『パワプロ成長』でダイヤのA   作:ネコガミ

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本日投稿1話目です


第82話

大阪桐生高校との練習試合は0ー0の引き分けに終わった。

 

疲労のピークに達していた青道打線は、大阪桐生のエースの館さんを攻略しきれなかった。

 

館さんからヒットを打ったのは、今日のメンバーの中では比較的に元気だった東さんと、

試合後に読みが当たったと言っていた一也、そして俺の3人による4本だけだった。

 

ちなみに、2本は一也で俺と東さんはヒット1本だけだった。

 

リトルの頃クリスさんに、『葉輪は投手だからデッドボールに気をつけろ』って言われてから

インコースだけを意識している。だからアウトコースに投げられたら全く打てないんだよね。

 

もっとも、インコースでも打てないんだけどな!

 

ちなみに俺は3回の表のセーフティバントと、館さんに打たれたヒットの2本だけで完封した。

 

そんなこんなで練習試合が終わって日が進み、遂に合宿は最終日となった。

 

そして、片岡さんから夏の高校野球選手権大会の1軍メンバーが発表されたのだった。

 

 

 

 

「背番号11、葉輪!」

「はい!」

 

俺の名前が呼ばれた!

 

やったぜ!

 

片岡さんから背番号を受けとると、俺は1軍に選ばれたメンバーに目を向ける。

 

背番号1は丹波さんだ。

 

残念ながらエースナンバーは奪えなかったな。

 

丹波さん!秋には俺が1番を貰いますよ!

 

正捕手にはクリスさん、控え捕手には一也が選ばれた。

 

一也が言うには、バッティングが正捕手を奪えなかった理由みたいだな。

 

1塁手には哲さん、2塁手には亮さん、3塁手には東さんが選ばれた。

 

後、名前と顔が一致しているのは、抑えに選ばれた純さんだけだな。

 

他のメンバーは東さん以外の3年生だ。

 

「このメンバーで夏の大会を戦っていく!以上、解散!選ばれなかった3年は残れ。」

 

片岡さんの号令で合宿は終わりとなり、青道の1軍メンバーは夏の大会に向けて、

それぞれ疲労を抜いたりと準備をしていくのだった。

 

 

 

 

合宿終了後、青道の1軍メンバーが疲労を抜こうと休んでいる中で、丹波は1人、

黙々とシャドウピッチングをしていた。

 

「ハァ、ハァ、後、30!」

 

大汗を流して自主練習を続けている丹波の元に、風呂上がり姿の東がやって来た。

 

「何やっとるんや、丹波?」

「東さん…。」

 

声を掛けた東の目には、丹波の姿が、まるで9回の裏のサヨナラの場面を背負う投手に見えた。

 

「合宿は終わったのに疲労を抜かんでどうすんねん。そんなんやと、大会前にぶっ倒れるで。」

 

東の言葉に、丹波はシャドウピッチングに使っていたタオルを、ギュッと握り締める。

 

「東さん、俺がエースナンバーを背負っていいんでしょうか?」

「なんや、そんな事を悩んどったんかい。」

 

ため息混じりに言う東の言葉に、丹波は顔を上げる。

 

「正直に言うと、実力なら間違いなく葉輪がエースやろうな。」

「はい、俺もそれはわかっています。だから…。」

「丹波、お前はまだ1年の葉輪に重荷を背負わせるんか?」

 

丹波は驚き、目を見開く。

 

「お前がそんだけプレッシャーに感じとるもんを、後輩の葉輪に

 背負わせるなんてカッコ悪いやんか。」

「カッコ悪い…。」

「そうや。それに、夏の大会に出たい奴なんてぎょうさんおんのやで?そんな連中を

 押し退けてお前は選ばれたんや。胸を張らんかい、丹波!」

 

先程までどこか頼りなかった丹波の背中が、東の言葉でピンッと伸びた。

 

「よっしゃ!そしたら、さっさと風呂に入ってこいや。サッパリすれば、

 気分転換にもなるやろうからな。」

「はい!」

 

丹波は東に深々と頭を下げると、走って去っていった。

 

「まったく…世話の掛かる後輩やで。」

 

東は頭をガシガシと掻きながらため息を吐く。

 

「やけど、ノミの心臓だった丹波も、ええ目をするようになったやないか。」

 

そう言うと、東は走り去っていった丹波の方へチラリと目を向ける。

 

「面と向かっては言えへんけど…頼りにしとるで、丹波。」

 

東はニッと笑みを浮かべると、機嫌の良い足取りで寮の自室へと歩いていったのだった。




本日は5話投稿します

次の投稿は9:00の予定です

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