剣キチFGO12話です。
フランス特異点の最後は駆け足になってしまいましたが、書きたいものを書いたのでこんな感じでいいかなと。
ゲームの方はロードエルメロイ二世とのコラボが始まりました。
ちなみに私は70回回して大爆死。
礼装ばかりで金枠は一枚も来ませんでした……。
まあ、こんな時もありますよね(涙)
人理修復記 10日目
祝! 第一特異点修復!!
初っ端からみんなと逸れたり、ヤヴァい世界を覗き込んだりとハプニング目白押しだったフランスの特異点。
しかしカルデアの仲間の尽力と現地サーヴァントの協力によって、紆余曲折の末に解決する事が出来た。
始めと終わりに人理崩壊の危機を招いた当人としては、本当に感謝の念に
竜の魔女との決戦の舞台となったのは、あちら側の本拠であるオルレアンにほど近いラ・シャリテという街。
俺達が現地に到着した時には奴等に滅ぼされていたので正確に言えば跡地と付くのだが、その辺の細かい事は置いておこう。
ラ・シャリテをオルレアン攻めの拠点に、という思惑を潰されて途方に暮れる俺達。
そこに襲い掛かってきたのは、現地住民の遺体を使ったリビングデッドの群れだった。
場慣れしている俺やサーヴァント達はともかくとして、一般人だった立香ちゃんや子供達には悪影響な事この上ない。
ゴア表現がNGと思われる面々は王妃の馬車に避難してもらい、憐れな被害者たちは俺達の手で再び眠りに付くこととなった。
この件に際して浄化が使えるマルタ女史には本当に世話になった。
俺を始めとした脳筋メンバーでは死体損壊が関の山だったしな。
損害ゼロで待ち伏せも
なかなかに香ばしかった竜の魔女の一人芝居も件の令呪の件でブチ切れていたアタランテとマルタ女史の不意打ちで打ち切られ、半ばなし崩しに決戦の火蓋は切って落とされた。
色々とあるあちらの敗因の中でも一つ挙げるとすれば、バーサク・バーサーカー、俺達の世界のランスロットをアルトリアのいる方向に向かわせた事だろう。
フルプレートメイルで正体を隠していても、手に黒く染まったアロンダイトを持っていたのでは意味がない。
あっさりとランスロットである事を見抜いたアルトリアは瞬間的にブチキレ、こちらのアーサー王伝説の末節に描かれていた『ブリテンの魔竜』が降臨する事となったのだ。
後で確認したのだが、俺に襲い掛かってきたランスロットをカウンターで吹っ飛ばした時には、あいつも奴がウチ産か他の世界のかは分かっていなかったらしい。
永い年月を得た俺と違って、ブリテン崩壊と聖杯戦争が地続きとなっているアルトリアの中にある恨みは今も熱く煮えたぎっている。
さらに『ランスロットが家族を襲う』というのは、息子達の死がトラウマとなっているあいつにとって完全なタブーだ。
瞬間湯沸かし器ばりに超速で激怒したのも当然といえよう。
その後、バーサーカーが俺達の知るランスロットである事が判明し、今までの鬱憤を晴らすかのような怒りのリンチタイムが開始。
その過程で竜の魔女陣営はワイバーンの群れとアサシン一騎が堕とされるハメとなった。
俺に我が子を殺された恨みを抱くランスロットも何とか抵抗を試みたようだが、如何に円卓最高の騎士と言われようと人間が全力全開のアルトリアに勝てるワケがない。
そりゃあもうボッコボコにされて、活躍も無く座へと還って逝った。
最後の問答でランスロットが俺に父親を見ていたことを知る事となったのだが、はっきり言わせてもらうと今更の話だ。
たしかに俺は奴を恨んではいない。
しかし、だからといって再び付き合いたいとも思わん。
姉御をはじめとして、俺以外の家族にとってランスロットは
なのに俺が再び奴と親交を深めれば、それは他の家族に無用な悩みを植え付けて苦しめる結果となる。
とくにギャラハッドは自身の出生も相まって、姉御並みにランスロットを憎んでいたからな。
仮にあの子の前にランスロットを連れて行ったら、どんな手を使ってでも殺しに掛かるだろう。
その他のバーサク・サーヴァントもクー・フーリンを始めとするサーヴァント達の奮戦で討ち取られ、マルタ女史とアタランテの援護を受けたジークフリートによって、二度目の邪竜殺しも成功を見た。
残る竜の魔女はマルタ女史による『聖女の愛』によってTKOされ、COOLのキャスターことジル・ド・レェが最後の抵抗で呼び出した化け物イカも俺の秘剣によって無事消滅。
激戦の末、俺達は人的被害を出すことなく竜の魔女を打倒する事が出来た。
まあ、ちょっとしたハプニングで危うく人理修復不可能になるところだったが、その辺は『終わり良ければ総て良し』という事で勘弁してもらいたい。
つーか、あの巨大イカに竜の魔女が乗ってるなんて誰も言ってなかったじゃん。
COOLなキャスターだけだと思ったから、例の秘剣ぶっ放したのに……。
巨大イカが消滅した後でその事を言われた時は本気で血の気が引いたわ。
聖剣エネルギーで消滅する寸前に、竜の魔女を脱出させた奴の判断にはマジ感謝である。
あのファインプレーがなかったら、俺が『人類種の天敵』認定されていただろう。
さて、件の魔女だがハサンに引っ立てられて来た時は酷いモノだった。
庇護者であるキャスターを失って自暴自棄になっていたのだろう。
終始自嘲の言葉や皮肉を吐き、さらには『さっさと殺せ』と喚いたりと会話も何もあったものではなかったのだ。
まあ、個人的には『では遠慮なく』と首を刎ねても一向に構わんのだが、流石にソレは空気が読めなさすぎる。
若い頃は兎も角、今は分別のある大人。
子供達の情操教育の為にも自重すべきところはグッと我慢せねば。
あと、『汚たない【くっころ】ですね』などとホザいたアルトリアは後で説教しておきました。
閑話休題。
そういった訳でホトホト魔女の扱いに困っていたところ、打開策を提示したのはルーラーだった。
その策とはルーラーと竜の魔女、真贋のジャンヌ・ダルクによるサシの勝負。
臆面もなくタイマンを申し出るルーラーに、『こいつ、本当に聖女か?』と疑いの目を向けてしまった俺は悪くない。
己を見下ろしながら『掛かって来い、負け犬が(意訳)』と言い放ったルーラーに、彼女を毛嫌いしていた竜の魔女は自暴自棄を投げ捨てて発奮。
鼻息荒く中指を立てながら、その挑戦を受けて立つのだった。
こうして始まった真贋相討つ戦い。
双方ほぼ同一人物という事に加えて、攻撃特化の竜の魔女に防御に秀でたルーラーとスタイル相性が噛み合った為に、戦況は一進一退の様相を呈していた。
弱体化していると聞いていたルーラーであったが、生まれて間が無い竜の魔女の経験不足を突く形で基本スペックの不利を覆し、最後は相手の宝具を自身の聖旗で耐えきった彼女が、旗の先端で魔女の胸を貫く事で決着。
末期の言葉を聞くに、彼女は自身がジャンヌ・ダルクではなくキャスターに生み出された贋作である事に薄々気づいていたらしい。
それでも彼女が本物であると言い続けていたキャスターの為にと、彼の理想とするジャンヌ・ダルクを演じていたのだそうな。
捻くれ具合が半端ない魔女は最後まで憎まれ口を残して聖杯へと姿を変えた。
そんなワケで聖杯の化身というべき竜の魔女を倒した俺達は、見事人理修復を成し遂げたワケだ。
聖杯を手に入れて特異点が正常な物に戻り始めると、この地に呼ばれたサーヴァント達とも別れの時間が訪れる。
涙ながらに別れを惜しむミユちゃんを優しく抱きしめるマルタ女史。
髪の毛に自身の矢、さらには何故か尾っぽの毛まで。
考え得る限りの聖遺物をモードレッドに渡して、必死に再会を約束するアタランテ。
いったい何が彼女をあそこまで駆り立てるのか、俺にはイマイチ理解できん。
とはいえ、娘がストーカー予備軍のような人間に標的にされているからには、父親として何かしら対処を用意しておかねばなるまい。
英霊警察って何番だったっけ?
エリザベート嬢は、俺に『次のドラゴンステーキパーティには絶対に招待しなさいよ』と言い残すと、振り返ることなく特異点から去っていった。
自身を竜の娘と言っておきながらこの発言、どうやら彼女は共食い嗜好に目覚めてしまったらしい。
次の機会があったら、珍味とされる喉袋を食わせてやるとしよう。
ルーラー、マリー王妃、モーツァルト、ジークフリートは立香ちゃんに聖遺物を渡していた。
ルーラーと野郎二人はけっこうサッパリしたものだったが、王妃は別れが惜しいのを体現するようにギュウギュウ立香ちゃんに抱き着いていた。
マシュ嬢に清姫嬢と来て、今度はマリー王妃。
もしかしたら立香ちゃんは同性に好かれる性格なのかもしれない。
そんな感じで退去するサーヴァント達を見送った後、俺達も無事にカルデアへと戻って来ることが出来た。
各自コフィンから出ると、欠員がいないか点呼を開始するロマン。
皆が張っていた気を緩めて返事を返すこの瞬間、すでに異常事態は起こっていた。
そう、出発当初と数が一人合わないのである。
もちろん誰かが欠けたワケではない。
むしろ逆。
いるはずのないモノが元気に声を上げたのだ。
件の人物の名は清姫。
別れの際にニコニコと笑みを浮かべるだけで、あれほど焦がれた立香ちゃんにすら声を掛けなかったのを不審に思っていたが、もとよりこうするつもりだったのだろう。
さも当然のように立香ちゃんに抱き着いていた清姫嬢に皆がパニックになる中、俺とエイリーク夫妻は全く動じなかった。
あの娘はウチの嫁さんばりのガチ勢である。
たかだかレイシフト如きで撒けるはずがない。
その後の聞き取りでフランスの抑止によって召喚されたにも
魔術師連中がドン引く中で、また会えて嬉しいと清姫嬢を抱きしめた立香ちゃんは間違いなく大物である。
色々と問題は残っているものの、今回の特異点はこれにて終了。
次の特異点を見つけるのには少々時間が掛かるとの事なので、英気を養いながら戦力増強などに努める事になるだろう。
ふむ、半分瞼が塞がったモードレッドが呼んでいるので、今回はこれで
最後に、実家の姉御とお腹の中の子が元気でありますように。
人理修復記 11日目
昨日の今日ではあるが、先の第一特異点に関する反省会を行った。
まずはサーヴァントの面々へ白羽の矢が立ったのだが流石は英雄というべきか、リリィとエミヤを除いて反省点は特になしという答えが返ってきた。
そんな少数派であるリリィの反省点は『師匠が敵サーヴァントと戦っているのに、援護に行けなくて申し訳ない』というもの。
これはマスターであるウチの妹が『馬車にいる姪っ子達を護ってほしい』と命令していたからであって、彼女自身の落ち度ではない。
アルトリア自身もそう言っていたのだが、彼女的には自身が後方にいてマスターを矢面に立たせた事が許せないのだろう。
最後は師匠と呼ばれている事を逆手に取ったアルトリアが『あれは見取り稽古だったのです! 活躍できなかった事を気に病むくらいなら、ビームを連打できるようになりなさい!!』と強引すぎる纏め方で納得させていたが、あの頑なさは弱点になり得る。
もう少し柔軟に物事を捉えるようにアドバイスすべきか?
続くエミヤに関しては、巨大イカ戦で援護出来なかった事の謝罪だった。
アサシンが二重召喚されていたことを鑑みれば、他の戦場に手を出さず馬車の護衛に徹したエミヤの判断は間違えていない。
仮に俺レベルの圏境使いが召喚されていた場合、一瞬のスキが自身はもちろん護衛対象の命取りとなり得るのだ。
下手に手を広げて本来の任務を失敗したのでは本末転倒だろう。
続く立香ちゃんの『戦闘途中でくたびれてしまって、ごめんなさい』という言葉には、体力をつける為に運動するというプランが。
マシュ嬢の『まだまだ力不足で申し訳ありません』という反省には、モーさんが『気が向いたら鍛えてやる』と答えていた。
盾を主眼にした戦闘術は流石に覚えがないけど、体当たりに関しては一家言ある。
こちらとしてもアドバイスできることがあれば力になろうと思う。
あとはドクターロマンを筆頭に、管制スタッフ一同から俺だけ別の場所にレイシフトした事に関しての謝罪があった。
皆が頭を下げる中、俺は厳しめに『今後こういった事が無いように』と釘を刺しておいた。
現状のカルデアに人が足りていないのも、その為に他の部署から臨時で回された応援要員が多く在籍していることも知っている。
それでも、こちらは命を預けて特異点へ跳んでいるのだ。
今回は飛ばされたのが俺だったから良かったものの、あれが立香ちゃんや所長、子供達だったら確実に犠牲者がでていただろう。
状況は変わらず厳しいのは百も承知だが、後ろ備えがしっかりしてなければ前線にいる者は満足に闘う事すらできない。
『押しかけ助っ人とはいえ、幼い子供も関わっている事を頭に入れて対応をお願いします』と頭を下げると、ドクターとダヴィンチちゃんは全力で対応に当たると約束してくれた。
こうして各々が反省と目標を語っていく中、ついにトリを担う俺の出番がやってきた。
今回の特異点に関して、俺の反省点など一つしかない。
『過失とはいえ二度も特異点を修復不能寸前に追いやって、本当に申し訳ありませんでしたッッ!!』
勢いよく頭を下げる俺と凍り付く会議室の空気。
絶句する所長とドクターを他所にダヴィンチちゃんが事情を聴いてきたので、『ビーム事件』と『竜の魔女消失寸前事案』について話すことに。
後者の方は立香ちゃん達を助ける為や、その前に戦っていたマルタ女史達の報告ミスということもありお咎め無しだったが、前者についてはダヴィンチちゃんにメッチャ怒られた。
しかし『いきなり敵本陣の中に放り込まれたので、その状況から生き残るためにやった事』や『あれが無かったら、旦那はともかくオレは確実に死んでいた』というエイリーク殿やアンリ・マユの援護射撃のお陰で今回は厳重注意で済んだ。
当然のことながらビームは禁止となってしまったが。
次こそはちゃんと出るよう、手加減の練習をするつもりだったのに……無念。
人理修復記 12日目
アロンダイトが壊れた。
今朝の鍛錬で聖剣エネルギーの更なる効率化を図ろうとしたのだが、いくら内勁を通しても剣はうんともすんとも言わない。
これがただのレーザー発振器付きの剣ならユニットを調べれば手掛かりをつかむこともできるだろう。
しかし、生憎と我が手にあるのは星が鍛えた聖剣である。
構造なんて分かるワケがない。
考えられる故障の原因は三つ。
一つ目は例のビーム事件。
不安定とはいえ、あれだけ派手に世界を斬ったのだ。
剣のキャパを超える負荷が掛かったとしても不思議ではない。
二つ目は本来の持ち主であるランスロットと戦った事。
アヴァロンが二重に存在した為に機能不全に陥ったというアルトリアの経験を思えば、ランスロットの手にあった宝具として登録されたアロンダイトと何らかの干渉があった可能性は高い。
だが、そうなると奴が座に還った後でも不調が続いているのは妙だ。
アルトリアもシロウ少年の身体にあったアヴァロンが消えた時点で鞘の効果が戻ったと言ってたし、この可能性は低いかもしれん。
最後に『六塵散魂・過重湖光』による負荷。
水晶蜘蛛と戦った時に使ったのはプロトタイプであり、聖剣の力を収束させた斬撃も3発程度しか放っていなかった。
六塵散魂無縫剣の完全な形で過重湖光を撃ったのは今回が初めてである。
思い返せば超音速で矢継ぎ早に真名解放と同等のエネルギーを十連発したのだ。
剣に掛かった負荷は相当な物だろう。
ウンウンと唸ってみたものの、『下手な考え、休むに似たり』という諺にもある通り、素人が頭を悩ませたところで時間の無駄使いでしかない。
とはいえ、流石に製作者であるニニューさんの所に送ったのでは返ってくるのに時間が掛かり過ぎる。
苦肉の策としてダヴィンチちゃんのところに持って行ってみたのだが、『神造兵器をここまで魔改造されたら、いくら天才の私でも厳しいよ』と突き返されてしまった
こうなっては仕方がない。
少々不便ではあるが、メーカーサポートに託す他に方法は無い。
ビームを撃てない聖剣なんて、具の無いクレープと同じだからな。
しかし修行目的の使い捨てであるナマクラ君シリーズを除けば、実戦で武器を壊したのは久しぶりだ。
これも俺自身がまだまだ至らないという証明。
修行の一環と考えて、腐ることなく精進を重ねようではないか。
人理修復記 13日目
現状におけるカルデアの悩みの種の一つである人手不足だが、徐々にではあるが改善の方向に向かっている。
それもこれもミユちゃんとグンヒルドさんのお陰であり、彼女達の治癒魔術は重傷レベルの負傷ならば数時間で完治させられるのだ。
それに加えて複数同時に効果を発揮させる事も可能な為、医療ポッドに入るまではいかないまでもベッドで安静にしていたテロ被害者達がどんどん職場復帰を果たしている。
医療ポッドでの生命維持、冷凍睡眠装置で命を繋ぐレベルの患者を完治させるのは、数週間から数か月単位で時間が掛かる為に保留となっている。
所長の本音では、爆心地に近い位置でほぼ致命傷を受けていた『Aチーム』というエリートマスター集団を復帰させたいようだったが、双方ともにカルデアの職員ではないので無茶を言うのは控えているようだ。
グンヒルドさんはともかく、ミユちゃんは七歳児。
一歩間違えば殺しかねない重症患者相手に数か月付きっ切りで看病など、さすがにさせられない。
とりあえず、エイリーク殿と一緒に二人に無理しないよう釘を刺しておいた。
実際のところ、レイシフト時のコンディションチェックや観測機器の制御を担当する管制室など、カルデアには専門施設が多数ある。
爆弾テロの被害復旧に伴って使用できる施設が増えれば増えるほど、人員が必要となっていくのは必然と言えるだろう。
もう三人……いや、二人でいいので医療に精通したサーヴァントがいてくれれば助かるのだが。
ドクターロマンが近いうちに追加の英霊召喚を行うと言っていたし、そっち方面の人材が来るように働きかけてもらうべきかもしれない。
単純戦力の強化なら、英霊を呼ばなくても俺が頑張れば何とかなるだろうし。
人理修復記 14日目
今日はなかなかに面白い情報を聞いた。
例の水晶蜘蛛だが、なんと水星最強の生物なんだという。
切っ掛けは妖精郷の運送業者にアロンダイトを渡しているところをアルトリアに目撃された事だ。
隠す必要も無いので壊れた事を伝えると、あの愚妹は『あんなトンチキ奥義を撃つからですよ』と暴言を吐いてくれやがりました。
俺は心の広い広ーいお兄様なのでほっぺをムニムニするだけで許してやったのだが、話していた場所が食堂だった為か他の面々も話に参加する事態に。
モーさんに『六塵散魂・過重湖光』の制作理由を訊かれたので、水晶蜘蛛殺しと答えると立香ちゃんとマシュ嬢を除く魔術師連中からドン引きされてしまった。
所長からは『頭がおかしい』と言われ、エミヤからは自殺志願者扱い。
ドクターや設備担当のムニエル氏に至っては、発言自体をギャグ扱いする始末。
さすがに俺もここまで言われては黙って居られないので理由を問うたところ、どうもあの蜘蛛は現世に於いてアンタッチャブルな存在らしい。
所長の話によると、奴は魔術界隈では『ORT』と呼ばれており、西暦以前に外宇宙から地球に飛来してきた謎の生物なんだとか。
なるほど、以前に二ニューさんと解析班が出した『地球の生物とは思えない』という見解は的を得ていたという事か。
でもって、奴がこの星を訪れた理由については未だ不明。
南米にある自身の落下によって発生したクレーターの中に『水晶渓谷』と呼ばれる巣を生成しており、普段はそこで眠っているらしい。
数百年前にちょっかいを掛けた当時の世界における吸血鬼序列5位を瞬殺した事で危険性が認知され、現在では『奴に触れる事は死を意味する』と某来訪者ばりに警戒されているのだとか。
改めて語られた水晶蜘蛛の脅威に立香ちゃん達が戦慄する中、アルトリアから『どうしてそんな危険生物を目の敵にしているのか』と問われたので、奴が行った妖精郷襲撃から始まる一連の因縁を説明。
所長やムニエル氏が頭から嘘認定してきたので、詳細なデータ付きでぶった切った足の画像を見せてやった。
その結果、所長やドクター、ムニエル氏は泡を吹いて気絶し、エミヤは『どうして人理はこんな危険人物を野放しにしてるんだ!?』と頭を抱えてしまった。
それに対して、クー・フーリンを始めとするサーヴァント連中は『こんなのに故郷を襲われれば、対策の一つも立てるわな』と納得顔。
実は防衛の為に作った技じゃないんだが、この辺に関しては言わない方が吉と見て口には出さなかった。
しかし一つの惑星で最強とは、奴もドデカい称号を持っているものである。
漢として生を受けた以上、『最強』という言葉に憧れない者はいない。
奴の首を取る理由がまた一つ増えたというものだ。
あと妖精郷を防衛するなら兎も角、こっちから挑む時はアロンダイトを使うのはやめよう。
『聖剣を持ってたから勝った』なんて言われては興ざめだし。
やっぱり、最強の称号は自分の腕だけで掴んでこそ価値があるものだからな。
そうと決まれば修行あるのみだ。
まずは通常の『六塵散魂無縫剣』で『過重湖光』の威力を超える事を目標にしてみるか。
人理修復記 15日目
今日は所長のサーヴァントである『百貌のハサン』と話をする機会があった。
百の分体を作り出せるという彼等だが、声をかけてきたのは代表格である女性体だった。
彼女からの問いは一つ。
『迅速のマクール』という男を知っているか、という事だった。
当然、俺の答えは
息子たちを取り戻す決め手となった第四次聖杯戦争からの付き合いである。
姉御に仕えていた期間は一年足らずと短かったものの、隠密ゲーマーとしてモードレッド達とよく遊んでくれていたのだ。
ある日、突然
ちなみに退職理由は俺と姉御のイチャイチャぶりが、独り身には辛すぎるからとの事。
気配を感じなかった事から夜の営みは見られていないだろうが、面と向かってこう言われてはさすがに引き止める事はできん。
そこまで思い返した俺は、仮面を付けた彼女を見てある事に気づいた。
どこかで見たと思ったら、彼女はマクール君の
ようやく気付いたか、と仮面の下で笑った彼女から告げられたのは驚きの事実だった。
なんと今の彼女達の中にマクール君の姿は無いのだという。
第四次の記憶を見た本体は『一つの人格で以て生きる』という生前の願いのままに生きるマクール君の生涯を『記録』ではなく『記憶』として体験したいと考えた。
そして自身の近隣に座を構える魔術に長けた英霊の助力によって本体に宿る『迅速のマクール』を切り離し、座とサーヴァントを繋ぐパスを通じて妖精郷のマクール君に送り出したそうだ。
そういった経緯から、彼女はマクール君の事を本当に知りたがっていたらしい。
なので、俺はジャケットのポケットと繋がっている四次元倉庫からある手紙を取り出した。
百貌の前に出した手紙には『僕達、結婚しました』というメッセージと共に、金髪の美少女エルフとツーショットで映っているドクロ仮面の黒ずくめの姿。
ちなみにこれはミュータントミミズが現れる少し前に送られてきたものだ。
奥さんの名前が本当にビアンカだと知った時は、エイプリルフールネタかと日付を確認したくらいである。
ブルブルと震えながら、手紙に書かれた近況に目を通す『百貌』の女性。
彼等の積年の願いを叶えたマクール君が幸せな人生を歩んでいる事に感動を抑えきれないのだろうと感慨にふけっていたのだが、悲しいかな事実はそうではなかった。
「「「「「「「ふっざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」」」」」」」
と、彼を構成する大多数の男たちが怒りの声をあげたのだ。
『なんであんなフード大好きガリガリ君が、金髪きょぬーな可愛い子ちゃんを嫁にしてんだ! それはマッシブでイケ面な俺の役目だろ!!』
と跪き、悔しさを込めて地面に拳を打ち付けるゴズール君。
なお、彼が美形かどうかは仮面の為に確認できていない。
『何を言っている! 彼女に相応しいのは変幻自在の舞踏を誇るこのザイードに決まっていよう!!』
などと叫びながら、食堂の机と椅子を避けつつクルクルと踊り始めるザイード君。
彼等を皮切りに何故か自分の名と備わった技能をアピールしてくる男性体達。
呆然と立ち尽くす代表格の女性と彼女の後ろで怯える子供を他所に最後の一人の演目が終わると、男たちは声をそろえてこう言った。
「「「「「「「僕達も
────丁重に断ったのは言うまでもない。