り出したところ、この辺りに詳しい人物として意外な人物を紹介された。

 

 その名はフランシス・ドレイク。

 

 世界一周を生きたまま成し遂げた人類最初の偉人だ。

 

 なるほど、確かにそんな人物ならこの海原だらけの特異点を知っていてもおかしくない。

 

 そんなワケで出会ったドレイクだが、いつものと言うべきか伝説と違って女だった。

 

 まあ、この辺は今更なのでツッコんだところで仕方がない。

 

 とりあえず『話を聞いてほしけりゃ力づくで来な!』という海賊式コミュニケーションを持ち掛けられたので、俺が発勁(甘口)でKOしておいた。

 

 そんなアンティークなハンドガンでは、ガトリングすら征した俺を止める事は出来ませぬ。

 

 さてドレイク船長の話だが特異点と言う事もあって、彼女もここが何処か分からないらしい。

 

 『それなのにどんちゃん騒ぎをしていたのか!?』と所長は憤っていたが、悪党なんざ大体は明日をも知れ無い身なのだ。

 

 刹那的に生きるのは当たり前と言える。

 

 あとドレイク船長はサーヴァントではなく生身の人間で、しかも特異点の要じゃないマジ物の聖杯を持っていた。

 

 まあ、本人はまったくその価値を分かっていない様で、景気づけと言ってラム酒を飲む杯代わりにしていたが。

 

 その後はドレイク海賊団が俺達の仲間になった記念にどんちゃん騒ぎへともつれ込んだので、それ以上の話は聞けなかった。

 

 子供達の面倒をブーディカ女史達に任せるのも申し訳が無いし、船長の話に出ていたサーヴァントと思われる『大砲を食らっても死なない人間』とやらの警戒もグンヒルドさんが買って出てくれた。

 

 そんなワケで今日は早い目に眠らせてもらう事にしよう。

 

 ミユちゃん、モードレッド! 久しぶりに一緒に寝るぞー!

 

 

 人理修復記48日目

 

 

 第三特異点探索の為にドレイク船長の船で大海原へと漕ぎだしたのだが、そんな俺達を待っていたのは容赦のない襲撃だった。

 

 うん、相手は敵に回ったサーヴァントなのかって?

 

 生憎とそんな良いモノじゃない。

 

 俺達に牙を剥いたのはこの特異点に生きる自然の驚異、具体的に言うとカツオの大群だった。

 

『カツオだぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?』

 

『上から来るぞ! 気を付けろ!!』

 

『このヤロウッッ!!』 

 

『せっかくだからオレはモドリの方を選ぶぜッ!!』

 

 こんな具合で船は大混乱。

 

 水面から天空高く跳ねては、甲板めがけて頭から突っ込んでくる『カツオ・ミサイル』に船員たちは次々と吹っ飛ばされていった。

 

 この何ともカオスな状況に子供達や所長を避難させようとしていたのだが、この時俺は聞き逃せない情報を耳にした。

 

 あのカツオ、オケアノスでも指折りの美味だというのだ。

 

 今回の特異点の攻略に当たっては二つの目的がある。

 

 それは聖杯の確保と新鮮な海産物を子供達に味わってもらう事だ。

 

 ならばこの機を逃す手などありはしない。

 

 同じく話を聞いていたエミヤが藁焼き用の三叉串を用意している間に、降ってくるカツオを貫光迅雷(血抜きバージョン)で仕留めては手摺やマストを張るロープなどに次々と吊るしていく俺。

 

 魚は鮮度が命。

 

 素早く〆て身を冷やさねば美味しくいただけない。

 

 そうやって降り注ぐ海産物を仕留めていくことしばし、襲撃も止んで血抜きが終わった頃には船の甲板はカツオの血に塗れていた。

 

 ドレイク船長は『生臭ぇ!!』と怒っていたが、美味い魚を食う代価と思って我慢してほしい。

 

 流石に船上でタタキを作る訳にはいかないので夕食は刺身となったのだが、出されたカツオは脂の乗りも良く濃厚でいてサッパリと後味で本当に美味かった。

 

 娘達も舌鼓を打っていた事だし、今回の収穫に関しては余は満足である。

 

 

 人理修復記49日目

 

 

 女性陣から塩水で髪や肌がベタ付くとクレームが有ったので、携帯バスことドラム缶風呂を使用する事に。

 

 例のミニチュア大浴場を使っても良かったんだが、風呂に入っている間に先日のような襲撃があってはさすがに拙いので、今回は使用を見送ったのだ。

 

 そんなワケで用意していると、今度はエイリーク氏や船長から水が勿体ないと物言いがついてしまった。

 

 たしかに海の専門家の意見は貴重だが、俺としても病気の心配もあるので娘達には清潔でいてほしい。

 

 そこで水問題を解決すべく、汲み上げた海水から塩分の因果を断つという方法を実行。

 

 その結果、ドラム缶に貯められた海水は全て真水へと変化し、俺達は水不足に悩まされる事は無くなった。

 

 船長からは海神の化身か何かかと問われたが、神様は嫁さんの方でこっちはただの剣士である。

 

 心配されていた船員による覗きに関しても俺とエイリーク氏、そして項羽殿がグラサンをハメて得物を構えながら見張りに立ったお蔭でゼロだった。

 

 俺は娘と妹、エイリーク氏達は嫁さんが入っているのだ。

 

 他のメンツとは気合の入り様が違う。

 

 たとえ荒くれ者でも容易に近づく事はできなかったのだろうさ。

 

 身体がサッパリしたところで、今度はロマン医師から提示されたサーヴァント反応がある島に向こう事になった。

 

 お宝の匂いがするという船長の勘に任せていると、森の中で古びた石板を発見。

 

 そこには『一度は眠りし血斧王、再びここに蘇る』と書いてあった。

 

 全員の目がエイリーク氏に向いたのだが、当然ながら本人は何の事やらサッパリの様子。

 

 グンヒルドさんにも聞いてみたが、今回は彼女の仕業では無いそうな。

 

 じゃあいったいどういう事かと首を傾げていると、石板を核にしてバイキングの亡霊が現れ始めた。

 

 エイリーク氏の反応を見るに、どうやら奴等は生前の部下だった模様。

 

 こちらに襲い掛かって来るかと思いきや、エイリーク氏とグンヒルドさんの一喝によって亡霊達はあっさりと平伏の姿勢を取った。

 

 この際、奴等がグンヒルドさんの声の方に震え上がっていたのは見なかった事にしたい。

 

 取り合えず状況が落ち着いたので何故に奴等がこんな所にいたのかを確かめていると、今度は反応が確認されていたサーヴァントは現れた。

 

 そのサーヴァントとは他でもない、別な形で召喚されたバーサーカー・エイリークだった。

 

 両目を充血させた狂化モードで殺気をまき散らすバーサーカーに、あの姿は久々に見るなぁなどと思っていると奴の前にエイリーク氏が立ちはだかった。

 

 狂化によって理性を引き換えに能力を引き上げたバーサーカー相手では、受肉したとはいえエイリーク氏が不利と所長は叫んだが、生憎とそうはならなかった。

 

 力任せに斧を振り回すバーサーカーとは違い、エイリーク氏は終始冷静に相手の隙を狙い撃ちする事で形勢を自分へと引き寄せたのだ。

 

 巧みな足運びで間合いを支配し、相手との距離に合わせて刃と柄を巧みに使い分ける。

 

 状況によっては肘撃や脚打、さらには武器を捨てて投げすら放つ。

 

 それはバイキングの戦い方ではなく武人のそれ。

 

 これこそが第一特異点終了から積み重ねてきた修練の成果だった。

 

 フランスから帰還した後、俺はエイリーク氏からある事を頼まれた。

 

 それは自分に武術を教えてほしいという事だった。

 

 『グンヒルドがいる以上、俺は強くあらねばならない。妻を守り、二度と彼女を置いて逝く事が無いように』と力強く語る彼に対して断るという選択肢はない。

 

 とはいえ彼の得物は大型の戦斧だ。

 

 俺の修めた戴天流とは根本的なところで合わない。

 

 なので前世で(ユン)兄弟の兄家英(カーイン)から教えを得た(えつ)術を思い出しながら、欠けたところなどを今までの経験で補填しつつ教授したのだ。

 

 斧を使った武術があるのかと思うかもしれないが、中国武術には十八般兵器、もしくは十八般武芸という物が存在する。

 

 これは日本での武芸十八般に相当し、その中には八斧(はちふ)九鉞(くえつ)とあるようにちゃんと斧や(まさかり)の扱いが記されているのだ。

 

 ちなみに家英兄貴の本来の武器は『護手鉤(ごしゅこう)』という握り手部分に月牙と呼ばれる三日月状の刃を付いた長い金属製の鉤爪に似た武器だ。

 

 斧鉞の方は副武装として修めていたらしい。

 

 そんなワケで力で押し切ろうとするバーサーカーにとって、エイリーク氏は致命的に相性の悪い相手だった。

 

 なにせ手の内をすべて読まれているので、何をしようと事前に潰されるか受け流されてカウンターを食らうのだ。 

 

 結局、重傷を負った奴が何者かの術で転移した事で戦闘は終了。

 

 完封勝利を収めたエイリーク氏は『自分の狂った姿を客観的に見るというのは、思った以上にキツい物だ』というコメントを残した。

 

 こうして島の探索は終わったワケだが、襲われただけの無駄足だったのかと言えばそうではない。

 

 ちゃんと得るモノは得ているのだ。

 

 今回の収穫は亡霊だったエイリーク氏の部下と島に流れ着いていたバーサーカーの物と思われる大型バイキング船。

 

 そして彼等が記していたこの海域の海図である。

 

 エイリーク氏曰く、バイキングは航海に出る時は出発地点から到着地点までのあらゆる物を絵や文字で記録するらしい。

 

 この船で島に辿り着いたバーサーカーもしっかりと海図を作っていたようだ。

 

 そんなワケで俺達はカルデア海賊団、『黄金の鹿号』に続く第三の船を手に入れたのだ。

 

 船を管理する船員の方はグンヒルドさんが使い魔にした氏の部下達が担当するらしい。

 

 その際に『どうせなら、この船も旦那様の宝具に登録しておくか……』などと無茶な事を言ってるんだが、本当に大丈夫なのだろうか?

 


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