『パワプロ成長』でダイヤのA   作:ネコガミ

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本日投稿3話目です


第94話

検査入院から退院して検査結果を片岡さんに報告した翌日、片岡さんは今日の練習前に

青道高校野球部の部員全員を集めて1つの通達を出した。

 

それは、ケガを隠さない様にといったものだった。

 

野球に限らずスポーツにケガは付き物だが、それを素人判断でケガを隠して練習や

試合でのプレーを続行すれば、取り返しのつかない結果になる事もある。

 

ケガをしないように事前のケア等も大事だが、ケガをした後の速やかな治療が

クリスさんの様に早期の復帰に繋がると、片岡さんは話した。

 

強豪と言われる青道高校に来た以上、野球部の皆は本気で野球をしに来ている。

 

その中で熾烈なポジション争いをしていれば、多かれ少なかれケガは避けられないものだ。

 

だが、ケガを含めての体調管理も野球人として大事な事であるので、

それを自覚して行動しろとの事。

 

皆は大きな声で片岡さんに返事をすると、片岡さんは1つ頷く。

 

そして片岡さんの号令で2日後に迫る、夏の高校野球選手権の西東京地区大会決勝戦に向けて、

最終調整となる練習が始まるのだった。

 

 

 

 

ケガをしたり疲れを残さない様に、普段に比べて軽いメニューの全体練習をした後、

俺はブルペンで一也を相手に投げ込み前のキャッチボールをしていた。

 

ちなみにクリスさんは、決勝戦で先発をする丹波さんの相手をしている。

 

キャッチボールである程度肩が暖まった所で、俺は一也を立たせたまま

軽くフォーシームを投げる。

 

パァン!

 

一也のミットはいい音を出したけど、俺は首を傾げる。

 

(う~ん、狙った所よりも高めに行っちゃうな…。)

 

俺は一也からの返球を受けると、少し握りの感触を確かめていく。

 

(リリースの感覚は凄くいいんだけど、制球のランクが変わったせいなのか

 細かいコントロールも出来ないんだよなぁ…。)

 

そんな事を考えながら俺はもう一度フォーシームを投げる。

 

俺が投げたフォーシームは、以前のモノに比べてボール1つ分高めに一也に届く。

 

(一也を座らせて本格的に投げ込んだら、もっと高めに行っちゃうのかな?)

 

俺は左手の親指で、左手の人指し指と中指の感覚を確かめる様に軽く擦る。

 

(早くこの感覚に慣れないとなぁ…。)

 

その後の俺は1球1球の感覚を確かめながら、ゆっくりとボールを投げていくのだった。

 

 

 

 

(何だこれ?見たこと無い軌道でボールが来るぞ…。)

 

パワプロのキャッチボールの相手をしている御幸は、パワプロの

フォーシームの質に目を見開く。

 

(キャッチボールだからパワプロは軽く投げてるけど、本格的に投げ込んで来たら

どんな軌道でボールが来るんだ?)

 

首を傾げながら左手の指を擦り合わせて指先の感触を確かめているパワプロの姿に、

御幸は検査入院前のパワプロの言葉を思い出した。

 

(あの時、パワプロは感触が違うって言っていたけど…もしかして、

 このボールを投げる感覚を掴んだのか?)

 

御幸自身、先日の試合で成宮からサヨナラホームランを打ったあの時から、

バッティングに確かな手応えを掴んでいる。

 

だが、その手応えはまだ自分の物に出来たとは言えない状態だ。

 

(今は声を掛けて邪魔をしない方がいいな…。)

 

言葉に出来ない自分の中の感覚にもどかしい気持ちを抱くのは、

今の御幸自身が実感しているのだ。

 

「いいぜ、俺はパワプロの相棒だからな。幾らでも付き合うさ。」

 

御幸はそう呟くと、ミットに軽く拳を叩き付ける。

 

そして御幸はパワプロのフォーシームを捕球すると、ニヤリと笑みを浮かべるのだった。




次の投稿は13:00の予定です

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