現代日本のオタサーの姫が、古代ブリテンのお姫様になったら   作:蕎麦饂飩

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耐えがたい世界規模のヒロイン不在の空白も終わる。
これからは――――


両雌共命別(われらともにてんをいだかず)

わたしの頭脳は私に必要な世界の知識を際限なく吸い上げた。

わたしの身体は私が望む男を際限なく惑わせる魅力を手に入れた。

男達を競わせて、争わせて、融和させて、信仰させて、私は今、ヨーロッパのお姫様として此処にいる。

この意味が解る人がいるかしら、…………いいわ、教えてあげる。

このわたしが! 世界で一番! カワイイって事なのよ!

 

何処へ行っても各地域のイケメン権力者がわたしをチヤホヤしてくれる。

私をチヤホヤしてくれる。

 

最ッ高に気分が良いわ。前世で無駄な人生を費やした甲斐があったと言うものね。

…だから、私が拠点をローマに移したことを良い事に、

ブリテン本国(実家)の一部で私に批判的な動きが広がって来たという事も気にしないでいてあげる。

 

反対勢力が、敵対に乗り気では無い王妃を旗頭にしようと動いているようだけれど、

未だに子供のいないあの義母では神輿には不十分。

自分で周囲を動かす意思と力の無い女は、男を上手く転がせて初めて価値が出る。

「あの子性格悪いよ」と可愛い女の子に嫉妬しただけにしか見えない女性は、男達から軽蔑の対象にしかならない。

一発逆転で理想的な王子様でも生み落せばどうなるかはわからないけれど、あの石女(うまずめ)ではそれも無いでしょうね。

そして効率的にブリテンを維持する事にしか興味の無さそうな父親がわたしを廃する理由が無い。

あったとして、私の正道がアーサー王の目指す正道と違う程度の事なのだから。

結果としてわたしはブリテンだけでなくヨーロッパを救ったのだから文句は言って欲しくない。

そもそも、女性に嫌われることがあったとしても、男性に嫌われるはずなんて絶対にないんだから。

 

今だって、中東と東欧とローマからの独立の機と見たエジプトの方からヨーロッパが攻められて来ているけれど、

今までしてきた事のスケールを広げただけの話。

相手が地球の人間の男である限り、『わたし』に敗北なんてものは存在しない。

 

元々はエジプトの支配者はギリシャの人々であったとのことだったらしいけれど、

結局は地元民との融和も進み、内心的にはギリシャの後継者たるローマよりも土地の人々に根付いた政治体系となったらしい。

故の今回の反乱。かつて見た土着信仰と密接に関連した太陽を再び仰ぐ黄金時代に回帰するために、

ローマによる効率的支配の為に生存を許されて雌伏の時を過ごした中流層が、ローマから派遣されてきた上流層を廃して反乱。

その旗頭となったのが双子の姉弟だとのこと。

本当かどうか信憑性の薄いものだが、エジプト王朝の落とし胤の系譜であり、

エジプト王朝滅亡時のクレオパトラの子達になぞらえて、再び王朝の再復興を謳っているとのことだった。

――まあ、結局は独立して自分達がお山のてっぺんに立つ為のお題目でしかないのでしょうね。

天に立つのは私一人で良いというのに。

 

双子の内、特に姉のクレオパトラ・セレネ3世が権力を持っているとのこと。

恐らく、絵を描いた人間が夫として収まる為に男児たる弟では無く、女性の姉に権力を集中させたのではないかしら?

それが的中していた場合、崩す事は非常に簡単な事よね。

 

権力が欲しい。その為に女性を手に入れる。その女性が美しければいう事は無い。

その条件なら上位互換が存在する。そう――――わたしに他ならない。

 

例え、彼ら彼女らの信念が本物だったとしても、こちらは今までに引き入れたヨーロッパのあらゆる国の英雄たちがいる。

一地域の英雄たちなど数の力で呑み込める。最早時間の問題ね。

少しでも勢いを弱める事が出来れば、反対派を醸成して掻き回した後、責任を双子に押し付けて、

私が信仰の座に収まればいい。共に天を抱く事は無い。男達に求められるのは私だけでいい。

クレオパトラ3世とやらは奴隷たちにでも恵んであげれば良いのかしらね。

 

 

東欧の人間達もそこまで脅威では無い。

こちらの方は、広大な土地を持つものの、独立精神と反乱気質が高く、自信家で裏表こそ薄いが、その分欲が解りやすく滲み出ていた。

そういう人間を操るのは非常に簡単だったわ。

あらゆる言語や文化を即座に理解して応用できる文系チートなこのアムルの身体の前に、人気取りで勝負して勝てる者はいない。

私は敢えてヨーロッパ本土に西側を応援させて、それでいて厳重な守りの下、わたし自身が東側で戦争の無意味さを説く。

そのタイミングで、サクラとして忍び込ませていた主戦派を大人しくさせると共に、サクラでない主戦派を暗殺させればいい。

 

 

中東は本来のタイミングより早く世界規模に広がるであろう宗教が成立して、ヨーロッパに反乱を起こしたけど、

ヨーロッパ全てが完全に団結して互いに背中を心配する事無く、友軍を自由に自国を通過させられる状況を理解していたのかしら?

本来戦争と言うのは一国が相手であっても、その後に周囲の国との関係や、損害を考慮した力量差を考慮しないと、次の一戦が危うくなる。

そういうものらしい。表面上は戦争は殿方のものだし、女には難しくて解らない振りをしているけどね。

それを取っ払ったわたしの能力、私の功績は素晴らしい。

私が、私こそがこのヨーロッパを統一したの。

 

この『私』こそがヨーロッパ、いえ、――――世界そのものなのよ。


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