現代日本のオタサーの姫が、古代ブリテンのお姫様になったら   作:蕎麦饂飩

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だから私を見て、私だけを見て――――


わたしが殺す。わたしが生かす。わたしが傷つけわたしが癒す。

裁縫、詩、ダンス、お化粧。お姫様らしいことは何でも頑張りました。

やろうとすれば私が望む方向性の事は何でもうまくいく。

やれば出来るから、出来ると確定しているから、努力も絶対に無駄にならないから、

そういう肉体を操るのであれば、頑張る事は何も苦痛ではないんだから。

 

えっ、戦闘術? 『わたし』はそんな野蛮な事はやりません。

お姫様や男装した女性が男に交じって闘うなんて、そんなの普通に考えてありませんから。

第一、アーサー王の娘に生まれて、野蛮な戦闘術で自分をアピールする必要なんてないでしょう?

だって、『わたし』は『お姫様』なんだから。

 

 

齢10歳にして凄いお姫様なお姫様として、近隣の国々にまでその名声が響き渡った。

ブリテンの中では最早言うまでもないでしょ。

まあ、世界で一番なお姫様だから当たり前なんだけど。

 

「アムル様可愛い」「アムル様可愛い」「アムル様可愛い」「アムル様可愛い」「アムル様可愛い」「アムル様可愛い」「アムル様可愛い」って。

 

まあ、もっともっと褒めてくれても良いんだけどね。

だって、『わたし』は『お姫様』だから。

 

『わたし』が泣けば騎士たちは心配し、『わたし』が笑えば騎士たちも喜び、『わたし』が甘えれば騎士たちはデレデレしながら奮起する。

わたしを中心に世界は回る。まさしく、私がこうあるべきだと願った世界だった。

 

一向に世継ぎを産まない正妃の存在感なんて、もう脅威でも何でも無いくらい、わたしに全てが上手く行く様に進んでいく。

問題と言えば、マーリンがデレないのと、

前世の安月給の父親とは比べ物にならないくらい、女性と見間違うばかりに美形なアーサー王はわたしと余り関わろうとしない事くらい。

 

まあ、実の父親とどうこうとか、そういう背徳的なのはお姫様的にも無しだから良いんだけどね。

そんな事より、『世界中の人々のお姫様』となったわたしを求める沢山の王子様をどう選ぶか、どう侍らすかが大切なの。

 

わたしと言う絶対の基準が存在する以上、

王子様と結ばれる少女がお姫様になる訳じゃ無い。

わたしと結ばれる男性が王子様となるの。

わたしが王子様を承認するの。私が――――、わたしだけが。

 

 

その為には、尚の事、更に世界中の男性全てに求められる『お姫様』でなければならないの。

わたしを巡って戦争が起きるのなんて前提条件にもならない当たり前の事。

わたしの為に命を散らす覚悟なんて持っていない方がおかしい。

わたしが誰よりも美しいのは確定条件。

 

ハードルが否応なしに上がっていくけれど、『お姫様』であるためなら、

お姫様の様なお姫様であるためになら、私はどんな犠牲だって払うし、どんな苦労も、私を含んだ誰の苦痛も意に介さない。

 

全ての男性の欲望の実態像にして、どの男性にも独占させる事を赦さない絶対神聖な花嫁。

わたしの魅力によって幾つもの内乱が引き起こったりもした訳だけど、

結局は争う男達全てのお姫様となった事で、わたしという中心から蜘蛛の巣の様に放射状に延びる見えない鎖によって、

男達は縛られるように、絡め取られるように、繋ぎ合わされるように団結した。

 

そうして、わたしという核を以ってブリテンは団結した。

ブリテンの全ての権力者たる男達の集合を擬似的に一つの人格として、わたしがその花嫁となる事で全てが解決したのだ。

わたしが全てを許し、わたしに全てを許す男達がいる限り、男達しかいない限り、

ブリテンに崩壊はあり得ないだろう。

ありとあらゆる要因によって滅びの綻びを見せていたブリテンは此処に恒久の平和を見出した。

 

 

ブリテンがわたしによって完全な統一を見せた途端、他の国々が私のブリテンに突如牙をむき始めた。

フランスが、ゲルマンが、――――そしてローマが。

 

どうして『わたし』に刃向かうのかわからない、どうして『わたし』を愛さないのかが解らない。

私がこうあるべきと理想とした願いを実現できるスペックを兼ね備えた拘束器(お姫様)

私がこうありたいと祈っていた偶像(お姫様)

 

誰もが愛して溺れて傅くべきなのだから。

だからわたしの愛で呑み込んで、わたしの愛で溺れさせて、わたしの愛で縛りつけてやる。

そうして誰もが私を愛する世界に変えて見せる。

世界は――――そう在るべきなのだから。


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