『パワプロ成長』でダイヤのA   作:ネコガミ

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本日投稿3話目です


第79話

紅白戦が終わり、部員達の所属が暫定すると、夏の大会を目標とした合宿が始まった。

 

合宿の終わりには他校との練習試合があるらしい。

 

その練習試合の結果で、夏の大会の1軍メンバーが正式に決まる事もあって、

この合宿では、部員達はギラギラとした目で練習に励んでいる。

 

特に最後の大会となる3年生達は、文字通りにグランドの砂にまみれながら練習している。

 

そして、その3年生の気迫に引き上げられる様に、2年生、1年生も合宿で頑張っているのだ。

 

もっとも1年生のほとんどは、初めての青道高校野球部の合宿の厳しさに、

毎日筋肉痛に悩まされてしまっている。

 

まぁ、俺は特殊能力の『鉄人』のおかげで筋肉痛にはならないんだけどな!

 

「いてて…パワプロ、もっとゆっくり押してくれ。」

「あ?悪い、一也。」

 

そんな合宿が始まって数日、今は練習が始まる前に少しでも筋肉痛を和らげようと、

入念にストレッチをしている所だ。

 

「しかし、シニアの頃も思ったけど、パワプロって筋肉痛で痛がった事ってないよな?」

「疲れてても、ちゃんとマッサージやストレッチをしてから寝てるからなぁ。」

 

本当は特殊能力のおかげだけどね。

 

「わかってるつもりなんだけど、いつの間にか寝ちまうんだよなぁ。」

「俺もリトルの頃はそうだったよ、一也。」

「へ~。」

 

そんな会話をしながらストレッチをしていると、程よく身体がほぐれて準備が整った。

 

「うし!大分楽になった!…ふぁ~。」

「眠そうだな、一也。」

「あぁ。やっぱり、疲れが残ってるんだろうな。」

 

大きな欠伸をしながら一也が身体を伸ばしていく。

 

「そろそろ監督も来るだろうし、整列しとこうぜ、パワプロ。」

「おう!」

 

そんな感じで進んでいく合宿の日々は、慣れている筈の3年生達も疲れ果てて、

グランドに倒れ込む程にきついものだった。

 

 

 

 

今日の合宿の練習が終わり、食堂で食事を終えた東は1人でゆっくりと歩いていた。

 

「アカン。今年の合宿は、間違いなく去年よりもキッツイで。」

 

そんな事を言いながら、疲労で重くなっている身体を引き摺る様にして、

東は寮の自室に戻っていく。

 

東の感じている合宿の厳しさは間違いでは無い。

 

合宿の目的の1つに、夏の大会の日程の中で、疲労していても常と同じ様に

動けるようにしようという思いがあるのだが、翌日のパワプロがケロッとしているので、

片岡が意図的に厳しくしている面があるのだ。

 

「やけど、葉輪の奴は筋肉痛の様子も見せんとケロッとしとる…俺も踏ん張らなアカンな。」

 

そう言う東だが、東とパワプロと御幸、そしてクリス以外は、

疲労で食事が受け付けずに食堂で死屍累々となっている。

 

そんな中でも、いつも以上に食事を取ることが出来ている東の胃腸の強さは、

間違いなくアスリートとして貴重な才能といえるだろう。

 

「葉輪はなんかケアのコツでも知っとるんか?」

 

寮の自室に辿り着いた東は、バットを手に取って外に出る。

 

「明日辺り、葉輪に聞くとするかぁ。」

 

そう言うと、東は疲労での眠気に負けずに、日課である素振りを始めたのだった。

 

後日、パワプロに聞いたケアの方法は、後の東のプロ野球人生に活きていく事になる。

 

そして、合宿の日々は過ぎていき、いよいよ練習試合の日が訪れたのだった。




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