現代日本のオタサーの姫が、古代ブリテンのお姫様になったら   作:蕎麦饂飩

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『私』の為に世界があるのか、
世界の為に『わたし』があるのか


究極の命題

ヨーロッパとその他辺境周辺国を併合させたヨーロッパ大帝国の中で、

権力=『象徴たるわたし』の争いが顕在化してきているのが気になるけれど、それよりまずは領土拡大が先ね。

足を引っ張り合う味方の問題よりも、明白な敵の方がムカつくから。

それに、今のところは奪う相手がいないと生計が安定しないから、マグロや鮫が泳ぐように奪い続けるのが最良だ。

 

ヨーロッパ世界で生まれて、白人系のイケメンに囲まれて過ごしてきた私の価値観では、

正直に言えば、その他の人種には今ではそんなに興味が無いの。

だから、ここから先は懐柔吸収では無く、今まで掻き集めに掻き集めた総戦力で、征服踏破の道を進む事にした。

勿論言いだしっぺは私ではない。嫌な役目は人に任せるに限るわ。

 

モンゴルや中国の大帝国も纏めて蹂躙。

未だに内政重視なわたしの父アーサー王は、そこまでブリテン以外の事には執着しないけれど、

ローマ皇帝ゼノンを初めとする内地ヨーロッパ組は、

かつて存在した征服王とかいう人が成し遂げられなかった悔いを達成すると張り切っていた。

 

アフリカ方面へもエジプトを拠点として攻めて攻めて攻めまくる。

双子の姉を人質に、弟を前線指揮官として派遣させた。

その上で更に戦争を煽る。他者を使って煽らせる。

 

それにしても白人と黒人の人種戦争とまでになってくると最早止まらないようね。

どちらかを絶滅させるまで終わらない。

かつて黒人が変異種たる白人を迫害して追い払った仕返しだとか、過去をどんどん掘り下げて互いに正当化し合うから、

どんどん過去のしがらみが発掘されて。それが広まって、常識化して、戦争が正当化される。

 

まあ、別にいいけどね。ヨーロッパ=『わたし』に服従するか、さもなくば死ねばいい。

終わりの見えない憎しみの連鎖の結末なんて、無理に見る必要なんかない。

全ての者は私だけを見ていればいいんだから。

 

 

後は、アメリカ大陸やオーストラリア大陸や日本列島などの飛び地程度かしら。

フィリップ・K・ディックの映画じゃないけれど、こう言いたくはなるわよね。

 

「世界を我が手に」

 

 

 

 

 

 

ヨーロッパ大帝国が対馬や九州を大船団で攻めようかとしている時、

わたしは久しぶりにブリテンに帰ってきていた。

 

わたしを中心にヨーロッパにおいては戦争は絶滅した。

ヨーロッパの白人種は互いに手を取り合い、歌い合う平和を手に入れた。

食物や資源はヨーロッパ以外(採取場)から持ってこれば良かった。

 

少々残る問題は、わたしを巡る男達の欲望が顕在化し過ぎてきた事。

それと『わたし』の下位互換として全ての女性が存在するという意識が広まり、

その『わたし』が男を立て過ぎるものだから、私以外の女性に価値が無くなり不満が出てきている事。

『わたし』による融和では無く、ヨーロッパによる虐殺蹂躙の被害に遭った地域での抵抗が思いの外存在する。

精々その程度に過ぎない。

 

そう考えていると、かつてはダントツで一番のお気に入りだったマーリンが私に話しかけてきた。

 

 

 

 

「まさか、予想以上だったよ。ここまで君が『理想のお姫様』として活躍してくれるとは思わなかった。

それで、この後はどうしたいんだい? ここらで『完全な理想のお姫様』にでも完成するつもりかな?

そうだとしたら僕は君を見縊っていたことを謝罪するよ」

 

 

『完全な理想としての完成』

それはつまり――――――――




選択肢
・ええ、『わたし』は理想のお姫様ですから。
・いやよ、『私』はまだお姫様を楽しみたい。

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