IS-最強の不良少女-   作:炎狼

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逃亡

 ニヤリと笑って自己紹介をした響だが、オータムは訝しげな表情をしたまま響を睨んでいた。

 

 ……どういうことだ? ここいらの扉は全部ロックしておいたはず。

 

 彼女は開いた扉の前で佇む響の四肢を見るがISを装備している様には見られない。

 

 ……まさか生身であの扉を蹴り破ったってことか? いやまさかな、たかがガキにそんなことが出来るはずがねぇ。

 

「おい、いつまで黙ってんだよオバサン」

 

「あぁ!? 誰がオバサンだぁ!?」

 

「テメェしかいねぇだろうが。それとも何か? まだ自分はオバサンじゃねぇってか?」

 

 嘲る様な笑みを浮かべながらオータムを挑発すると、オータムは苛立たしげな顔をしていた。

 

 恐らく計画通りに一夏を始末できなかったことと予想だにしなかった乱入者である響に挑発されたことに苛立っているのだろう。

 

「……まぁいい。見られたからにはテメェも殺すだけだ!!」

 

 オータムは苛立たしげな声を上げたままアラクネの八本の装甲脚を響に向けて彼女に襲い掛かった。

 

「響!!」

 

 一夏の叫びも空しく、八本の装甲脚すべてが響の体を貫いた。

 

 しかし、

 

「なっ!?」

 

 聞こえてきたのは肉が裂かれる音や骨が砕ける音ではなく、オータムの驚愕の声だった。

 

 一夏もそちらに目をやると、そこには装甲脚に貫かれた響ではなく、響が来ていたメイド服だけが貫かれていた。

 

「おいおい、あんましボロボロにしてくれるなよ。クラスの奴らがなんやかんやがんばって作ってくれたんだからよぉ」

 

 その声のするほうに目を向けると、そこには平然とした様子でISスーツを着込んだ響がやれやれといった様子でオータムを見ていた。

 

 背後から聞こえる声にオータムはすぐさま振り返えった。しかし、その時既に自らのIS『夜天月』を纏っていた。

 

「さぁて、楽しく行こうぜオータムさんよ」

 

「ぬかせぇ!! ガキがぁ!!」

 

 ギラリと目を光らせる響にオータムは二本の腕と八本の足で攻撃を放つ。だが響はそれらをまるでダンスを踊るかのような軽やかな動きで避けていく。

 

「そらそらもっとがんばれよオバサン」

 

「黙れやぁ!!」

 

「イラつきすぎだぜ。言っただろ楽しく行こうぜってよ」

 

「この……クソガキが!!」

 

 オータムは毒づくと腰部装甲からカタールを取り出し、背中にある装甲脚を射撃戦闘用に移行させて応戦する。

 

「知ってるか? 射撃系の武器ほど軌道が読みやすいのはないんだぜ?」

 

 余裕綽々と言った様子で放たれる弾丸をすべて避ける響は呆れたような表情を浮かべている。

 

 オータムはカタールでの二刀流で近接攻撃を仕掛けたが、弾丸を避けるほどの動体視力を持つ響にそんなものが聞くはずもなく、簡単に腕をつかまれ攻撃をすべて封殺されてしまっていた。

 

「なんなんだテメェは!!」

 

「名前は言っただろうが。めんどくせー野郎だな」

 

「なめてんじゃねぇ!!」

 

 オータムは激昂し持っていたカタールを響に投げつける。案の定響はそれを華麗に避けて見せるが、オータムはカタールの影に隠れ響に蹴りを放つ。

 

 さすがに響も避けることはせず左腕でガードするがオータムの力は思ったよりも強かったようで左腕を大きく弾かれてしまった。

 

「あーらら」

 

「ハッ! 調子付いてるからだガキが!」

 

 オータムは笑いながら装甲脚の半分を射撃形態に、もう半分を近接戦闘形態に移行させたオータムの猛攻が始まった。

 

「ふむ……ちょっとなめすぎたか」

 

「何ぶつくさ言ってやがる!! テメェこの状況見えてねぇのかぁ!?」

 

 その猛攻を受け止めているものの、確実に先程よりも響が押され始めた。

 

「響!!」

 

「うるせぇな一夏黙ってろ」

 

 一夏の声を一蹴した響であるが、オータム攻撃がついに響に届き、響は大きく後ろに吹き飛ばされた。

 

 それと同時にオータムが先程一夏にやったようにクモの糸を飛ばし響の動きを封じた。

 

「ハハハッ! 余裕ぶっこいてるからそういうことになんだよボォケ!!」

 

「うるせぇババアだな。少し黙ってろよ」

 

 オータムの嘲笑も自身が置かれている状況すらも大して気にもとめていない様に響は大きくため息をついた。

 

「なぁこれってどん位の強度なわけ?」

 

「あぁ?」

 

「だから、このクモの糸みてぇなのどん位の強度があるのかって聞いてんだよ。難聴かババア」

 

「口のへらねぇガキが。残念ながらテメェには教えてやらねぇよ! ここまでコケにしてくれたんだからなぁ!!」

 

「ああそうかい。じゃあいいや」

 

 響はもう一度ため息をつくと腕に力をこめた。その様子を見たオータムはまたゲラゲラと哄笑した。

 

「まさかそれを引きちぎるつもりか? やめとけやめとけ、テメェじゃ無理だ」

 

 言いながら響に止めを刺すために響に近寄る。しかし、次の瞬間先程まで笑みを浮かべていたオータムの顔が蒼白に染まった。

 

「無理かどうかは試してみねぇとわかんねぇだろ」

 

 その声と共に、響を拘束していた糸が音を立てて引き裂かれ始めたのだ。

 

「なっ……!?」

 

「ったく、ベタベタして気持ちワリィな……。つーかISってこんなことも出来るんだな。あぁでも楯無のISも水が出てたっけか」

 

 クモの糸を何の力も加えていないように、さも当たり前のように引きちぎっていく響だが、オータムは信じられないようなものを見る目をしていた。

 

 ……バカな!? アラクネの糸はISを装備していてもそう簡単に取れるようなもんじゃねぇ! 何なんだコイツ!!

 

 驚愕に顔をゆがめるオータムであるが、直ぐに彼女はハッとして響を見た。

 

 既に彼女は両腕に装備されたスラスターを全開まで噴かしており、空気を裂く金切音が轟いていた。

 

「んじゃあ覚悟を決めろ。まぁ安心しろや、殺さねぇからよ」

 

「ッ!?」

 

 オータムが息を呑んだ瞬間、既にそれは始まっていた。

 

「オラオラオラオラァ!!!!!!」

 

 拳の壁と言ってもいいような強烈なラッシュがオータムの全身を襲ったのだ。

 

「ガッ……!?」

 

 叫び声もあげられずにオータムは拳の嵐に呑み込まれ、アラクネにも紫電が走っていく。

 

 ……想定外だッ! あのガキ……! 何が簡単な仕事だ小娘がぁ!!

 

 自分をIS学園に送り込んだ張本人である新参の少女のことを響に殴られながら怨みを募らせる。

 

 そして、ひときわ強く殴られた拍子にオータムは更衣室の壁を突きぬけ廊下まで吹き飛んだ。

 

「あーぁやりすぎちまったかなぁ」

 

 小さくため息をついた響は右手で一夏の白式を持って一夏へほうった。

 

「ほれ、さっさとお前もつけとけ。また捕られたら今度は取り替えさねぇぞ」

 

「お、おう。ありがとな響」

 

「うっせ、さっさと展開しろボケ」

 

 一夏がそれに頷き白式を展開した瞬間、吹っ飛ばされたオータムから嫌な気配がしたのを響は感じ取った。

 

「一夏、対ショック態勢とっとけ」

 

「は?」

 

「早くしろ!」

 

 響が叫んだとほぼ同時に圧縮空気の排出される音が鳴り、オータムのISが本体と外され、瞬く間に爆発を起こした。

 

 耳をつんざく様な轟音と閃光に響達は眼を塞ぐ。そして数秒の後爆炎が止むと、二人は先程までオータムがいたところに眼を向ける。

 

 そこにはバラバラになったISだけが残されており、オータムの姿は何処にもなかった。

 

「……死んだのか?」

 

「いや、どうせ生きてるさ。あの手の奴は結構しぶといもんだからな。さて、んじゃ私たちも上に上がるか」

 

「あ、ああ」

 

 響に言われ一夏は外に出るためにISを動かした。

 

 その途中、響は楯無に連絡を取る。

 

「聞こえるか楯無。悪い、逃げられた」

 

『あら、逃がしちゃった? まぁ大丈夫よ、既に私とセシリアさん達が展開してるから』

 

「用意がいいな」

 

『フフン。響ちゃんたちはゆっくり来ていいからね、多分直ぐに終わるだろうから』

 

「へいへい」

 

 響は楯無との連絡を絶ち逃げたオータムを一夏とともに追った。

 

 

 

 

 

 

 

 逃走していたオータムはふと感じた喉の渇きから付近の公園にあった喉を潤すため水道で水を飲んでいた。

 

「くそッ! なんなんだあのガキ! あんな野郎見たことがねぇ!!」

 

 苛立たしげに悪態をつきながら響に大して怒りを募らせているが、彼女の怒りはもう一人にも向いていた。

 

 ……あのガキはスコールがなんと言おうが関係ねぇ! 絶対にぶっ殺してやる!!

 

 怨嗟の念をこめていたオータムだが、ふと水が止まっていることに気が付いた。

 

 ……故障か?

 

 そう思って何の気なしに蛇口をひねってみるが、水が出ることはない。だが、彼女は水道の現状を見て息を呑んだ。

 

 なんと水が空中で遮られていたのだ。

 

「これはっ!? AICか!」

 

「そうだ」

 

 その声にオータムが驚愕し飛びのこうとするが、すぐさまAICで拘束されてしまった。

 

「クソがぁ!! ドイツのISか!!」

 

「ああ。そのとおりだ亡国機業」

 

 ラウラの冷徹なまでの声が響きオータムは彼女を睨むが直ぐにラウラはそれを一蹴した。

 

「動かないほうが身のためだ。既に優秀な狙撃手が貴様の眉間に狙いを済ましているからな」

 

 その声にオータムは苦々しい顔をするが、ラウラはそんなこと関係がないという風にオータムを睨んだ。

 

「ではさっさと貴様らの組織について吐いてもらおう。素直に話せば痛い目は見ずにすむぞ」

 

「誰が言うかクソッタレが!!」

 

「ふむ……では貴様が所持しているそのISはアメリカの第二世代のものだが……何処で手に入れた」

 

「だから誰が言うかっていってんだよ!!」

 

 恨みがましい瞳でラウラを睨むオータムだが、ラウラはそれにため息をついていた。

 

「やれやれ、素直に吐いてくれればこちらも楽なのだが……。まぁいいだろう。私も尋問の術は心得ている。少し長い付き合いになりそうだな」

 

 ラウラはそういうとオータムに近寄ろうとするが、プライベートチャネルからセシリアの焦った声が聞こえてきた。

 

『ラウラさん! 一機来ますはなれてください!!』

 

「なに!?」

 

 ラウラが反応した瞬間、右肩をレーザーに貫かれた。

 

「ぐっ!!」

 

 ラウラは眉間に皺を寄せながらも眼帯を取り外し『ヴォーダン・オージェ』を起動させるものの、続けてもたらされた三発のビームを避けることしかできなかった。

 

『ラウラさん早く下がってください! わたくしが行きます!!』

 

 セシリアは弾道から敵機がいる位置を割り出して照準を向けるが、その姿を見た瞬間彼女の顔が強張った。

 

『まさか!? あれはッ』

 

 セシリアの瞳に移っていたのはあらわすとすれば巨大な蝶のようなISだった。蝶を思わせるのはそのISのスラスターユニットであり、セシリアはその姿に見覚えがあった。

 

『……サイレント・ゼフィルスッ!』

 

 自身が駆るブルー・ティアーズの二号機である機体がそこにいたのだ。

 

「セシリア! 早く撃て!!」

 

「くっ……!」

 

 ラウラに言われセシリアはライフルを構えるが、ビームが当たる瞬間にサイレント・ゼフィルスの特徴であるシールドビットに弾かれてしまう。

 

 ならばとこちらもレーザービットを射出するが、サイレント・ゼフィルスを駆る少女はそれを高速移動中にもかかわらずいともたやすく打ち落として見せた。

 

「なっ!?」

 

 ラウラが隣で息を呑む声が聞こえるが、そこで二人のプライベートチャネルに通信が入った。

 

『二人とも下がっていいわよ。後は私がやるわ』

 

 その声と共に高速接近していた敵機とオータムの間に『ミステリアス・レイディ』を駆った楯無が悠然と現れた。

 

 突然の楯無の出現に、たまらずサイレント・ゼフィルスを駆る少女は動きを止めた。

 

「はいストーップ。ちょっとおねーさんと遊びましょう」

 

「……」

 

 少女はバイザーを掛けているため目線は伺えないが、恐らく楯無を見据えていることだろう。

 

 楯無はランスを構えて切先を少女の喉元に当て、自身の周りには水のヴェールを張り巡らせている。

 

「さて、聞かせてもらえないかしら。貴女達の組織のことを」

 

 笑顔で言っているものの、その声にはかなりの威圧感が見られた。

 

 しかし、少女はそんなことを特に気にした風もなく自身が持つビームビットを展開し楯無へ砲門を向けた。

 

「あら、それが答えかしら? けど残念そんなもので私を殺すのは無理」

 

「……確かに貴様を殺すのは無理かも知れんな。だが……」

 

 突如、ビームビットの砲門がぐるりと楯無から砲門を変えて学園側に向いた。

 

「……学園にいる生徒や一般人たちはどうだろうな」

 

 その声と共にすべての砲門から火が噴き、まっすぐに学園へと向かった。

 

「くっ!!」

 

 楯無は僅かに口元を歪めるが、直ぐに彼女は行動を起こそうとスラスターをふかそうとするが、彼女達の目の前でビームがすべてかき消された。

 

『楯無よぉ、もうちょい注意しとこうぜ』

 

 プライベートチャネルから飛び込んできたのは呆れ声を漏らす響であり、彼女の右腕の掌が発光していた。

 

 夜天月の武装の一つ『神炎ノ御手』が発動していたのだ。

 

「……ありがと、響ちゃん」

 

『気にすんなって』

 

「ええ。……さて、学園の方は無事だけれど。まだ抵抗するかしら?」

 

 楯無が少女のほうに向き直ると、少女の方は小さくため息をつきいて腰部から古典的な銃を取り出してつぶやいた。

 

「……こういう古典的なものもたまには使い道があるか」

 

 その声を聞いた瞬間、少女は上空に向けて二つの弾丸を放った。

 

 楯無はその弾丸を見た瞬間全員に言い放った。

 

「全員眼と耳を今すぐ塞ぎなさい!!」

 

 その声を聞いた皆はすぐさま目を閉じ耳を塞いだ。それとほぼ同時に周囲にまるで稲妻が落ちたような轟音と眩いばかりの閃光が迸った。

 

 ……まさかフラッシュバンなんて物をこのご時世に使うなんて。

 

 眼をつぶっていても痛いほどに伝わってくる閃光に顔をしかめる楯無であるが、それを尻目に少女はオータムのもとまで向かい彼女を回収。

 

 そしてすべてが止む頃には飛び去っていってしまった。

 

 後に残されたセシリアたちは苦い顔をしていたが、楯無と響だけは笑みをこぼしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 その日の夜、学園祭も無事終了し、一夏争奪戦も楯無の反則的な技で幕を閉じると、寮のロビーで響とシャルロット、セシリアにラウラが集まり今日起きた出来事の話をしていた。

 

「まぁそういう感じだ。ラウラはもうあいつ等の事はそれなりに知ってたんだっけか?」

 

「ああ。軍部のほうでも話には持ち上がっていたからな。しかし、実際相対してみたのは初めてだ」

 

「今回現れたのはどんな人たちなの?」

 

「一人は蜘蛛みてぇなISを持ってたオータムって女と、もう一人はどういうやつだっけ」

 

「……『サイレント・ゼフィルス』を駆っていた小さな女の子でしたわ」

 

 セシリアはスカートを握り締めて悔しげにうつむいていた。それもそうだろう、BT兵器の適正では現在セシリアがトップクラスのはずだ。それをいとも簡単に自身の前で操られてしまったのだから彼女のプライドはさぞ傷ついたのだろう。

 

 シャルロットたちがそれを心配げに見つめる中、響は立ちあがってセシリアの頭をもみくちゃにした。

 

「ひゃあ!? ひ、響さん!?」

 

「ったく、なにしょげてんだテメェはたかだか一回負けたくれーでへこんでんじゃねぇよ」

 

「で、ですが……」

 

「くどい。いいか、負けたと思うなら次戦うときに倒してやるって心持でいろや。私が知ってるお前は負けず嫌いなわがままお嬢様だぜ?」

 

 ニヤリと笑う響に対し、セシリアはキョトンとしたが直ぐに笑顔を取り戻し響の言葉に頷いた。

 

 しかし、その二人の背後では光の灯っていない瞳でシャルロットとラウラがブツブツとつぶやいていた。

 

「……僕だって駆けつけたらもっとがんばれたのに……」

 

「……私だって頑張ったと言うのになぜセシリアばかり……」

 

 その後、今日は全員で大浴場へ行くということになり皆で裸の付き合いをした四人であったが、シャルロットとラウラは響に御褒美として頭を洗ってくれとせがみ、響はため息をつきながらもそれに答えた。

 

 同時に風呂に入ったことにより黒く染めた響の髪の毛もいつもの金髪に戻り、三人は心底残念そうな顔をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 深夜、生徒全員が学園祭の疲れからか静かに眠っている中、響は夜のIS学園の廊下を歩き生徒会室を訪れていた。

 

「時間を考えてくれないかね楯無」

 

「ごめんごめん、けど今日会ったことは今日中に整理しておきたいじゃない?」

 

「あぁそうかい」

 

 響は小さくため息をつくといつも自分が座る席へどっかりと腰を下ろした。

 

「さて……今日起きた事だけど、響ちゃんは戦ってみてどうだった?」

 

「どうって別にどうも思ってねぇよ。あのオータムって奴も想像してたよりも大して強くなかったしな。個人的にはお前の目の前で閃光弾撃ったあのチビスケと戦ってみてぇな」

 

 ケラケラと笑う響に楯無も肩をすくめると、口元に手を当てて今日相対した少女のことを思い出す。

 

「私個人の意見からすればだけど、あの子はきっと強いわよ。それでもいける?」

 

「上等。強くなくっちゃあ話にならねぇからな」

 

 響の笑みは何処までも自身の力に自信を持った光を宿していた。しかし、それはISの力ではなく、彼女が本来持っている心身の強さの現われなのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 高層マンションの最上階。豪奢な家具や装飾品で彩られた室内に場違いな音が響いた。

 

「テメェ!! ありゃあどういうことだ!!」

 

 怒り心頭のオータムは少女の胸倉を掴み、壁に押し付けていた。しかし、少女の方は平然としており、オータムのことを冷ややかな眼で見つめるだけだった。

 

「……」

 

「何とか言えよクソガキ!!」

 

 オータムは興奮した状態でナイフを取り出し少女の眼前に突きつけた。

 

「その顔ズタズタにしてやろうか……!?」

 

 その凄みにさえ少女は全く動じずにオータムを見ていたが、そこでバスルームの扉が開き、透き通るような金髪の女性が現れた。

 

「やめなさいオータム」

 

 女性に言われると先程まで鬼の形相だったオータムの表情が僅かに緩んだ。

 

「スコール……」

 

「怒ってばかりでは始まらないわ。少し落ち着きなさいな」

 

 スコールと呼ばれた美しい容貌の女性はゆっくりとソファに腰を下ろし小さく息をついた。

 

「スコール、お前は私がこうなるってことを予想していたのか!?」

 

「ええ」

 

「だったらどうして言ってくれないんだよ!! ……私はお前の……!」

 

「分かっているわオータム、貴女は私の大切な恋人ですもの」

 

 そういわれた瞬間、先程までの怒りは何処に行ったのかオータムは笑みを綻ばせた。

 

 その後スコールはオータムと甘い雰囲気を漂わせていたが、少女はそんなものにまるで興味がないように部屋を出ようとした。

 

 しかし、そこでスコールが彼女を呼び止めた。

 

「エム、サイレント・ゼフィルスの整備はちゃんとしておきなさいね」

 

「……了解」

 

 エムと呼ばれた少女は部屋を後にして自室へと戻ると胸のロケットを握り締めて、今日自身が放ったビームビットの攻撃をかき消して見せた少女と、ロケットの中に写っている女性を照らし合わせていた。

 

「……なぜあのような全くの別人にあの人を照らし合わせてしまっているんだ私は……」

 

 エムはベッドに向かうと体を預けながら心の中でつぶやいた。

 

 ……まぁいい、これで私の復讐が始められる……。あの人に会うことが出来る……。

 

「……(ねえさん)織斑千冬」

 

 心なしか少女の口元は邪悪にゆがんでいた。




とりあえずこれで学園祭終了……

そして次からはいよいよめがねちゃんが来ますよーw
簪がくるぜい!!
……まぁ簪は可愛いと思いますけどそこまで思い入れはないんですがw

とりあえず、なんかエムのフラグも建った希ガス……w


では感想などあればよろしくお願いします。

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