貴方の話をずっと書きたかった。(ツインテールを見ながら)
最近、姉の翔鶴の様子がおかしい。
艦娘として翔鶴の妹であり、年の離れた親しい親友でもある瑞鶴はそう感じていた。
「え~、翔鶴ねえ次の休みも駄目なの?」
『ごめんなさい瑞鶴、その、ちょっとはずせない観さ…用事があって』
今日も電話をかけたらこんな感じだった。
以前はどこに行くにもよく自分を連れまわすことが多かったのに、と首をかしげる瑞鶴。
そういえば最近の翔鶴は、仕事が終わった後も直ぐにどこかに行ってしまうらしく、いや、仕事中であってもよく外回りを理由にどこかに行くことが多くなったとか、翔鶴の秘書がこぼすのを聞いたのを瑞鶴は思い出した。
……。
この前などは直接会いに行って、さりげなく聞いてみたが。
「なんでもないわ、ええなんでもないの」
と、目を逸らして気まずそうにしていた。
怪しい、とても怪しい。
そして瑞鶴は一つの結論にたどり着く。
「あっ、そっか。もう直ぐ私の誕生日だった」
自分のサプライズパーティーのために不器用に隠し事をしながら奔走する姉の姿を想うと、瑞鶴は胸が熱くなった。
「そっかー、ふふふーん♪なら私も驚かせちゃおっかな~」
気が付くが早いか、瑞鶴は姉へのカウンタープレゼントを準備すべく街へショッピングに繰り出すことに決めた。
この世界は一度滅びかけたらしい。
しんかいせいかんという、怪物が現れて世界をめちゃくちゃにしたんだ。
だけどどこからか現れた艦娘と、その辺に居た提督と、あと沢山の人たちが力を合わせてしんかいせいかんをやっつけて平和を取り戻し……
「翔鶴姉、なに? ……って、提督さんじゃん! なにやってんの? 爆撃されたいの!?」
……またなんか出た。
入院中のおばあちゃんへの誕生日プレゼントを買おうと街に出て、駅ビルの中の婦人向けの階のお店を回っていると、気の強そうな美人というより、かわいいというイメージのツインテールのお姉さんに声をかけられた。
無地の赤色のワンピースと白いジャケットを羽織った服装なんだけど、高そうなブランド物のベルトを巻いていて、全体で見るととてもおしゃれで似合ってるなぁと感じられる服装だ。
僕が無反応で居ると、そのお姉さんは首をかしげる。
僕は知っている、きっとこれは僕の後ろにこのお姉さんの提督さんが居るのだ、学年でかわいいと評判の子が僕に向かって手を振っていると勘違いして、振り返して恥ずかしい目にあったことがある。
僕がすっと立ち去ろうとすると、お姉さんは慌てて僕が着ている服のフードの部分を掴む。離して欲しい。
「あ、あ、あ、ごめんごめん。自己紹介がまだだったね! 翔鶴型航空母艦2番艦、妹の瑞鶴です。艦載機がある限り、負けないわ!」
どうやら勘違いではない上に、この人もまた艦娘のようでおまけに翔鶴さんの妹らしい。
あと艦載機が無いと負けてしまう人らしい。(※史実参照)
「はぁ、どうも……」
とりあえず返事をしたけど弱った、今日は防犯用の笛も虎の子の防犯ブザーも持ってきていない、僕としたことが。
「なんというかすごい誤算ね、翔鶴ねえのプレゼントを買いに来た店でまさか私の提督さんを見つけちゃうなんて……どうしようかしら、すっごいうれしいんだけど色々複雑。提督さん翔鶴ねえの適性もあるのかな……」
ぶつぶつとなにかつぶやく瑞鶴さん。
なんとか離してもらおうとフードを引っ張ると、瑞鶴さんはあっさりと離してくれた。
「まっ、いっか! とりあえず提督さん、ちょっと付き合ってよ!」
「あの、おねえさんすみません僕用事が……」
なんとか断ろうとしたけど、瑞鶴さんは言い終わる前に、しゃがみこみながらがばっと僕の両肩に手を置いてじっと此方を見つめる。
「ず、い、か、く」
「あの、おねえさ……」
「ず~い~か~く~」
「……瑞鶴さん」
瑞鶴さんは、僕の言葉を聞いて「う~ん」と目をつぶって唸り。
「さん、はいらないかな」
と言ったので、それに対して僕が、
「瑞鶴さんも僕のこと提督さんって言ってるじゃないですか」
と言うと、きょとんとした顔をして大笑いした。
「っぷ、あはははは! うん、そう、そうね。じゃあまあとりあえずは瑞鶴さんで勘弁しといてあげる!」
なにが面白くてなにを勘弁してもらえるのかわから無いけど、とりあえずそういうことになった。
■□■□■
「ねえねえ提督さん! これなんかどうかな!」
「はぁ、いいんじゃないでしょうか」
なぜかあの後押し切られて、そのまま瑞鶴さんの買い物に付き合うことになった。
正直さっきから瑞鶴さんが見ている服やアクセサリーは、僕にはよくわからない。高そうだな、って思うくらいだ。
合間を見ておばあちゃんのプレゼントを買おうと思ってきたけど、ここの売り場にあるものの値段を見てると、とてもじゃないけど僕のお小遣いじゃ買える物なんて無い。
「てーとくー! もっとちゃんと見てよ~! ふてくされるぞー?」
頬を膨れませて僕の後ろから抱きついてくる瑞鶴さん。どうでもいいけど翔鶴さんに抱きつかれた時の感触が無い。
「あの、僕そろそろ行っていいでしょうか……」
「ん? 提督さんなにか用事あるの?」
「ええまぁ、祖母への誕生日プレゼントを買いたいので」
両腕の拘束を解きながらそう言うと、瑞鶴さんは驚いた顔をした。
「うそ! なんだそれならそうと早く言ってよもう! 私もプレゼント買おうと思ってたんだから。一緒にさがそっか!」
「はぁ、ですがこのデパートにあるものはとても僕には買えないので……」
ちらりとマネキンが着ている服の値札を見る、予算より二桁くらいオーバーしていた。
「別によさそうなのがあったら私が買って……って、それは違うわよね」
当然だ、僕からおばあちゃんへのプレゼントを、他の誰かに買ってもらうのが間違いだっていうのは僕にだってわかる。
じとーっとした目で僕が見てるのに気がついたのか、瑞鶴さんはばつが悪そうに言い直しながら頬をかく。
「と、とりあえず喫茶店にでもいこっか。提督さんのお婆様のお話聞かせてよ!」
さすが艦娘とでもいおうか、瑞鶴さんは軽々と僕を小脇に抱え走り出す。
降ろしてほしい。
おじいさんやおばあさん、おじさん? お兄さん? と手をつないで歩く学生っぽい女の人や、三人のお姉さんたちに囲まれて、白いスーツを試着させてもらってるかっこいい金髪の人。
ん、かっこいい金髪の人?
とにかく誰か誘拐と勘違いして、止めてくれないかなと思った。
けど、周りの店員さんや大人の人たちの目は、そんな僕たちを姉弟を見るような目だった。
飲食店のフロアに到着すると、瑞鶴さんはさっさと店を決めて入りアイスコーヒーを注文した。
ちなみに僕はオレンジジュース、お小遣いを使いたくないので水でいいと言ったんだけど、瑞鶴さんが払うから好きなものを頼むようにと強引に押し切られてしまった。
「知らない人に払ってもらうのは……」
と一応断ったんだけど、それを聞いて泣きそうな顔をされてしまったのでしぶしぶだ。でもオレンジジュースは美味しい、美味しいものを口にすれば口も軽くなる、そうして僕らはお互いのことを少しづつ話しだした。
瑞鶴さんは実姉妹ではないけど、艦娘の姉妹である翔鶴さんととても仲がよいとか。
瑞鶴さんは自分がデザインした服を作って売ったり、買い付けたブランド物を販売するお店を経営したり、時々モデル? のお仕事をしているとか。
僕のおばあちゃんのお母さんが天城という艦娘だったとか、僕の予算とか。
「へー、提督さんのひいお婆様は天城さんだったんだ」
「ひいおばあちゃんのこと知ってるんですか?」
「知ってる、っていうのとはちょっと違うんだけどね。艦娘としての知識として持ってるというかそんな感じ」
僕が首をかしげると、瑞鶴さんは「その辺はちょっと提督さんでも説明がむずかしくてね」と、言葉をこぼす。
「それよりも、提督さんの予算で買えるいいもの思いついちゃった」
そう言って悪戯を思いついた友達のように、瑞鶴さんはいい笑みを浮かべた。
■□■□■
「すごい……」
目の前には大昔の船や飛行機、戦車や自動車、潜水艦や列車まですごい数の模型がガラスケースに展示されている。あの後、瑞鶴さんはまた僕を小脇に抱えて走り出し、同じデパートにあるこの模型専門のお店につれてきてくれた。
「えーっと、これこれ。零式艦上戦闘機 52型、私たち空母の武装の一つだった戦闘機ね!」
瑞鶴さんが指さす先には綺麗な緑色の飛行機の模型があった。
「と、言っても私たち艦娘は皆元々軍艦だったからその頃の飛行機でもあって……まぁ、難しいことはいっか。とにかく、提督さんのひいお婆様もきっとこの飛行機を使って戦ってたと思うわ、もちろん大戦当時の天城さんがだけど。これを組み立ててプレゼントするってのはどうかしら?」
確かに、おばあちゃんの部屋にこの飛行機の絵が飾ってあるのを見たことがある。僕が作ってプレゼントすれば喜んでくれるかもしれない。
そして瑞鶴さんの手にはいつの間にか、その零式艦上戦闘機 52型の模型の箱があった。
「はい、これなら提督さんのお小遣いでもぎりぎり買えちゃうんじゃない?」
「うん、確かにこれなら買えそうだし、おばあちゃんも喜んでくれるかも。けど……」
だが大きな問題がある、僕は模型を作ったことが無いのだ。
「ふふふー、もちろんこの瑞鶴さんにその辺抜かりはないわ。この店の奥に組み立て用のスペースがあるから一緒に組み立てましょ、教えてあげる!」
瑞鶴さんはお店の人と顔見知りらしく、一言二言話すと奥の作業机があるスペースまで案内してくれた。
僕と瑞鶴さんは向かい合って座り、模型の箱を開け中身を取り出す。独特なにおいのする透明な袋を開けると、細いプラスチックの枠の中に沢山のちっちゃいパーツがついている物が出てくる。
「はい、ニッパー。これを使ってまず一個づつパーツを切り離すの、間違ってパーツ切っちゃ駄目よ。ランナー……えっと、この枠の部分ね。で、これがパーツで、パーツとランナーの間の細い部分がゲートっていうの。ぎりぎりで切り離さなくてもいいから余裕持ってこのゲートの部分を切ってね、残った部分は後から削るから大丈夫」
要点だけ説明すると、瑞鶴さんはお手本を示すように手際よくパーツを切り離し始める。
すごく手馴れた様子で、あっという間にパーツが積みあがっていく。
僕も負けじとパーツを切り離す作業を黙々と始める、しばらくパチンパチンと、ニッパーでパーツを切る音だけがあたりに響く。
「……瑞鶴さんは随分と手馴れてるんですね、模型作るの好きなんですか?」
「まぁ、好きかどうかでいえば好きなんだけどね。昔ちょっと悩んでた時に気晴らしにやったのが切っ掛けかなー」
艦娘も悩むことがあるのかな、瑞鶴さんとか特に悩みがなさそうだけど。
「あー、今悩みなんて無さそうって思ったでしょ?」
「……いえ、別に」
「まぁ、私は翔鶴ねえが居てくれたからましな方だけどね。じつは艦娘も色々悩みがあるものなのよっと。よし、できた。ちょっと必要な道具や塗料買ってくるから、作業進めながらまっててね」
そう言って瑞鶴さんは立ち上がり、売り場スペースの方へ歩いて行った。
僕はそれを見送り、手元にあるパーツをパチンパチンと切り分ける作業を再開する。
パチンパチン、パチンパチン、パチンパチン
退屈すると思うかもしれないが、実はこういうの意外と得意なのだ。
パチンパチン、パチンパチン、パチンパチン
「あれ、彼女どこ行ったのかな? そろそろいるだろうと思ってマスキングテープと塗料を持ってきたんだけど」
ふと、夢中になって作業に没頭していると、渋いおじさんの声が聞こえた。顔を上げると、そこには声の通り渋い……ともいえなくもないけどどちらかというと白熊さんみたいな白いひげを生やした初老の男の人が居た。
青い前掛けの胸に『店長』と書かれたバッジをつけているから、多分このお店の店長さんなのだろう。
「瑞鶴さんなら、次の作業に必要な道具を買いに行かれましたよ」
「ありゃ、入れ違いになっちゃったか……ん? 今君、彼女のことを艦娘名で呼ばなかったかい?」
店長さんはすごく驚いた顔で僕に聞き返す。
「はい、瑞鶴さんにそう呼べって言われたので」
僕の言葉を聞いて、唖然とする店長さん。
「……ついに見つけたのか。今日は飛び切り機嫌がいいと思ったらそういうことだったんだねぇ。ようやく長年の願いがかなったのか、よかった、本当によかった……」
店長さんはポケットからハンカチを取り出すと、目元をぬぐう。
「瑞鶴さんのお知り合いなんですか?」
「ああ、彼女が学生の頃から知ってるよ。……当時はひどく無愛想で表情に乏しい子でねぇ。よく学校帰りにここに移転する前の店に来ては、模型を買っては店にある組み立てスペースで一人で黙々と模型を作ってたもんだよ」
遠くの方を見ながら、ゆっくりと思い出すように語る店長さん。なんだかおばあちゃんがお父さんやお母さんの思い出話をするときの目に似ている。
「当時はもう鬼気迫るといった感じでね、なにか足りないものを埋めるみたいに必死で模型を作ってる様子を見て声をかけたことがあったんだよ。なんでそんなにあせるように必死で模型を作ってるのかってね。そしたら彼女なんて答えたと思う?」
僕が瑞鶴さんに会ったのは今日が初めてだし、当時の瑞鶴さんのことなんて当然想像もできなかったので、僕はわからず首を横に振る。
店長さんはそんな僕を見てから、悲しそうな顔で再び話し出す。
「彼女はこう言ったのさ『一生懸命やってるだけ…よ』ってね。なんというかそれを聞いて、彼女たち艦娘にはきっと僕らにはわからないとても大きな悩みがあるんじゃないかって、そう思ってね。それ以来少しづつ話すようになったんだけど。それからしばらくたって、彼女が就職したって聞いてからかな、少しづつだけど明るくなって今の彼女みたいになったのさ」
僕は赤城さんや加賀さんや翔鶴さん、そして瑞鶴さんのことを思い出す。
おかしなお姉さんたち、でも彼女たちは艦娘で、人間と一緒に生活しているけど、人間とはまた別の考えを持って生きているんだなと、店長の話を聞いてそう思った。
ふむ、店長さんは悲しそうにしてるけど、つまりそれは彼女たちはそういうものなんだと考えれば当然のことなのだと……。
あれ?
僕は今一体なにを考えていたのだろうか?
「あー! 店長レジにいないと思ったらこんな所に。ほらほら早くこれ精算してよ!」
そんなことを考えてると、向こうから瑞鶴さんの声が聞こえた。
「あはは、ごめんごめん、すぐいくよ! ……今の話、私が言ってたってのは内緒にしといてね」
そう僕に言い残して店長さんは去って行った。
店長の背中は、嬉しそうでもあり、何処か悲しそうにも感じられた。
ゴトリ
ふと、なにか音がしたので振り向くと、机の上に見覚えの無いプラモデルの箱が置かれていた。
なんだろう、箱には『大鳳』って書かれてるけど、むずかしくて読めない、多分船の模型だと思うんだけど……。
「あら、なに? それ空母じゃない、しかも大鳳とか。やめといたほうがいいわよ提督さん、それ初心者が作るにはちょっとハードルが高いわ」
見ると色々な道具の入った小さなかごを持って瑞鶴さんがそこに居た。
「てかどうしてもっていうなら『瑞鶴』作りなさいよ! なんで大鳳!?」
「いや、気が付いたらここに置いてあって、僕知らないです」
瑞鶴さんは『大鳳』の箱を持って、不審そうな感じになるも、とりあえずおいてあったと思われる場所に戻しに行った。
ほんと、なんだったんだろうか。
しばらくして瑞鶴さんが戻ってきた。
「どう、切り分けは終わった?」
「あ……もう少しです」
店長と話していたせいで中断されてしまったけど、残ったパーツは後少しだ。僕は少し急ぎながら切り離す作業を再開する。
「あ、別にそんな慌てなくても……っあ!」
少し慌ててしまったからだろうか、ニッパーで切断する時にパーツを持っているほうの手の指の先っちょも一緒に切ってしまった。
別にそんなに痛くは無いんだけど、指から流れる血を見て瑞鶴さんが慌てて僕の手を取る。
「や、やだ、血が出てる。痛いかな、ちょっと我慢してね。んっ……」
少し焦ったような様子の瑞鶴さんが、僕の指を口にくわえてなめ始める。指先にぬちゃっとした感触があり、少し荒い息があたっているのがわかる。そしてひと舐めするごとに、瑞鶴さんの頭が上下に揺れて、左右に結ったさらりとした長い髪が腕にふさふさとあたった。
とてもくすぐったい。
「んぁ……んっ、ん……よし、これでいいかな」
そうしてハンドバッグから小さな絆創膏を取り出して、僕の指に巻きつけてくれる。
瑞鶴さんがあんまりにも一生懸命手当てしてくれたものだから、気恥ずかしくなってしまった僕は、お礼の言葉をこの前の赤城さんの時みたいに、ちょっと悪戯するような感じで言うことにした。
「ご苦労だった瑞鶴、ありがとう」
なにかで見た、軍人さんのような感じの言葉だ。あ、思わず呼び捨てにしちゃったけど大丈夫かな。
見ると瑞鶴さんがきょとんとした様子でこちらを見ていた。そしてふっとすごく真面目な表情になり、
「……ご無事でなによりです、提督」
そう返事をしてくれる。
僕たちはしばらく、そんな軍人さんのように真面目な顔で見合わせていたんだけど、やがて瑞鶴さんが耐えられなくなったのか、笑い出してしまった。
よかった、怒ってなかったようだ。
でも、そんな笑ってる瑞鶴さんに向かって、塗装に使うと思う小さなペンが飛んできてあたる。
「私がここまで被弾するなんて!」
思わず叫んだ瑞鶴さん、直ぐに飛んできた方向に向かって走って行ったけど、結局誰が投げたのかはわからなかったらしい。
謎だ。
■□■□■
どうにも、模型というのは一日で作るのは難しいらしく、今日はある程度まで作業を進めて、後日続きを作るということで帰ることになった。
ちなみに、作りかけの模型は瑞鶴さんが預かってくれるらしい。
瑞鶴さんが運転する屋根のないスポーツカーで家の近くの公園まで送ってもらい、車を降りる。ちょうど夕焼けがあたりを照らしていて、海の向こうの水平線に夕日が沈む様子が見えた。
「じゃあまた、来週の休日にあの店で待ち合わせね! なにかあったら渡した電話番号に電話して、直ぐに出るから」
「はい、今日はありがとうございました」
瑞鶴さんは手をひらひらさせながら優しい笑みを浮かべると、車を発進させた。何度か名残惜しそうにこちらを振り返っていたけど、やがて車は見えなくなった。
今日はいろんなことがあった気がする、僕はどっと疲れてしまった。
けど、いい日だったと思う。
とりあえず近くの公園のトイレで用を済まし、トイレから出て公園から見える景色を眺める。
ここは『艦夢守市(かんむすし)』
大きな港があり、その港と街の周りをぐるっと山に囲まれている、そんな立地の場所。
都会とまではいかないけれど、それなりに騒がしくてそれなりに穏やかな大きさの街。
そしてこの街には一つの噂がある。
それは提督適性者が集まるという噂だ。
この街には沢山の人間と、居るかもしれない提督適性者たちと、その噂を聞いてやってきた割と多くの艦娘たちが平和に暮らしている。
つまり、ここが僕の住んでいるところだ。
後、ふと気が付いたのだけど、瑞鶴さんに僕が翔鶴さんの知り合いで、更に適性もあるってことを言いそびれてしまった。
まぁ、また今度会ったときでいっか。
加賀・翔鶴「ヘイsiri、加賀さんと翔鶴ねえが勝利する方法を教えて」
siri「すみません、加賀さんと翔鶴ねえが勝利する方法はみつかりませんでした」