IS-最強の不良少女-   作:炎狼

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セカンド幼馴染の鈴登場です

ではどうぞー


転入生(2組)

 4月下旬になり既に桜も殆ど散った日ごろ、1年1組の生徒達は全員がISスーツに身を包み、グラウンドに集まっていた。その中には皆が背筋を伸ばしているなか、1人大あくびをしている響の姿があった。

 

 だがその瞬間、響の顔面めがけ例の出席簿が飛んできた。それを指と指の間で響がキャッチする、飛んできた方向を見るとそこにいたのは、冷徹な目をした千冬だった。

 

「危ないんですけど、織斑先生。普通生徒に出席簿ぶん投げます?」

 

「安心しろ、貴様は普通じゃないからな」

 

 嘆息交じりに告げる千冬に今度は響が出席簿を投げつける、千冬はそれを響と同じように挟みとると、並んでいる皆に言い放った。

 

「今日はお前達にISの基本的な飛行操縦を実践してもらう。織斑、オルコット、鳴雨。試しに飛んで見せろ」

 

 千冬が指名したのは、専用機もち三人だ。だがそこで一夏が問うた。

 

「ん?待ってください織斑先生、俺とセシリアは専用機持ってるけどわかるけど何で響なんだ?」

 

 そのことはその場にいる全員、ただし響とセシリア除きが聞きたかったことのようで、皆が小首をかしげていた。

 

「ああ、そういえば言っていなかったな。鳴雨も既に専用機を持っているからな、だから指名したのだ。わかったらさっさとはじめろ」

 

 千冬が命じると一夏は渋々といった様子で、セシリアは意気揚々と、響はげんなりとしながら前に出て行った。

 

 しかし、響が前に出るまでに多少こそこそとした声が聞こえてきた。

 

「なんで……あの子」

 

「ちょっとずるいよね……」

 

「いいなー……専用機」

 

 聞こえてきたのは、うらやましさと多少の嫉妬の声だった。まぁ専用機は皆が持ちたいはずだ、しかしそれを素行が悪い響が手にしたとなれば文句の一つ二つ言いたくなるだろう。

 

 しかし響はそんなことを気にもせずに前に出ると、一呼吸しないうちに夜天月を展開した。それを見たセシリアと一夏、また他の生徒が息を呑んだ。あまりにも響のIS展開が早すぎたのだ、千冬自身それを持て頷いてしまっていた。

 

「ではお前達もさっさと展開しろ」

 

 言われてセシリアもあわてて展開するが、一夏はまだもたついているようだ。そしてやっとこさ展開し終わると千冬が命じた。

 

「よし、飛べ」

 

 千冬の声とともに飛び上がった三人だが、その中で一番早かったのは響だった。2人がまだ地上から数十メートルの空中にいるのに対し、響は既に二百メートル近くまで飛び上がっていた。

 

 そしてセシリアたちが響のところに来た時は、響は気楽そうに待っていた。

 

「ずいぶんと遅かったな」

 

「響さんが早すぎるんですわ」

 

 すこしむくれた様子で言うセシリアを軽くあしらっていると、一夏が声をかけてきた。

 

「本当に早かったな響!どうやってんだ?」

 

「ん?そうだな……イメージさえ浮かべば案外簡単なもんだぜ」

 

「織斑さんが知りたいのであれば説明しますが……かなり長くなりますわよ?」

 

 セシリアの言葉に一夏もさすがに聞く気がうせたのかげんなりとした。実際授業以外にそんな専門的な話などしたくもないだろう。

 

 すると一夏の通信の方に箒からの怒号が、入ってきた。どうやら一夏と響たちが話しているのが気に喰わないようだ。

 

「織斑、オルコット、鳴雨。そこから急降下と完全停止をやってみろ、地面から10センチのところで止めろよ」

 

「了解です。では、響さん、織斑さんお先に」

 

 セシリアは告げると一気に急降下をはじめ、地面からちょうど10センチのところでぴたりと静止し、難なく課題をクリアした。

 

「じゃあ次は私だな、先に行くぜ一夏」

 

 響もそれにならい、急降下を開始した。だがそのスピードは先ほどのセシリアよりもはるかに速いスピードだったため、地上にいた千冬も若干顔をしかめたが、響も言われたとおりのところで完全に停止することができた。

 

 一夏も2人にならいはじめるものの、そこで響が声を漏らした。

 

「あれ、多分地面に激突するぞ」

 

 響がそういった瞬間、すさまじい轟音が響いた。それは言わずもがな、一夏が見事に地面に激突した音だった。衝撃のせいでグラウンドにはそこそこ巨大なクレーターが出来上がっていた。

 

 そしてクレーターから出てきた一夏に、千冬は冷たく言い放った。

 

「馬鹿者、グラウンドに穴を開けてどうする」

 

「……すいません」

 

 その姿に数人の女子生徒がくすくすと笑っていたが、箒だけは一夏を叱咤していた。

 

「情けないぞ一夏。昨日私が教えただろう」

 

 腕を組みながら言う箒に対し、一夏はなんとも微妙な表情だ。まぁ大体の想像はつくが。

 

 一夏がひとしきり、箒に怒られ終わった後千冬が命じたのは、武器の展開についてだった。しかしこれに響は参加しなかった、なぜならば響のIS、夜天月は常時武器を装備している状態だからだ。

 

 それにより、セシリアと一夏が手本を見せることとなっていた。一夏はここでももたついていたが、セシリアのほうはさすが代表候補生の貫禄を見せていた。しかしセシリアも不得意なこともあるようで、近接武器のインターセプターを出す時はえらく戸惑っていた。

 

「では、以上でこの授業を終了する。織斑グラウンドをちゃんと直しておけよ」

 

 千冬が言い残すと、響たちも巻き込まれてはたまらないとそそくさと校舎に戻っていった。

 

 

 

 夜になり響は1人寮へ向かうため歩いていた、手には封の開けられていないペットボトルが両手合わせて三本あった。

 

「たくっ……なんで校舎の外の自販機にしかこれ売ってねーんだか」

 

 毒づきながらも響は足を休めることなく、黙々と寮を目指していた。すると学園の校門のあたりに1人の少女がいることに気付いた。

 

 背は小柄で、長めの髪をツインテールにまとめている、はしっこそうな少女だった。少女は上着からなにやらメモ書きのようなものを取り出すと、それを眺め首をかしげていた。

 

 ……まぁあれは、あれだとりあえず関わらないほうがいい、こんな時間に出歩いてる奴なんてろくな奴がいない。

 

 人のことを言えた義理なのかわからないが、響はその少女に見つからないように立ち去ろうとした。が、

 

「あ!ねぇちょっとそこのアンタ!!」

 

 ……見つかったー、あーめんどくせー。

 

 見事に見つかってしまい、少女は響の隣まで駆けて来た。

 

「アンタに聞きたいことがあるんだけどいい?」

 

「はぁ……どーぞ」

 

 半ば投げやりに返し、少女に振り向くと少女は響の外見を気にした風もなく聞いてきた。

 

「1階の総合事務受付ってどこにあるかしってる?」

 

 首をすくめながら聞く少女に、響は再度溜息をつきながら答える。

 

「総合受付?ああ、それならここまっすぐ言って左に曲がればあるぜ」

 

「そう、ありがとう」

 

 少女は素直に礼を言うと、そのまま駆けて行った。姿がやみに飲まれ見えなくなると、響は小さくつぶやいた。

 

「ま、どこにあるかは知らないんだけど」

 

 響はまた踵を返し、寮への道を歩いていった。

 

 

 

 悪いことを教えてしまったかと、若干の罪悪感を抱きながらも響が部屋まで帰ってくると、

 

「やっほー、お邪魔してるわよー響ちゃん」

 

 楯無が響のベッドで横になっていた。響から見るとスカートがまくれ上がり、刺激的な色をしたパンツが丸見えだ。

 

「パンツ丸見えだぞ、会長さんよ」

 

「あー、響ちゃんのえっちー」

 

 おどけたように言う楯無に対し、響が右手を鳴らすと、

 

「わ、わかったからちょっと落ち着こうか響ちゃん!お姉さんは今日話があってきたんだってば!!」

 

 さすがにアイアンクローをくらいたくないのか、束が見せたのと似たような反応をしながら楯無はベッドに座りなおし、響に向き直った。響も近くにあった椅子にどっかりと座り楯無を見る。

 

「こほん、実は明日から本格的に生徒会室に来てほしいのよ」

 

「本格的って、今まで一度も呼び出されたことなかったけどな」

 

 妥当なツッコミに視線をそらして、平静を装う楯無はさらに話を繋げた。

 

「響ちゃんにちょっとばかし、伝えなきゃいけないことがあってね。ま、細かいことは明日の放課後話すから、またね」

 

 それだけ告げると、楯無はさっさと部屋から退室していった。

 

 楯無が出て行ったことにより、一息つこうと買ってきた飲み物の封を開けようとしたところで勢いよく、はやのドアが開け放たれた。

 

「響さん!!」

 

「ぶふぉう!?」

 

 いきなり開け放たれたことに焦り、響は口に含んだものを霧状に振りまいてしまった。

 

「ゲッホゲホ!ウオェ!……あー気管に入っちまった。んで?なんか用か、セシリア」

 

「なんか用かではありません!いいから来てください!!」

 

 響が返す暇もなく、セシリアは響の手を引っつかむとダッシュで走り出した。

 

 

 

 連れてこられたのは食堂だった。食堂には既に多くの生徒が集まっていた。

 

「連れてきましたわ」

 

 多少いきを荒げながらセシリアが言うと、響が質問を投げかける。

 

「おい、セシリア。どういうことか説明を……」

 

「いいですから!響さんはわたくしの隣にいてくださいまし」

 

 響の腕をがっしりとロックした状態でセシリアがくっつくと、もう一方の手を本音がホールドしてきた。

 

「じゃあ右手には私が抱き付くー」

 

 小動物のように擦り寄ってくる本音を、微妙な顔をしながら見つめていると、クラスの皆が集まり始めた。状況が飲み込めない響は近くにいた一夏に問うた。

 

「おい、一夏。これは一体全体どういうことなんだ?」

 

「ああ、あそこにいる新聞部の部長さんがみんなの集合写真を撮るって言い出してさ、それで響がいないことに気付いたからセシリアが呼びにいったんだよ」

 

「そういうことね……」

 

 響の隣で満足そうに抱きつくセシリアを一瞥すると、少しだけ響は笑ってしまった。だがその瞬間カメラのシャッター音が聞こえ、そちらの方を見ると、新聞部部長がご満悦な表情で、

 

「んー!いい写真が撮れたよー!そんじゃバイバイ!!」

 

 それだけいい残しその場を去っていった。その後はセシリア、本音、そしてその他初めて話す女子達を響は夕食をともにした。

 

 

 

 次の日の朝、響はセシリアとともに登校していた。いつもならここに本音がいるはずなのだが、

 

「今日は朝から生徒会があるから先に行くねー」

 

 と言い残し、一人で登校してしまったのだ。

 

「布仏さん、生徒会ってなにをするのでしょうか?」

 

「さぁな、その辺は説明してなかったしわかんね」

 

 そのように他愛のない話をしていると、あっという間に教室の近くまで到着してしまった。だがそこでセシリアが声を上げた。

 

「あら?」

 

「どした」

 

「いえ、あの方……見ない顔ですけど。転入生でしょうか?」

 

 セシリアが指差す先には1組のドアの前で、なにやらしゃべっている少女がいた。響はその少女の近くまで行くと、

 

「教室入るのに邪魔だからどけ、チビ助」

 

「誰がチビ助……って、あーーーーーーっ!?」

 

 少女は振り返り、響の顔を見ると驚愕の声を上げた。その声に響が顔をしかめながら耳をふさいでいると、少女はさらに大声で繋げた。

 

「アンタ昨日の!よくも昨日はだましてくれたわね!!アンタの言ったとおりに言ったらもっと迷っちゃって結局ついたのかなり遅くなっちゃったんだから!!」

 

 激昂する少女の顔を響が眺めていると思い出しようように、手と手をあわせた。

 

「あー、お前昨日の……どーりで見覚えがあると思った」

 

「って忘れてたの!?なんなのよアンタ!」

 

 自分のことを忘れていた響が気に入らないのか、少女は響を問い詰めた。

 

「なんなのって……ただの生徒?」

 

「あーもーそうじゃなくて!アンタ!名前は!?」

 

「名前?鳴雨響だけど」

 

「響ね、まぁ今回だけは許してあげるわ。次からは気をつけなさいよ」

 

 自分より若干背の高い響を睨みつけながら少女がいうと、溜息混じりに響は聞いた。

 

「ほんで?お前はなんなの?」

 

「あ、そっか。まだあんた達には言ってなかったわね、あたしの名前は凰・鈴音。中国の代表候補生よ」

 

「ふーん、そっか。じゃあお互いに自己紹介が終わったことだし、そこいい加減どいてくんない?」

 

 問いかけに鈴音は、はたと気づいたように道を開けた。するとその直後だった、鈴音の頭に例の黒いやつがクリーンヒットしたのだ。鈴音はそれに文句を言おうとしたが、後ろにいた人物の顔を見て絶句した。

 

「もうSHRの時間だ。教室にもどれ」

 

「ち、千冬さん……!」

 

「織斑先生と呼べ馬鹿者」

 

 若干たじろいだ後、鈴音は一夏に捨て台詞を残して自分の教室に戻っていった。その後先ほどの鈴音のことを一夏から問い詰めようとしていた箒が一夏と共にはたかれていた。




以上ですー

今回はさらっと言ってみましたー
まぁ次くらいから少しシリアスムードになるかもしれません
写真のところは少しだけ原作と変えてみました

感想、アドバイス、ダメだしお待ちしております

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