第61話
さぁ!待ちに待った青道高校野球部の練習初日だぜ!
「お待たせ、フーくん。」
家の前で貴子ちゃんと合流して、いよいよ青道高校へ向けて出発だ。
貴子ちゃんが、自然に俺と手を繋いでくる。
去年のクリスマスと今年の初詣以来、貴子ちゃんはこうして、幼稚園の頃の様に
手を繋いでくる様になった。
小学生になってからは自然と手を繋がなくなり、中学生では少しずつ繋ぐ様になっていって、
今では当たり前の様に手を繋いでくる。
貴子ちゃんに、どういった心境の変化があったんだろうな?
まぁ、俺は嬉しいからいいんだけどな!
それと、貴子ちゃんは礼ちゃんに、俺に関する事で協力を頼まれたらしい。
その協力内容を聞いてみたのだが、貴子ちゃんはウインクをしながら、
「秘密だよ、フーくん♪」と言ってきたのだ。
気になるが、可愛い貴子ちゃんの姿が見れたので満足しておいた。
さて、青道高校に向かっている途中だが、一也にモーニングコールをしないとな。
少し前に、「寮に入って環境が変わったら、起きられるかわかんねぇから、起こしてくれ」、
といった感じで一也に頼まれたのだ。
一也に携帯電話を使ってモーニングコールを掛けて少し経つと…。
『…もしもし?』
一也、すっごい眠そうな声だな。
「おっす!朝だぞ、一也!」
『は?…げっ!?サンキュー、パワプロ!』
そう言って、一也は慌てた様子で電話を切った。
「フーくん、御幸くん起きてた?」
「今起きたっぽいよ、貴子ちゃん。」
俺がそう答えると、貴子ちゃんはクスクスと笑った。
「フーくん、去年も中々起きられなかった人が多かったんだよ?」
「へ~、そうなんだ」
「うん、初日から早く来て練習していたのはクリスくんと結城くんぐらいね。」
結城さんも早く来ていたのか、そして、流石クリスさんだぜ!
そんな感じで貴子ちゃんと手を繋いで、話しをしながら青道高校に向かったのだった。
◆
青道高校に辿り着くと、寝癖がついたままの一也が待っていた。
「おっす、さっきはありがとな、パワプロ。」
俺はショルダーバッグから、プロテイン入りのゼリー飲料を取り出して、一也に投げ渡す。
「その寝癖を見ると、何も口にしてないだろ、一也?」
「おう、ありがたくいただくぜ。」
そう言って、一也は早速ゼリー飲料を飲み始める。
「それじゃ、駄賃を受け取った一也には部室まで案内してもらおうかな?」
一也がゼリー飲料のパックをくわえたまま頷く。
「それじゃ、また後でね、フーくん。」
「うん、またね、貴子ちゃん。」
貴子ちゃんは手を振りながら走っていった。
「よっし!チャージ完了!行くぞ、パワプロ!」
「おう!」
一也に案内された部室で着替えると、一也と一緒に準備運動をするのだった。
◆
準備運動をして身体が暖まった頃、片岡さんがやって来て整列をする事になった。
集まった皆で片岡さんに挨拶をすると、新入部員の自己紹介が始まった。
それぞれが挨拶をしていって、いよいよ俺の番だ!
「おはようございます!丸亀シニア出身の葉輪 風路です!ポジションはピッチャーです!
片岡さんに甲子園の優勝旗をプレゼントします!エース争いでは遠慮しないので、
お互いに切磋琢磨して頑張りましょう!よろしくお願いします!」
俺の挨拶が終わると、周りが少しざわついた。
片岡さんが一睨みすると、ざわつきは収まった。
俺の次に自己紹介した一也は、クリスさんからマスクを奪うと宣言していた。
先輩方の列に並んでいるクリスさんが、一也の宣言に笑みを浮かべていた。
そして、新入部員の挨拶が終わろうとした頃、数人の寝坊した新入部員達がやって来た。
片岡さんは寝坊して来た新入部員達を一瞥すると…。
「お前達は、練習が終わるまで走っていろ。」
と、鋭い視線を送りながら言ったのだった。
寝坊した新入部員達が走り始めると、片岡さんが今日の練習の事を話し始める。
いよいよ、憧れの片岡さんの元で野球が出来る日が来たんだ!
俺の胸はドキドキが止まらない。
よっしゃ!やってやるぜ!
これで本日の投稿は終わりです
また来週お会いしましょう