IS-最強の不良少女-   作:炎狼

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会長と勝負です!
さぁどっちが勝つのでしょうか!?

ではどうぞー


VS楯無

 響のISでの特訓が始まり早一週間、ついに楯無と戦う日がやってきた。同時にセシリアと一夏が戦う日でもあり、クラス全員が二人の試合を観戦しに行ったものの響はというといつものように屋上で昼寝をしていた。

 

 だがそこに近づく不信な影が一つ。まぁ例によってその影の正体は楯無なのだが。

 

 楯無は手をワキワキと不信に動かしながら響の下へにじり寄っていく。口元はとても嬉しそうに笑っている。

 

 そして彼女の手が響に(主に胸に)触れるおよそ1㎝手前に迫った時、楯無にアイアンクローが決まった。そこからなるのは骨が軋むような音だ。

 

「あだだだだだだ!!!??ちょちょっと響ちゃん!?頭の骨からすごい音が聞こえるんだけど!普通こんな音聞いちゃいけないんだけど!?」

 

 あまりの痛さに響の手をバシバシと叩いて痛みを表現するのに響も気付いたのか手を離す。

 

「あー痛かったー。もう!何するの響ちゃん!!」

 

「わりーわりーつい無意識でやっちまったわ」

 

「無意識でって……余計恐ろしいよ!」

 

 抗議の声を上げる楯無だが響は起き上がり大きく伸びをしている。仕上げにあくびをすると頭を押さえている楯無に向き直った。

 

「それでなんの用だよ会長さんは」

 

 怪訝そうに聞く響に楯無は思い出したようにはっとした。

 

「いやねーただ単に響ちゃんは織斑君とかオルコットさんの観戦に行かないのかなーって思ってさ」

 

「行ったって大して意味なんてねーし。セシリアとは友達だけど結局私はどっちがクラス代表になろうと気にしないから勝ち負けなんて興味ねーの」

 

 頭を掻きながらいう響はもう一度大きなあくびをする。まだ眠気が取れていないのだろう。

 

 付け加えるように楯無が響に聞く。

 

「ふーん……。ところでこんなところで昼寝してるってことは今日の勝負は余裕ってこと?」

 

 悪戯っぽい笑みを浮かべる楯無に響も挑発するような笑みをする。

 

「さぁ……どうだろうな?そん時のお楽しみってことでまってろや」

 

「そう。じゃあ楽しみにしておくわ。響ちゃんまた後でね~」

 

 それだけ告げると楯無はまた校舎の中に消えていった。

 

 楯無の姿が消えたのを確認した響はまた寝転がると空を見上げた。

 

 ……まったく本当に。

 

「――――めんどくせーな」

 

 つぶやくと響はまた瞳を閉じ眠りについた。

 

 

 

 屋上での昼寝から覚め1人廊下を歩いていた響は途中俯きながら歩いてくるセシリアに遭遇した。

 

「どうしたセシリア?」

 

 響に気付いていなかったのか不意にかけられた声にセシリアは飛び上がったが、響だと気づくと少し安堵したような表情を浮かべた。

 

「響さん……。今日の試合見ていましたか?」

 

「いーや見てなかった。でもまぁその分じゃなんかあった事は明白だな」

 

「はい……」

 

 小さく答えるセシリアに響は軽く溜息をつくと響はセシリアの肩を手を置き告げた。

 

「言いたくないなら言わなくてもいいさってこれは前にも言ったな。……お前の気持ちの整理がついたら言ってくれて構わないぜ?別に言わなくてもいいしな」

 

「そんなことはしませんわ。気持ちの整理がついたらちゃんとご説明します」

 

「そーかい。お前の好きにしな」

 

 セシリアの答えに納得したのか響は軽く頷く。セシリア自身も先ほどまで浮かべていた固めな表情から少し柔らかい表情に戻った。

 

「ところで響さん?今日はお夕食をご一緒しませんか?」

 

「ああ。別にいいぜ、まぁ私はこれから用があるから少し遅くなるかもしれないけどいいか?」

 

「はい構いませんわ。それで御用というのは?」

 

 気になったのか小首をかしげるセシリアに響は軽めに答える。

 

「ちょっと織斑先生とかとお話だな」

 

 その答えにセシリアは一瞬何かを察したような顔をしたので響が訂正する。

 

「別に怒られるとかそういうんじゃねーよ」

 

「そ、そうですか。わかりました。ではまた後でご連絡をさせていただきますわ」

 

「おーう。また夕飯になー」

 

 そしてセシリアと響はそれぞれの目的の場所へ散っていった。

 

 

 

 第三アリーナのハンガーには既にISスーツに身を包んだ響を初めとし千冬と真耶がいた。

 

「さていよいよやってきたわけだが自身はどう鳴雨?」

 

 打鉄に乗り込む準備をしている響に千冬が不意に聞いた。この一週間放課後に特訓に付き合っていたので多少は気になるのだろう。

 

「まぁまぁですね。それなりにはがんばりますけど」

 

「そうか。しかし相手は更識だ。油断はするなよ」

 

「わーってますよ、んなことは。……聞きたいんですけどさっきの試合はセシリアが勝ったんですか?」

 

 打鉄に完全に乗り込んだ響が先ほどの試合のことを聞くと千冬は目を丸くした。

 

「驚いたな貴様があの二人の試合に興味を持つとは。……ああ確かに先ほどの試合ではオルコットが勝利をおさめた。あの馬鹿は自爆だ」

 

「へー。後でその映像見せてもらってもいいっすか?」

 

「ああ、構わんさ。山田先生一応先の戦闘の記録も流せるようにしておいてください」

 

「わかりましたー」

 

 真耶は端末を操作し先ほどの戦闘映像を呼び出しながらも打鉄の発進準備も整え始めた。

 

 ひとしきり準備を終えると真耶が心配そうな顔で聞いてきた。

 

「鳴雨さん本当に武装なしで大丈夫ですか?」

 

 そう結局響は最後まで武装を取り付けずにいたのだ。ISでの戦闘で武装がないなど丸裸も同然だ。なにせ応戦するための武器がないのはそうだが基本ISの戦闘はシールドエネルギーが0になった方が負けとなる。

 

 相手から攻撃をくらえばシールドエネルギーは確実に減少する、しかし武器で受け止めることができればそれを最小限にとどめられるが響の場合はそれがない。おそらく攻撃をもろに受ければ即終了となるだろう。

 

 真耶はそれを心配で響に声をかけたのだ。しかし対する響は静かに笑うと真耶に告げた。

 

「ようは会長の攻撃を全弾よければいいわけっすよね?だったら楽勝」

 

「貴様がそれでいいなら私達はこれ以上口出しはしないが……無理はするなよ」

 

 その言葉に響は鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした。そしてすぐに吹き出し笑い始めた。

 

 響の様子に千冬が怪訝そうな顔をするが響は笑い終えると千冬に告げた。

 

「いやースイマセン。まさか織斑先生の口からそんな言葉が聞けるなんて思ってもいなかったんで……。ついつい笑っちまいました」

 

「ふん……。私とて鬼ではない、育てたもののことぐらいあんずることもあるさ」

 

 すこし不満そうに眉をひそめる千冬だがその声にはどこか優しさも含まれていた。

 

「じゃあがんばってきますかね。――――鳴雨響、打鉄いくぜ!」

 

 ゲートの開放と共に響はカタパルトから飛び出した。

 

 

 

 アリーナに着地すると既に楯無は自分のISを展開した状態で待っていた。楯無のISは水色を基調としており一言で言うならとても美しい様だった。

 

 

 

「待ってたよー響ちゃん。……それじゃあはじめようか」

 

 声のトーンこそいつもと変わらないものの楯無はつめてく言い放つ、響はそれに臆することもなく身構える。

 

「ああ。さっさと初めてさっさと終わりにしようぜ会長さんよ」

 

「フフッ。そうだね。じゃあはじめるよ!」

 

 その声と共に開始を告げるアラームが鳴り響いた。

 

 しかしその瞬間だった。

 

 楯無が思いっきり後ろに吹き飛んだのだ。

 

「うそ……」

 

 楯無は驚愕の声を上げる何せ自分が吹っ飛ぶことなど想像していなかったのだから。

 

 響はそれに追い討ちをかけようとはせず開始位置から動かずにいた。

 

「ボケッとしてるからそういうことになんだよ。ホレ次行くぞ」

 

 響は体勢を低くし一気に楯無との距離をつめる。

 

 それに気付いた楯無も応戦に入る。楯無が構えるのは長大なランスだ。しかし響はそれを見ても速度を落とすことをせずまっすぐ突っ込む。

 

「特攻はさすがにどうかと思うよ響ちゃん!!」

 

 楯無はランスに内蔵されているガトリングガンを放つ。

 

「特攻?違うね……それぐらいの弾なら見えたんだっての!」

 

 言い放つ響を見ると確かに打ち出される銃弾の嵐を響は全てよけていたのだ。寸分のくるいもなくシールドに当たる直前で全ての弾をよける。

 

 さすがの楯無もこれに顔をしかめる。響が静止した状態でよけているのならつゆ知らず、今の響はISを使ってかなりの速さで移動中だ。しかも打ち出される銃弾に近づいているのだからよけるのは至難というよりも不可能に近いだろう。

 

 だがそれでも響はやってのけている。まるで当たり前であるかのように。

 

 そして響が楯無の前に躍り出て拳を叩き込もうとするがその拳は急に止まった。

 

「っ!?」

 

 それにより響は後方に跳び距離をとる。

 

「どういうことだ?なんで私の拳が止まった?」

 

「フフフッ。教えてあげようか?」

 

 響の疑問に楯無が先ほどまでとは打って変り笑みを浮かべながら響に聞いた。

 

 楯無を見やると彼女は水色のヴェールに包み込まれていた。だが千李はそれを見て楯無に告げる。

 

「水か……」

 

「せいかーい。この水はISのエネルギーを伝達するナノマシンで制御してるのよ」

 

「なるほどそれで『霧纏の淑女』(ミステリアスレイディ)ってわけかよ」

 

 軽く汗を掻く響だがその顔は不安というよりむしろ楽しげだった。

 

「こんなに早く使うとは思わなかったけど……ここからは本気で行くわよ響ちゃん?」

 

「上等!久しぶりにこんなに胸が熱くなったから楽しませてくれよ会長さんよ!」

 

 打鉄の手のひらと拳を打ち鳴らす響と大型ランス『蒼流旋』を構える楯無はお互いに構え、そして向き合う。

 

 ここからが本当の勝負の始まりだった。

 

 

 

 そして戦闘が開始されてからおよそ一時間近くたった。

 

 彼女達の戦いは熾烈を極めどちらも一進一退の攻防を繰り広げていた。しかしそれも既に終わりに近い。

 

 響のシールドエネルギー残量10。対する楯無の残量15。

 

 となりどちらも満身創痍の状態だった。

 

「凄いね響ちゃん……まさかここまでやるなんて思ってなかったわ」

 

「そうかよ。だけど互いに次が最後だ。コイツでしめにしようぜ」

 

 拳を握り締めて言う響に楯無も深く頷く。

 

 二人の間にしばしの沈黙が流れる。

 

 だがその沈黙は響によって打ち破られた。

 

 響は一気に距離を詰めに入った。だが楯無も蒼流旋に水を集中させ槍で貫く態勢に入る。だがそこで響は普通ではありえない動きをした。

 

 彼女は打鉄のアーマースカートをあろうことか引っぺがしながら突っ込んだのだ。さすがの楯無もこれには目を丸くする。

 

 響は引っぺがしたそれを思いっきり楯無に投げつける。

 

 投げつけられたアーマースカートを蒼流旋で貫き破壊すると目の前には響の姿はなかった。

 

「こっちだ!!」

 

「っく!?」

 

 声のする方向を向くと響は楯無の後ろにいた。

 

 響はアーマースカートを目隠しに使い一瞬にして楯無の後ろに回りこんだのだ。既に響は距離を詰めに入っており誰がどう考えても楯無にこれを防ぐことは不可能だった。

 

 拳が楯無に届くか否かの瞬間終了を告げるアラームがなった。

 

「なっ!?」

 

「ざーんねん。おねーさんの方が一枚上手だったね響ちゃん」

 

 驚愕の表情を浮かべる響の目に映ったのは楯無の持つ一つの剣だった。それは、

 

「蛇腹剣ってやつかよ」

 

「そう。蛇腹剣、ラスティー・ネイル。これが今響ちゃんのエネルギーを0にした正体だよ」

 

「最初っから右手に持ってたそのでっかいランスは囮だったわけか」

 

 悔しげに言う響に対し楯無は少し真面目な顔をして告げる。

 

「うーんそれはちょっと違うかな。本来ならこの蒼流旋で倒しきるはずだったんだけど、まさか響ちゃんがあんなことしてくるなんてわからなかったから咄嗟にね」

 

「そうかよ。それにしちゃあ随分と余裕そうな顔してたけどなアンタ」

 

 ジト目で睨む響だが楯無はそれを気にした様子もなく胸を張った。

 

「でも勝負はついたね。響ちゃん約束どおり生徒会に入ってもらうからね?」

 

「へいへい。……どーせ私が勝ったとしても変な理由つけて入会させるつもりだったんだろうが」

 

 少し呆れ顔で言う響だったが楯無はそれを流したままその場から立ち去っていった。

 

 

 

 

 ハンガーに戻った響を待っていたのは千冬の拳骨だった。

 

「この馬鹿者が。学園の備品である打鉄を壊すな」

 

「仕方ないじゃないッスか。あの時咄嗟に思いついたんだから」

 

 響もそれに負けじと反論するがその二人の会話を真耶が割って入った。

 

「はい二人ともそこまでです。幸い打鉄の予備パーツはまだありますし特に問題はありません。……ただアーマースカートをあんな風に使う人も普通はいませんが」

 

 若干苦笑いだったが真耶は怒ることはせず響をいたわる。

 

「お疲れ様でした鳴雨さん。あの更識さん相手にここまで戦えるなんて凄いですよ!ねっ?織斑先生」

 

「ん……まぁそうだな。よくやった鳴雨」

 

「どーも。……んじゃあすぐで悪いんですけどセシリアたちの試合見せてもらってもいいですか?」

 

 打鉄から降りて響は真耶のところに向かう。真耶もそれに頷くと端末を操作しモニタに映し出す。そして響はセシリアと一夏の戦闘をじっくりと眺め始めた。

 

 

 

 アリーナから引き上げた響はセシリアと共に食堂で夕食にありついていた。響は今日はざるそばの大盛りを頼んでいた。セシリアのほうはオムライスのようだ。

 

 席に着きしばらく他愛のない話をする二人だったがそこで響が切り出した。

 

「今日の試合お前勝ったんだな」

 

「……はいわたくしの勝ちでしたわ。ですが――――」

 

「勝った気がしない。だろ?またはなんかもやもやしてる感じか?」

 

「両方ですわ」

 

 弱弱しく答えるセシリアだがさらに言葉をつなげた。

 

「あの方……織斑さんはわたくしが見てきたどんな男性とも違いましたわ。特に最後の方はとくにですわ。あそこまでの攻撃をされてなお向かってくるなんて考えられませんでしたわ」

 

「確かにそうだな映像を見ても最初はお前が圧倒的有利だったのに最後の方は一夏に圧倒されてたしな」

 

 蕎麦湯を飲み一息つきながらも響はセシリアをじっと見つめる。するとセシリアはポツリポツリと言葉をつむぎ話し始めた。

 

「わたくしの父はとても情けない方でしたわ。母もそんな父を鬱陶しく感じていたのかもしれません」

 

「なるほど……それでお前は男はみんなお前の親父さんみたいなもんだと思い込んじまうようになったわけか」

 

 コクリと頷くセシリアだがその後もさらに言葉をつなげてゆく。響もそれにただ黙って耳を傾ける。

 

「ですがあの方は違いました。女性に一切媚びず引け目も感じないそんな強い瞳をした人でしたわ。……響さんの仰ったとおりでしたわ。わたくしの勝手な物差しで男性を見ることはいけないことだったんですのね」

 

「まぁそうだな。男の中にも強いやつはたくさんいる。だから一息に男はダメな生き物だということを決め付けるのは私は気に入らない。……でもそれがわかっただけいいじゃねーかわかんないまますごすよりは全然いいと思うぜ?」

 

 ニカッと笑う響を顔を見てセシリアは若干顔を赤らめた。その様子に響が小首を傾げるがセシリアは黙ったままになってしまった。

 

「そういうことをわからせてくれた一夏に感謝だなセシリア。あとで礼言うなりわびるなりしとけよ?」

 

「はい。わかっていますわ。……ですがわたくしが一番感謝したいのはわたくしに男性を勝手な物差しで見るなということのきっかけを作ってくださった響さんに感謝したいですわ。――――本当にありがとうございました響さん」

 

 深々と頭を下げるセシリアの頭を響は軽く撫でる。

 

「そんな気にすんなよセシリア。友達だろ?私達は」

 

 微笑を浮かべながら言う響にセシリアは思わず涙が出そうになってしまったが何とかこらえた。なぜセシリアが涙を流してしまいそうになったかというと響のこの頭の撫で方がセシリアが幼い時母がやってくれたものとそっくりだったからだ。

 

 その後も二人は語り合いながら夕食を楽しみその日は幕を閉じた。




以上です。

よしこれで完全にセシリアが響に惚れた!……と思う。
今回は少し詰め込みすぎましたねゴメンナサイ

次回は鈴が出るかオリジナルストーリーかもしれません

感想、アドバイス、ダメだしなどなどお願いします。

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