IS-最強の不良少女-   作:炎狼

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狩りに夢中で更新がかなり遅れてしまいました

久しぶりに書いたので下手かもしれませんが

どうぞ


発覚

 千冬の地獄のような補修を終えた翌日の放課後、響は珍しく生徒会室に顔を出していた。

 

「珍しいね、響ちゃんが水曜日以外に来るなんて」

 

 不思議に思ったのか楯無は聞いた。すると響きは頭をかきながら言う。

 

「ちょっとお前に頼みたいことがあってな」

 

「頼みたいこと?」

 

 小首を傾げる楯無に響は頷くと目を据わらせ告げる。

 

「昨日転校してきた、シャルル・デュノアとラウラ・ボーデヴィッヒの二人を調べてくれないか?」

 

 それを聞いた楯無は目を細めつつ響を見据える。いきなり転校してきた生徒のことを調べろなどといわれれば警戒するのは当然といえば当然だ。

 

「どうして?」

 

 片手を響に投げかけるように聞き返す楯無に、響は近くの椅子に腰を下ろしつつ理由を述べる。

 

「気になることがあってな……まぁでもボーデヴィッヒの方はどっちでもかまいやしないが。デュノアの方は確実に調べて欲しいんだ、なんつーかあいつ隠し事をしてる気がするんだよな」

 

「隠し事ねぇ……」

 

「ああ、例えば……デュノアは男ではなく、女だとかな」

 

 一瞬驚いたような顔をする楯無だが、すぐに指をあごに当て考える。だがその目は響をしっかりと見つめていた。

 

「響ちゃんはどうしてそう思ったの?」

 

「昨日アイツとぶつかってな、そん時アイツの胸に手が当たっちまってさ。妙に柔らかかったんだよな……まぁこれぐらいじゃ証拠にもなりゃしねーけどな」

 

「ふーん……わかったわ。証拠としては不十分だけど私も興味出てきたから調べましょう。明日の生徒会の時に渡すわ」

 

「ああ、ありがとな」

 

 礼を言った響は席を立ち、生徒会室を後にした。その姿を見送った楯無も響が立ち去ると同時に、虚に連絡をとった。

 

 

 

 

 生徒会室を後にした響が廊下を歩いていると、前方から眼帯をつけた一人の生徒が歩いて来た。

 

 ラウラ・ボーデヴィッヒだ。

 

 彼女はまるで何も興味がないかのように、冷然とした様子で歩をすすめる。

 

 ……おーおー、殺気出しまくってらぁ。

 

 内心で苦笑を浮かべながら響も進む。そしてラウラとすれ違う瞬間、響もラウラに向け殺気を放つ。

 

「っ!?」

 

 それに気付いたラウラはホルダーに収納されているナイフを抜き放ち、響に切っ先を向ける。その顔は先ほどの無表情から、多少の焦りが見えていた。

 

「やっぱりそういった顔した方が人間味があっていいと思うぜ?」

 

 ナイフの切っ先を突きつけられているのにも関わらず、響の声は至って冷静だ。

 

「……貴様、何者だ?」

 

「何者だって言われてもなぁ……お前と同じクラスの鳴雨響だ、名前だけ覚えといてくれや」

 

 自分を脅すようなラウラの声にも動じることなく響は返答した。だがその口元は不適に歪んでいた。まるで何か面白いものでも見つけたかのように。

 

 一方ラウラのほうも少し響を睨みつけていたがやがて頷いた。

 

「鳴雨響だな……いいだろう、覚えておいてやる」

 

 了承してはいるものの、その声にはまだ疑念が見え隠れしている。すると響はまたも飄々とした様子でラウラに声をかけた。

 

「いい加減ナイフをしまってくれないか? 刃物を突きつけられちゃビビッて話もできやしねぇ」

 

 そんなことを微塵も思っていないのにわざとらしく響は提案するものの、

 

「残念ながらそれは無理な提案だ。私に対しあんな殺気を放った者の言うことを信用できるか」

 

「でも名前は覚えるんだな」

 

「名前など瑣末なことだからな。だがナイフを下ろせというのは認めることができん、ナイフを下ろした瞬間貴様が攻撃してくる可能性も否めないからな」

 

 未だナイフを突きつけた状態でラウラは言い放つ。だが響はそれを見透かしていたかのように笑いを漏らした。

 

「まぁそりゃあそうだわな。……じゃあ話はいいわ、このまま帰る。またなボーデヴィッヒ」

 

 そのまま振り向くことはせず、響は手をひらひらと振りながらその場から去っていった。ラウラは響が去っていく姿を見つめていただけだった。

 

「一体……何者なのだヤツは」

 

 彼女の疑問に答えるものはいなかった。

 

 

 

 そして明くる日の放課後、生徒会室に響と楯無がいた。すでに活動は終了しており、残っているのは二人だけだ。

 

 二人の手元には数枚の紙があり、そこにはシャルルとラウラ二人の情報がびっしりと書き込まれていた。ただし枚数的に多いのはシャルルのほうだ。

 

「昨日響ちゃんに言われたとおり調べてみたけど……ボーデヴィッヒさんは別としてデュノア君には随分と怪しい点が出てきたよ」

 

「んで、その怪しいところってのは?」

 

「うん、まず彼の実家はデュノア社っていうISシェアの世界第三位の有名会社なのよ」

 

「へー……そいつぁすげーな」

 

 響が関心の声を漏らす、だが楯無は「だけど」と言葉を続けた。

 

「現在のデュノア社は経営危機に陥っていてね、第三世代の開発を進めているようだけれど、元々デュノア社で有名なリヴァイヴもかなり遅く製造された機体なの。そしてなおかつ、国からの予算も大幅にカットされているし、さらにはトライアル……まぁ試験みたいなものなんだけど、それに合格しなければ援助はなし、ISの開発許可も剥奪って事みたい」

 

「なるほど、てことは考えられるとすれば……」

 

 楯無に聞くように響が首を振ると彼女は頷いた。

 

「そう、あの子がもし本当に女の子なのだとして何故男装をしてこの学園に来たのか。響ちゃんも大体予想はつくんじゃない?」

 

「ISを使える男の二人目が自分の会社にいるとすれば世界の注目を集められるってわけか」

 

「そしてあわよくば織斑君のISのデータを盗み出す、とかね」

 

 腕を組みながら楯無は背もたれに寄りかかった。響の方も紙をぺらぺらとめくりながら溜息を漏らした。だがその瞳には明らかな怒りがこめられていた。

 

「仕方ない……あの子を呼んで確かめましょうか」

 

 もたれかかっていた楯無はすぐに校内放送を使い、シャルルを生徒会室に呼び出す準備を始めた。

 

 

 

 

 楯無がシャルルを呼び出してから数分後、シャルルが緊張した面持ちで生徒会室にやってきた。

 

「あの、シャルル・デュノアです。それでご用件というのは?」

 

「まぁまぁ、そう固くならないで。その辺の椅子にでも座って話しましょう」

 

 楯無が微笑みながら言うと、おずおずとした様子で椅子に腰掛けた。だが彼の視線は楯無ではなく、響の方にそそがれていた。おそらく先日のことを気にかけているのだろう。

 

「この前はぶつかってゴメンね、えっと鳴雨さん」

 

「……いや、こっちがぶつかっただけだから気にしなさんな」

 

 告げた響は目を閉じた。すると楯無が軽く咳払いをして切り出した。

 

「さて……、単刀直入に聞くわね? デュノア君、あなたは何者なのかしら?」

 

 それを聞いたシャルルの顔は蒼白に染まる、だがすぐに冷静な声音で楯無に切り替えした。

 

「僕はれっきとした男ですよ、入学書類にも普通に……」

 

 そこまで言いかけたところで楯無がシャルルの言葉をさえぎり言い放った。

 

「誰もあなたが男か女かなんて聞いてないわよ? 私はただ何者なの?って聞いただけ」

 

「えっ?」

 

 一瞬何を言われたかわからないといった風な声を上げたシャルルだが、すぐに気付き口元を押さえた。

 

 その様子を見た楯無は深く頷くと先ほどまでの冷淡な口調から少し声を和らげ、シャルルに聞いた。

 

「大丈夫よ、貴女が女の子だからって私達は何もしないから。だから本当のことを話してくれるかしら?」

 

 楯無の問いかけにシャルルは観念したのかポツリポツリと事情を説明していった。

 

 やはりその中には楯無と響が予想したとおりのことが入っていた。また、彼女は自らの本名がシャルロット・デュノアだということも話した。

 

 全てを説明し終わったシャルロットは、まるで憑き物が取れたかのように清々しい顔立ちを見せる。すると彼女は響に問いかけた。

 

「やっぱり僕のことを気付いたのは鳴雨さん?」

 

「……そうだ」

 

 目を閉じたまま答える響を確認したシャルロットは苦笑いをもらしている。その様子を薄目で確認した響は溜息混じりに楯無に問うた。

 

「でもどうすんだ楯無、このままほっとけばコイツはフランスに送還されるんじゃねーのか?」

 

「そうだね普通であればすぐにでもフランスへ送還。だけど、IS学園には特記事項というものがあってね。その中にこういうものがあってね『本学園の生徒は在学中においてあらゆる国家・組織・団体に所属しない。また、本人の同意がなければ、それらの外的介入は原則として許可されないものとする』っていうものがあるのよ」

 

 怪しげな笑みを浮かべながら楯無は響に告げた。

 

「つーことはデュノアがここに居たいと言えば、フランスだろうが会社だろうが手出しができなくなるわけか」

 

「そういうこと……さてデュノアさん? 貴女はここにいたいかしら?」

 

 楯無は手のひらをシャルロットに向け意見を聞く。対しシャルロットのほうはトントン拍子に話が進んでしまい、未だに状況が全て飲み込めていない様子だが少し考えた後、頷いた。

 

「僕は……ここにいたいです」

 

 弱い声であったが、確かな決意もその中に見られた。それを聞いた響は立ち上がり、シャルロットに言い放った。

 

「デュノア、今からお前の親父のところに連絡をつけろ」

 

「え?」

 

「早く!」

 

 荒げられた声にシャルロットは飛び上がったが、すぐに準備を始めた。それを見ていた楯無はクスクスと笑いを漏らしていた。

 

「最初はお前が話せ、声が私達に伝わるように音量は最大でな」

 

「う、うん」

 

 頷くとシャルロットは空間モニタを展開し、父親に連絡を取る。数回のコール音の後、モニタの中に金髪の男性が表示された。

 

『なんだ? なにか進展があったか?』

 

「い、いえ。そうではなくて……えっと……」

 

 たどたどしく答えるシャルロットに苛立ちを覚えたのか、彼女の父親は語気を荒げ始めた。

 

『進展もなしに私に連絡をとったのか? まったく……貴様も使えんヤツだ』

 

 大きな溜息と共にシャルロットを罵倒する父親。しかも彼の瞳はシャルロットを見てすらいない、自分の机の上においてある書類を見ながら話しているのだ。

 

 シャルロットも言い返せずに、言葉に詰まってしまっている。やがて彼女の父親もモニタを切ろうとするがそれを響が止めた。

 

「ちょっと待てよ、何勝手に切ろうとしてるんだ?」

 

『な、何だ貴様は!? ……まさかシャルロット! 貴様ばれたのか!?』

 

 突然の響の声に驚愕の声を上げると共に、シャルロットに対して怒鳴り始めた。だが響がそれを許さない。

 

「おいおい、今は私と話そうじゃないか?」

 

『貴様と話すことなど何も無い、引っ込んでいろ! これは私達の問題だ!!』

 

「私達? それはもしかしてシャルロットとアンタの問題ってことか? それなら随分と自分勝手だな、さっきまでそんな素振りも見せなかったってのに急に父親面か。むしが良すぎだろうよ」

 

 嘲笑うかのように響が告げるとシャルロットの父親は眉間にしわを寄せ、怒りをあらわにする。それを見ていた響はさらに言葉を連ねていく。

 

「もしかして怒っちまった感じですか~? テメェでまいた種なのに私に対して怒るなんてお門違いもいいところだな」

 

『貴様っ!』

 

 先ほどよりもさらに煽るような声で聞いたせいで、彼の精神を逆なでしてしまったらしい。

 

『シャルロット! 貴様はすぐさまこちらに戻って来い! さもなければ本国からの手が……』

 

「それはできねーよ、IS学園はどの国にも属さないからな。故にいくらテメェが吼えようが、フランスが何か言ってこようがコイツを戻すことなんてできねぇんだよ。そこんところわかってますかぁ?」

 

 言葉をさえぎり、さらに自らの頭を指で数回たたき挑発する。それに対しシャルロットの父親の顔は見る見るうちに怒りで顔が赤くなってきている。

 

『貴様いい加減にしておけよ。貴様ごときがこの私に楯突いて無事でいられると思うなよ……!!』

 

 地を這うような怒りの声をあげる父親の声に、響はまったく動じることはなく、にやりと口角を上げ告げた。

 

「無事でいられる? ハッ! やれるもんならやってみろよ、テメェ一人じゃ自分のケツも拭けねぇ甘ちゃんがよぉ!」

 

 声を荒げてはいるものの、響は笑みを浮かべている。だがその笑みはとても邪悪なものだった。

 

「私を殺したいならそうしてみな、特殊部隊でも何でもよこしやがれ。だけどそん時は……潰してやるよ」

 

『っ!?』

 

 響が告げると同時に、彼の体がこわばった。顔も先ほどとは打って変り蒼白になり、まるで蛇に睨まれた蛙のようにすくみあがってしまっている。

 

「まぁ私からはそれぐらいだ。……ああ、あと一つ言い忘れた。テメェにシャルロットをどうこうする権利なんざ毛ほどもありゃあしねーんだよ。このヘタレヤローが」

 

 最後にそれだけ告げると、響はこちらからモニタの電源を落とした。

 

 全てを聞いていたシャルロットは呆然、楯無のほうは腹を抱えて笑っている。

 

「こんだけ言っときゃなにもしてこねーだろ。つーかいつまで笑ってるつもりだ楯無」

 

「あーごめんごめん。響ちゃん容赦ないなーって思ってさ」

 

 笑い終わり息を整えながら楯無は答える。実際かなり面白かったのか目に涙まで溜まっている。

 

「うっせボケ、アレぐらい言っとかねぇとあの手の馬鹿は付け上がるんだよ」

 

 言いながら響は椅子に腰を下ろし脱力する。

 

 するとシャルロットが響を心配するように声をかける。

 

「でも大丈夫かな……あの人もしかしたら本当に何かしてくるかもしれないし……鳴雨さんにこれ以上迷惑をかけられないよ」

 

「馬鹿かお前、もし迷惑なら最初から何もいわねーよ。私が好きでやってることだ気にすんじゃねーよ」

 

「でも!」

 

「くどい」

 

 なおも意見を言おうとするシャルロットに響は軽めのチョップをくらわせる。いきなりチョップをくらいシャルロットは目を白黒させた。

 

「いいか? これは私が勝手にやったことだ、お前が気にすることは何もない。もしこれ以上何か言うならぶん殴るぞ」

 

 軽めの脅しをかけながら響が告げると、シャルロットも渋々ではあったものの頷いた。

 

「話はまとまったみたいね。それじゃあ今日はこれで解散。私はまだやることがあるから二人は帰っていいわ」

 

 楯無が言うと、響とシャルロットは生徒会室から出て行った。

 

 

 

 

 生徒会室から出て寮に戻るため校舎内を歩いていると、シャルロットが響に告げた。

 

「ねぇ鳴雨さん、僕……女の子だってこと打ち明けようと思うよ」

 

「そうか、まぁそれはお前の選択だしな。いいと思うぜ私は」

 

 微笑しながら響が答えるのを確認したシャルロットはさらに続けた。

 

「えっとね……それで……鳴雨さんにお願いなんだけど。――僕の友達になってくれないかな? シャルル・デュノアとしてじゃなくて、シャルロット・デュノアの友達に」

 

 顔を俯かせ、少し恥ずかしそうにもじもじとしながらシャルロットがつぶやくと響はその頭にポンと手を置き、

 

「ああ、いいぜ。よろしくなシャルロット、あと私の事は響でいい」

 

 それを聞いたシャルロットは俯かせていた顔をあげ、満面の笑顔で響に答えた。

 

「うん! よろしくね響!」

 

「おう。そんじゃ飯でも行くか」

 

 二人は並びながら寮まで歩いていった。

 

 

 

 

 響との夕食を終えたシャルロットはシャワーを浴びながら、生徒会室で父に臆することなく挑んでいた響の姿を思い返していた。

 

「……かっこよかったなぁ響……」

 

 自分では到底できないであろう行動を思い返したシャルロットは思わず口元を緩ませた。頬も少し赤く染まっている。

 

 結局そのあともシャルロットの頭の中は響のことでいっぱいだった。

 

 

 

 

 そして翌日、シャルロットが自身を女であることを明かし、クラス中が驚きの声に包まれたのは言うまでもない。

 

 ちなみに一夏は箒と鈴音に問い詰められていた。




シャルフラグゲット!

さて次はトーナメント戦の直前までやりたいと思います

感想、ダメだし、アドバイスお待ちしております。

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