俺が青道高校野球部に入っての練習初日、入学式がまだ行われていない為、一般入部の
新入部員達がいない中で練習が行われている。
全体練習として基礎を行った後、俺はブルペンへと向かった。
「おう!待ってたぜ、パワプロ!」
そう言って、ブルペンで俺を迎えてくれたのは純さんだ。
ブルペンには他に、丹波さん、クリスさん、そして見知らぬ先輩が1人いた。
「今日から、よろしくお願いします!」
「パワプロ!エースの座は譲らねぇからな!」
「望むところですよ、純さん!」
俺と純さんがそんなやり取りをした後、少し遅れて一也がブルペンにやって来た。
「遅くなりました!」
「おう!御幸、待ってたぜ!」
「よろしくお願いしますね、純さん。」
そう言って、一也は純さんと握手をした。
「丹波さん、身長…伸びました?」
「あぁ、180cmを超えたな。」
そう答える丹波さんは、去年の学校見学の時に比べて、一回り大きくなっていた。
「葉輪、丹波は秋の大会が終わった辺りから成長痛になってな、走り込みなどが
出来なかった代わりに、体幹を中心に鍛えたんだ。」
「へ~…あ、クリスさんお久しぶりです!」
そう言って、俺はクリスさんと握手した。
「クリスさん、怪我は大丈夫ですか?」
「あぁ、リハビリも終わった。これから復帰して、レギュラーの座を取り戻すさ。」
「おぉ!復帰おめでとうございます!」
去年の学校見学の際に、怪我が発覚したクリスさんは、手術する事になった。
怪我の方は早期発見だった事もあり、こうして半年程で復帰出来たらしい。
ただ、長い間野球をしなかった事で、感覚を一から作り直さないといけないようだ。
「それじゃ、パワプロ達も来たことだし、投げ込みを始めるか!」
「パワプロ、一緒にやろうぜ!」
純さんの号令で投げ込みを始める事になった時、一也が一早く俺を誘って来た。
だが、クリスさんがそれに待ったを掛ける。
「御幸、まずは伊佐敷や丹波の球を受けたらどうだ?」
「いやいや、練習初日ですから、まずは慣れているパワプロの球を受けますよ。」
「現在のエース候補は丹波と伊佐敷だ。スタメンのマスクを被るつもりなら、2人の球を
受けるべきだと思うがな。」
「復帰祝いにお譲りしますよ、クリスさん。」
クリスさんと一也のやり取りに、なんかデジャヴを感じる。
丹波さんと純さんは、そんな2人のやり取りに苦笑いをしている。
そして、俺のボールを受ける為のジャンケンが、宮内さんという先輩も
参加して行われたのだった。
◆
「宮内さん、フォーシーム行きます!」
ジャンケンの結果は、宮内さんの勝利だった。
なので、俺は宮内さんにボールを受けてもらい、投げ込みをする事になった。
ちなみに、丹波さんのボールはクリスさん、純さんのボールを一也が受けている。
まずは軽めにフォーシームを投げる。
パンッ!
クリスさんや一也程ではないが、宮内さんはいい音を出して捕球してくれた。
「ナイスボール!」
そう言って、宮内さんが返球してくる。
だが、狙いが少しずれてしまったので、俺は首を傾げながらボールを受け取った。
その時…。
ピロン♪
頭の中で、機械音が聞こえた。
俺は握りを確かめる振りをしながら、能力を使う。
基礎能力
最高球速:140km(※160km)
制球:A
スタミナ:D
変化球:カーブ5(※7)
変化球2:チェンジアップ5(※7)
※現所属カテゴリーを参照して、能力の表示を変更しました。
※上記に伴い、能力の成長限界を一部解放しました。
※身長の変化に伴い、制球のランクが変化しました。
スタミナのランクがかなり下がっている以外は、大きな変化は無いな。
投手能力を成長させる前に、野手能力を確認しておこう。
基礎能力2
弾道:2
ミート:F
パワー:E
走力:D
肩力:B
守備:D
捕球:C
肩力以外がかなり下がってる…。
流石は高校野球ってところだな!
とりあえずは、制球をSに、変化球2つを6に成長させる。
そして、球速を145kmまで成長させた。
まだポイントはあるが、これ以上は体調不良になりかねないので、
成長した能力に慣れるまで後回しだ。
よし!投げ込み再開だ!
「フォーシーム行きます!」
感覚の変化を確認しながらボールを投げる。
俺が投げたボールは、狙い違わず宮内さんのミットに吸い込まれていった。
だが、宮内さんは捕球しきれずにボールを落としてしまった。
「すまん!だが、ナイスボールだ、葉輪!」
そう言って、宮内さんはユニフォームでボールを拭いてから返球してきた。
その後、数球程フォーシームを投げて感覚を確認していく。
フォーシームの感覚を掴んだところで、今度はカーブを投げる。
「宮内さん、カーブ行きます!」
俺の宣言に、宮内さんはミットを叩いて応える。
何やら視線を感じて目を向けると、他の2組が俺の投球を見ていた。
そんなに注目されたら、テンションが上がるじゃないか!
俺は笑顔でカーブを投げる。
ボールは狙い通りのコースに行ったと思ったのだが、予想よりボールが大きく変化した事で
ワンバウンドしてしまった。
そのワンバウンドしたボールを、宮内さんは後逸してしまう。
「宮内さん、いつでも代わりますよ!」
「宮内、遠慮しないでいいぞ。」
宮内さんの後逸を見た一也とクリスさんが、宮内さんにそう言って発破を掛ける。
…発破を掛けたんだよな?本当に交代したいわけじゃないよな?
宮内さんは、そんな2人の言葉を「ンふー!」と荒い鼻息で退けた。
「オラァ!御幸!俺のボールに不満でもあるのか!?」
「よし!次行きましょうか、純さん!」
「誤魔化すんじゃねぇよ!」
純さんと一也がそんなやり取りをしながら、投げ込みを再開した。
2人に続く様に、丹波さんとクリスさんも投げ込みを再開する。
純さんと丹波さんの投げ込みを見ていると、去年の学校見学の時よりも
成長しているのがわかる。
それが嬉しくて、笑顔になってしまう。
この2人とエース争いをして、切磋琢磨出来るのが嬉しくて堪らない。
俺は一球、一球を楽しみながら、宮内さんと投げ込みをしていくのだった。
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