『パワプロ成長』でダイヤのA   作:ネコガミ

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本日投稿1話目です


第52話

パワプロと楊による投手戦となった東京シニア選抜チームと、台湾の中学生選抜チームの

試合は四回が終了するまで進んでいた。

 

「お~い、パワプロ。どうする?」

 

四回の裏を投げ終えてベンチに戻ってきたパワプロに、監督がそう問い掛けた。

 

「どうするって、何がですか?」

「昨日のアメリカの中学生選抜チームとの試合で、パワプロ以外は皆投げたからな。

 このまま投げたければ投げてもいいぞ~。」

「監督さん!俺が投げる!」

「成宮は昨日、先発だったからダメ。」

 

監督の言葉に成宮は反応したが、成宮以外の投手は反応しなかった。

 

先日のアメリカの中学生選抜チームとの試合で、1イニングだけだが、成宮が打ち崩された

打線を抑えた感覚を忘れたくないのだ。

 

逆に成宮は、試合前に覚えた新しい握りのチェンジアップを試したくて仕方がない。

 

「投げます!」

「よぉ~し、それじゃ七回まで頼んだぞ!」

「はい!」

 

パワプロが元気に返事をしたその横で、成宮はヘソを曲げるのであった。

 

 

 

 

五回の表。

 

パワプロが続投するかどうかをベンチで話していた頃、グラウンドでは御幸と

楊の勝負が行われていた。

 

楊が投じた一球目は高めのフォーシーム。

 

120kmに届かない球速ながら、ここまで多くの打者がこの球に釣られて

バットを振ってしまっていた。

 

だが、御幸はタイミングを取るだけで、バットを振らずに見送った。

 

このフォーシームは高めに外れてワンボール。

 

楊が捕手からの返球を受け取りつつ、御幸を観察していく。

 

そして、御幸も同じ様に楊を観察していた。

 

2人の視線が交差する中で、楊が2球目を投じる。

 

楊が選択したボールはインローへのツーシーム。

 

御幸はこのボールを打ちにいく。

 

カキーン!

 

金属バットの音が球場に響き渡るが、打球は三塁線を切れてファール。

 

これでカウントはワンボール、ワンストライク。

 

楊の胸中は狙い通り、御幸の胸中は打たされたという思いが巡る。

 

楊のペースになりつつある勝負に、御幸はタイムを取って打席を外す。

 

だが、楊は落ち着いてロージンバッグを手に取る。

 

堂々としたその様子に御幸は苦笑いを浮かべる。

 

対して、楊は1つ大きく息を吐いて集中力を高めていく。

 

三球目。

 

楊が投じたのはアウトハイへのフォーシーム。

 

御幸のバットがピクリと反応するが、スイングはしない。

 

三球目は外れてツーボール、ワンストライク。

 

御幸がフーッと細く息を吐く。

 

楊は捕手の返球を受け取りながら、御幸を見据える。

 

四球目。

 

楊が選択したのは、アウトローへのツーシーム。

 

御幸のバットが振られる。

 

そして…。

 

カキーン!

 

金属バットの音が球場に鳴り響く。

 

打球は楊の右横を抜けようとするが、楊が鋭く反応する。

 

バシッ!

 

楊は一度打球を弾いてしまうが、落ち着いて処理をして一塁に送球する。

 

御幸も一塁に向けて全力で走るが、間に合わない。

 

五回の表の楊と御幸の勝負は、楊に軍配が上がったのだった。




本日は5話投稿します

次の投稿は9:00の予定です

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